需要が高く将来性のある不動産業界は、異業種からの転職先として人気です。
業界内には、素地取得や設計、不動産管理といったさまざまな仕事が存在しますが、その中でも特に人気なのが「営業職」です。
未経験者でも挑戦可能であり、高収入を目指しやすい魅力があります。
不動産業界の営業職へ転職を検討しているものの「未経験者でも本当に稼げるのか」と、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
結論から述べると、不動産営業は未経験者でも高収入を目指せて、徐々に収入をアップしていくことも可能です。
今回は、不動産営業の収入事情について、分かりやすく解説していきます。
【この記事で分かること】 ・不動産営業の平均年収や収入が高い理由 ・不動産営業のインセンティブ制について ・各業種の不動産営業の年収 ・不動産営業職で年収をアップさせる方法 ・不動産営業職に関するよくある質問 |
不動産営業の平均年収は約578万円と高い
営業職はさまざまな業界に存在しますが、不動産業界の営業職は特に高収入であると言われています。
自社の商品を販売することが仕事であり、業務内容に大きな違いがないにもかかわらず、なぜ不動産営業職が稼げるのか、疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
ここでは、不動産営業の平均年収や収入が高い理由について、他業界の営業職と比較しながら解説していきます。
厚生労働省が運営する、職業情報提供サイト「jobtag」によると、住宅・不動産営業の平均年収は578万3,000円です。
「令和4年賃金構造基本統計調査」で公表されている、不動産業界全体の平均年収は約542万円で、平均よりも若干高いことが分かります。
また、同データにおける16産業の平均年収は496万5,700円であり、不動産営業の方が80万円ほど高い結果でした。
ちなみに、不動産営業職の年齢別の年収では、55~59歳が最も高く706万5,400円でした。
また、ハローワーク求人統計データによると、不動産営業の求人賃金は27万9,000円です。
出典:職業情報提供サイト jobtag 住宅・不動産営業|厚生労働省
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類|厚生労働省
不動産営業の平均年収は他業界と比べても高い
不動産営業は、他の業界の営業職と比べても平均年収が高い傾向にあります。
厚生労働省が公表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、各営業職の平均年収は以下の通りです。
・機械器具、通信、システム営業:623万7,100円 ・不動産営業:578万3,000円 ・金融業営業:557万4,100円 ・その他営業:546万円 ・自動車営業:506万9,600円 ・保険営業:441万7,900円 |
不動産営業の平均年収は、主な営業職の中で2番目に高い結果でした。
他の営業職に関しても、全産業の平均年収を上回る結果となっています。
なぜ営業職の平均年収は高いのか、次章で詳しく解説していきます。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類|厚生労働省
不動産営業の平均年収が高いのはインセンティブがあるから
前章で解説した通り、不動産業に限らず営業職は、全体の平均年収よりも高水準です。
営業職の収入が高い理由は「インセンティブ制」が大きく関係しています。
インセンティブ制とは、いわゆる歩合給のことで、基本給とは別に個人の売上げの数%が報酬として支給されます。
結果を出すほど高収入になるため、営業職全体の平均年収を引き上げていると考えられます。
その中でも、不動産営業の年収が高い理由としては「扱う商品(不動産)の単価が非常に大きい」ことが関係しています。
不動産営業は、数千万ほどの不動産を扱うため、1件あたりの成約報酬が他の営業職と比べて非常に高い特徴があります。
その分、契約数は少ないものの、数件の契約でも数百万円のインセンティブに繋げられます。
不動産営業の年収:インセンティブ制度について
不動産営業の年収にインセンティブ制が大きく関わっていると解説しましたが、企業によって制度の詳細が異なります。
不動産営業の主な給与体系には、以下のような種類があります。
・インセンティブがあるケース
・インセンティブがないケース
・フルコミッションのケース
ここでは、各インセンティブ制の詳細について解説していきます。
インセンティブがあるケース
不動産営業職に関しては、インセンティブのある給与体系が一般的です。
詳細としては「固定給+インセンティブ」となり、歩合の割合は賃貸仲介で5〜20%、販売仲介営業で2〜3%が相場です。
売上金額に応じて、段階的に歩合の割合が上がったり、売上に対してそのまま割合分のインセンティブが支給されたりします。
固定給が高い場合は、インセンティブが低く設定されており、固定給が低いほどインセンティブの割合が高くなるのが一般的です。
高収入にこだわりたい場合は、インセンティブの割合が大きい求人がおすすめです。
