第三種冷凍機械責任者は、冷凍機械の設備管理や保安を行える資格です。
しかし、資格を持っていても、未経験でも即戦力として働けるかどうか、不安に思われている人もいるでしょう。
本記事では、第三種冷凍機械責任者とは何か、試験の概要や受験資格、勉強方法などを網羅的に紹介します。また、需要や将来性、年収事情についてもまとめているので、参考にしてください。
第一種・第二種冷凍機械責任者との違い
はじめに、第一種と第二種冷凍機械責任者の違いについて解説します。
冷凍保安責任者になれる施設の大きさが違う
第一種・第二種・第三種冷凍機械責任者は、扱える冷凍空調機器の規模が異なります。
第三種は最も小型で1日の冷凍能力が100トン未満の製造施設、第二種は中型で1日の冷凍能力が300トン未満の製造施設、そして第一種は1日の冷凍能力の制限が無く、全ての冷凍空調機器を取り扱うことが可能です。
業務においては、設備管理・保安など統括的なものが多く、第一種・二種に大きな違いはありませんが、扱える機器が異なると、携われる施設や工場の幅が変わります。
規模によって求められるスキルも変わるため、自分に必要なスキルと資格の種類を把握しておきましょう。
出典:高圧ガス製造保安責任者講習(冷凍) | 高圧ガス保安協会
資格取得の難易度が異なる
資格の難易度は、第一種が最も難しく、次に第二種、第三種の順で難易度が低くなります。
目安として、第一種は大学で工学の知識を学んだレベル、第二種は高校で工学の知識を学んだレベルとなります。
どちらも、あらかじめ機械に関する知識が無ければ、難易度は高いと感じる人が多い資格です。
しかし、事前の勉強と受験対策をしていれば受からない試験ではないため、準備をしっかりとしておきましょう。
出典:高圧ガス製造保安責任者講習(冷凍) | 高圧ガス保安協会
第三種冷凍機械責任者取得までに必要な勉強時間
第三種冷凍機械責任者の取得に必要な勉強時間の目安は、以下の通りです。
- 初めて受験する、または工学に関する知識があまり無い場合:90~120時間
- 第三種を受験したことがある、また工学や冷凍に関する知識がある場合:50~60時間
どちらも独学での勉強時間の目安であり、通信講座やプロのマンツーマンレッスンを受けると勉強時間は短縮されます。
就業中やスキマ時間を使って勉強する場合は、計画通りに進まないこともあるため、余裕をもってスケジューリングを行いましょう。
また、高圧ガス保安協会が定期的に公式でオンライン講習を行っているため、活用することも一つです。
出典:令和6年度 講習予定表 No.2【一冷、二冷、三冷】 | 高圧ガス保安協会
第三種冷凍機械責任者の効果的な勉強法
次に、第三種冷凍機械責任者の効果的な勉強方法を3つ解説します。
1冊の参考書を繰り返し学習する
第三種試験に関する書籍はたくさんありますが、複数の参考書を使用すると、解説やアプローチが異なる場合があるため、非効率なやり方になってしまいます。
第三種は「冷凍関係法規集」と「初級冷凍受験テキスト」の2冊から問題が出題されるため、この2点を抑えておけば、合格に近づくことができます。
問題を解くにあたっては、最初から全問正解することよりも、なぜ間違えたのか自分の回答と正解を照らし合わせて理解することが大切です。
そして、繰り返し学習することで出題の傾向を掴み、より効率的に学習を進められます。
出典:正解答、合格者番号、試験問題の公表 | 高圧ガス保安協会
独学が難しいようであれば通信講座を活用する
勉強をしようとしても、なかなか時間を確保できなかったり、範囲が広くてどこから手を付けたら良いかわからなかったりする人もいるかと思います。
そのような場合は、通信講座を活用すると効果的に勉強を進められます。
通信講座には、講師による解説付きの動画と専用のテキストがついているため、空き時間で動画視聴をしたり、まとまった時間でテキストで学習できます。
また、通信講座は合格までのプロセスもわかりやすく説明してくれます。
一発で合格したい、より短時間で勉強を進めたいという人は、通信講座を使うことも検討してみましょう。
出典:正解答、合格者番号、試験問題の公表 | 高圧ガス保安協会
高圧ガス保安協会が公開している過去問を解く
受験を主催している高圧ガス保安協会では、過去問を公開しています。
受験科目の中でも「法令」の分野は膨大な暗記量となるため、過去問から出題の傾向を掴むことが、合格のカギとなります。
問題の傾向は過去大きく変化はしていないものの、一部法令が改訂されたり、新たな範囲が追加されたりすることもあります。
そのため、受験前に高圧ガス保安協会が公開している過去問に目を通すことをおすすめします。
出典:正解答、合格者番号、試験問題の公表 | 高圧ガス保安協会
第三種冷凍機械責任者の受験資格
第三種の受験資格に、制限はありません。
誰でも受験できる点においては、第三種は受験しやすい資格と言えます。
3つある冷凍機械責任者の資格の中で、第三種が最もハードルが低いため、まずは第三種から受験することが一般的です。
第三種冷凍機械責任者の2つの受験方法
次に、第三種冷凍機械責任者の受験方法を2つ解説します。
