建設・工事

【取材レポート】『e建機』を知っていますか?遠隔操作で建設現場の人材不足を解消する!

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近年の建設業界は、東日本大震災の復興需要や国土強化、東京オリンピック・パラリンピック競技場の整備等により、建設投資が増加傾向にあります。それにもかかわらず、業界の人材不足は一向に解消せず、むしろ加速しているといえます。

今回、編集部は運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)が主催するTDBC Forum 2022に参加しました。本記事の後半では、フォーラム内で発表された、建設業界の人材不足を解消するキーとなりうる「e建機」という最新の取り組みについてレポートします。

建設業界の人材不足となっている4つの要因

そもそも、建設業界の人材不足には4つの原因があります。

建設投資の減少や受注競争の激化による労働環境の悪化

新型コロナウイルスの大流行で世界全体の経済活動が停滞したことにより、建設業界においてもその影響は大きなものとなっています。

民間市場が縮小することで受注競争は激化しており、価格帯を大幅に下げたり工期が極端に短くなるなど、建設業界の受注条件は悪化しています。

具体的には労働者の賃金や賞与の減少や福利厚生の取り消し、工期に合わせるための労働時間増加などがあります。これらが原因で体力的な限界を迎えてしまい、退職や転職をする人が増えてきています。

就業者の高齢化

日本国内では高齢化が大幅に進行しており、社会全体で問題となっています。

建設業界においても高齢化は人材不足に直結する深刻な問題となっており、迅速な対応が必要です。

建設労働者の高齢化に関しては、1978年(昭和53年)以降上昇傾向にあります。55歳以上の割合は2019年で35.3%と、全産業の平均より約5%も高い水準となっています。

また、建設労働者全体の平均年齢は45.1歳となっており、こちらも全産業に比べ約2歳ほど高くなっています。

近年ではアジア圏などからの外国人労働者の受け入れなどが進められていますが、高齢化問題の解決までには至っていません。

若年入職者の減少

建設業界の年齢構成では高年齢層が多い一方で、若年層の割合が他の産業に比べて低くなっています。

また、新規学校卒業者の入職者に関しても少なく、定着率も深刻化しています。

若年層の入職者が少ない原因の一つに”3K”があります。

3Kとは「汚い」「きつい」「危険」の内容となっており、昔に比べ労働環境は少しずつ改善が進んでいるものの、若年層の建設業界に対する悪いイメージを払拭できたわけではありません。

建設業界では現在新しい3Kとして「給与が良い」「休暇が取れる」「希望がもてる」の実現に向け、労働改善が進められています。

復興需要をはじめとした建設投資の増加

近年、日本ではさまざまな災害が繰り返し発生しており、その復興需要が高まっています。

特に2011年に発生した東日本大震災では、多くの家屋や施設に大きな被害がでており、多くの地域で建設関連の人手不足が課題となりました。

最近でも台風や大雨による災害が全国各地で頻発しており、復興需要や防災、減災など国土強靭化の推進などにより建設業界の需要は高まっています。

このようなことが原因で建設業界では人手不足が深刻な問題となっており、早急な取り組みが必要となっています。

建設業界の人材不足解消に向けた取り組み

建設業界の人材不足解消につながる取り組みとして現在注目を集めているのが運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)です。

建設業界に欠かせない存在である運輸業界の協議会であり、さまざまなデジタルテクノロジーを活用した労働の改善が進められています。

2022年7月に開催されたTDBC Forum 2022では、多くの企業の取り組みが発表されました。

運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)について

運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)では、運輸業界とICTなど多様な業種をサポートしている企業が連携し、安心で安全・エコロジーな社会基盤に変革を行っています。

最新のデジタルテクノロジーを利用することで、今までにはない新しい働き方の発見について日々取り組みが進められています。

TDBC設立の背景

現在、さまざまな業界で技術のデジタル化やLOTなどを活かした取り組みが進んでいます。

一方で、これらの対策は各会社がシステム開発会社に依頼し、自社に合ったものを共同で開発しカスタムしていく必要があります。小規模事業者が比較的多い運輸業界や建設業界では、こういった導入自体が難しいのが現状です。

