建築板金は、建物の屋根や外壁、雨どいなどに使用される金属材料を加工・施工する重要な技術です。住宅や商業施設、工場など、さまざまな建築物の耐久性を高め、美観を支える役割を担っており、建築業界に欠かせない分野です。
しかし、建築板金は専門性の高い分野であるため、詳しい実態については知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、板金工事・屋根工事との違い、転職に必要な資格について詳しく説明します。
また、仕事内容や企業が求める人物像、キャリアパスについても解説します。
建築板金とは「建物を守る金属加工技術」のこと
まずは建築板金について解説します。
建築板金の目的と役割
建築板金とは、薄い金属板を加工して建築物の屋根や外壁、排気筒、内壁への取り付け工事を一貫して行う仕事のことです。
建築板金の目的は、金属板を使用して建物を雨や風から守ることにあります。
また、建築板金には装飾的な役割もあり、金属板を加工して取り付けることで建物の外観を向上させる役割を担っています。
多様な建築物が増加している昨今、建築板金は需要が高まっている工程の一つです。
板金工事との違い
板金工事とは、金属材料を加工し、建物の屋根、外壁、雨どいなどに取り付ける工事のことです。主に防水性や耐久性、美観を向上させるために行われる作業で、建築物の保護や機能性を高める役割を果たします。
そのため、建築板金は板金工事の一種に分類されています。
屋根工事との違い
建築板金は、金属を使った加工や取り付け作業を専門とし、屋根だけでなく外壁や雨どい、窓周りなど、建物のさまざまな部位に金属素材を使用する技術全般を指します。
一方、屋根工事は建物の屋根部分に特化した工事のことです。屋根材には金属だけでなく、瓦やスレートなど多様な素材が使われるため、屋根工事全般を行う職人は、建築板金以外の技術や知識も求められます。
建築板金へ転職するために必要な6つの資格
次に、建築板金へ転職するために必要な6つの資格を解説します。
建築板金技能士1級
建築板金へ転職するために必要な資格の1つ目は、建築板金技能士1級です。
建築板金技能士とは、建物の屋根、外壁、雨どいなどに使用される金属製品の加工や取り付けに関する専門技術を認定する国家資格です。
建築板金技能士の資格は1級、2級、3級に分かれています。試験では金属板を使った加工や接合、施工技術に加え、図面の読み取りや設計に関する知識が問われます。
1級の受験資格は3パターンに分けられ、「7年以上の実務経験」、「2級合格後2年以上の実務経験」、「3級合格後4年以上の実務経験」のいずれか1つが必要です。
参考:建築板金技能士|厚生労働省 技のとびら 技能振興ポータルサイト
建築板金技能士2級
建築板金へ転職するために必要な資格の2つ目は、建築板金技能士2級です。
建築板金技能士2級は建築板金に関する基本的な技術と知識を証明する国家資格です。主に初心者や実務経験が浅い職人を対象としています。
受験資格は「2年以上の実務経験」または「建築板金技能士3級に合格していること」が条件です。
参考:建築板金技能士|厚生労働省 技のとびら 技能振興ポータルサイト
建築施工管理技士
建築板金へ転職するために必要な資格の3つ目は、建築施工管理技士です。
建築施工管理技士は、建設現場における施工計画の立案や工程管理、安全管理、品質管理などを総合的に担当する専門職です。
資格は1級と2級に分かれており、1級は大規模な建築工事の総合的な管理、2級は比較的小規模な工事の管理が可能となっています。
試験では、建築基準法などの関連法規、施工技術、建築材料、現場管理の知識が問われ、受験資格を得るため一定の実務経験が必要です。
関連記事:建築施工管理技士とは?仕事内容や資格の取得方法・難易度も
建築板金特定技能評価試験
建築板金へ転職するために必要な資格の4つ目は、建築板金特定技能評価試験です。
建築板金特定技能評価試験は、日本国内の建築板金分野で働く外国人労働者の技能と知識を評価する試験で、外国人が特定技能ビザを取得するための要件の一つです。
試験は金属の加工や取り付けに関する実技試験と、作業に必要な基本的な知識を問う筆記試験で構成されています。
合格して特定技能を持つ労働者として認定されると、住宅や商業施設などの建設現場で活躍する機会が広がります。
職長・安全衛生責任者
建築板金へ転職するために必要な資格の5つ目は、職長・安全衛生責任者です。
