トラックや自動車を安全に停車させておくために必要な輪留め。
今回はこの輪留めについて詳しく紹介しています。この記事でわかることは、
・輪留めの種類
・輪留めの選び方
・輪留めの使い方
・輪留めのメリット・デメリット
・輪留めをつけ忘れたことによる事故例
です。
運送業界に従事しているドライバーや管理者は必見な内容となっています。じっくり最後まで一読してくださいね。
輪留めとは:停車中に車が勝手に動かないようにするための道具
輪留めとは、自動車やトラックなどの車両を長時間停車する際に車が勝手に動き出したりしないように地面に置いてタイヤに噛ませる器具のことを指します。輪留めを忘れて車が動き出して前方の車両にぶつけたり、建物や歩行者と接触したりと事故を防いで安全な状態にするために用いられます。
輪留めは別名手歯止め、車止め、車輪止めなどといった呼び方があります。通常車両を停車する際はパーキングブレーキとサイドブレーキをかけた状態にしているため、勝手に動き出すことはなかなか考えられませんが、万が一の場合も考えて停車する際は輪留めするようにルール決めしている会社もあります。
輪留めをすることは今のところ法律で定められていないため、必須事項ではありませんが、運送会社によっては安全管理のため社内規則で輪留めをするようにと定めているところがあります。
輪留めの種類|10選
現在販売されている輪留めにはいくつかの種類があります。形状もですが、素材も色々と登場しています。目的は同じですが、使う場所や車両にあったものがそれぞれあるので覚えておきましょう。
通常タイプ
通常タイプの輪留めは三角形の形をしたもので、タイヤをしっかりと固定したいときにおすすめのものです。通常タイプはタイヤの前後に挟んで固定するようにして使用することが一般的です。ロープや紐で2個繋がれており、タイヤの前後に使用することが基本です。
カースロープタイプ
カースロープタイプはタイヤを乗り上げて固定するタイプです。車を固定することもできますが、タイヤ交換などにジャッキアップする際に適した形状となっています。車体が上がった状態で固定されるのがカースロープタイプの特徴です。
車輪止め
駐車場などでよく見かける車輪止め。コンクリートでできており、駐車の際にタイヤを止める目安となるものです。これは車を勝手に動かさないといった意図もありますが、どちらかというと前進やバックで壁や他の車にぶつからないようにするための安全装置といった方がメインとなります。
ゴム製
輪留めのなかで最も一般的に出回っているのがゴム製です。ゴム製のいいところはなんといっても安いところです。前後ペアのセットになったものが1,000〜2,000円程度で販売されているため、気軽に購入することができます。
他のゴム製のいいところは積雪時の地面が滑りやすい状態でも活躍します。ゴムなのでグリップ力があり、滑りにくいので安全に使用ができます。さらにゴムは劣化しづらく耐久性に優れているため長期間使用することができます。
価格が安く、耐久性に優れている、天候関係なく使用できるといった点からゴム製は人気が高い素材となっています。
木製
ゴムと並んで人気なものが木製となります。木製は昔から使われていることもあり、輪留めの中では代表的なものでもあります。
木製タイプは目立つように赤色に塗られており、2つをそれぞれ紐で繋げた状態にして使用されます。積雪時の安全な使用方法としては、車両をパーキングブレーキをかけ、サイドブレーキは使用せずにタイヤを路肩の方に向けた状態で輪留めをかけると安全に停車しておくことができます。
ただし、木製は素材によっては滑りやすいものがあるので一度使ってみて合わなければ違う素材を選ぶようにしましょう。
鉄製
鉄製は重たそうなイメージがあるかと思いますが、コンパクトに折りたたむことができ、比較的軽量なので使い勝手のいい素材となります。価格も比較的安値で販売されているので、ゴム製に並んで人気の素材です。
ただし、鉄製は1つ欠点があります。それは積雪時に滑りやすいといった点です。雪が固まって輪留めについたり、輪留めが凍結したりするため、積雪の多い地域や冬の時期は使用を避けるようにしましょう。
廃棄樹脂プラスチック製(廃棄プラスチック)
輪留めの中で最も安値で販売されているのが排気樹脂プラスチック製です。価格が安いからと壊れやすいものではなく、耐久性にも優れているのでとても人気があります。
廃棄プラスチックは素材を加工しやすいため、さまざまな形状が登場しているのも特徴の1つ。車両の固定機能も十分なので、運送会社だけでなく、家庭でも使用されている素材です。
ポリウレタン製
