電気主任技術者として独立するにあたって、押さえておくべきポイントについて知りたい人もいるのではないでしょうか。
実際に電気主任技術者として独立開業するにあたって、押さえておくべきポイントは6つあります。たとえば、電気主任技術者としての実務経験を一定年数積んだり、保安管理業務をおこなう事業場が一定の条件を満たしたりしておかなければなりません。
この記事では、電気主任技術者が独立開業する前に押さえるべき6つのポイントを紹介します。将来的に独立したい人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
電気主任技術者として独立前に押さえるべきポイント
電気主任技術者として独立するにあたってのポイントは6つです。
- 電気主任技術者免状の交付を受けている
- 電気主任技術者としての実務経験を一定年数積んでいる
- 仕事に必要な機械・器具を保有している
- 保安管理業務をおこなう事業場が一定の条件を満たしている
- 保安管理業務を支障なく実行できる
- 取り消しを受けてから2年以上経過している
それぞれのポイントについて解説します。
1.電気主任技術者免状の交付を受けている
電気主任技術者は、電気設備の設計・施工・保守・点検などに関わる専門知識と技術を証明する国家資格です。具体的には、事業用電気工作物の工事、維持および運用に関する保安・監督を担う責任者です。
また、電気事業法に基づき、受電単位で事業場につき1人の電気主任技術者を選任しなければなりません。
したがって、独立開業には、試験に合格するか認定校を卒業して実務経験を積むかして免状の認定を受ける必要があります。免状の区分は、第一種・第二種・第三種の3つです。
それぞれ必要な実務経験年数や取り扱える事業用電気工作物が異なります。たとえば、第一種の認定を受けている場合、すべての事業用電気工作物を取り扱えます。
2.電気主任技術者としての実務経験を一定年数積んでいる
独立するには、電気主任技術者としての実務経験を一定年数積まなければなりません。また、独立に求められる実務経験年数は免状の区分によって異なります。
免状の区分ごとに独立に求められる実務経験年数は次のとおりです。
免状 | 求められる実務経験年数 |
第一種 | 原則3年 |
第二種 | 原則4年 |
第三種 | 原則5年 |
ただし、次の3つの条件を満たした設備のみを担当する場合は、求められる実務経験年数を1年削減できます。
- 300kVA以下の設備容量
- キュービクル式の受電設備
- PF・S形の主遮断装置
したがって、第一種の認定を受けている場合、3年もしくは2年で独立できる可能性があります。
他にも、第二種もしくは第三種の認定を受けていて自家用電気工作物の保安管理業務に関する講習を修了している場合、求められる実務経験年数は3年です。
3.仕事に必要な機械・器具を保有している
独立開業にあたって、業務に必要な機械・器具を自身で保有している必要があります。
独立に求められる機械・器具の一覧は次のとおりです。
絶縁抵抗計 | 電流計 | 電圧計 |
低圧検電器 | 高圧検電器 | 接地抵抗計 |
騒音計 | 振動計 | 回転計 |
継電器試験装置 | 絶縁耐力試験装置 |
メーカーなどによって機械・器具の金額は異なりますが、50万円から70万円ほどで準備できると言われています。
独立を検討している場合には、必要な機械・器具をあらかじめ準備しておきましょう。
4.保安管理業務をおこなう事業場が一定の条件を満たしている
保安管理業務をおこなう事業場の算定値が33未満でなければなりません。
算定値とは、事業場の合計設備容量を指しています。
算定に必要な換算係数は経済産業省の告示で明示されています。
5.保安管理業務を支障なく実行できる
電気主任技術者として、保安管理業務を支障なく実行できる状況が必要です。具体的には、電気に関する専門知識・法令遵守などが求められます。
独立するまでに可能な限り実務経験を積んでおきましょう。
6.取り消しを受けてから2年以上経過している
過去に電気主任技術者として自身の責任で承認を取り消されたことがある場合は、2年以上経過している必要があります。
規則52条の第2号ホで、取り消しを受けてから2年間にわたって、保安管理業務に従事させてはいけない旨を定めています。
関連記事:電気主任技術者はやめとけ?そうとも言えない6つの理由やメリット・年収・将来性
参考:「電気管理技術者」が具備すべき要件:施行規則第52条の2の規定|公益財団法人東京電気管理技術者協会
電気主任技術者として独立するメリット
電気主任技術者として独立して得られるメリットは、主に以下の3つです。
- 働き方の自由を実現できる
- 一緒に働く相手を選べる
- 定年を気にせず働ける
それぞれの特徴について解説します。
働き方の自由を実現できる
独立すれば、自分のペースで働くことができ、時間帯や仕事量を自由に調整できます。
企業勤務では夜勤や早朝出勤など、自分の希望と合わない勤務形態がストレスの原因になることもありますが、独立後はそのような制約がありません。
また、雑務から解放され、より専門的な業務に集中できるため、やりがいを感じやすくなります。
一緒に働く相手を選べる
企業勤務では、他の技術者や上司との人間関係が避けられないことが一般的です。
点検業務は単独で行えることも多いですが、状況によっては他者との連携が必要で、相性や意見の違いがストレスの原因になることもあります。
その点、独立すればプロジェクトごとに働く相手を選べる自由があり、人間関係の悩みを最小限に抑えられます。
定年を気にせず働ける
企業では多くの場合、60歳や65歳で定年を迎えるため、その後の収入に不安を感じることがあります。
