電気管理技術者は、工場やビルなどの自家用電気設備の保安を、設置者と契約して個人で引き受ける専門職です。電気主任技術者(電験)の免状を活かして独立できる働き方として知られています。
結論からお伝えします。電気管理技術者になるには、電気主任技術者の免状に加えて、免状交付後の一定の実務経験(目安として第三種で約5年、第二種で約4年、第一種で約3年。令和3年から講習修了による短縮ルートがあり、令和6年11月からはさらに短縮できる拡充版講習も設けられました)が必要です。仕事は毎月の点検を中心とした電気保安で、独立後の収入は契約件数や地域によって幅があります。
この記事では、外部委託承認制度の要件(電気事業法施行規則)を一次情報で整理しつつ、独立の前に実務経験を積む場として、クロスワークに掲載中の電気主任技術者・電験系の求人3,534件のデータもあわせて解説します。
この記事のまとめ
- 電気管理技術者=電気主任技術者の免状を活かし、自家用電気設備の保安管理を個人で受託する働き方(「保安管理業務外部委託承認制度」に基づく)
- なるには免状+実務経験。免状交付後の目安は三種5年・二種4年・一種3年(300kVA以下のみなら1年短縮、令和3年〜講習修了で短縮ルートあり・令和6年11月〜拡充版講習で実務2年)
- 委託できるのは電圧7,000V以下の需要設備など。1人が担当できる件数は「換算係数の合計33未満」に制限
- 独立の前段階として、電気主任技術者の求人はクロスワークに3,534件・324社。三種に言及する求人が76.5%と最多で、月給の上限は中央値35.9万円
電気管理技術者とは|電気主任技術者との違い
電気管理技術者と電気主任技術者は、混同されやすいですが役割の位置づけが違います。
- 電気主任技術者:事業用電気工作物の保安を監督するため、設置者から選任された人。原則として、第一種〜第三種の電気主任技術者免状を持つ人から選任されます。
- 電気管理技術者:その免状を持つ人が、設置者と委託契約を結び、保安管理業務を個人で受託する「働き方」。「保安管理業務外部委託承認制度」に基づきます。
自家用電気設備の保安体制には、大きく分けて次の2つがあります。
これは制度の要約イメージです。詳細・最新の取り扱いは産業保安監督部でご確認ください。
規模の大きい設備では、社内に電気主任技術者を選任します。一方、電圧7,000ボルト以下で受電する多くの工場・ビル・店舗などでは、外部の電気管理技術者や電気保安法人に委託し、産業保安監督部長の承認を受けることで、主任技術者の選任に代えることができます。この委託を個人で受けるのが電気管理技術者です。
関連記事:電気主任技術者の資格は3種類|仕事内容や試験の内容
電気管理技術者の仕事内容
電気管理技術者の中心的な仕事は、受託した事業場の電気設備を定期的に点検し、安全を保つことです。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 月次点検 | 原則毎月1回以上。運転中の設備を目視・測定(電圧・電流・絶縁など)で確認 |
| 年次点検 | 年1回程度。停電させて絶縁抵抗測定・保護継電器試験などを実施 |
| 緊急対応 | 停電・事故など異常時の対応と設置者への連絡 |
| 記録・報告 | 点検結果の記録、設置者への報告、保安規程に基づく管理 |
点検には絶縁抵抗計・接地抵抗計・検電器などの測定器具が必要です。停電を伴う年次点検は、設置者と日程を調整して行います。
電気管理技術者になるには|必要な実務経験と要件
電気管理技術者として保安管理業務を受託するには、電気主任技術者の免状と、免状の種類に応じた実務経験が必要です(保安管理業務外部委託承認制度/電気事業法施行規則)。
免状交付後の必要実務経験の目安(法令ベース)。帯の長さはイメージです。年数は制度改正で変わるため、最新は産業保安監督部でご確認ください。
| 免状 | 必要な実務経験(免状交付後の目安) |
|---|---|
| 第三種 | 約5年(または4年) |
| 第二種 | 約4年(または3年) |
| 第一種 | 約3年(または2年) |
このほか、次のような要件・条件があります。