ただし、結果が出せなかった場合の収入が低くなってしまうため、初めて営業職に転職する人はよく考えた上で転職先を決めるようにしましょう。
インセンティブがないケース
不動産営業では、稀であるもののインセンティブがなく完全固定給の求人もあります。
詳細としては「基本給+各種手当」となり、支給される手当は以下のような内容です。
・資格手当(宅建士・FPなど) ・住宅手当 ・家族手当 ・残業手当 ・交通費手当 ・役職手当 |
他の職種と同様に、年1〜2回の昇給で基本給が上がり、仕事に役立つ資格を取得すれば、手当が支給されます。
売上げがダイレクトに給料へ反映されないため、短期間で高収入を目指すことはできません。
一方で、結果次第で給料が変わらないため、安定した収入を求めたい人におすすめの給与体系です。
フルコミッションのケース
フルコミッション制とは、完全歩合制のことで固定給や各種手当が発生しません。
インセンティブ制よりも、歩合の割合が高く設定してあり、3つの給与体系の中で最も稼げることが特徴です。
一方で、結果が出せなかった場合は収入がゼロになるため、未経験からスタートする人にはおすすめしません。
【フルコミッション制の報酬例】 不動産仲介の仕事で5,000万円の不動産を仲介し、インセンティブ40%の場合 ・5,000万円×仲介手数料3%×インセンティブ40%=60万円の報酬 この場合、月間7,000万円の契約を維持できれば年間報酬が1,000万円を超えます。 |
ちなみに、労働基準法第27条により、正社員でのフルコミッション制は禁止されています。
そのため、フルコミッションで働く場合は、企業に属さず業務委託契約を結ぶこととなります。
【賃貸編】不動産営業の年収事情
不動産営業は、インセンティブ制が一般的ですが、扱う不動産によって歩合の傾向が異なります。
ここでは、賃貸不動産の営業について、仕事内容や特徴、年収について解説していきます。
賃貸営業の特徴
不動産の賃貸営業では、賃貸アパートや賃貸の一軒家を探している人に対して、要望に合った物件を紹介していきます。
街中にある、店舗型の不動産屋さんがこれに該当します。
賃貸営業マンの主な仕事内容は以下の通りです。
・部屋を探している人に要望にあった物件を紹介する ・担当するエリアの物件情報の収集 |
金融機関や、地元の不動産会社と連携しながら物件の情報収集を行います。
新しい物件に関しては、現地に向かい間取りや周辺環境などを調べた上で、ホームページに写真や情報を掲載するまでが業務の流れです。
来店客に対してはヒアリングを行った上で、要望に合う物件をピックアップします。
気になる物件が見つかった場合は、物件の内見を行い、問題がなければ契約へと移っていきます。
物件の契約が営業マンのメイン業務となりますが、契約後は以下のような仕事もこなさなければなりません。
・保有する賃貸物件で発生したご近所トラブルの対応 ・地震保険や火災保険といった各種手続きのサポート ・家賃滞納者への対応 |
賃貸物件を利用するきっかけには「進学・就職・結婚・出産」といった人生の節目が多く、住まいを通してサポートできることがやりがいと言えるでしょう。
賃貸物件の営業は、反響営業が多く飛び込み営業は基本的にありません。
未経験を歓迎している求人が多く、過去の経歴に関係なく挑戦可能です。
賃貸営業の年収
賃貸営業の平均年収は350〜400万円ほどです。
賃貸であるため成約単価が低く、不動産営業の中では年収が低い傾向があります。
一方で、契約額が小さいことから成約を取りやすい特徴があり、未経験で不動産業界に挑戦するような人におすすめです。
【住宅編】不動産営業の年収事情
次は、戸建て住宅を扱う不動産営業の仕事について解説していきます。
賃貸物件と同じ不動産営業であるものの、扱う不動産が違うだけで、仕事内容や年収が異なります。
具体的な仕事内容や年収について見ていきましょう。
住宅営業の特徴
住宅営業は、ハウスメーカーや戸建て住宅を扱う不動産会社で勤務します。
戸建ての購入を検討しているお客様に対し、ヒアリングを行い最適な住宅を紹介した上で、販売契約まで進めていく仕事です。
扱う住宅は、主に2種類に分類されます。
・注文住宅:お客様の要望を取り入れながら建てていく住宅 ・建売住宅:既に建設済の住宅 |
住宅営業の主な集客方法としては、モデルルームを建てた上で、チラシなどのポスティングを行います。
周辺の飲食店などにポスターを掲示したり、自社のホームページに掲載したりする業務もあります。
住宅営業に関しても、販売後のアフターフォローがあり、新居での困りごとなどがあれば担当営業マンとして、迅速に対応しなければなりません。
賃貸物件とは異なり、数千万円以上のお金が動くため、ローン関連や保険に関する知識も必要です。
そのため「ファイナンシャルプランナー」や「住宅ローンアドバイザー」といった資格があると、より有利に転職を進められます。
また「宅建(宅地建物取引士)」には不動産契約に関する独占業務があるため、取得すれば普段の業務はもちろん、キャリアアップに役立てられるでしょう。
住宅営業の年収
住宅営業職の年収は400〜500万円ほどです。
1棟あたりの価格が数千万円となるため、1件の成約報酬が賃地物件の営業よりも高く、その分年収も上がります。
