バキュームカーの仕事は、地域の生活を支える上で欠かせない存在です。日頃の作業風景を目にして興味を持っている方もいるでしょう。
しかしながら、ネット上で仕事について調べると「きつい」「大変」といった声が見受けられます。転職した場合、仕事についていけるのか不安に感じている方もいるのではないでしょうか。また、仕事に就いた場合の将来性やキャリアが気になる方も多いでしょう。
この記事では、バキュームカーの仕事がきついと言われる理由を中心に、メリットや将来性などについて解説します。
バキュームカーの仕事がきついと言われる理由
バキュームカーの仕事には、浄化槽の汲み取りや清掃作業などがあり、車両の操作が主な業務となります。ただし、体を動かす作業も多く、仕事がきついと言われる主な理由としては、以下のような内容が挙げられます。
- 体力的な負担が大きい
- 独特な臭いへの慣れが必要
- 天候に左右されることがある
- 精神的なプレッシャーがかかる
- 作業が単調になりやすい
仕事がきついと感じるこれらの理由について、実際にバキュームカーの仕事に従事する人の声も交えながら解説します。
体力的な負担が大きい
バキュームカーの仕事は、体力的な負担が大きくきついという声があります。汲み取り作業では、大きなホースを運ぶ必要があり、マンホールの蓋を何度も開閉する作業が求められ、体力を消耗します。
ホースが詰まった際には、その場で分解し清掃しなければなりません。これらの作業は全て屋外で行われるため、夏場の炎天下では特にきつい仕事です。特に30代や40代から転職する際には体力面への考慮が必要です。
独特な臭いへの慣れが必要
バキュームカーの仕事では、独特な臭いに慣れなければなりません。汲み取り作業中は、糞尿や生活雑排水を扱うため、強い悪臭が漂います。特に夏場や風がない場所では臭いがこもりやすく、作業環境が一層厳しくなります。
従事者からは「作業中に臭いが髪や服装に染みついて、なかなか取れない」といった声が寄せられています。「臭いは数週間で慣れる」という意見もありますが、染みつき対策には限界があり、臭いに気付いた周りの人たちからの視線が気になるといった精神的な負担を感じる人もいます。
天候に左右されることがある
バキュームカーの仕事は、屋外での作業となるため天候の影響を受けやすいと言えます。夏場の猛暑や冬の厳寒の中で作業するのは非常につらく、雨天時もカッパを着用しながら業務を進めなければなりません。
雨天時の作業は、足元が滑りやすく安全面での注意が必要です。従事者からは「水を扱う仕事なので冬場は手足の感覚がなくなる」「夏場は熱中症が怖い」といった声が寄せられています。
精神的なプレッシャーがかかる
バキュームカーの仕事は、精神的な負担も大きいと言えます。主な業務である汚水や汚泥のくみ取り作業は、一般的に敬遠されがちで、社会的な偏見や周囲からの視線を感じることがあります。
従事者からは「仕事内容を人に説明すると、引かれたりして気まずい雰囲気になる」といった声が寄せられています。また、作業中の悪臭や汚れに対する抵抗感も、精神的な負担となることがあります。
作業が単調になりやすい
バキュームカーの作業は、単調になりやすい側面もあります。主な業務は、浄化槽や汚水槽の汲み取り作業で、毎日同じ手順を繰り返す作業が中心です。単純作業は、肉体的な疲労だけでなく、精神的な倦怠感を引き起こすこともあります。
従事者からは「毎日同じ作業の繰り返しで成長も何も感じない」「突出した魅力もなくモチベーションの維持が難しい」といった声が寄せられています。
ただし、近年では作業効率の向上や労働環境の改善を目的とした技術開発や、機器の導入が進められています。また、労働安全衛生に関する公的なガイドラインや指導も行われており、徐々に作業環境の改善が進められている状況です。
参考:死亡事故の報告と工事の安全対策について|福島県労b働安全衛生部会
そもそもバキュームカーの仕事内容は?