- 委託できる範囲:電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備、出力2,000キロワット未満の発電所(水力・火力・風力)、出力5,000キロワット未満の太陽電池発電所・蓄電所、電圧600ボルト以下の配電線路を管理する事業場など。
- 短縮の特例:300kVA以下のPF・S形キュービクルなど小規模設備のみを受託する場合は、必要な実務期間を1年短縮できます。また令和3年3月1日から「自家用電気工作物の保安管理業務に関する講習」を修了すると、第二種・第三種の必要実務期間を一律3年に短縮でき、令和6年11月15日からはさらに「保安管理業務訓練」(拡充版講習)の修了で一律2年まで短縮できるルート(第一種免状の場合は訓練の修了のみで2年)も設けられました。加えて令和6年6月1日からは、この講習による短縮と上記300kVA以下の1年短縮を併用できます。免状交付前の実務経験は、その2分の1を計上できます。
- 必要な測定器具:絶縁抵抗計・電流計・電圧計・低圧検電器・高圧検電器・接地抵抗計など。
- 受託件数の制限:需要設備は原則毎月1回以上の点検が必要で、1人が担当できる事業場は「換算係数の合計が33未満」に制限されます。
実務経験の年数や講習ルートは制度改正で変わることがあります。最新の要件は、管轄の産業保安監督部の案内で必ず確認してください。
出典:電気事業法施行規則、平成15年経済産業省告示第249号、経済産業省 産業保安監督部(保安管理業務外部委託承認制度)、公益社団法人日本電気技術者協会(2026年7月24日取得)
電気保安法人・電気管理技術者協会との違い
保安管理業務を外部委託する相手には、個人と法人があります。それぞれの位置づけは次のとおりです。
| 受託者 | 概要 |
|---|---|
| 電気管理技術者(個人) | 免状と実務経験の要件を満たした個人が、設置者と直接契約して受託する |
| 電気保安法人 | 保安管理業務を行う法人。所属する保安業務従事者が点検を担当する |
| 電気管理技術者協会 | 各地域の電気管理技術者が組織する団体。研鑽・情報共有・業務の相互支援などを行う(受託の主体は基本的に個々の技術者) |
独立して個人で受託するか、法人・協会に所属して経験を積むかは、営業や事務の負担をどう考えるかによって選択が分かれます。いきなり独立せず、法人で経験と顧客基盤を築いてから独立する人もいます。
電気管理技術者の年収・報酬の実際
独立した電気管理技術者の収入は、受託件数・地域・単価によって幅があり、一律には言えません。件数を増やせば収入は上がりますが、前述のとおり担当件数には上限(換算係数の合計33未満)があります。
独立の前段階として現実的なのは、まず電気主任技術者として実務経験を積むことです。その求人の待遇を、クロスワークの掲載データで見てみます。クロスワークに掲載中の電気主任技術者・電験系の求人は3,534件・324社で、給与の提示は94.9%が月給です(2026年7月時点)。月給求人のレンジは次のとおりです。
出典:クロスワーク公開求人データ(電気主任技術者・電験系の月給求人、2026年7月24日抽出、母数3,353件)。金額は求人票に記載された提示額で、実際の支給額や賞与込みの年収とは異なる場合があります。
| 指標 | 月給 |
|---|---|
| 下限の中央値 | 25.7万円 |
| 上限の中央値 | 35.9万円 |
| 上限側の四分位(Q1/中央/Q3) | 31.3万円/35.9万円/45.0万円 |
月給の上限は中央値で35.9万円、上位では45万円前後の求人もあります。勤務地は東京都(492件)・大阪府(339件)・愛知県(253件)が多いものの、北海道・福岡・静岡など全国に分布しており、地方でも需要があります。実務経験を積む場を選ぶ際の参考になります。
関連記事:電気主任技術者の年収は?電験三種・二種・一種の違いや年収アップのコツ
「やめとけ」「仕事がない」は本当か
電気管理技術者について「独立しても仕事がない」「やめとけ」という声が気になる人もいます。これは主に、独立後の受注が自分の営業・地域・人脈に左右される不確実さから来る不安と考えられます。
一方で、電気設備は社会インフラであり、点検・保安の担い手は継続して必要とされます。電気保安人材の高齢化や、再生可能エネルギーの拡大による設備の増加といった背景もあり、有資格者の需要は当面続くと見られています。ただし、独立後にどれだけ受託できるかは個人差が大きく、「必ず安定する」と保証できるものではありません。最初は法人や協会で経験と顧客基盤を築いてから独立する人も多く、いきなり独立にこだわらない選択肢も現実的です。