賃貸物件以上に収入の差が生まれやすく、結果次第では1年目からしっかり稼ぐことも可能です。
一方で、中堅やベテラン社員になったとしても、結果次第では年収が大きく下がってしまうリスクもあります。
【収益不動産編】不動産営業の年収事情
不動産は資産としての価値があるため、投資用として保有する人も少なくありません。
ここでは収益不動産の営業職について、仕事内容や年収を解説していきます。
収益不動産営業の特徴
収益不動産の営業は、不動産での資産運用を考えている人に対して、マンションや賃貸住宅などを販売します。
収益不動産営業で扱う不動産には、以下のようなものがあります。
・マンション(マンション1棟やワンルームのみ) ・民泊用物件 ・駐車場 ・オフィスビル |
継続して収益を生み出せる物件を見つけた上で、付加価値を付けた上で、顧客への販売や仲介を行います。
不動産の価値は、時代の変化によって大きく変わるため、動向に関するチェックを随時行わなければなりません。
また、不動産投資の目的には家賃収入や節税対策、資産としての保有などがあり、それぞれで最適な物件が異なります。
収益不動産の営業マンは、投資に関する専門的な知識も必須と言えるでしょう。
普段の仕事内容に関しては、電話営業が多く、アポイント獲得のため1日に数百件の電話をかけることも珍しくありません。
収益不動産営業の年収
収益不動産営業の年収は450~550万円ほどです。
投資用の不動産は、生活必需品ではなく契約数が少ない一方で、物件によっては1億円を超えるような物件もあります。
そのため、営業マンの年収は平均よりも少ない人もいれば、年収2,000万円を超えるような人も中にはいます。
不動産営業の中では、最も年収に幅があるジャンルと言えるでしょう。
「とにかく高収入にこだわりたい」といった方におすすめの営業職と言えます。
【土地仕入編】不動産営業の年収事情
不動産の営業職には、土地を専門に扱う仕事があります。
対企業への営業となるため、他の営業職とは仕事内容や求められる知識が異なります。
最後は、土地仕入れの営業職について見ていきましょう。
土地仕入営業の特徴
土地仕入れ(用地仕入れ)営業は、文字通り土地を仕入れることが仕事です。
対象となるのは以下のような物件です。
・新しくマンションや建売住宅を建てるための土地 ・中古戸建て住宅や中古マンション ・廃れた空き家や土地 |
このような物件を手に入れるために情報収集し、有益な土地が見つかると営業活動を進めます。
具体的にはポスティングや電話営業となり、売却を検討している場合は、価格などの条件交渉を行います。
内容に合意が得られて売却が決まると、建物を販売するための手続きを行う流れです。
有益な土地を手にする上で特に重要となるのが「情報収集」です。
有益な土地ほど競争相手が多く、いち早く見つけるためには、地域の中小企業や地主、銀行といったさまざまな士業の人と信頼関係を築く必要があります。
土地仕入営業の年収
土地の仕入営業の平均年収は400~600万円ほどです。
投資用不動産と同じく、扱う不動産の単価が非常に大きく不動産業の営業職の中でも収入は高いと言えます。
ただし、営業スキルはもちろん、土地取引に関する法律や土地の評価に関する知識が必要で未経験者には難しい仕事です。
また、多くの人とかかわりが非常に重要であるため、コミュニケーション能力も必須と言えるでしょう。
不動産営業で年収をアップさせるコツ
不動産営業への転職で今よりも年収を上げるためには、2つのポイントを意識しましょう。
・高単価な市場を選ぶ
・インセンティブの割合が高い会社を選ぶ
具体的にどのような市場の求人がねらい目となるのか、解説していきます。
高単価な市場を選ぶ
不動産営業で高収入を目指すのであれば、高単価な市場を選ぶことが大切です。
業種別・営業の年収で解説した通り、扱う不動産によって単価が異なり、高単価であるほど契約報酬は高くなります。
賃貸営業の場合、ほとんどが数万円〜数十万円規模であるため、多くの契約を取れたとしてもインセンティブでしっかり稼ぐのが難しいと言えます。
戸建てやマンションの売買仲介など、単価の高い不動産を扱う求人で挑戦できそうな内容を探してみるようにしましょう。
ただし、契約が取れなければ意味がないため、未経験者の場合は経験を積んだ後のキャリアアップ先として、高単価な市場を見据えておきましょう。
インセンティブの割合が高い会社を選ぶ
不動産営業で高収入を目指すのであれば、インセンティブの割合も重要です。
たとえ1%の違いでも、1,000万円の5%と4%では1契約あたり10万円の差があります。
挑戦する市場を決めた後は、該当する求人のインセンティブの割合をチェックしていきましょう。
必ずインセンティブの割合が記載されているとは限らないものの、モデル年収などからある程度の予想ができます。
また、最近では企業の口コミサイトも多くあるため、給与や報酬に関する情報をリサーチしてみましょう。
「将来的に高収入を目指したいものの、まずは安定を第一に考えたい」という場合は、インセンティブのない求人も含めながら応募企業を決めていきましょう。
不動産営業の年収に関してよくある質問
最後は、不動産営業の年収に関する3つのよくある質問に応えていきます。
・不動産営業で年収1億は可能?