ポリウレタン製も輪留めの素材の中では安値で販売されており、耐久性に優れているため人気の高いものとなります。カー用品店はもちろん、Amazonや楽天市場などどこでも販売されているので、簡単に手に入れることもできます。
サイズ展開も充実しており、一般的な自動車サイズからトラックなどの大型車両まで販売されているので自分の車にあったものを見つけやすいです。
プラスチック製
プラスチック製は軽量かつ耐久性に優れた素材で機能面でも充実しています。トラックの駐車場や工事現場、工場などと活躍する現場が増えてきています。
プラスチックは形を加工しやすくだけでなく、色も加工できるためカラーバリエーションが豊富な面があります。
アルミ製
アルミ製は鉄製と同じようにコンパクトに折りたたむことができ、持ち運びに便利な素材です。アルミ製がよく用いられるのは坂道駐車やジャッキアップのサポート時です。ただし、積雪時にはタイヤが滑りやすくなるので寒冷地や積雪の多い地域には不向きとなります。
輪留めの選び方は4つ
新しく輪留めを購入しよう、またはこれまでとは違う輪留めを購入しようか考えているのであれば輪留めの選び方を知っておきましょう。輪留めを選ぶ基準はある程度決まっています。きちんと知ったうえで購入しましょう。
種類で選ぶ
輪留めは三角形の形をした通常タイプとカースロープタイプがあります。タイヤを固定することを目的としているのであれば通常タイプがおすすめですが、ジャッキーアップ時の補助に使いたい場合はカースロープライプがおすすめです。カースロープタイプはタイヤを乗り上げて固定させるため、車体が浮いた状態となります。タイヤ交換やオイル交換時のサポートとなりますよ。
素材で選ぶ
輪留めの素材には、ゴムや木材、鉄、プラスチックなどさまざまな種類があります。それぞれ特徴があるので、そちらは上記で紹介しているので確認しましょう。
簡単に選び方を説明すると、気候に関係なく、耐久性を優れたものが欲しければゴム製がおすすめです。ただしゴム製は重いといったデメリットがあります。
軽量なものがいいのであればプラスチック製がおすすめ。ただし、耐荷重が低いのがデメリットです。鉄製はコンパクトに折りたたみができ、耐荷重も優れていますが、積雪時に滑るリスクがあります。
サイズで選ぶ
サイズは輪留めを選ぶ際の重要ポイントです。輪留めは軽自動車用、普通自動車用、トラック用などそれぞれに適したサイズが販売されているので、必ず確認するようにしてください。
ちなみに小型トラック・中型トラック用の標準サイズは、長さ200mm、高さ120mm、幅100mm程度とされています。大型トラックの場合、長さ240mm、高さ130mm、幅120mm程度が標準となっています。
耐荷重で選ぶ
輪留めには耐荷重が設定されており、車の総重量以下のものを選ぶと破損する恐れがあるため注意が必要です。耐荷重は輪留めの素材の種類によって優れているものやあまり高くないものがあります。耐荷重に優れたものを選びたい場合はゴムや木材でできたものがおすすめです。
輪留めの使用方法と役割について
輪留めを実際に使うときの使用方法やどういった効果があるのか気になるところだと思います。輪止めの使用は基本中の基本のようなものなのでしっかり覚えておきましょう。
輪留めを挟む場所
輪留めを挟む場所には2通りあります。
①後輪前後に挟む
最も一般的な使い方は後輪前後に輪止めを挟む方法です。後輪の全てに挟むのではなく、どこか1ヶ所を挟むだけで大丈夫です。後輪に挟むことでトラックを発進する際の死角となる後方の安全確認を行うことができます。物が落ちている、誰かが後方にいた場合の事故を防ぐことができるので、後輪に挟む方法が一般的となります。
②右前輪の前後に挟む
後輪以外では右側の前輪の挟む方法があります。前輪に挟む方法のメリットは運転席から出たらすぐにタイヤを固定できることです。時短にもなりますし、キャブに輪止めをおいておけば持ち運びの手間がなく済みます。
また、輪止めを外すことを忘れないように輪止めにつけているロープを運転席のドアやサイドミラーにつけておくことができる利点もあります。
輪留めの使い方
輪止めの使用方法は道路や坂道で使う場合とバース(倉庫や物流センターなどでトラックが接車し、荷物を積み下ろしする際に使用するスペースのこと)で使う場合とで少し異なります。
道路や坂道で輪止めを使う場合
道路で輪止めを使用する際は、まずギアをパーキングにしてパーキングブレーキをかけた状態とします。そしてサイドブレーキをさらにかけて、タイヤに輪止めをつけます。
こうすることで急勾配の坂道であっても車が勝手に動く心配がないので安心です。
バースで輪止めを使う場合