バキュームカーの仕事と聞くと、浄化槽の汲み取り作業や清掃を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、実際にはこれ以外にもさまざまな関連業務をこなしています。
ここでは、バキュームカーの具体的な仕事内容や流れについて解説します。
排水槽の清掃を行う
バキュームカーの仕事におけるメイン業務と言えるのが浄化槽の清掃です。実際の作業は以下の流れで進みます。
- 作業現場周辺の安全を確認し、作業区域を確保する
- 浄化槽のマンホールを慎重に開け、浄化槽内にホースを挿入する
- ポンプを作動させて汚泥や汚水を吸引する
- 吸引後に浄化槽内を洗浄し、付着した汚れや残留物を除去する
- 清掃後に最終確認を行い、異常がなければマンホールの蓋を元に戻す
汚泥や汚水を吸引する際には、詰まりや逆流が起きないよう、吸引速度やホースの状態を監視・調整します。槽内の洗浄は、高圧洗浄機などを使用し作業します。
汚水を運搬する
汲み取り作業が終わった後は、タンク内に吸引した汚水が適量であるか、ホースや接続部分に漏れがないかを確認し、問題がなければ処理施設まで運搬します。
汚水を積んだ状態では、急カーブや急ブレーキにより車両がバランスを崩しやすいため、運転に細心の注意が必要です。処理施設に到着後は施設スタッフの指示に従い、汚水を排出します。
定期的な点検作業と設備のチェック
バキュームカーの点検作業や設備のチェックも重要な業務の一つです。以下の内容でチェックを行います。
- タンクとホースに亀裂や詰まりがないか確認する
- 給水ポンプの動作確認
- 車両の外観と接続部の確認
この他にもエンジンやブレーキなど、一般的な車両で行うような安全点検を行い、事故防止に努めます。
バキュームカーの仕事に転職するメリット
バキュームカーの仕事のきつさについて解説してきましたが、大変なことばかりではなく魅力やメリットもあります。具体的な内容は以下の通りです。
- 学歴不問で転職しやすい
- 休みが取りやすく残業が少ない
- 仕事が安定している
バキュームカーの仕事は、中型以上の自動車免許があれば、学歴に関係なく挑戦しやすいことが魅力です。また、処理施設が休日に営業していないため、土日祝日が休みとなりやすく、残業もほとんどありません。プライベートを充実させやすいと言えるでしょう。
浄化槽や工場排水の汲み取りは、定期的な需要があるため、仕事が途切れる心配がなく安定し長く働ける職業です。
バキュームカー運転手の将来のキャリアアップ方法
バキュームの仕事を検討する際に「将来的にも汲み取り作業をただ続けるだけなのか」と、不安に感じる方もいるでしょう。しかし、この仕事で得られる経験やスキルを活かせるキャリアプランは複数あります。
ここでは、その選択肢と具体的な方法について解説します。
関連資格を取得し廃棄物処理や環境関連企業へ転職する
バキュームカー運転手としての経験は、廃棄物処理や環境関連会社への転職に活かせます。浄化槽の維持管理や、廃棄物の収集に関する実務経験は、環境保全分野で高く評価されます。さらに、関連資格を取得すれば、キャリアの幅を広げやすくなるでしょう。
たとえば、浄化槽管理士は浄化槽の保守点検や維持管理に必要な資格で、環境関連の業務に直結します。また、危険物取扱者は危険物を含む廃棄物などの適切な取り扱いに役立ちます。これらの資格を活かすことで、環境保全に関わる専門性の高い仕事への道が開けます。
リーダーや管理職を目指す
バキュームカー運転手として現場経験を積むことは、現場リーダーや管理職を目指す際にも役立ちます。日々の業務で、効率的な作業手順やトラブル対応のスキルを磨けるように心掛けましょう。
また、仲間との信頼を築き、適切な指示を出すためのコミュニケーション能力も重要です。これらを意識しながら、技術者としての成長を目指しましょう。
他の仕事にも使えるスキルを活かす
バキュームカーの仕事で得た大型車両の運転技術は、トラック運転手としての長距離運転や狭い道での運搬作業にそのまま活用できます。また、現場で鍛えた体力は、荷物の積み下ろしや長時間の運転に適しています。
