エネルギー管理の分野で働いている人の中には、計装士の仕事や資格に興味がある人もいるでしょう。
そもそも計装士とは、工場やビル、プラントなどで使用される自動制御システムや機器の設計・保守を行う専門の技術者です。
計装士の資格には1級と2級があり、試験を受けるための受験要件がそれぞれに設けられています。
具体的には、1級は5年以上、2級であれば2年以上の実務経験が必要です。ただし、計装士の合格率は1級・2級ともに例年50%から65%程度で推移しており、難易度は高くないでしょう。
そもそも計装士の仕事内容は、工場やビル、プラントなどで使用される自動制御システムや機器の設計・保守を行うことです。
この記事では、計装士の勉強方法やエネルギー管理に関連するキャリアや転職にどのように役立つかなどをご説明します。計装士の資格取得を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
そもそも計装士の仕事内容とは
計装士は、工場やビル、プラントなどで使用される自動制御システムや機器の設計・保守を行う専門の技術者です。計装とは、温度、圧力、流量、電流などのさまざまな物理量を測定、制御する技術を指します。
計装士の役割には、計装機器の設置、調整、メンテナンス、およびトラブルシューティングが含まれます。
計装制御機器の管理や省エネルギー化
計装士の業務内容のひとつに、計装制御機器の管理や省エネルギー化があります。計装士は、工場やビルなどの施設の自動制御システムに関わる仕事を担当しており、制御機器の適切な管理が重要な役割です。
計装制御機器とは、温度、圧力、流量などを正確に計測し、データに基づいて設備の動作を自動的に制御する機器です。設備の効率的な運転が可能になり、無駄なエネルギー消費を抑える役割を果たしています。
エネルギー管理業務に重なる業務がある
計装士の仕事内容には、エネルギー管理業務と密接に関連する部分が含まれています。計装士の業務は主に、工場やビルなどの設備における計測や制御システムの設計、保守を行います。
また、業務の中でエネルギーの効率的な使用や管理が求められる場面が多く存在します。たとえば、計装士が取り扱う制御システムは、温度や圧力、流量などのエネルギー関連のデータをリアルタイムで監視し、適切な制御を行うことでエネルギー消費を最適化しています。
そのため、計装士の仕事内容は、エネルギー管理士が担当する業務と重なる部分が多いと言えるでしょう。
計装士の受験要件
計装士の資格は1級と2級の2種類あります。また、1級と2級のそれぞれに受験要件が設けられています。
- 1級計装士の受験要件
- 2級計装士の受験要件
それぞれの受験要件を見ていきましょう。
1級計装士の受験要件
1級計装士の試験を受けるには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 計装工事の設計・施工の実務経験5年以上、もしくは2級計装士を取得して実務経験4年6ヶ月以上
- 指導監督的実務経験1年以上
いずれの条件も満たさなければ、1級計装士の試験を受験できないので注意しましょう。
2級計装士の受験要件
2級計装士の試験を受けるには、2年以上の実務経験が必要です。一方で、学歴などの要件は設けられていません。
実務経験の条件さえ達成できれば、2級計装士の試験を受けられます。
計装士の難易度
計装士の試験は学科と実地の2種類あります。それぞれの合格基準は、1級・2級ともに学科試験が正解率55%以上、実地試験が正解率60%以上です。
また、計装士の合格率は1級・2級ともに例年50%から65%程度で推移しています。試験合格に必要な勉強時間について「20時間あれば十分」などの声が上がっています。
したがって、計装士の難易度は高くないと言えるでしょう。
計装士の資格取得に必要な勉強時間
計装士の資格取得に必要な勉強時間に関するポイントは次のとおりです。
- 受験には最低2年以上の実務経験が必要
- 講習会は2日間、独学ならさらに必要
それぞれについてくわしく解説します。
受験には最低2年以上の実務経験が必要
計装士の学科試験や実地試験のための勉強時間は、20時間程度で十分と言われています。一方で、1級ならびに2級の計装士試験を受けるには実務経験が必要です。
具体的には、1級計装士の試験を受けるには次の実務経験が必要です。
- 計装工事の設計・施工の実務経験5年以上、もしくは2級計装士を取得して実務経験4年6ヶ月以上
- 指導監督的実務経験1年以上
また、2級計装士の試験を受けるには、2年以上の実務経験が求められています。
講習会は2日間、独学ならさらに必要
一般社団法人日本計装工業会が主催している技術講習会は、2日間にわたって開催されています。講習会の内容は、学科試験全科目と実地試験問題の説明を含みます。
具体的には、過去問や出題傾向を踏まえた問題の解説がメインのため、試験対策に適しています。
2024年度は次のスケジュールで開催されていました。
- 第1回
- 1日目:2024年06月25日(火)09:30~17:00
- 2日目:2024年06月26日(水)09:00~17:30
- 第2回
- 1日目:2024年06月27日(木)09:30~17:00
- 2日目:2024年06月28日(金)09:00~17:30