・不動産営業で年収が一番高そうな会社はどこですか?
・不動産営業に資格は必要ですか?
不動産営業への転職を決断する上で参考になる内容ですので、ぜひ参考にしてみてください
不動産営業で年収1億は可能ですか?
不動産営業マンの中には、年収1億円近くを稼ぐ人もいます。
サラリーマンとして、考えられないような年収を可能としているのが「インセンティブ」です。
不動産営業で年収1,000万円を超えている人の大半は、インセンティブ制のある企業に勤めています。
自分で売り上げた額によって歩合給が支給されるため、数億〜数十億の不動産を扱う企業であれば、年間1億円ほどの収入を稼ぐことも可能です。
ただし、結果が全てであるため毎年安定して1億円稼ぐことは難しく、誰でも簡単に稼げる仕事というわけではありません。
不動産営業で年収が一番高そうな会社はどこですか?
不動産営業で年収が高い会社は、高額な不動産を扱う大手企業がほとんどです。
その中でも特に平均年収が高い企業は、以下の通りです。
企業名 | 従業員の平均年収 |
ヒューリック株式会社 | 1,904万2,394円 |
地主株式会社 | 1,697万833円 |
霞ヶ関キャピタル株式会社 | 1,407万円 |
三井不動産株式会社 | 1,269万2,000円 |
三菱地所株式会社 | 1,246万3,090円 |
※各社の有価証券報告書を参考にしています。
今回紹介する企業の中で最も平均年収の高いヒューリック(株)は、不動産賃貸事業を中核事業としている不動産デベロッパーです。
東京23区内に、オフィス・商業ビル・ホテルといった不動産を多数保有しており、ビルの立て替えなども積極的に行っています。
地主(株)は土地の売買を専業として行う企業です。
どちらも営業職の平均年収は公表されていないものの、大規模な不動産を多数扱っていることから、高収入であると予想されます。
参考:EDINET|金融庁
不動産営業に資格は必要ですか?
不動産営業を行う上で必須となる資格はありません。
ただし、不動産営業で役立つ資格は複数あり、取得することで転職活動が有利になったり、入社後の営業業務で役立てたりできます。
不動産営業で役立つ資格としては、以下のような種類があります。
・宅地建物取引士(宅建) ・ファイナンシャルプランナー ・不動産コンサルティング技能士 ・マンション管理士 ・管理業務主任者 ・インテリアコーディネーター |
宅地建物取引士とは、不動産取引のスペシャリストであり、不当な不動産契約を防止する役割を担っています。
不動産を扱う宅建業者には、従業員5名につき1名以上の宅建士の設置が義務付けられており、業界に欠かせない存在です。
「重要事項説明書面」の記名など、3つの独占業務があり、不動産営業でも身に付けた知識を活かせます。
転職前に取得しておく必要はないものの、特別な受験条件がないため、不動産業界への転職を目的として試験に挑戦する人も少なくありません。
不動産営業の年収についてのまとめ
不動産営業は、他の業種の営業職と比較しても収入が高い傾向です。
高収入の理由としてはインセンティブ制が大きく影響しており、売上に応じて固定給と別に報酬が支払われます。
不動産業界では、土地や建物といった数千万円以上の物件を扱うため、売上げを上げやすい特徴があります。
同じ不動産営業でも、扱う不動産によって仕事内容や年収の傾向が異なるため、今回紹介した内容を踏まえた上で、自分の理想とする求人を見つけてみましょう。
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