バースで輪止めを使用する際は、まず車をニュートラルにしてサイドブレーキをかけます。その後、輪止めをつけるのですが、前輪につけて前進を防ぐようにすることがおすすめです。
輪留めが1つしかない場合と2つある場合
基本的に輪留めは1つあれば問題ありませんが、2つある場合は2つとも使いましょう。
1つだけの場合は、運転席側の前輪に設置しましょう。優先順位としては運転席側の前輪となります。装着の際は後続車や対向車に気をつけて装着してくださいね。
2つある場合は、運転席側の前輪と後輪に装着するようにしましょう。前輪と後輪に取り付けることで安全性が高まり、周囲の方々にも安全性を重視していると印象を与えることができます。
輪留めを使用する3つのメリット
タイヤを固定することで勝手に車が動かないようになる輪留め。これを使用するメリットについて紹介していきましょう。
会社の信頼性が上がる
輪止めがなくてもパーキングブレーキとサイドブレーキをかけておけば、勝手に車が動くことは基本的にあり得ません。しかし、それでも輪止めを使用することで取引先や他の企業から「あの会社は安全管理が行き届いているな」「荷物を預けても安心して送ってもらえそうだな」と信頼していただくきっかけとなります。
荷主の中には輪止めを使っていない企業は取引をしない、出入りを禁止するといったことをルールを設けているところもあります。たかが輪止め、されども輪止めと安全を重視しているところは徹底しているので輪止めを使うようにしたほうがいいでしょう。
ブレーキ機能が劣化していても安心
多くの大型トラックはホイールパークブレーキと呼ばれるコンプレッサーで作られた圧縮空気を利用したブレーキを採用しています。
ホイールパークブレーキはパーキングブレーキレバーを操作することで、パーキングブレーキ用のブレーキチャンバー内にある圧縮空気を抜いて、解放されたスプリング力でパーキングブレーキをかける仕組みとなっています。
このホイールパークブレーキは、傾斜角度が18度の超急勾配の坂道でも安全にトラックを駐車することができるメリットがありますが、圧縮空気がなくなっているとブレーキが効きづらくなるデメリットがあります。
このホイールパーキングブレーキのブレーキ力が弱まっていても輪止めを使用すれば安全にトラックを停車することができます。事故防止の観点から輪止めを使用することは大きなメリットです。
エアブレーキは長時間使用すると効きが悪くなる
大型トラックを駐車しているときにはエアブレーキがかかった状態となります。このエアブレーキはとても強力ですが、長時間使用していると効きが悪くなるといった特徴があります。
そのため、特に引っ越し業者や宅配業者など、長時間車を停車して置かなければいけない方々は事故を未然に防ぐためにも輪止めの使用が推奨されています。
輪留めを使用する3つのデメリット
では、輪止めを使用することのデメリットはどんなことがあるのか紹介していきましょう。
装着方法を誤ると無意味となる
輪止めは車を安全に停車させておくために重要な器具ですが、輪止めの装着方法を誤ると全く効果があらわれなくなります。特に多いのは輪止めを置く際、斜めに置いてタイヤを噛ませていない、タイヤに密着せずに置くことで輪留めの効果を得られない状態にする、タイヤの片側にしか置かないといったあたりです。
輪止めを正しく設置しないと車が自然に動き出して輪止めを弾き出してしまう恐れがあります。輪止めを置くことで安心してしまうこともあるので、ドライバーの方々には徹底的に装着方法は指導するようにしましょう。
外し忘れるとすぐに壊してしまう
輪留めを使用する方で特に多いのは輪留めを外し忘れたまま走行しようとすることです。大抵の場合は、タイヤが動かないのですぐに気付きますが、完全に忘れて急発進をしようとしたり、ハンドルを切って動かそうとすると輪留めを壊してしまう恐れや輪留めが飛んで周りの人にぶつけたりする恐れがあります。
特にプラスチック製品は壊れやすいので、注意が必要です。
駐車場にある車輪止めには注意
駐車場などに設置している車を止める目安となる車輪止め。これに車をぶつける方がいるかもしれませんが、勢い余ってぶつけることは車にとって優しくありません。強くぶつけることでタイヤやサスペンションに少なからずダメージを与えてしまうので注意が必要です。
また、車輪止めに乗っかったまま駐車していることもタイヤやサスペンションに良くありません。ずっとダメージを与え続けていることとなるので、車輪止めからは少し離れた位置で停車するようにしましょう。
輪留めは全日本トラック協会も推奨
輪留めは企業や荷主から取り付けるようにと指導されていますが、全日本トラック協会も推奨していることをご存知ですか?