国家試験で全科目を受験する
第三種の国家試験では「保安管理技術」と「法令」の2科目に合格することで、資格を得ることができます。
メリットはコストを抑えられることですが、試験の開催は1年に1回のため、不合格になった場合のデメリットは大きくなります。
試験の難易度はそこまで高くないものの、全科目受験の合格率は、令和2年のデータで18.3%と低い傾向にあることがわかります。
出題範囲が広いことが主な理由ですが、コストを抑えたいという人は全科目受験も検討してみましょう。
「高圧ガス製造保安責任者講習」を受講する
「高圧ガス製造保安責任者講習」を受講すると、試験の科目である「保安管理技術」が免除され、「法令」のみの受験が可能になります。
受講の手順としては、講習受講後に講習内の検定に合格して「講習修了証」を受け取った後、第三種冷凍機械責任者試験で「法令」のみを受験する流れです。
メリットとしては、「法令」のみの受験になると合格率が79.9%(令和2年度)と高くなることと、都市部を中心に講習内の検定が、2度行われている点です。
デメリットとしては、3日間の講習を全て受講しなければならないことと、受講料が20,000円(電子申込は19,500円)とコストがかかることです。
受験においては、スケジュールを立てることが必須になるため、自分に合った受験方法を事前に検討しておきましょう。
未経験の第三種冷凍機械責任者は即戦力になれる?
次に、未経験の第三種冷凍機械責任者が即戦力になれるかどうかを解説します。
基本は経験者が有利
どの業界でもそうですが、特に技術系となると、経験者の方が優遇されるケースは多くあります。
求人も、経験者歓迎という条件があるため、未経験の場合は不利に思うかもしれません。
しかし、技術系の業界は人手不足のため、諦めずに希望する企業に応募することで、面接の機会を得られる場合もあります。
経験者が有利ということは理解した上で、自分の強みをしっかりとアピールできるように対策しておきましょう。
未経験者や30代・40代も企業に応募できる
転職において気になるポイントは、経験の有無と年齢です。
企業側もこの2点は重視していますが、技術系の職場では30代・40代が活躍している傾向にあり、40代以上がいる現場も少なくありません。
そのため、年齢は気にせずに転職活動を進めることが大切です。
また、求人には「未経験者歓迎」のものもあります。
経験がなくても焦らずに、転職活動を進めましょう。
これまでの経験が役に立つこともある
コミュニケーション能力や自身の成果など、どの業界でも役に立つスキルは存在します。
また、前職が技術系であった人は、冷凍機械責任者としてもその経験を活かせるでしょう。
企業は、求職者がどのような人材で何をしてきたか、そしてこれからどうなりたいかを見ています。
これまでの経験をもとに、今後の展望をしっかりと話せるようにしておきましょう。
第三種冷凍機械責任者の転職を成功させるには?
次に、第三種冷凍機械責任者の転職を成功させる方法を4つ解説します。
自分のスキルや経験を整理する
冷凍機械責任者には関係ないようなスキルや経験も、これまでの自分のスキルや経験を整理しましょう。
そうすることで、意外なアピールポイントが見つかり、面接でも有効なアプローチをして差別化をすることができます。
また、自分の経歴を整理することで、将来の目標も明確になります。
しっかりとした自分の展望を持つことで、企業に良いアピールをすることができるため、細かく洗い出しておきましょう。
応募先の企業を詳しく調べる
同じ技術系の企業でも、求める人材が異なる場合が多いです。
そのため、自分が志望する企業はどのような人材を求めているかを把握して、そこから志望動機や自己PRを作ることが大切です。
「自分のこの点が企業に利益をもたらす」ということを、しっかりと示すことも大切です。
ほとんどの企業が公式HPを持っているため、企業理念や社風をよく研究した上で、応募するかどうかを決めましょう。
転職サイトを活用する
転職の際に、転職サイトを利用する人も多いと思いますが、冷凍機械責任者の資格を活かすことができる求人は、多くないのが現状です。
そのため、総合的な転職サイトと並行して、技術職に特化した転職サイトを活用することがおすすめです。
また、転職サイトに掲載される企業は一定の条件を満たしているため、質が高い傾向にあるのも、嬉しいポイントです。
転職サイトで求人を探す際は、経験の有無や働き方、年齢など条件を絞って効率的に検索もできるため、活用していきましょう。
「ビルメン4点セット」を取得する
ビルメン4点セットとは、第三種冷凍機械責任者、第二種電気工事士、危険物取扱者乙種4類、二級ボイラー技士の4点の資格を指します。
資格を所持しているということは、知識が備わっているアピールになり、転職でも有利に働きます。
設備に携わる職種では、この資格を求められるケースがあるため、取得できる場合は積極的に受験しましょう。
ただし、資格があれば有利になるというだけなので、早く就職したい人は転職活動も進めることをおすすめします。
関連記事:【2024年度】第二種電気工事士の試験概要|試験日や合格発表日について
