高収入を目指せて、資格取得に条件のない電気主任技術者は、数ある資格の中でも人気の資格です。
また、既に電機業界で働いている人の中にも、キャリアアップするために電気主任技術者を目指している人もいるのではないでしょうか。
今回は電気主任技術者について、なり方や仕事内容、年収やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説していきます。
どうすれば電気主任技術者になれるのか?
電圧を使用するような電気工事現場で必要となる『電気主任技術者』は、電気主任技術者試験に合格すればなることができます。
資格には第一種・第二種・第三種とあり、それぞれ取り扱える電圧が異なります。
試験は一般財団法人電気技術者試験センターが実施しており、試験内容は下記の通りです。
【第三種電気主任技術者試験】
電圧5万ボルト未満の、事業用電気工作物を取り扱うために必要な知識についての試験です。試験内容は4科目あり、回答方式はマークシートに記入する五肢択一方式となります。
・理論:電子理論、電気理論、電子計測及び電気計測
・電力:変電所や発電所の設計および運転、配電線路(屋内配線も含む)や送電線路の設計や運用、電気材料
・機械:電気機器、電動機応用、パワーエレクトロニクス、電熱、照明、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理
・法規:電気法規(保安に関するものに限る)及び電気施設管理
試験は科目ごとで合否が決定され、全てに合格すれば第三種電気主任技術者試験に合格となります。
【第二種電気主任技術者試験】
電圧17万ボルト未満の、事業用電気工作物を取り扱うために必要な知識についての試験となり、一次試験と二次試験に分かれます。
一次試験では、4科目について試験が行われ、内容は第三種電気主任技術者試験と同じ内容です。
回答方式はマークシートに記入する、多肢選択方式となります。
二次試験では、2科目について試験がおこなわれ記述方式での回答となります。
・電力・管理:変電所及び発電所の設計と運転、配電線路(屋内配線を含む)や送電線路の運用や設計並びに電気施設管理
・機械・制御:パワーエレクトロニクス、電気機器、自動制御及びメトロ二クス
一次試験は科目ごとで合否が決まり、全てに合格すれば二次試験へ進む流れです。
一部の科目のみ合格であった場合、翌年及び翌々年度の試験では、申請すれば合格した科目は免除となります。
また、二次試験で不合格となった場合は翌年度の一次試験が免除となります。
【第一種電気主任技術者試験】
全ての事業用電気工作物を取り扱うために必要な知識についての試験となり、一次試験と二次試験に分かれます。
一次試験・二次試験共に科目や内容は第二種電気主任技術者試験と同じです。
また、科目別合格制度も同じ内容となります。
各試験の日程は一般財団法人電気技術者試験センターのホームページから確認できます。
電気主任技術者の年収
さまざまな電気施設や工事で必要とされる電気主任技術者ですが、年収はいくらほどなのでしょうか。
年収額は所属している会社や、何種の資格を保有しているかによって変わります。
ここでは年収や資格手当の内容について、解説していきます。
電気主任技術者の平均年収
電気主任技術者の年収は、保有している資格が何種であるかや、経験年数などによって変わります。
あくまでも目安ではありますが、平均年収は下記の通りです。
・第三種電気主任技術者:350万円~500万円
・第二種電気主任技術者:500万円~600万円
・第一種電気主任技術者:600万円~
最も取得者が多い第三種電気主任技術者ですが、全国各地の電気設備をカバーすることができるため需要が高く、年収も低くはありません。
その後、経験を積みながら第二種、第一種と取得していく中で、経験年数が増えていくこともあり年収アップを目指せます。
第一種電気主任技術者になる頃には役職もついていることが多く、高い年収が見込めます。
第三種電気主任技術者の資格手当
第三種電気主任技術者の資格手当は約0.5万円~1万円です。
第二種電気主任技術者の資格手当
第二種電気主任技術者の資格手当は約1.5万円~2万円です。
会社によっては、資格取得時に報奨金が出ることもあります。
第一種電気主任技術者の資格手当
第一種電気主任技術者の資格手当は約2万円~8万円と幅が広い特徴があります。