- 第3回
- 1日目:2024年07月01日(月)09:30~17:00
- 2日目:2024年07月02日(火)09:00~17:30
そのため、講習会に参加して、効率的に合格を目指すのもひとつの手でしょう。
参考:計装士について|一般社団法人日本計装工業会
参考:2024年「計装技術講習会」|一般社団法人日本計装工業会
計装士合格のための勉強方法
計装士合格のための勉強方法は、次のとおりです。
- 講習会への参加がおすすめ
- 日本計装工業会の参考書を活用する
- 過去問で知識をアウトプットする
それぞれの勉強方法について解説します。
講習会への参加がおすすめ
計装士試験対策の講習会は、独学では得にくい知識やノウハウを体系的に学べる機会です。
オンライン講習料とテキスト代は次のとおりです。
- 正・賛助会員価格 1級:17,820円(税込)
- 正・賛助会員価格 2級:15,710円(税込)
- 一般価格 1級:22,000円(税込)
- 一般価格 2級:18,850円(税込)
講習会の内容は学科試験全科目と実地試験問題の説明です。具体的には、過去問や出題傾向を踏まえた問題の解説がメインのため、試験対策に適しています。
専門知識を持つ講師から、試験に出やすいポイントや解き方のコツなどを直接指導を受けられます。また、模擬試験などを通じて、実際の試験を想定した対策ができるでしょう。
日本計装工業会の参考書を活用する
一般社団法人日本計装工業会が発行している参考書は、計装士試験の公式テキストと言えるもので、試験範囲を網羅した内容となっています。
基礎から応用まで体系的に学べるので、独学でも効率的に学習を進められるでしょう。
各種参考書は「書籍・マニュアル販売 | 一般社団法人日本計装工業会」で購入できます。
過去問で知識をアウトプットする
過去問の活用は、計装士試験合格に向けて効果的な勉強方法のひとつです。過去問を解くことで、出題傾向や頻出問題を把握できます。
また、時間制限の中で問題を解くと、試験本番での時間配分の練習にもつながるでしょう。
他にも、苦手な分野や解き方がわからない問題を洗い出すことにもつながります。重点的に対策が必要な箇所を把握できるので、効率的な学習が可能です。
過去問を解く際は、ただ答え合わせをするだけでなく、間違えた問題については、なぜ間違えたのか、どのような考え方で解けば正解にたどり着けるのかを徹底的に分析しましょう。
参考:書籍・マニュアル販売 | 一般社団法人日本計装工業会
参考:2024年「計装技術講習会」|一般社団法人日本計装工業会
計装士資格はエネルギー管理業務の転職に有利?
計装士の資格がエネルギー管理業務の転職に有利と言われている理由は、次のとおりです。
- 仕事の幅が広がる可能性がある
- 主任技術者になれば重宝される
それぞれのポイントについて解説します。
仕事の幅が広がる可能性がある
計装士の資格があれば、仕事の幅が広がる可能性があると言われています。計装士は、工場やビル、発電所などのエネルギー管理設備で、自動化や効率化を図るための計測と制御技術の専門家です。
エネルギー管理業務では、エネルギー消費の効率化や最適化が求められますが、計装士の知識を活かすことにより、適切な制御が可能となります。
その結果、エネルギー管理の分野でより高度な業務に携わるチャンスが広がり、技術者としてのスキルアップやキャリアの成長にもつながるでしょう。
主任技術者になれば重宝される
計装士の資格があれば、主任技術者として重宝される場合があります。エネルギー管理業務の主任技術者は、現場全体を統括し、設備の運用やメンテナンスを計画、管理する重要な役割を果たしています。
計装士の資格を活用して、計測・制御技術の専門知識を駆使してエネルギー設備の効率的な運用をサポートできるため、信頼される技術者としての地位を築けるでしょう。
結果として、転職市場でも有利に働き、エネルギー管理業務で高い評価を受ける可能性が高まります。
計装士の需要・将来性
計装士の役割は、工場やプラントなどの自動制御システムを設計・構築し、機器の正確な動作の確保です。現代の産業では、あらゆる場面で自動化技術が進展しているため、計装士の重要性は増しています。
特に製造業やエネルギー関連分野では、高度な制御システムが必要とされており、計装士の需要が高まっていると言えるでしょう。
国内の製造業は、引き続き自動化や省エネ対策を進めており、高度な技術を持つ計装士が求められています。特に、工場の効率化や生産性向上を目的としたスマートファクトリーの導入が進んでいるため、計装士はその技術的基盤を支える重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
さらに、エネルギー分野でも再生可能エネルギーの導入やエネルギーマネジメントが注目されており、計装技術が不可欠です。
たとえば、太陽光発電や風力発電の運用では、効率的なエネルギー管理のために自動制御システムが必要とされており、設計・運用を担う計装士の需要が見込まれています。
将来的には、ますますAIやIoT技術との融合が進み、より高度で複雑な制御システムが必要とされるようになるため、計装士のスキルも進化が求められるでしょう。
計装士取得後はどのようにキャリアアップできる?