職長・安全衛生責任者とは、建設現場や製造現場などで作業員の指導や管理を行い、現場の安全衛生を確保する役割を担う責任者です。職長・安全衛生責任者になるには、「職長・安全衛生責任者教育」を受講し、修了する必要があります。
職長は作業の進行や工程管理だけでなく、作業員が安全に働ける環境を整える役割を担います。一方、安全衛生責任者としての役割は、労働災害を防止するための安全指導やリスクマネジメント、危険予知活動の実施が中心です。
玉掛け技能講習
建築板金へ転職するために必要な資格の6つ目は、玉掛け技能講習です。
玉掛けとは、クレーンで荷物を運ぶ際に必要な用具を準備したり、クレーンのフックに荷物をかけ外しすることです。
玉掛け技能講習を修了すると、1t以上の荷物を扱うことができるため、担当業務の幅も広がります。
建築板金の工事ではクレーンを使用する場合が多くあるため、玉掛け技能講習を受講することで、より実践的な知識を身に付けられます。
参考:建築板金|職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag
建築板金工の仕事がきついイメージ5つ
次に、建築板金工の仕事がきつい5つのイメージを解説します。
重い資材の持ち運びが多い
建築板金工の仕事がきついイメージの1つ目は、重い資材の持ち運びが多いことです。
工事に使用する資材は基本的に数メートルに及ぶものが多く、一人で持ち運ぶことがほとんどです。そのため、建設業界で働く方の中には、腰痛やひざの痛みに悩まされる方もいます。
高所作業での安全リスクがある
建築板金工の仕事がきついイメージの2つ目は、高所作業での安全リスクがあることです。
高所作業では、常に転落のリスクと体力を消耗するという点があります。安全な足場が整っていない建築物も多くあるため、危険と隣り合わせの現場です。
高所での作業は力が入りやすくなるため体力を多く消耗しますが、気を張っている場面が多いため、精神的にも疲弊しやすくなります。
屋外での作業が多く天候の影響を受けやすい
建築板金工の仕事がきついイメージの3つ目は、屋外での作業が多く天候の影響を受けやすいことです。
建設業界では多少の雨や風がある日も工事を行います。そのため、防寒対策や体調管理を万全に行わなければ、思わぬ事故につながる可能性もあります。
悪天候下での作業はいつも以上に体力を使うため、より高い集中力と危機管理能力が求められるでしょう。
長時間の立ち仕事や中腰作業が多い
建築板金工の仕事がきついイメージの4つ目は、長時間の立ち仕事や中腰作業が多いことです。
建設現場では立ち仕事がほとんどです。また、板金は細かな作業も伴うため、無理な中腰の姿勢で作業をする必要があります。
このような肉体的な負担がかなりあるため、建築板金工の仕事をする場合は体力と集中力を身につける必要があります。
厳しい納期に追われるプレッシャーがある
建築板金工の仕事がきついイメージの5つ目は、厳しい納期に追われるプレッシャーがあることです。
建築現場には常に納期が存在します。そして、クライアントによっては納期が早まったり、天候の影響によっては工事のスピードを速くする必要も出てきます。
納期に間に合わなければ会社全体の信頼を損ねることになり、金銭的な損害も発生するため、納期のプレッシャーは常にあると考えておいた方が良いでしょう。
建築板金業界のキャリアパス
次に、建築板金業界のキャリアパスを4つ解説します。
初期段階は見習い職人として基礎を学ぶ
建築板金業界のキャリアパスの1つ目は、初期段階は見習い職人として基礎を学ぶことです。
現場では、座学だけでは得られない知識やスキルをいち早く身につけられます。用具準備や先輩のフォローを経て、対応できる仕事を増やしていくのが基礎学びの段階です。
一連の業務を任されるまでは数年かかると言われていますが、自分の頑張り次第では技術習得のスピードを速められます。
次のステップは職人として現場を担当する
建築板金業界のキャリアパスの2つ目は、次のステップは職人として現場を担当することです。
業務の幅が増えると工事全体を担当することが可能です。任される工事の領域も広がり、新たな建築物や工事に関われるようになるため、作業そのものが楽しくやりがいも大きくなります。
また、職人としてさらにスキルを磨くことで、建設への知識も身についていきます。
主任となり施工管理を行う
建築板金業界のキャリアパスの3つ目は、主任となり施工管理を行うことです。
工事に必要な技術を一通り身につけると、現場での指導や管理を任されるようになります。工事に携わる人の管理や全体の安全管理も担当するため、より大きな責任感が求められるでしょう。