経験値によって年収は異なる
電気主任技術者は、高年収を目指せることから人気の職種です。
受験資格に関しても学歴や経験が問われないため、第三種電気主任技術者では異業種からの転職希望者など初心者の受験も多いことが特徴です。
ただし、試験に合格して働くとなった場合、必ずしも上記で説明した年収に到達するとは限りません。
実際にある電気主任技術者の求人は、経験の有無で給与の額が異なります。
【未経験者OKの求人例】
求人1:施設内の設備点検、保守、工事など
求人項目 | 詳細 |
雇用形態 | 契約社員 |
年間休日 | 116日 |
給与 | 20万円~30万円 |
必須条件 | 未経験OK 第三種電気主任技術者保有者優遇 |
求人2:大阪市保有の公共施設保全業務全般
求人項目 | 詳細 |
雇用形態 | 正社員 |
年間休日 | 記載なし |
給与 | 24万円~26万円(電気主任技術者手当2万円/月) |
必須条件 | 普通自動車免許、第三種電気主任技術者 |
【経験者のみ募集の求人例】
求人1:高圧受電設備の定期点検など
求人項目 | 詳細 |
雇用形態 | 正社員 |
年間休日 | 120日 |
給与 | 27万円~40万円 |
必須条件 | 第三種電気主任技術者及び3年以上の実務経験 |
求人2:高圧受電設備の保守点検、月次検査など
求人項目 | 詳細 |
雇用形態 | 業務委託 |
年間休日 | ーー |
給与 | 年収480万円~650万円 |
必須条件 | 第三種電気主任技術者以上を保有し実務経験者 |
参照元:indeed
勤務時間や残業の有無などもあるため一概には言えませんが、未経験者よりも実務経験がある人限定の方が給与額が高い傾向にあります。
電気主任技術者の仕事内容
電気主任技術者の仕事内容はビルやテナント、公共施設などにおける電気機器の保守点検や設置工事、設計などです。
具体的にどのような仕事を行っているのか解説していきます。
保守点検
ビルや工場、病院や商業施設などには、あらゆる場所に電気設備が設置されています。
安全な運用をおこなうためには、これらの電気機器類の点検は欠かせないものです。
また、電気の使用料を確認したり、機材を新設する場合は立ち合ったりもします。
このような保守点検業務は、担当する施設を一日に複数回る場合と、一つの施設に常駐する2つのケースがあります。
設置工事
建物内に電気工作物を設置する場合、外部から電気の引き込みをおこない、分電盤やコンセントを設置する必要があります。
電気主任技術者はこれらの設置作業や、工事全体のスケジュール管理もおこないます。
いろんな工事現場に向かうことが多いため、普通自動車免許を持っていると優遇されやすくなるでしょう。
設計や工事計画の立案
電気工作物の設置をおこなう場合、まず工事計画を検討し設計から始めます。
依頼主と話し合い、希望や予算に合った工事プランなどを作成していきます。
最終的に納得してもらえれば、そのまま契約する流れです。
電気主任技術者の1日の流れの例
電気主任技術者は工事の設計や計画、工事全体の管理、各施設の保守点検と業務内容はさまざまです。
ここでは、一日どのような流れで仕事をしているのか解説していきます。
【電気主任技術者の一日の流れの例】
8:00:出勤後に朝礼を行い、一日のスケジュールを確認 8:30~12:00:各施設の電気設備の確認や保守点検を巡回しながら見ていく 12:00~13:00:お昼休憩 13:00~17:00:午前中の続きで各設備に異常がないかの保守点検を行う 17:00~18:00:報告書などの書類作成や翌日の準備を行い退社する |
点検には月次点検や年次点検などがあり、時刻が決まっていることが多いため時間管理が重要となります。
勤務先によっては時間が夜間や早朝になることもあります。
電験三種を所有する電気主任技術者の本音
電気設備の工事や、保守点検に欠かせない存在である電気主任技術者を目指す人は多くいます。
しかし、資格を取得すれば一気に高収入を目指して働き始められるというわけではありません。
ここでは第三種電気主任技術者の本音について、解説していきます。
三種だけで大手への就職は難しい
第三種電気主任技術者は、就職する上で有効な資格であるものの、取り扱える事業用電気工作物は5万ボルト未満までとなります。
扱える範囲が限られていることから『普通に就職はできても待遇の良い大企業には就職できない』といった声もあります。
