全ての車両で実施義務のある法定点検ですが、事業用車両ではない営業車や移動車は、自家用車扱いとなり、未実施による罰則がありません。
別で車検を受けていることもあり、法定点検の必要性に疑問を感じている人もいるでしょう。
しかしながら、法定点検は車両を健全な状態で維持し続ける上で、欠かせないものと言えます。
今回は、法定点検を受けないデメリットを中心に、車検との違いや点検を行うメリットについても解説していきます。
事業用車両で、法定点検を受けなかった場合のリスクについても解説しているため、理解した上で今後に活かしてみてください。
【この記事でわかること】
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法定点検しないとどうなる?3つのデメリット
法定点検を受けないデメリットには主に3つあります。
- 整備不良で故障につながる
- 余計な修理費がかかる
- 売却時に不利になる
法定点検を受けた上で起こり得る整備不良や修理費と何が違うのか、なぜ売却時に不利になるのか、詳しく解説していきます。
整備不良で故障につながる
法定点検の目的は、車両の異常や劣化を事前に把握することであり、部品交換などにより大きな故障を防げます。
「点検しても壊れるときはある」と考える人もいますが、定期的な点検で正しく対処している車両の場合、費用を最小限に抑えることが可能です。
特にトラックやバスは車両のサイズが大きく、ちょっとした故障が大きな事故に発展する可能性が高いと言えます。
実際に整備不良による交通違反は全国で発生しており、過去には以下のような事例もあります。
【2003年に発生した大型バスの整備不良の事例】
鳥取県の高速道路にあるトンネル内で、大型トラック同士の追突事故が発生。 事故の原因となったのは、前方を走る大型観光バスから吹き上がった白煙であることが発覚。 後の調査によると、バスの運転手は以前からエンジン不調を感じ取っており、適切な処理を行っていれば防げた事故とされ、書類送検となった。 大型トラック運転手は、1人が亡くなっており、定期的な点検整備の重要性に注目が集まった事件となった。 |
定期的な消耗品の交換や点検費用は、決して安いものではありません。
しかし、上記のような事例に発展するのと、どちらがいいか聞くまでもないでしょう。
法定点検は、このような大きな故障やそれにかかわる事故を未然に防げます。
余計な修理費がかかる
自動車やトラックは、長く走り続けられるように、定期的な消耗品の交換を前提として造られています。
「国内メーカーなら10年くらい大丈夫」と考えている人もいますが、法定点検と消耗品の交換は、全てのメーカーが推奨していることです。
これらを無視して法定点検や適切な整備を行わなかった場合、エンジンやブレーキシステムなど、車両全体に関わる大きな故障に繋がります。
当然、部品交換などとは比にならないような修理費用が必要となり、最悪の場合は廃車の可能性もあります。
売却時に不利になる
法定点検を含む定期的なお手入れは、車両の状態を評価する上で重要なポイントです。
法定点検などの実施歴は、全て記録簿に残っており、全く整備していない車両は売却時の価値が大きく下がります。
点検費用や部品交換代を節約してきたとしても、買取り費用が低くなってしまっては意味がありません。
法定点検を実施していれば、これらのデメリットをなくせます。
関連記事:法定点検しないとどうなる?法律違反や罰金に繋がらない?
