電気主任技術者の選任について、詳しく知りたい人も多いのではないでしょうか。
電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持および運用の保安・監督を担っています。電気事業法に基づき、電気主任技術者の登用は受電単位で1事業場1主任技術者が原則です。
また、登用にあたって、方式や必要な手続きについて認識しておかなければなりません。
この記事では、電気主任技術者の登用時に必要な届出手続きと選任方式について解説します。電気主任技術者を目指している中で登用について詳しく知りたい人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
電気主任技術者の選任は受電単位で1事業場1主任技術者が原則
電気主任技術者とは、事業用電気工作物の工事、維持および運用の保安・監督を担っています。電気事業法に基づき、電気主任技術者の登用は、受電単位で1事業場1主任技術者が原則です。
したがって、事業用電気工作物の保安・監督にあたって、電気主任技術者を登用しない運用は基本的に認められていません。
事業用電気工作物とは、600V以上の高圧受電設備等を指します。一方で、600V未満の低圧受電設備等は、一般用電気工作物です。
事業用電気工作物を設置する事業者は、電気主任技術者を登用する義務があります。
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電気主任技術者の選任は常駐が基本で義務付けられている
電気主任技術者の登用は、電気事業法第38条第4項に基づき、事業用電気工作物の設置者に対して義務付けられています。また、登用するにあたって、基本的に常駐でなければなりません。
常駐とは、事業場で常時勤務する方式です。一方で、登用は常駐を意味する専任以外にも、非常駐があります。また、非常駐は兼任・兼務の2つに分けられます。
常駐ならびに非常駐を詳細に分けた際の概要は次のとおりです。
勤務方式 | 説明 |
専任 | 登用された事業所に常時勤務し、職務を遂行する方式です。専任は最も基本的な方式です。加えて、専任は登用方法で原則とされています。 |
兼任 | 既に登用されている事業場に加え、他でも職務を遂行する方式です。 ただし、兼任できる事業場の数は、第一種・第二種・第三種の区分や、各事業場の電気工作物の規模によって制限されています。 |
兼務 | 常時勤務する事業場ではなく、他で登用されている方式です。 常駐する必要はありませんが、登用できる事業場の数は制限されています。 |
一方で、免状を保有する人数は、2002年から2011年までと2012年から2021年までの10年で比較すると、全体の1割に相当する約5,000人以上も減少しています。したがって、効果的かつ効率的な保安を図る制度への見直しが検討されています。
電気主任技術者の選任形態は大きく分けて3つ
勤務方式は大きく分けて常勤もしくは非常勤の2つです。また、登用方式は大きく分けて次の3つです。
- 自社選任
- 外部選任
- 選任許可
それぞれの登用方式について解説します。
自社選任
自社選任とは、自社の従業員の中から登用する方式です。自社選任は最も基本的な登用方式です。したがって、自社選任は多くの事業場で採用されています。
自社選任を選択した場合、常駐しているため事故や故障が発生した場合でも迅速に対応できます。また、外部委託に比べて人件費を抑えられる点がメリットです。
一方で、自社選任を選択した場合には、社内で人材を育成する必要があります。また、業務は多岐にわたるため、登用された人の業務負担が大きくなるかもしれません。
外部選任
外部選任とは、外部の電気保安法人等に電気主任技術者の職務を委託する方式です。近年、人材不足や専門性の高い技術者へのニーズの高まりから、外部選任の利用件数が増加しています。
実際に、2023年1月時点で登用方式の9割以上が外部選任です。また、外部選任のうち電気保安協会への委託が約半数を占めています。
外部選任を選択した場合、社内に免状を持つ人材がいないケースでも運用できます。また、電気保安法人等には専門性の高い電気主任技術者が多数在籍しているため、より高度な技術や知識が必要な場合に有効です。