関連記事:危険物取扱者試験に挑む前に知っておくべき基礎知識と取得方法
関連記事:ボイラー技士の難易度と資格取得方法に関する対策|仕事内容と勉強方法
第三種冷凍機械責任者の将来性・需要は健在
次に、第三種冷凍機械責任者の将来性と需要について解説します。
第三種冷凍機械責任者は「ビルメン4点セット」の必須資格
建築関係の職種で特に現場に携わる場合、ビルメン4点セットは基本的な資格になります。
冷凍機や空調機器は多くの建物に設置されているため、機器の知識が無ければ取り扱うことができません。
第三種冷凍機械責任者は、冷凍機や空調機器に関する基礎的な知識を持つ資格で、所持して損は無いと言えます。
取り扱う機器は年々進化しているため、資格の需要は今後も高まると予想されています。
大都市圏を中心に商業施設が増加
東京や大阪などの大都市では、近年、大型の商業施設やマンションが、建設される予定です。
施設が大型になるほど、冷凍機や空調機器の規模も大きくなるため、第三種冷凍機械責任者の資格を役立てることができます。
機器の設置や安全管理などは、ロボットやAIに代わる可能性が低いため、資格所持の需要は今後も高まると予想されています。
第三種冷凍機械責任者としてのキャリアアップの仕方
次に、第三種冷凍機械責任者としてのキャリアアップの仕方を3つ解説します。
第一種・第二種冷凍機械責任者を取得する
第一種・第二種を取得することで、扱える設備の幅が大きく広がります。
また、第一種を取得すると、第三種や第二種では関わることのできない、冷凍機器の製造に携わる検査員になることも可能です。
大型の冷凍設備を持つ施設においては、有資格者が冷凍保安責任者を担当することが義務付けられており、資格を所持していれば、多くの施設を担当できます。
機器の規模が大きくなるほど、年収も上がるため、第一種・第二種の取得は責任者の分野においてキャリアアップにつながります。
その他の関連資格を取得する
冷凍機械責任者の資格は、空調設備の知識も身に着けることができます。
空調設備は冷凍機械に比べて、より多くの施設で使用されているため、その分需要も高い傾向にあります。
空調設備に関わる資格としては、ビルメン4点セットの中の電気工事士やボイラー技士があるため、所持していることで、より高いレベルのキャリアアップが期待できます。
実務経験が無い場合、資格の有無で採用率が変化する場合もあるため、関連資格の取得は、転職活動に有利です。
実務経験を積む
転職において最も採用されやすいのは、企業の即戦力となる人材です。
そのため、実務経験があると採用率が大幅に上がります。
今は未経験でも採用してくれる企業があるため、資格合格を目指すのと並行して、実務経験を積むことも、一つの方法です。
経験を積むことで、自身のスキルや現場でしか得られない知識も身に着けることができるため、キャリアアップにもつながります。
第三種冷凍機械責任者に関するよくある質問
最後に、第三種冷凍機械責任者に関するよくある質問について回答します。
第三種冷凍機械責任者の受験資格は何が必要ですか?
第三種冷凍機械責任者の受験資格に特別な条件はありません。
全国どこでも誰でも受験することができます。
試験は年に1度の開催のため、あらかじめスケジュールを抑えることと、受験に必要な費用を工面することは必要ですが、条件や制限が無いため、受験しやすい資格と言えます。
科目免除制度を利用して試験科目を1科目に減らす場合、3日間の受講スケジュールを抑える必要があるため、前もって準備しておきましょう。
第三種冷凍機械責任者の年収はどのくらいですか?
第三種冷凍機械責任者の年収は、ボーナス含め平均396万円です。
民間企業の平均年収と比較すると、約1割低い年収にはなりますが、技術職のため、資格の有無やスキルによって年収は変化します。
また、勤める企業によって給与が大きく変わるため、求人選びは非常に大切になります。
講習修了証に有効期限はありますか?
科目免除制度において発行された講習修了証に、有効期限はありません。
したがって、講習修了証を取得したら好きなタイミングで受験をすることができます。
しかし、試験日程は決まっており、知識があるうちに受験した方が合格率が上がるため、期間を空けないことをおすすめします。
第三種冷凍機械責任者を取得して転職を目指そう
今回は、第三種冷凍機械責任者の需要や勉強方法について解説しました。
第三種冷凍機械責任者はキャリアアップに効果的な資格です。
本記事を参考にして資格を取得し、冷凍機械設備に関わる企業への転職を目指してみてください。
「第三種冷凍機械責任者の資格を活かせる職場で働きたい」「自分に合う職場を見つけられるか不安」という方は、建設業界に特化した転職エージェント建職キャリアにご相談ください。
初めての転職の場合は、自分の強みや経験を活かせる職場を見つけ出すのは難しいかもしれません。転職経験がある方でも、入社前後のギャップが生じないように自分に合う求人を見つけることが大切です。
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