また、バキュームカーの業務で培った時間管理能力は、配送スケジュールを正確に守る場面で役立つでしょう。
バキュームカーの仕事に向いている人の特徴
バキュームカーの仕事は、独特な業務内容から向き不向きがはっきりと分かれる仕事です。適性を理解せずに転職してしまうと、仕事内容が合わずに長続きしない可能性があります。一方で、自分の特性に合っていればやりがいを感じながら働けるでしょう。
ここでは、バキュームカーの仕事に向いている人の特徴について解説します。
体力に自信があり継続して働ける人
体力に自信がある人は、バキュームカーの仕事に向いています。この仕事では、重いホースの操作やマンホールの蓋の開閉といった体力を要する作業が多くあります。
また、夏場の炎天下や冬場の寒冷な環境でも安定して働ける力が必要です。体力があると、作業中の疲弊しにくく、注意力を維持しながら安全に業務を進められるため、適性があると言えます。
衛生環境に柔軟に対応できる人
過酷な衛生環境に対して柔軟に対応できる人は、バキュームカーの仕事に向いています。汚水などを扱う業務では、独特な臭いや汚れに触れる機会が多く、作業中にホースから汚水が飛び散ったり、強い臭いが服や髪に染みついたりすることもあります。
こうした環境でも冷静に対応し、丁寧に作業を進められる柔軟性が必要です。また、作業後には清掃や消毒を徹底し、自分自身と周囲を清潔に保つ意識が求められます。このような適応力がある人は、この仕事で活躍できるでしょう。
責任感が強く、丁寧に作業できる人
責任感が強く、丁寧に作業できる人はバキュームカーの仕事に向いています。この仕事では、汚水などの汲み取りや運搬を行う上で正確さが求められるためです。
たとえば、汚水の漏洩を防ぐためのタンクの密閉確認や、汚泥の適切な処理など、1つ1つの作業に細心の注意を払う必要があります。さらに処理施設での排出手順を守るなど、ミスが許されない場面も多くあります。
責任感を持って業務を遂行し、細部まで丁寧に取り組める人は、この仕事で信頼を得ながら活躍できるでしょう。
バキュームカーの仕事に必要なスキルは?
バキュームカーの仕事で長く活躍するためには、仕事の適性だけでなく、専門的なスキルや知識を身につけることが重要です。業務で必要なスキルを理解し、それを意識して取り組むことで、仕事の効率が上がり自身の成長にも繋がります。
ここでは、バキュームカーの仕事に必要なスキルについて解説します。
汚水処理の基本知識を理解できている
バキュームカーの仕事では、汚水処理に関する基本知識が欠かせません。具体的には、汚泥や汚水の分類、浄化槽や処理施設での汚水の適切な排出方法、法令に基づいた処理手順などがあります。
これらの知識は、作業ミスを防ぐだけでなく安全かつ効率的な業務遂行に繋がるでしょう。入社時の研修や業務マニュアルの活用で知識を身につけられます。
機械のトラブルに対応できる
バキュームカーの仕事では、車両やポンプなどの機器トラブルに迅速に対応できるスキルが求められます。よくあるトラブルとして、吸引ポンプの詰まり、ホースの亀裂や漏れ、タンク内の圧力異常などがあります。
これらの問題を放置すると、作業が滞るだけでなく、安全面にも影響を及ぼします。車両や機器の構造に関する研修や、現場でのトラブル対応を通じて、実践的な知識を深めていきましょう。
現場でのコミュニケーションが取れる
バキュームカーの仕事では、現場でのコミュニケーション能力が非常に重要です。作業は一人で完結することが少なく、施設スタッフや同僚と連携して進めることが多いためです。
たとえば、処理施設での汚水の受け渡し手順を確認したり、作業状況や進捗をチーム内で共有したりする際に、スムーズなやり取りが求められます。
また、トラブルが発生した場合に、迅速かつ正確に状況を伝え、適切なサポートを受けるために、コミュニケーション能力が欠かせません。
バキュームカーの現場で起こりうるトラブルとは?