プレッシャーも感じ始める時期ではあるものの、その分給与が上がったり、手当がついたりと待遇面が良くなる傾向にあります。
管理職として現場全体を統括する
建築板金業界のキャリアパスの4つ目は、管理職として現場全体を統括することです。
管理職になると、クライアントのやり取りや金銭的な管理など、工事に関わるすべてを任されるようになります。管理職はどのようにして工事を円滑に進められるかを常に考える必要があるため、対人関係や納期に悩まされることも少なくありません。
しかし、一度管理職を経験することで、他の業種にも役立てられるスキルが多く身につきます。
建築板金業界で活かせるスキルと今後必要になる能力
次に、建築板金業界で活かせるスキルと今後必要になる能力を5つ解説します。
正確で迅速な手作業のスキル
建築板金業界で活かせるスキルと今後必要になる能力の1つ目は、正確で迅速な手作業のスキルです。
建築板金の作業は、ほとんどが手作業によるものです。
金属によっては時間が経つと形状が変わってしまうものもあるため、正確で迅速な手作業が求められます。そのため、手先の器用な人は、建築板金の現場で能力を発揮できる傾向にあります。
細部に注意を払う観察力
建築板金業界で活かせるスキルと今後必要になる能力の2つ目は、細部に注意を払う観察力です。
建築板金において重要な業務の一つが、建物を雨風から守ることです。
板金ですき間を埋めることで雨漏りを防ぎますが、このときの作業が緩慢だと雨水が建物内部に侵入してしまいます。
そのため、細部にまで目を行き届かせられる観察力が建築板金には求められます。
現場での問題解決力
建築板金業界で活かせるスキルと今後必要になる能力の3つ目は、現場での問題解決力です。
建築現場ではたびたびイレギュラーな事態が発生するため、臨機応変に対応をして問題を解決していく力が求められます。
また、問題解決能力は他の業種でも役立つスキルのため、転職市場においてもアピール材料になります。
3D設計ソフトやCADの操作能力
建築板金業界で活かせるスキルと今後必要になる能力の4つ目は、3D設計ソフトやCADの操作能力です。
建築業界において、今やソフトの使用は欠かせないものになっています。特にCADはさまざまな現場で使われるため、操作を身につけることで一生もののスキルになります。
ソフトは使っていくうちに慣れていくため、まずは実際に触れてみるところから始めてみましょう。
最新の建築材料知識と適応力
建築板金業界で活かせるスキルと今後必要になる能力の5つ目は、最新の建築材料知識と適応力です。
瓦やトタンの素材がコンクリートや金属へと変化したように、建築に使用される材料も年々変化しています。
材料の違いによって施工の方法は大きく変わるため、スピーディーな適応力が求められます。
建築板金業界へ転職する際の企業が求める人物像
次に、建築板金業界へ転職する際の企業が求める人物像を5つ解説します。
安全第一を徹底する意識がある
建築板金業界へ転職する際の企業が求める人物像の1つ目は、安全第一を徹底する意識があることです。
現場において最も大切なことは、安全管理です。安全が保証されていないと工事は進められず、日本では特に安全に対する基準が厳しく設けられています。
些細な変化にも気づくことができ、妥協しない姿勢が安全管理には必要です。
チームで協力できるコミュニケーション能力が高い
建築板金業界へ転職する際の企業が求める人物像の2つ目は、チームで協力できるコミュニケーション能力が高いことです。
高所での作業や物の持ち運びなど、現場では声掛けが必要な場面が多くあります。チームでの作業が主体となるため、コミュニケーション能力が高い人材は重宝される傾向にあります。
また、現場では年齢層が広い職人が集まることからも、コミュニケーション能力は欠かせません。
体力と持久力に自信がある
建築板金業界へ転職する際の企業が求める人物像の3つ目は、体力と持久力に自信があることです。
建築板金には、長丁場の工事に耐えられる体力と持久力が求められます。この2つは一朝一夕で身につくものではないため、建築業界へ転職する際にかなりのアピールポイントになります。
建設業界は特にモチベーションややる気が求められるため、積極的にアピールしていきましょう。
学習意欲が高く技術向上を目指せる姿勢が備わっている
建築板金業界へ転職する際の企業が求める人物像の4つ目は、学習意欲が高く技術向上を目指せる姿勢が備わっていることです。
建設業界において、一人前の職人になるには10年かかると言われています。そのため、常に学び続ける姿勢と技術向上を求める姿勢は、高い評価を得られます。
