運転技術

エアブレーキの踏み方のコツと仕組みを徹底解説!

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大型トラックや、大型バスが停車するときに空気が抜けるような「プシュー」といった音を耳にしたことがあるでしょうか?
これはエアブレーキ装着車の音になります。エアブレーキは、乗用車の油圧ブレーキと違い踏み方にコツがいります。

そこで、本記事では

  • エアブレーキを踏むときにどのようなことに注意すればよいのか
  • 上手にエアブレーキを踏むコツ

についてエアブレーキの仕組みとともに詳しく説明していきます。

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エアブレーキとは?

エアブレーキは空気を利用したブレーキの一種のことです。仕組みとして圧縮空気でブレーキシリンダを動かしブレーキをかけています。

主に使われている箇所として、電車や中型・大型のトラックやバスのブレーキに使用されています。

またトラックやバスなどからプシュッという音が聞こえてきますが、これはブレーキを解除する際に溜まっていたエアーが抜けるためです。

エアブレーキの仕組みとは?

出所:直通ブレーキ|フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

エアブレーキは圧縮された空気が膨張する際に発生する強い力でトラックの動きを止める仕組みになっています。

図はエアブレーキの一種である直通ブレーキのものです。

エアブレーキは運転手がペダルを踏むと、図の中で「空気圧縮機」と呼ばれているコンプレッサーが動いて、「空気ダメ」に空気を送ります。

溜まった空気は圧縮され、周りの空気と同じくらいの密度まで膨らもうと強い力で動きます。この膨張する力でブレーキシリンダを動かし、トラックの制動に利用しています。

【参考】油圧ブレーキとエアブレーキの仕組みの違い

通常の自動車より大きく、動くのに強い力を要するトラックには、油圧ブレーキではなくエアブレーキが用いられます。

その理由はエアブレーキが油圧ブレーキより強い力を持っているからです。

単純に考えると、エアブレーキの力が強いなら、通常の乗用車にもエアブレーキを採用すれば良いように感じます。

しかし実際にはほとんどの車に油圧ブレーキが用いられています。なぜでしょうか。

出所:クリッカー|【自動車用語辞典:ブレーキ「油圧機構」】油圧を使って制動力を伝えるブレーキシステムの根幹

単純化すると油圧ブレーキが動く仕組みはエアブレーキと似ています。

エアブレーキは空気に圧力をかけ、膨張しようとする力を用いて車を止めます。一方、油圧ブレーキは空気ではなくブレーキオイルに圧力をかけることによって、油が膨張する力で車を止めるのです。

ペダルが踏まれると、ブレーキブースターで運転手の足が伝えた力が増幅されます。

この強くなった力で油に強い力をかけ縮小させます。縮小した油が膨張する力をブレーキシリンダーに伝え、車にブレーキがかかり、停車や原則ができるのです。

エアブレーキとの最も大きな違いはペダルが踏まれてから、ブレーキがかかるまでのスピードです。空気と油の性質の違い上、油圧式ブレーキの方がブレーキが踏まれてから実際にブレーキがかかるまでのレスポンスが速いのです。パワフルだが遅いエアブレーキは玄人向け、力強くはないが早く止まる油圧ブレーキは一般人でも扱いやすい、と言えそうです。

関連記事:排気ブレーキの仕組みや機能などまるごと解説!

エアブレーキの踏み方のコツとは?

油圧ブレーキよりも制動力が強いエアーブレーキですが、運転する際に上手にブレーキをかけるコツがあります。

どのようなものがあるのか見ていきましょう。

コツ①:足の裏全体を使って踏み込むこと

エアブレーキの踏み方のコツ①足首を動かして足の裏全体で踏み込む

ブレーキを踏む場合にかかとを浮かせた状態で、足を伸ばして踏む方法とかかとをマットにつけた状態で、足首を動かして踏む方法があります。

足の裏全体で踏むというのは後者のことになります。

油圧ブレーキの場合、ブレーキの踏み具合で調整するのがほとんどですが、エアブレーキは軽くソフトに踏みこみどれくらいブレーキがかかるかで調整する感じになります。

かかとを付けることで踏み過ぎによる急ブレーキも防ぎやすくなります。

コツ②:かかとを支点に

エアブレーキの踏み方のコツ②かかとを支点につま先で優しく踏む感じでブレーキをかける

エアーブレーキは油圧ブレーキの数倍の制御力があり、一般車両と同じ感覚で強く踏みすぎると急ブレーキになってしまい、追突事故や荷台スペースの荷崩れの原因にもなります。