中小企業では稼げないというわけではないのですが、資格を取得さえすれば企業を自由に選べるというわけではありません。
高収入の求人は少ない
第三種電気主任技術者は、学歴や実務経験の条件がなく誰でも受験することができます。
就職に関しても『資格を保有していれば未経験でもOK』といった求人は多くあります。
ただし、その全てが高収入というわけではありません。
第三種電気主任技術者の平均年収は、350万円〜500万円と決して低くはないものの、いきなり高収入を目指すのは難しいと言えます。
責任の重さの割に給料が安い
人々の生活に欠かすことのできない電気は、電気主任技術者たちの維持、保安点検により成り立っています。
万が一、故障などのトラブルが発生した場合、経済的損失はとても大きく、施設や機器によっては人的被害の発生も十分にあり得ます。
また、普段から高圧の電気工作物を取り扱っているため、点検も常に危険と隣り合わせと言えるでしょう。
点検がメインであり体力的な負担は少ない一方で、責任はとても重く給料に見合っていないといった声もあります。
取得する労力の割に給料が安い
電気主任技術者の資格を取得する場合、第三種からの挑戦となります。
受験条件自体は難しくないものの、試験の難易度はとても高いと言えます。
一般財団法人 電気技術者試験センターの発表よると、下記のような結果となっています。
【三種電気主任技術者上期試験の結果】
受験者:33,786人 受験率:73.9% 合格者数:2,793人 合格率:8.3% |
参照元:一般財団法人 電気技術者試験センター|令和 4 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について
合格率は10%に達しておらず、試験回数も2022年度以降は年2回に増えるものの、一年で何回もチャレンジできるものではありません。
手当はつきやすい
合格率が低くなかなか取得できない電気主任技術者は、保有していると手当がつく会社がほとんどです。
手当の額は会社によりますが、第三種電気主任技術者であれば0.5万円~1万円ほどが相場です。
更に第二種や第一種となると、手当が高くなっていきます。
既に電気関連の会社で働いているのであれば、転職をしなくても収入を上げることが可能です。
電気主任技術者の資格を取得するメリット
電気主任技術者は資格の中でも特に人気があり、毎年多くの人が受験しています。
これから挑戦を考えている人もいるのではないでしょうか。
ここでは、電気主任技術者の資格を取得するメリットについて解説していきます。
需要が安定している
『電気』は我々の生活に欠かせないものであり、住宅や病院、学校や公共施設、最近では電気自動車も多く見かけるようになりました。
近年、自家用電気工作物は増加傾向にあり、経済産業省の発表によると毎年0.6%のペースで増加を続けていることが分かっています。
特に業務ビル関連は大きく増加すると予想されており、これらの保守点検に欠かせない電気主任技術者は需要が高まると予想できます。
また、電気主任技術者の年齢層においても第一種・第二種・第三種共に60代が突出して多く、次いで多いのも70代となっています。
2030年には需要に対して約2,000人の技術者が不足すると予想されています。
これから取得を考えている方も遅いということはなく、今後更に就職しやすくなると言えるでしょう。
三種であれば未経験でも取得可能
第三種電気主任技術者の受験条件には実務経験が必要なく、専門の学科などを専攻している必要もありません。
そのため、全く電気に詳しくなく別業界で働いている人であっても、すぐに挑戦できることはメリットと言えます。
就職に関しても未経験歓迎の求人も多いため、資格を取得すれば転職に成功する可能性も高くなります。
AIに職を奪われる可能性が低い
近年、コンビニのレジや会社の受付が自動化されるなど、AI技術の成長は著しいものとなっています。
『電気主任技術者の仕事もいずれAIに奪われるのでは』と不安に感じるかもしれませんが、その可能性はかなり低いでしょう。
取り扱う電気工作物は高圧で非常に危険が伴います。
また、万が一ミスがあった場合は経済的な損失が大きく、仮に病院が停電した場合には命にも関わります。
このような重要な業務をAIやロボットに任せることは難しいといえるでしょう。