輪留めを使用することで少しでも事故を減らしたい、安全意識をドライバー1人1人が強く持っていて欲しいといった観点から推奨しています。
輪留めは法律上で義務化されていませんが、だからといって使わなくてもいいものではありません。危機管理の1つとして輪留めを使うようにしましょう。
輪留めのつけ忘れによる事故の事例
最後に輪留めをつけ忘れたことによって起きた事故を紹介しましょう。
ブロック塀に衝突した事件
県道脇の駐車場にて、乗客を全員乗せた後に運転手が降車し、トランクを閉めようとした直後にバスが勝手に動き出した。運転手不在のまま走り出したバスは右前方のバスに衝突するも止まらずに県道を横切り、ブロック塀にぶつかり停車した。
この事故で乗客、ぶつけられたバスの運転手は無傷だったが、バスを停車させようとバスに飛び乗ろうとして転倒した運転手が骨折の重傷を負いました。
駐車場は傾斜6%の坂道だったこと、運転手がサイドブレーキを引かずに席を離れたこと、駐車の際にエンジンをかけたまま輪留めをしていなかった、少しくらいは運転席を離れてもいいだろうという気の緩みが事故を起こしたと結論が出されました。
電柱に衝突した事件
東京都にある運送会社が引き起こした事件で大型トラックが荷物の輸送中、トラックを停車した状態で運転席を離れた後、勝手にトラックが動き出し、数百メートル先の電柱にぶつかった事故がありました。
幸い怪我人もなく、トラックのバンパー部分が損傷しただけとなりました。これまで運送会社では車止めの装着を義務化せずにいましたが、この事故を起こした後からは同様の事故を起こさないために車止めの設置を義務化するようにしました。
トラックに人が挟まれて死亡した事件
愛知県で起きた事故で飼料会社の運送ドライバーが2台のトラックに挟まれて死亡したという事故がありました。死亡したドライバーはサイロに入れる飼料を運び、荷下ろし作業を行なっているときに、近くに停車していたトラックが勝手に動き出し、自分のトラックと挟まれて死亡したという悲惨な事故です。
トラックが大型トラックだったこともあり、衝突時の衝撃がかなり強かったと見られています。これは勝手に動き出したトラックのブレーキが甘かった、輪留めがきっちりつけられていなかったことが事故原因とされています。
輪留めを外さずに発進しようとして起きた事故
安全のために設置した輪留めによって起きた事故です。事故を起こしたトラック運転手は停車時に輪留めをかけていましたが、発進時に輪留めを外すことを忘れ、そのままアクセルを踏んだ際に輪留めが飛び、近くにいた男性に直撃した事故です。
輪留めをぶつけられた男性は重傷を負いましたが、幸い命には別状はありませんでした。輪留めは軽量のものでも1kgほどあり、さらに勢いよく飛び出した輪留めは銃弾のようなスピードが出るため凶器となります。
輪留めを使う際は外し忘れないように取り付けた紐を運転席のドア、もしくはサイドミラーに括るように推奨されています。
踏切に突入して電車と衝突した事故
軽貨物者が荷物を納品中に勝手に動き出して、前方にあった踏切に進入し、走行中の電車と衝突した事件がありました。幸い怪我人はいませんでしたが、軽貨物者は大破し、電車は10時間以上見合わせ、10万人以上に影響を与えてしまいました。
この事故ではギアをパーキングにせずに停車し、さらにサイドブレーキを忘れ、輪留めもせずにいたため、勝手に動き出したと見られています。電車を止めてしまった場合、大きな賠償金がかかってしまうため、この事故では軽貨物車の損害よりも10時間以上見合わせたことが何よりの損害となりました。
輪留めについてのまとめ
企業や荷主、全日本トラック業界が輪留めの使用を推奨しているにも関わらず輪留めを使用しないドライバーはたくさんいます。一度運送会社を離れてしまうと、輪留めをしている、していないということは管理ができないためドライバー自身の危機管理能力となります。
日頃から厳しく伝えても他人事のように捉えるドライバーもいれば、きちんと責任感を持ったドライバーもいます。どうすれば輪留めを使ってもらえるか、朝礼などで簡単に伝えるのではなく、ドライバー1人1人にきちんと丁寧に伝えていくことが大切です。
運送業界は安全に荷物を運ぶことが第一の使命です。輪留めを活用して、事故のないようにしてくださいね。
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