バキュームカーの仕事では、突発的なトラブルが発生する可能性があります。こうしたトラブルが起きた場合、原因を正確に特定し迅速かつ適切に対応しなければ、被害が拡大したり作業者がケガを負ったりする危険性があります。
トラブルを未然に防ぎ、迅速に対処するためには、事前にどのような問題が起こりうるのかを理解し、対応手順をシミュレーションしておくことが重要です。
ここでは、バキュームカーの現場で想定されるトラブルと、その対処法について解説します。
バキュームポンプの故障
バキュームポンプの故障は、バキュームカーの作業で最も多いトラブルの1つです。具体的な故障には、吸引力の低下やポンプの詰まり、異音や異臭の発生などがあります。
これらのトラブルは、ホースやフィルターの詰まり、ポンプ内部の部品摩耗や劣化、潤滑油の不足が原因です。
故障時の対処法として、ホースやフィルターの詰まりを確認し、必要に応じて清掃します。それでも解決しない場合は、ポンプ内部の点検や部品交換が必要になることがあります。
ただし、内部の修理や分解作業は専門知識を要するため、作業者自身では行わずにメーカーや専門業者に依頼します。
汚水漏れ
汚水漏れは、汲み取り作業の現場で発生しうる深刻なトラブルの1つです。具体的には、タンクからの漏洩やホースの亀裂や接続部の緩み、排出時の過剰流失などがあります。
これらのトラブルは、ホースやタンクの老朽化、不適切な接続、吸引時の過負荷が原因です。
汚水漏れを発見した場合は、漏れが発生している箇所を特定し、ホースやタンクの損傷がある場合は、迅速に交換または修理を行います。接続部の緩みが原因だった場合は、作業を中止し、対象箇所を締め直し様子をみましょう。
汚水の排出時は、操作を慎重に行い、過剰流失を防ぐよう注意を払いましょう。作業中の汚水漏れは、周囲の環境汚染に繋がる可能性があるため、作業開始前の点検を徹底することが重要です。
アセチレンガスの発生
アセチレンガスの発生は、バキュームカーの作業現場で注意すべきトラブルです。このガスは、有機物が分解される際に発生しやすく、特に密閉された浄化槽やタンク内で生成される可能性があります。
アセチレンガスは、可燃性が高く爆発の危険性があるため、慎重な対応が求められます。対処法としては、作業開始前に槽内のガス濃度を測定し、安全基準を超える場合は適切な換気を行います。
バキュームカーの仕事はきつい?によくある質問
バキュームカーの仕事内容やそのきつさについて解説してきましたが、転職を検討する上でまだまだ疑問や不安に感じることがある方もいるでしょう。
最後は、バキュームカーの仕事に関する3つのよくある質問に答えていきます。
バキュームカーの平均年収はどれくらい?
職業情報提供サイトjobtagが公表している「ゴミ収集・し尿汲み取り作業員」の令和5年度における平均年収は、386万4,000円です。年齢別の平均年収では、45〜49歳が最も高く441万6,900円でした。
同年度における国民全体の平均年収が460万円であることと比較すると、74万円ほど低水準となります。
求人情報をリサーチしたところ、月給25〜35万円の待遇が最も多い傾向が見られました。ただし、運転や汲み取り業務に加えて、施設での監督業務などを含む求人では月収40万円を超えるものもあり、経験を積めば年収500万円以上も十分に目指せるでしょう。
関連記事:バキュームカー(汲み取り屋)運転手の年収は約500万円?給料事情と求人
出典:ゴミ収集作業員・職業情報提供サイトjobtag|厚生労働省
出典:令和5年分 民間給与実態統計調査|国税庁
バキュームカーの仕事は給料が高い?
バキュームカーの仕事の給料は、全体と比べると低水準と言えます。
職業情報提供サイトJobTagによると「ゴミ収集・し尿汲み取り作業員」の令和5年度ハローワーク求人統計賃金の平均は月額21万3,000円です。
一方、同年度の全国給与所得者の平均年収は460万円であり、月額換算にすると約38万3,000円となります。また、正社員に限ったデータでは平均年収が530万円で、月額換算にすると約44万1,000円となります。
ただし、求人の中には月額30万円を超えるものもあり、業務経験や保有資格に指定がある場合は月額40万円を超えるものもあります。作業者として経験を積み重ねれば、徐々に年収が上がり、安定した収入を確保することが可能です。
出典:ゴミ収集作業員・職業情報提供サイトjobtag|厚生労働省
出典:令和5年分 民間給与実態統計調査|国税庁
バキュームカーが臭いのはなぜ?
バキュームカーの汲み取り作業周辺が臭うのは、汚泥や汚水から発生した硫化水素やアンモニアといった臭気ガスが周囲に漂うためです。
特に風が少ない場所や、高温多湿な環境では臭気がこもりやすくなります。
バキュームカーの仕事を理解してメリットを活かそう
バキュームカーの仕事は、体力的な負担や独特な臭いへの慣れが必要なため、きついといった声も少なからずあります。しかし、未経験から挑戦しやすく、休みが取りやすい上に残業が少ないなど、働きやすい環境が魅力です。
また、専門資格の取得や現場で培ったスキルを活かしてキャリアアップを目指すことも可能です。安定した仕事を求めている方は、今回紹介した適性を参考に転職を検討してみてください。
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