意欲が高いと、先輩から高い技術を教えてもらう機会も増えるため、技術向上の姿勢は忘れないようにしましょう。
責任感が強く仕事に対して誠実
建築板金業界へ転職する際の企業が求める人物像の5つ目は、責任感が強く仕事に対して誠実であることです。
常に危険と隣り合わせの現場では責任感が求められます。また、工事の工期もあるため、仕事を確実に遂行する誠実さも必要です。
誠実さはどの業界にも重要な資質ですが、建設業界においては特に重要であるためしっかり抑えておきましょう。
建築板金の具体的な仕事内容と1日のスケジュール
次に、建築板金の具体的な仕事内容と1日のスケジュールを紹介します。
仕事内容
まずは仕事内容を4つ解説します。
仕事内容は材料の準備と加工である
使用する金属はさまざまな種類があるため、建築物に適した材料と用具の準備が必要になります。そこから適切な加工を施すことが、建築板金の主な業務です。
この段階をしっかりと行うことで、この後の現場での作業を円滑に進められます。
仕事内容は現場での設置と仕上げである
加工を施した金属を、建築物に取り付けてさらに仕上げていきます。
場合によっては修正を加えることもあるため、高所での手作業を伴います。
最初は慣れない作業も多くあるため、丁寧な作業を心がけるようにしましょう。
1日の流れは朝の安全確認から始まる
建築現場では、朝の安全確認から業務が始まるケースが多くあります。天候や状況によって確認するポイントは変わるため、欠かすことができない業務の一つです。
また、お互いに安全を確認することで、現場の士気を高めることにもつながります。
1日の流れは終了後の片付けと報告で終わる
現場で使用した資材や用具を片づけて、現場作業は終了です。そこから1日の進捗や翌日のタスクをまとめて報告し、1日の業務が終わります。
この片付けと報告までが仕事のため、怠らないように注意しましょう。
1日のスケジュール
朝に出勤をしたら朝礼と作業確認をして、そこから作業を開始します。
建築板金は体力と集中力を要するため、こまめな休憩時間を設けることが多くあります。昼休憩の後は再び作業に取り掛かり、日が落ちていない夕方に作業を終了します。
最後に作業報告と翌日の周知を行い、退勤が基本的なスケジュールです。
建築板金に関するよくある質問
最後に、建築板金に関するよくある質問に回答します。
建築板金職の平均年収はどのくらい?
2019年の賃金構造基本統計調査によると、従業員規模が10人以上999人以下の企業の建築板金職(板金工)の平均年収は422.3万円です。
建築板金職の年収は経験やスキルによって大幅に変わり、また担当する建築物によって上下するのが特徴です。
見習い段階では決して高いと言えない年収になりますが、腕を磨き続けることで受注を増やすことができます。
参考:賃金構造基本統計調査令和元年以前 職種DB第1表|e-stat 政府統計の総合窓口
建築板金はどのくらいきつい?
体力仕事であることから、建築板金は長く続けることが難しいと言われています。
しかし、職人の中には50代や60代も多く存在し、手に職を身につけるには適した職業と言えます。
最初は慣れないことも多くありますが、経験を積むうちに技量が上がり慣れていくことができます。
建築板金で一人親方で独立した時の年収はどのくらい?
独立できるということは高いスキルを保有していることになるため、一人親方の年収は600~800万円と言われています。
工事によっては1件で高単価のものもあるため、より高い年収を見込むこともできます。
フリーランスとして提携を結ぶ働き方も増えているため、その際は用具や補償金をつけてもらえることもあります。
建築板金に向いてる人と向いてない人の特徴は?
向いている人の特徴としては、忍耐力があり仕事に妥協しない人が挙げられます。
工事では全体を見渡す必要があり、また手作業においては細かで正確な作業が求められるからです。
日々技術を学ぶことで徐々にスキルが磨かれる職種であるため、忍耐力は必要になります。
向いていない人の特徴としては、大雑把であること、また集中力が続かない人が挙げられます。
建築板金の基礎と必要資格を学んで転職準備を整えよう
今回は、建築板金の基礎と必要な資格について解説しました。
資格を有することでキャリアアップにつながる職ではありますが、何よりもやる気が求められる職種でもあります。
本記事を参考にしながら、未経験からの建築板金を目指してみてください。
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