しかし、独立すれば定年に縛られることなく、健康や意欲が続く限り働き続けることが可能です。
自由な時間配分や収入の向上を目指しながら、長期的に安定した労働環境を築けるのも独立の大きなメリットです。
電気主任技術者として独立する注意点
電気主任技術者として独立することには多くのメリットがありますが、成功するためには注意すべきポイントもあります。以下に独立時の注意点を解説します。
営業力とマーケティング力が必要
独立後は、自身の技術力だけでなく、案件を獲得し維持するための営業力やマーケティング力が求められます。
仕事の依頼が安定しなければ収入も不安定になるため、適切なアプローチで顧客やクライアントを見つけることが重要です。
また、良好な人間関係を構築するためのコミュニケーション能力も必要です。複数人で行う作業やプロジェクトでは、他の技術者と円滑に連携するスキルが求められます。
信用を築くための高い技術力が必要
個人事業主としての独立は、法人と比べて信用力の面で不利になることがあります。
特に顧客が信頼を寄せるのは、確かな技術力です。十分な経験を積み、確かな技術を提供することで、徐々に信頼を得られます。
また、高い技術力は営業力やコミュニケーション能力を活かすための基盤にもなります。独立前にスキルをしっかり磨き、顧客からの信頼を得られる状態を目指しましょう。
電気主任技術者として独立した場合の平均年収は約600〜1,000万円
電気主任技術者として独立した場合の平均年収は600万円から1,000万円ほどと言われています。ただし、免状の区分によって、独立時の平均年収も変動してくるでしょう。
たとえば、第一種があれば、すべての事業用電気工作物を取り扱えます。一方で、第三種の業務は5万V未満に限定した事業用電気工作物の保安・監督です。
また、令和4年賃金構造基本統計調査によると、電気技術者全体の平均年収は644.5万円です。状況によっては、会社員としての勤務が独立開業以上に高い年収を期待できるケースもあるでしょう。
関連記事:電験一種の年収は約600〜800万円と上位7%の高年収|キャリアアップする方法
参考:電気技術者 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
電気主任技術者として独立する際の初期費用は約230〜390万円
独立開業すると、働き方や案件単価によっては高い年収を期待できます。一方で、年収が不安定になる可能性もあるでしょう。
さらに、独立する場合、保安管理業務を遂行できる事務所を準備する必要があります。また、独立に必要な機械や器具を揃えなければなりません。
実際に、電気主任技術者として独立する場合は、230万円から390万円ほどの初期費用が必要と言われています。
事務所の賃料に至っては、毎月のランニングコストとしても重くのしかかってきます。
独立を検討する際には、コスト面も踏まえておきましょう。
電気主任技術者の独立についてよくある質問
電気主任技術者の独立に関してよくある質問は次のとおりです。
- 電験三種を取得して独立すると年収はどのくらいになりますか?
- 電気主任技術者として独立して働くのは楽しいですか?
- 電気主任技術者で独立して失敗するケースは何がありますか?
それぞれの質問について解説します。
電験三種を取得して独立すると年収はどのくらいになりますか?
第三種の認定を受けて独立した場合の年収は、業務量や案件単価によって大きく異なります。
実際に、年収1,000万円以上稼ぐ人もいれば、自分のペースで年収をあまり気にせず細々と働く人もいるようです。
したがって、より多くの業務を遂行できれば、会社員以上に高い収入を得られるかもしれません。
可能であれば、第三種に加えて第一種・第二種を目指して年収アップを目指しましょう。
電気主任技術者として独立して働くのは楽しいですか?
独立すると、会社員とは異なり勤務時間や休日を自由に決められます。また、請け負う案件を自分で選べる裁量権の高さは魅力的です。
その結果、電気主任技術者として独立して働くのが楽しいと感じる人もいます。一方で、従業員を採用していなければ、孤独を感じやすい場合があるようです。
電気主任技術者で独立して失敗するケースは何がありますか?
独立するには、十分な準備と覚悟が必要です。たとえば、免状の取得に加え、実務経験を積まなければなりません。
また、独立開業には、事務所開設や設備投資などの初期費用がかかります。他にも、人脈を活かしたり営業活動をしたりして、顧客を獲得しなければなりません。したがって、資金確保や顧客獲得ができなければ、失敗する可能性があります。
独立して高年収を期待できる可能性はありますが、リスクも認識しておきましょう。
電気主任技術者の独立に関するまとめ
この記事では、電気主任技術者の独立に関して解説してきました。
独立開業する前に押さえておくべきポイントは次の6つです。
- 電気主任技術者免状の交付を受けている
- 電気主任技術者としての実務経験を一定年数積んでいる
- 仕事に必要な機械・器具を保有している
- 保安管理業務をおこなう事業場が一定の条件を満たしている
- 保安管理業務を支障なく実行できる
- 取消しを受けてから2年以上経過している
また、独立開業には、初期費用として230万円から390万円ほど必要と言われています。さらに、ランニングコストへの備えも必要です。
それでも、電気主任技術者として独立開業すれば、高年収を期待できるのも事実です。
これから電気主任技術者として独立を検討しているのであれば、入念な準備をした上で挑戦してみてはいかがでしょうか。
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