関連記事:電気主任技術者はやめとけ?そうとも言えない理由やメリット・年収・将来性
電気管理技術者を目指すキャリアステップ
電気管理技術者は、免状を取ってすぐなれる職業ではありません。実務経験が要件になるため、次のような段階を踏むのが一般的です。
一般的なキャリアの流れのイメージです。必要年数・要件は免状の種類や制度改正により異なります。
実務の入口は電験三種です。クロスワーク掲載の電気主任技術者・電験系求人でも、言及される資格は三種が最も多くなっています。
出典:クロスワーク公開求人データ(電気主任技術者・電験系、2026年7月24日抽出、母数3,534件)。求人票の記載に各資格名を含む割合の集計で、必須資格とは限りません。記載のない求人もあるため、実際の割合はこれ以上となる可能性があります。
| 資格 | 言及している求人の割合 |
|---|---|
| 電験三種 | 76.5%(2,702件) |
| 電験二種 | 50.5%(1,785件) |
| 電験一種 | 41.0%(1,448件) |
まず三種を取得し、電気主任技術者として実務経験を積むルートが現実的です。ただし未経験に言及する求人は8.5%(300件)にとどまり、実務経験や資格を前提とする求人が中心です。早い段階から実務を積める職場を選ぶことが、将来の独立につながります。
関連記事:【第三種】電気主任技術者とは?将来性が高い理由 第一種電気主任技術者(電験一種)とは|試験問題・年収・難易度
よくある質問(FAQ)
Q. 電気管理技術者になるには何年かかりますか?
A. 電気主任技術者の免状取得後、目安として第三種で約5年、第二種で約4年、第一種で約3年の実務経験が必要です。300kVA以下の小規模設備のみを受託する場合は1年短縮でき、令和3年からは講習修了による短縮ルートもあります(令和6年11月からは実務2年へ短縮できる拡充版講習も設けられました)。最新の要件は産業保安監督部で確認してください。
Q. 電気管理技術者の年収はどれくらいですか?
A. 独立後は契約件数・地域・単価によって幅があり、一律には言えません。独立前の実務経験を積む段階では、クロスワーク掲載の電気主任技術者・電験系求人で月給上限の中央値が35.9万円、上位では45万円前後の求人もあります(2026年7月時点、提示額ベース)。
Q. 電気主任技術者と電気管理技術者は何が違いますか?
A. 電気主任技術者は、事業用電気工作物の保安監督を担う者として設置者から選任された人です。電気管理技術者は、電気主任技術者免状と実務経験などの要件を満たし、保安管理業務を個人で受託する人です。外部委託承認制度により、設置者は主任技術者の選任に代えて委託できます。
Q. 電気管理技術者は仕事がないと聞きますが本当ですか?
A. 独立後の受注は営業・地域によって差があり、不安の声もあります。一方で保安人材の高齢化や設備増を背景に需要は続くと見られています。法人や協会で基盤を作ってから独立する選択肢もあります。
Q. どんな人が向いていますか?
A. 一人で点検・報告を計画的に進められる自己管理力と、設置者と信頼関係を築くコミュニケーション力がある人が向いています。
まとめ
電気管理技術者は、電気主任技術者の免状を活かして自家用電気設備の保安を個人で受託する働き方です。なるには免状に加えて実務経験(目安として三種5年・二種4年・一種3年、令和3年から講習修了の短縮ルート・令和6年11月に拡充版講習を追加)が必要で、独立後の収入は契約件数や地域によって幅があります。
だからこそ、まずは電気主任技術者として実務経験を積む段階が大切です。求人情報を扱うクロスワークでは、電気主任技術者・電気保安の求人を条件で探せます。三種に言及する求人が76.5%と最も多く、月給の上限は中央値で35.9万円、上位では45万円前後と、腰を据えて経験を積める求人が中心です。
出典:電気事業法施行規則、平成15年経済産業省告示第249号、経済産業省 産業保安監督部(保安管理業務外部委託承認制度)、公益社団法人日本電気技術者協会、クロスワーク公開求人データ(2026年7月24日抽出)