一方で、外部選任には、委託料等の費用がかかります。また、常駐していないため、事故や故障が発生した場合に迅速な対応が難しくなるかもしれません。
選任許可
選任許可とは、常駐させずに外部の電気保安法人等に職務委託を許可する制度です。
選任許可を選択した場合、人材不足の解消や専門性のある技術者への依頼、さらには迅速な対応や社内連携の取りやすさを両立できます。また、外部選任に比べて、委託料等の費用を抑えられる点もメリットです。
一方で、選任許可を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。さらに、選任許可を受けられるかどうかは行政庁の判断によるため、必ず許可されるとは限りません。
電気主任技術者の選任届出をしていなかったら罰則が科せられる
選任届出を怠った場合、電気事業法第120条第1号に基づき、30万円以下の罰則が科せられます。
また、選任届出をしていなかった場合以外にも、虚偽の届出をした際も同様に罰金です。選任届出をする機会があれば、罰金が科せられないように迅速に対応しましょう。
電気主任技術者の選任届出期限は約20日〜1か月が目安
事業用電気工作物の設置者が遅滞なく選任届を提出する必要があります。
「遅滞なく」に明確な定義はありませんが、一般的には約20日〜1か月が目安とされています。
選任届出が遅れると、怠ったと見なされるかもしれません。その結果、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
電気主任技術者の選任届出先は経済産業省保安監督部
届出先は、経済産業省の管轄する保安監督部です。具体的な提出先は、事業場を管轄する保安監督部です。
提出の際は、保安監督部が届出内容を詳細に確認します。その際に、万が一不備があれば、再度の提出が必要です。
電気主任技術者の選任についてよくある質問
選任についてよくある質問は次のとおりです。
- 電気主任技術者制度が廃止になるおそれはありませんか?
- 電気主任技術者を選任するタイミングはいつですか?
- 電気主任技術者を選任しないとどうなる?
それぞれの質問について解説します。
電気主任技術者制度が廃止になるおそれはありませんか?
現時点では、電気主任技術者制度が廃止される可能性は低いと考えられています。電気主任技術者は、電気事業法に基づき、事業用電気工作物の保安監督を行う重要な役割を担っており、安全性の確保に不可欠な存在です。
近年、電力系統の複雑化や再生可能エネルギーの導入拡大など、電気設備を取り巻く環境が大きく変化しています。電気主任技術者はさまざまな変化に対応しながら、安全性の向上に貢献し続けなければなりません。
電気主任技術者制度の廃止は、電気設備の安全性を著しく低下させるおそれがあります。したがって、制度の廃止に向けた具体的な議論ではなく、規制の見直しが検討されています。
電気主任技術者を選任するタイミングはいつですか?
登用するタイミングの例は次のとおりです。
- 新規に事業用電気工作物を設置する場合
- 電気主任技術者を解任した場合
- 電気主任技術者の職務を停止した場合
- 電気工作物の電圧、容量、使用目的などが変更された場合
届出期限は約20日〜1か月が目安です。可能な限り迅速に届出をしましょう。
電気主任技術者を選任しないとどうなる?
登用しなかった場合、罰金が科せられます。
電気主任技術者は電気設備の安全性を確保する重要な役割を担っています。その結果、登用は事業者に課せられる義務です。
事業者は法令を遵守し、適切なタイミングで登用しなければなりません。
電気主任技術者の選任に関するまとめ
この記事では、電気主任技術者の登用時に必要な届出手続きと選任方式などについて解説してきました。
電気主任技術者の登用は、受電単位で1事業場1主任技術者が原則です。また、登用は常駐が基本的に義務付けられています。
さらに、届出期限は約20日〜1か月が目安です。もし届出をしなかった場合、30万円の罰金が科せられます。
登用方式は、大きく分けて次の3つです。
- 自社選任
- 外部選任
- 選任許可
自社の状況を踏まえた登用方式を選択する必要があります。
これから電気主任技術者を目指しているのであれば、将来性などのメリットも踏まえて挑戦してみてはいかがでしょうか。
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