計装士取得後のキャリアアップの例は、次の2つです。
- 計装士1級を取得して、主任技術者を目指す
- 電気工事士を取得して、業務範囲を広げる
それぞれのキャリアアップに関するポイントについて解説します。
計装士1級を取得して主任技術者を目指す
計装士の1級を取得して、主任技術者を目指すのもキャリアアップのひとつです。
計装士1級合格後、電気工事または管工事に関して、1年以上の実務経験を積むことで、主任技術者になれます。
具体的には、施工管理や設計・保守など、より高度な業務に携われるので、主任技術者としての役割を担う道が開かれます。
主任技術者は、現場全体を統括し、チームを指導しながら品質管理や安全管理を徹底する責任があるため、専門知識と経験が不可欠です。
計装士1級の資格を持ち、主任技術者としてのポジションに就くことで、工事の規模や複雑さに応じて高い報酬やより大きな権限を得られるでしょう。
電気工事士を取得して業務範囲を広げる
計装士を活用して実務経験を積みながら、電気工事士の資格を取得して業務の幅を広げる方法も、キャリアアップの方法のひとつです。
計装と電気工事の業務は密接に関連しており、特に現場では、電気設備の設置やメンテナンス作業がしばしば必要になります。
電気工事士の資格を取得して、計装の知識と電気工事のスキルを組み合わせ、設備の設計から施工、保守まで一貫して対応できる技術者となれるでしょう。
計装士と電気工事士のダブル取得は、企業内での評価を高め、より多様なプロジェクトに参加できる機会の増加に直結します。また、電気工事士の資格取得は、将来的に独立して電気工事業を営む際にも役立つため、長期的なキャリアパスとしても有効でしょう。
参考:登録計装士(1級計装士)における主任技術者要件について|一般社団法人日本計装工業会
参考:電気工事士|一般財団法人電気技術者試験センター
関連記事:電気工事士の資格の取り方を紹介!第一種・第二種の違いも細かく解説
計装士に関するよくある質問
計装士に関するよくある質問は、次のとおりです。
- 計装士の仕事内容は?
- 計装士の年収は?
- 計装士の合格率は?
それぞれの質問について解説します。
計装士の仕事内容は?
計装士の仕事内容は、工場やビル、プラントなどで使用される自動制御システムや機器の設計・保守を行うことです。計装とは、温度、圧力、流量、電流などのさまざまな物理量を測定し、制御する技術を指します。
また、業務の中でエネルギーの効率的な使用や管理が求められる場面が多く存在します。そのため、計装士の仕事内容は、エネルギー管理士が担当する業務と重なる部分が多いと言えるでしょう。
計装士の年収は?
計装士の年収は、400万円から700万円ほどと言われています。令和4年分の民間給与実態統計調査によると、給与所得者の平均年収は458万円でした。
したがって、計装士は平均的に稼げる仕事と言えるでしょう。
また、計装士の資格に加えて、電気工事士を取得したり主任技術者に登用されたりすると、さらにキャリアアップできる可能性があります。
計装士の合格率は?
計装士の合格率は、1級・2級ともに例年50%から65%程度で推移しています。また、試験合格に必要な勉強時間について「20時間あれば十分」などの声が上がっています。
したがって、計装士の難易度は高くないと言えるでしょう。
講習会や参考書、過去問を活用して効率的に勉強できると、十分に合格できるでしょう。ただし、受験には実務経験が求められるので、注意しましょう。
計装士の資格を取得してキャリアに役立てよう
この記事では、計装士の仕事内容や資格取得に向けた勉強方法、転職・キャリアアップなどについて解説してきました。
計装士の仕事内容は、工場やビル、プラントなどで使用される自動制御システムや機器の設計・保守です。計装とは、温度、圧力、流量、電流などのさまざまな物理量を測定、制御する技術を指します。
計装士の合格率は、1級・2級ともに例年50%から65%程度で推移しており、勉強時間は20時間程度で十分と言われています。
ただし、試験を受けるには1級・2級ともに実務経験が求められています。
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