法定点検を受けて得られる3つのメリット
ここまで法定点検を受けないデメリットを紹介してきましたが、実施することで得られるメリットがあります。
- 法定点検の合格による安心感がある
- 法定点検により車の価値が維持できる
- 故障時の保証が受けられやすい
法定点検は運転者の精神的な安定にも繋がるなど、さまざまなメリットがあります。
ここでは、3つのメリットについて詳しく解説していきます。
法定点検の合格による安心感がある
法定点検を定期的に受けていれば、しっかり整備しているという安心感を持って運転できるようになります。
特に大きな事故に繋がるリスクがあり、仕事がなくなる可能性もあるトラックドライバーにとって、法定点検を受けた車での運転ほど安心できるものはありません。
また「自分のミスなどで車両を傷つけたくない」といった考えも芽生えるようになり、日々の運転が丁寧にもなります。
全員が自分の運転している車両に愛着を持つようになれば、売上の向上やミスの軽減にも繋がります。
大げさに聞こえるかもしれませんが、定期的な点検やお手入れを行っている人は、車への愛着が強いと言えるでしょう。
事業用車両だけでなく、自家用車でも同じことが言えます。
法定点検により車の価値が維持できる
法定点検を受けないデメリットの逆で、定期的に整備していれば車の価値が下がりにくくなります。
定期的に法定点検を受ければ、消耗品の交換などにより、構造の根幹となるエンジンなどへの負担が軽減されるためです。
点検費用や部品交換費用がかかる一方で、長く乗り続けられるため、買い替えコストを大きく抑えられます。
売却時に関しても、定期的な点検を行っていれば査定が高くなります。
故障時の保証が受けられやすい
車両を新しく購入した場合、購入先のメーカーによる故障時の保証が付いてきます。
この保証は、万が一のトラブルの際に無償で交換修理してもらえるものですが、いくつかの適用条件が定められています。
その一つが法定点検による整備です。
法定点検を規定通りに受けていなければ、保証を受けられなかったり、保証自体が切れてしまったりする可能性があります。
全ての保証に当てはまるとは言えないものの、新車を購入した場合などはチェックしてみましょう。
関連記事:【取材レポート】運送業の残業代訴訟に精通した弁護士が解説!未払い残業代の現状と対策方法
法定点検しないとどうなる?3つのバレるケース
法定点検は自家用車や事業用車両に関係なく、全ての車両に実施義務があります。
事業用車両の法定点検の実施は、点検者や依頼先にまで指定はなく、費用を浮かせたいこともあり、自社で行っている会社がほとんどです。
「記録簿だけ記載していればバレないのでは」と考える人もいるかもしれません。
しかし、法定点検の未実施はバレる可能性が非常に高く、絶対におすすめしません。
法定点検の未実施がバレてしまう主な理由には3つあります。
- 車両に不具合が発生したとき
- 事故を起こしたとき
- 点検記録簿が一致しないとき
なぜこのような理由で法定点検の未実施がバレてしまうのか、詳しく解説していきます。
車両に不具合が発生したとき
法定点検しないまま、車両を走らせ続けたとしても、すぐには故障するようなことはありません。
しかし、長くそのような状況が続いた場合、エンジンの異音やタイヤの亀裂などが発生します。
整備不良の状況で検問などにより止められた場合、簡易検査でも定期的な点検を行っていないことがすぐに分かります。
警察庁が公表している「令和2年度の交通違反取締り状況」によると、整備不良の取締り件数は24,344件にも及びます。
事故を起こしたとき
冒頭で整備不良の事故事例を紹介したように、長期間にわたり点検や整備を行っていなければ、運行中に故障する恐れがあります。
特にバスやトラックといった事業用車両は、長距離を走るため車両に大きな負担が掛かります。
車両故障による事故などが発生した場合には、車両調査が行われるため、法定点検の未実施も必ずバレてしまうでしょう。
法定点検の未実施による処罰を受けるのはもちろん、事故を引き起こした場合には社会的な信用を失うことにもなります。
点検記録簿が一致しないとき
全ての車両が受ける車検では、点検記録簿の提出が求められます。
記録簿には法定点検の内容や実施日が詳しく記載されており、車検証と一致していないことでバレてしまう可能性があります。
記録を改ざんしていたとしても、不正行為を不満に感じる社員など、身内から不正が発覚したような事例も過去にはあります。