高齢でも仕事を継続しやすい
電気主任技術者の仕事は、維持や保安、監督業務がメインとなるため、工事で作業をすることはほとんどありません。
責任は大きいものの体力的な負担は少ないので、高齢になっても仕事を維持しやすいと言えます。
電気主任技術者の中には、定年退職をしてからも同じ会社で働き続けている人も多くいます。
電気主任技術者が年収をアップさせるには
電気主任技術者として働きながら、年収を上げるための方法は主に3つあります。
ここでは各方法について解説していきます。
経験値を上げる
電気主任技術者として活躍する上で最も大切なのは『経験』です。
保守点検や設計、工事の監督業務などさまざまな業務で経験を積んで昇給・昇格を目指すことで、年収アップが見込めます。
転職するといった場合にも、実務経験が多いほど給与は良い傾向にあります。
第三種電気主任技術者になった後は、積極的にいろんな仕事に挑戦していきましょう。
上位資格を取得する
第三種電気主任技術者として働きながらキャリアアップを目指す方法として、第二種・第一種といった上位資格の取得もおすすめです。
取り扱える電気工作物の内容が変わるため、更に経験を積めるようになり手当も上がります。
上位資格ではなくても、電気工事士や消防設備士などの関連資格を取得することで仕事の幅を広げる方法もあります。
独立開業する
第三種電気主任技術者として実務経験を積んでいる場合、独立することもできます。
これまでとは違い、会社経営や営業などの知識も必要であり、資金も調達しなければいけませんが、売上が上がればその分収入に反映されるので、年収を上げることは十分可能です。
電気主任技術者の年収に関してよくある質問
全く経験がない中で電気主任技術者を目指す場合、仕事内容や収入について気になることが多くあるのではないでしょうか。
ここでは、電気主任技術者の年収に関するよくある質問について、解説していきます。
独立するなら電気主任技術者の経験を積んでからの方がいい?
将来的に独立を考えている場合、電気主任技術者の経験は必須と言えます。
また独立をすぐに考えていたとしても、経済産業大臣の認可を受けなくては開業できません。
第三種電気主任技術者であれば5年以上、第二種では4年以上、第一種では3年以上の実務経験が条件となります。
認可を受けた後に関してはいつでも独立できますが、自分で仕事を取っていく必要があり、人脈や営業力も必要です。
仕事を受けられる見込みがない場合は、保安管理業務を取りまとめている電気保安法人に登録するといいでしょう。
システムエンジニアと比べてどちらの平均年収が高い?
電気主任技術者とシステムエンジニアを年収で比べた場合、システムエンジニアの方が若干ですが高いと言えます。
システムエンジニアの平均年収は450万円~500万円ほどになります。
ただし、電気主任技術者と同じで最初のうちは年収が低く、経験を積んでいくことで上がっていきます。
就職する会社や役職、労働時間にもよるので一概にどちらの方が稼げるというものではありません。
電気主任技術者で年収1000万は難しい?
電気主任技術者で年収1,000万円を達成するのは難しいと言えます。
第三種電気主任技術者からスタートして第二種、第一種を取得できたとしても、平均年収は600万円〜800万円ほどです。
中には大手企業に就職して役職に就き、年収1,000万円を達成している方もいるかもしれませんが、一握りと言えるでしょう。
独立して個人事業主としてやっていく場合に関しても同じことが言えます。
仕事をたくさん安定して取れるようになり、会社が成長すれば年収1,000万円は不可能ではないものの、誰でも達成できるわけではありません。
まとめ
今回は電気主任技術者について解説してきました。
扱う電気工作物によって第一種~第三種まであり、資格取得に学歴や実務経験などの条件はありません。
第三種電気主任技術者の平均年収は350万〜500万円と高収入というわけではないのですが、経験を積み上位資格を取得すると年収を上げることができます。
責任が大きい一方で体力的な負担は少なく、長く働き続けられる特徴があります。
そのため、資格取得に向けて取り組むのが遅すぎるといったことはなく、誰でも挑戦できる職種の一つと言えるでしょう。
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