このような事例をなくすためには、かかとを支点につま先で優しく踏む感じでブレーキをかけるのがコツです。

シートを後ろにしすぎたりすると足が届きにくくなり急ブレーキになりやすくなります。

運転前には、必ず自分の身体に合った箇所にシートを調整するなどしてから運転を開始しましょう。

コツ③:クラッチ・半クラッチの操作

エアブレーキの踏み方のコツ③クラッチ・半クラッチの操作によるブレーキも有効

トラックはマニュアル車が多く、クラッチの操作によるブレーキも有効な方法となります。

具体的な操作方法としては、減速が必要となるカーブなどを前にある程度自然に減速させておき、ギアを低速に入れてクラッチを入れたままカーブを曲がります。

速度が出すぎていたりしてエンストが怖いという場合は半クラッチで行う方法もあります。

この方法はリターダーを活用したものであり、最近はほとんどのトラックに備わっています。

操作方法などはトラックによっても違うので、事前に調べるようにしましょう。

コツ④:トラックの総重量を頭に入れて運転する

エアブレーキの踏み方のコツ④トラックの総重量によってブレーキの効きが変わる

車を運転していて後部座席に人を乗せている場合と、自分一人の場合でアクセルやブレーキの効きに違いを実感した経験は誰もがあると思います。

トラックの場合、多くの貨物を運搬できるようになっているため、荷物を多く積んでる場合と空っぽの場合の幅がとても広くなります。

車両の積荷状態によるブレーキの効きは全く違うため、荷台スペースの状態を把握した上でブレーキ操作を行うことが重要です。

運転経験を重ねながら感覚を身に着けていきましょう。

コツ⑤:積み荷の動きに注意

エアブレーキの踏み方のコツ⑤荷台のバランスを考える重さが集中しないようにする

普段車を運転していて、急ブレーキを踏んだタイミングで携帯や財布がシートから落ちたり、買い物袋が倒れることがあります。

大型トラックも同じなのですが、積み込む量がとても多く、バランスも荷物によって違います。

混載などで様々な荷物を積み込む場合は、荷台のバランスを考え一箇所になるべく重さが集中しないようにする必要があります。

そうすることでブレーキの効きも安定し、急ブレーキなどの際にバランスを崩すといったことも防ぎやすくなります。

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エアブレーキの踏み方の注意点

大型車にはエアブレーキが使われていますが、ブレーキペダルの形も乗用車のペダルとは大きく違い、ブレーキの踏み方が異なります。床とペダルがつながったオルガン式のペダルとなっていて、ぱっと見はアクセルペダルとブレーキペダルが全く同じペダルが2つ並んで見えます。

そして、独特の形をしたブレーキペダルを踏み方は、乗用車のブレーキペダルの踏み方と違い少しコツがいります。乗用車のように上から生えているブレーキペダルは、ペダルに足を載せるようにブレーキを踏みますが、エアブレーキはかかとを床につけて足の裏でブレーキペダルを踏むようにします

吊り下げ式とオルガン式ブレーキの違い

引用元:株式会社マツダ

そして、トラックのエアブレーキをかけるときに荷物が空の状態でエアブレーキの踏み方が強いと強烈な制動力でつんのめってしまいます。これは、トラックのエアブレーキが荷物を載せた状態のときに最適な制動力を得るために設計されているためです。

そこで、先程のかかとを付けたエアブレーキの踏み方をすると細やかなエアブレーキ操作が可能となり、荷物が空の時にはブレーキペダルをなぜるような踏み方で足の小指側に少し力を入れるような感じで踏むとトラックを滑らかに停止させることができます。そして、荷物を積んでいるときには、足の裏に力を込めてしっかりとブレーキペダルを踏みトラックを停止させることができます。

このように、トラックのエアブレーキは、荷物が空の状態と満載の状態で繊細にエアブレーキの踏みこむ量でブレーキの利きが変わる構造となっています。

(引用元:YouTube)

エアブレーキでバタ踏みは危険!

そもそもバタ踏みとはどんな意味でしょう?

バタ踏みは、トラックの走行や停止した際にブレーキを必要以上に踏み込んだり、緩めたりする行為を短い間に必要以上に繰り返すことです。

ではバタ踏みを続けるとどうなるのでしょうか?

バタ踏みの度にブレーキの空気圧が低下し、ブレーキの効果が弱くなってしまいます。エアブレーキを操作するとエアタンクに貯めた空気を消費してしまいます。そうすると必要なタイミングでブレーキが利かなくなってしまい、大変なことになってしまいますよね。エアブレーキでバタ踏みするのは危険です

またエアブレーキでの空気圧が低下すると、エアメーターから警報ブザーが鳴ります。

その時はバタ踏みは避けて、落ち着いてエンジンブレーキを使い、エアブレーキの空気が充分補充されるまで待ってください。

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大型トラックのブレーキの特徴とは

大型トラックは、重い荷物を載せて走らなければならないので、必然的にブレーキもよく効かなければ安全性に問題が出てしまいます。しかし、乗用車と同じシステムでは、ブレーキの力を発揮させることができません。そこで、重い荷物を載せる大型トラックは、圧縮空気を取り入れたブレーキシステムを採用します。

大型トラックのブレーキの種類は、

  • フルエアブレーキ
  • AOH(エア・オーバー・ハイドロリック・ブレーキシステム)

と呼ばれる空気油圧複合式を使用しています。

以前はフルエアブレーキを国内で販売していたのは日野自動車のみで、当時かなり操作性がシビアで玄人向きのエアブレーキとなっておりブレーキの踏み方にコツがいりました。その反面、AOHは応答性に優れブレーキのコントロール性に優れていることから、日本では人気のブレーキシステムでした。そのことから日野自動車も伝統のフルエアブレーキを捨てAOHとなります。

トラックメーカーでは、メンテナンス性にフルエアブレーキが優れていることは知っていたので、AOHの開発を行っていました。そして最近ではレスポンスがAOHと同程度に改善されたフルエアブレーキが開発され、大型トラックではフルエアブレーキが主流となっています。

なぜ大型車にはエアブレーキが採用されているのか?

