建築業界で活躍する職人に左官職人がいます。
あまり耳にする名前ではないのですが、建築現場では欠かせない必須の職人です。
今回は左官職人の仕事内容や使用する道具、なり方や収入などについてわかりやすく解説していきます。
左官とは:壁や床などの下地づくりをする職人
左官とは鏝(こて)という道具を使用し、建物の壁や床を塗りの技術によって仕上げる職人のことを言います。
和室の土壁など、日本の伝統的な家屋には欠かせない存在であり、その歴史は古く平安時代から専用の職人がいたと言われています。
使用される材料には、セメント系のものもあれば土系のものもあり、時間が経つと固まってきてしまうため素早くきれいに仕上げる技術が必要です。
最近では洋風の建物が一般的となり、土壁などの他にタイルで仕上げたり、ブロックやレンガを積んだりと仕事内容も変化してきています。
よく大工と混合されがちですが、同じ建築関係の職種であっても、大工が建材を加工したり組み立てたりするのに対し、
左官はその建物にセメントなどを塗り仕上げる作業なので全く別の職業です。
塗りの技術は簡単に習得できるものではなく、大工が変わりに仕上げるといったこともありません。
ちなみに昔は、左官に対して大工のことは右官と読んでいました。
関連記事:施工管理技士の全資格を紹介!自分に合った資格を見つけてみよう
左官の仕事内容
左官は、鏝を使用した塗りの技術により建物の床や壁、堀や天井を作ったり仕上げていきます。
まずはじめに、施工箇所周りを養生し汚さないようにした上で撹拌機(かくはんき)で素材と水を練り合わせていくのですが、その日の天候や湿度により微妙な調整が必要です。
調合が完成すると、鏝と鏝台を持ちセメントやモルタルなどの下地材を塗ったり、珪藻土や土、漆喰で仕上げていきます。
壁や床は実際に見える部分となるため、美しく仕上げるために下塗り、中塗り、仕上げ塗りの3工程で進めていきます。
また最近では、土間打ちと呼ばれるコンクリートを打設した後のタイル貼りや、床ならしも行います。
浴室などの床を仕上げる場合、見た目はもちろん水が流れやすくするように凹凸が少なく、微妙な傾斜をつける必要があります。
左官が使用する主な道具
左官が作業で使用する道具には、いくつかの種類があります。
鏝(こて)
最も代表的な道具であり、鏝で材料を伸ばしたり模様をつけたりしていきます。
そのため材質には木製やゴム製、プラスチック制など様々なものがあり形も一般的な先の尖ったものや長細いもの、丸形など仕上げによって使い分けます。
手が届きにくい場所や、施工箇所が狭く細かい仕上げが必要な場合は「鶴首鏝」や「柳葉鏝」を使用し、壁を仕上げる場合においては「ブロック鏝」や「レンガ鏝」を使用します。
鏝板(こていた)
鏝板は使用する材料を乗せておくための板で、鏝板を持ちながらもう片手で鏝を持ち材料をすくい取りながら塗っていきます。
常に持っておく必要があるため、材質は木製やプラスチック製が多いです。
トロフネ
トロフネとは四角形の形をしたプラスチック製の箱型容器で、この中に材料と水をいれて混ぜ合わせます。
施工箇所が多い場合など、量が多く大変なので最近では機械式のミキサーを使用することが増えてきています。
トンボ
枠に流し込んだコンクリートなどを平らに美しく仕上げる「土間打ち」で使用される道具でT字型です。
コンクリート量を箇所ごとに調整し、最後は平らに段差が無いように仕上げていきます。
ローラー
家の外壁などに模様をつけるためのもので、その種類によって表面に凹凸がついています。
セメントを壁に塗りその上を均等な力加減で転がすことにより、木目調やレンガ調に仕上げることが可能です。
左官のなり方
左官になるために必要な資格はなく、年齢制限などもないため左官業務を行う工務店などに就職することで、一人前の左官を目指すことができます。
専門学校で学ぶこともできるのですが、特化してる学科などはなく実際に作業をこなしながら技術を身につけるのが一番の近道となります。
一人前の左官になるためには流れを覚えるのに3年かかると言われており、一人で最後まで仕上げれるようになるには10年ほど必要です。
左官職人は現在高齢化が深刻な問題となっており、若手の人材確保と教育が急務となっています。
そのため就職競争もなく、比較的就職はしやすい職業と言えます。
左官の関連資格
左官職人の関連資格としてあるのが「左官技能士」です。
都道府県職業能力開発協会が試験を実施しており、左官職人としての知識や技術を証明できる国家資格となります。
左官技能士は3級、2級、1級、特級があり3級から取得していく流れとなります。
2級以上となると誰でも受験可能ではなくなり、以下のような条件を満たす必要があります。
- 2級左官技能士:実務経験2年以上
- 1級左官技能士:実務経験7年以上
- 特級左官技能士:1級合格後に5年以上の実務経験
試験の内容としては実技と学科試験があり、実技試験では60点以上、実技で65点以上とれば合格となります。
合格率は3、2級は約90%と高いのですが、1級以上となると約30%と低くなります。
受験費用は学科試験が3,100円、実技試験が17,900円となるのですが、35歳以下であれば減額制度を利用することもできます。
参考:都道府県職業能力開発協会
左官の年収:約380万円前後
左官の収入は平均月収が約30万円、平均年収は約380万円前後となります。
ボーナスは会社によっては出ないこともあるため、応募する際は確認が必要です。
他の職種同様、規模の大きい会社で左官職人として働くほど年収は高くなる傾向にあり、
従業員数が1,000人を超えるような企業であれば平均年収が500万円ほどとなります。
一般的な会社では、昇格などにより役職が付き収入が増えていくのですが、
左官職人の場合は仕事量が大きく影響するため技術がありよく動ける40~50代が年収のピークとなり、60代から下がる傾向にあるようです。
左官技能士を取得すると将来のキャリアアップにつながりやすく、会社によっては資格手当がつくこともあります。
左官のやりがい
左官のやりがいとして一番に言えるのが、完成後は形として残り続けることがあります。
手作業であり、職人が一から仕上げていくため失敗は許されず責任は重大となる一方で、
自分が仕上げた建物が完成後も人々の生活を支えていくことは大きなやりがいとなります。
また、一人前になるまでは大変ですが、誰にでもできない仕事をこなすことに誇りとやりがいを持つことができます。
関連記事:【建設業界まるごと解説②】建築業の事業全29種と仕事内容まとめ
左官に関するまとめ
今回は左官職人について解説してきました。
左官職人とは、建物の壁や床を塗りの技術により仕上げる職人のことで、平安時代から存在しています。
骨組みなどと違い、見える場所の仕上げとなるためきれいで美しく仕上げる必要があり、高度な技術が必要となります。
最近では洋風の建物が増えたことにより、レンガを積んだりタイルで仕上げたりといった仕事も増えてきています。
現在左官職人は高齢化により人手不足となっており若手人材の確保と教育が急務となっており、比較的目指しやすい職業です。
将来性に関しても、建築業界には欠かせない存在であるため今後も十分に活躍できると言えます。
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