冒頭で説明したようなデメリットを防ぐためにも、法定点検は正しく実施するようにしましょう。
ちなみに、事業用車両が法定点検を行っていなかった場合、道路運送車両法違反となり、30万円以下の罰金となります。
ここで紹介したような隠蔽や不正が発覚した場合、運転停止命令といった行政罰も科せられます。
関連記事:法定点検は義務なの?重要性と車検との違いも徹底解説
法定点検と車検の違い
法定点検の重要性について解説してきましたが「車検に出しているから必要ないのでは」と考える人もいるのではないでしょうか。
法定点検と車検に関しては、全くの別物であり実施する目的が異なります。
ここでは、法定点検と車検の具体的な違いについて、解説していきます。
法定点検は安全に走行するための検査になる
保安点検は、車両の些細な異常を発見し、故障を未然に防ぎ安全に走行できるようにすることが目的です。
車検は、車両が保安基準に適合しているかを検査するためのものとなります。
車検時に法定点検も一緒に依頼する人が多いことから、混在されやすいのですが、目的や検査内容が異なります。
法定点検は車検と違い罰則がない
法定点検は、全ての車両に実施義務があるものの、自家用車の場合は未実施による罰則がありません。
一方で、車検は実施時期が明確に定められており、期間内に検査を行わなかった場合は車検切れとなります。
車検切れになること自体は違反とならないものの、そのまま公道を運転した場合には30日の免停処分となり、30万円以下の罰金または6ヶ月以下の懲役となります。
ちなみに、トラックなどのように、お金をもらって運搬作業を行う事業用車両の法定点検には罰則があります。
参考:「法定点検未実施 (車検時)」が検査ステッカーに表示されます!|国土交通省
関連記事:建設業における2024年問題とは?5つの対策も紹介
法定点検しないとどうなる?に関してよくある質問
最後は法定点検に関する、3つのよくある質問に答えていきます。
- 法定点検はやった方がよいですか?
- 法定点検の費用はどれくらいかかりますか?
- 法定点検しない割合はどれくらいいますか?
法定点検の必要性や点検費用、自家用車で点検実施率について解説していきます。
法定点検はやった方がよいですか?
法定点検は車両の故障を防ぎやすくなるため、必ず行うようにしましょう。
事業用車両の場合は、普段から整備しておくことにより、ドライバーも安心して仕事ができるようになります。
故障した場合に対応してもらえる保証に関しても、法定点検を受けていなければ適応されない可能性があります。
車両を長く乗り続けるためにも、法定点検を受けるようにしましょう。
法定点検の費用はどれくらいかかりますか?
法定点検の費用は車両サイズや車両の状態によって異なります。
法定点検のおおよその費用相場は、以下の通りです。
車両サイズ | 法定点検の費用相場 |
普通車 | 5,000~10,000円 |
小型トラック | 10,000円前後 |
中型トラック | 15,000円前後 |
大型トラック | 20,000円前後 |
長年乗り続けており、部品交換が多い場合には相場よりも高くなることもあります。
関連記事:法定点検の費用はいくらかかるの?費用相場と安くするコツを説明
法定点検しない割合はどれくらいいますか?
法定点検の実施について、自動車点検整備推進協議会とマクロミル調査した結果、令和4年度の実施率は以下の通りでした。
- 全く実施していない:9%
- 車検の時だけ実施している:44.3%
- 必ず実施している:46.7%
罰則がないこともあり、約1割の人は実施しておらず、点検時期も守って実施している人は全体の約半数となります。
ちなみに、実施しない理由について調査したところ「面倒だから」と答えた人が41.9%で最も多く、次いで多かったのが「お金がかかるから(35.5%)」といった理由でした。
参考:自動車点検整備推進協議会
関連記事:車両の法定点検とは?車検との違いや義務内容についての疑問を解説!
法定点検しないとどうなる?に関するまとめ
法定点検は、故障を未然に防ぐ上で欠かせない点検であり、全ての車両で実施義務があります。
自家用車の場合、罰則がないことから受けていない人もいますが、整備不良で故障しやすくなり、売却時に査定額が下がるなどのデメリットがあります。
事業用車両の場合は、ちょっとした故障が大きな事故に発展する可能性もあるため、必ず実施するようにしましょう。
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