大型自動車にはエアブレーキが採用されていますが、それには大型車だからこその理由があります。

大型トラックは、多くの荷物を載せて走るため、大きな制動力が必要となります。そこで、一般の油圧ブレーキとエアブレーキを比べた場合、高い圧縮圧力が得られるエアブレーキを採用して、大きな力で制動させるようにしています。

圧縮空気は、エンジンの回転を利用したコンプレッサーによりタンクに貯められます。そしてその圧縮空気の力でブレーキライニングを作動させますが、この力は通常の油圧ブレーキの数倍の力を発揮させます。

油圧ブレーキの場合はブレーキ倍力装置が取り付けられております。この倍力装置は、人間の踏力で不足する力を倍増させて油圧ブレーキの制動力を上げる装置です。

例えば、一般の乗用車が1.5トン、トラックが10トンとすれば約7倍の倍力装置を装着しなければなりません。しかし、そんな7倍の倍力装置など技術的にかなり無理があります。

そこで、圧縮空気であれば、コンパクトサイズのタンクの中に高圧の空気を貯めることができ、その大きな力を簡単にエアブレーキに応用できます。そして、同一の大きな力をダイレクトに全てのブレーキに伝えることができる圧縮空気をトラックに使うようになりました。

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ブレーキをできるだけ使わずに大型トラックを運転するコツ

大型トラックは、重量があるのでエアブレーキを多用すればフェードを起こしてエアブレーキが効かなくなる恐れがあります。そしてなにより、エアブレーキなので頻繁にエアブレーキを踏みすぎると空気圧が低下しエアブレーキが効かなくなり事故につながります。

そこで、大型トラックには昔から補助ブレーキが搭載されてきました。もっとも有名なのが排気ブレーキですが、あまり大きな制動は期待できません。そこで、さらに一段上に圧縮開放ブレーキ(いすゞではエンジンリターダー、そしてふそうだとジェイドブレーキ〈以前はパワータード〉)があります。この排気ブレーキなら高速でもかなり有効にブレーキをかけることができます。

しかし、最近は低排出ガスや低燃費が叫ばれ、以前のような大排気量のエンジンをトラックに載せることができなくなり、圧縮開放ブレーキの効果が得られなくなりました。そこで、最近のトラックにはドライブシャフトに永久磁石や流体を使い強制的にブレーキをかけるリターダーが注目を集め搭載されるようになっています。

これらの補助ブレーキをうまく使いながら運転することで、高速道路や急な下り坂で、フットブレーキを多用することが少なくなり、フットブレーキにかかる負荷も抑えて安全に走行することができます。

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エアブレーキはどうやって動いている?

エアブレーキは、油圧ブレーキがペダルを踏みこむ力の強さに応じて効きが変わるのに対し、エアブレーキはペダルの踏み方の量によりブレーキの効きが変わってきます。そのため、深い踏み方だとエアの消費が大きくなり、細かい踏み方の場合はエアの消費は少なくなります。

しかし実際走行中は、下がった空気圧を自動的に設定の空気圧までコンプレッサーを稼働させて復帰させます。これがエアブレーキの基本的な仕組みですが、最近のエアブレーキはパーキングブレーキにも応用されています。

以前はトラックも乗用車と同じようにワイヤーを使ったパーキングブレーキを採用していました。しかしパーキングブレーキの引きが甘いとトラックが動き出すという事故があり、中期ブレーキ規制が1992年に定められました。

そこで、トラックやバスにはホイールパーク式と呼ばれるパーキングブレーキが採用されます。このホイールパーク式は空気圧を利用したパーキングブレーキですが、通常のフットブレーキと違うところは、空気圧を抜いてブレーキをかけます。それは停車中に空気圧が無くなり、ブレーキが効かないのでは本末転倒なので、空気圧を抜いた時に作動するよう設計されました。

構造は、強力なスプリングの力でパーキングブレーキが作動しているところに、空気圧を利用しスプリングを解放してパーキングブレーキを解除します。そして、パーキングブレーキをかけるときは、空気圧を抜くことでスプリングが作用しパーキングブレーキがかかる仕組みとなります。

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まとめ

トラックのエアブレーキは、乗用車より強大なストッピングパワーが必要なことから圧縮空気を使い作動させています。そのため、エアブレーキ装着車を運転するときには、エアブレーキの特性に注意をしたエアブレーキの踏み方が重要です。

また、荷物の有無の違いでエアブレーキの効きが変わることにも留意しておくことも忘れないようにしましょう。

 

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