TDBCは、このような現状を改善し、低コストでサービスを提供できる社会を目指して設立されました。

具体的な活動としては、会員相互のネットワーク構築や情報交換に関するイベントの開催や、新たな取組への支援、実証実験の実施などが行われています。

TDBC Forumの開催

TDBCでは2022年7月に第6回目となる「TDBC Forum 2022」が開催され、575社1,100名が参加しました。

開催はオンラインで行われ、ドライバーの無人点呼や脳卒中リスクのチェック、SDGsなど、さまざまなテーマに関する取り組み事例が会員企業から発表されました。

一部のワーキンググループをご紹介します。

  • 集中力:815名のアンケート結果から、脳血管疾患:脳卒中リスクチェック
  • 点呼時の健康状態をスマホで確認!自動点呼に向けたバイタルデータの活用
  • e建機チャレンジ、遠隔操作で新たな人材を呼び込む
  • 現場ダッシュボードで2024年問題に立ち向かう建設DX

このように物流業界や建設業界で課題となっている人材不足や紙伝票等の業務処理について、AI無人点呼や建設機械の遠隔操作など各企業の取り組みについて知ることができます

以下の画像をクリックで、当日の発表内容を動画やPDFでご覧いただけます。

【セミナーレポート】『e建機』とは?

今回の記事ではTDBC Forumの多数あるプログラムの中でも、e建機の取り組みについてレポート形式でご紹介します。

近年、新しい競技として「eスポーツ」が注目を集めていますが、実は建設業界では「e建機」という取り組みがスタートしています。

e建機は人材不足や新しい職種の創出を目的としており、建設機械を現場ではなく離れた場所から遠隔で操作することを可能にします

e建機が普及するメリット

e建機が普及することで、建設業界・社会には3つのメリットがあります。

  • 現場の人材不足を解消
  • 新しい職種の創出という社会貢献
  • 災害時にも安全に人命救助が可能

これらのメリットについて詳しく見ていきましょう。

現場の人材不足を解消

いま、建設業界では人材不足が深刻です。

それでも、これまでは現場で実際に搭乗して機械を操作するほかありませんでした。

しかし、e建機では遠隔からの操作を可能にし、ゲームやパソコンに慣れている若者にとってハードルが低くなります

体力に自信のない方や女性も安心して操作できるため、建設業の経験が無くても年齢性別にかかわらず就労、活躍できる職種として新たな人材を現場に受け入れられるようになります。

今まで実際に機械を操作していた現場作業員に関しても、わざわざ遠い作業現場に毎回向かう必要がなくなるため、作業効率の向上や時間外労働の解消にも繋がり、労働者の定着率を向上させるきっかけにもなります

現場で作業する必要が無くなれば、「現場仕事=大変できつい」といった建設業界のイメージ払拭に繋がり、若手人材の確保も目指せます。

新しい職種の創出という社会貢献

e建機では直接機械を操作する必要がありません。そのため、ひきこもりなどで外での勤務が難しい方や、家族の介護・子育てといった事情で長時間の拘束が厳しい方でも就労することができます。

今まで繋がりのなかった労働者層との雇用機会が創出されることで人員の確保ができると同時に、新しい職種を創出するという社会貢献も実現できます。

災害時にも安全に人命救助が可能

台風や地震、大雨といった各地で発生する災害では、重機が欠かせません。

土砂などの撤去や復旧作業、人命救助はスピードが求められる一方で、これらの現場では更なる二次災害の危険と常に隣り合わせです。そのため、安全性が確認できない限り、作業員や救助隊が踏み込めないのが実情です。

e建機では、遠隔からの操作によって、たとえ現場が無人であっても問題なく作業できます。そのため、こうした二次災害による現場作業員の安全確保を考慮する必要がなくなり、迅速な人命救助・復旧作業を可能にします

e建機チャレンジ大会の開催

TDBC Forumに先立ち、5月中旬、実際にe建機の操作を競う大会が開催されました。

千葉県内の旧老川小学校を会場として、直線距離で約1.2km離れた訓練センターで実際に操作するというものです。

今回はプレ大会となっており、e建機の安全性や運営の確認を目的として開催され、建設機械の免許・資格を持った経験オペレーターが参加しました。今回出場した有資格者のフィードバックを受け、本大会や近い将来に向けて、さらに質の高い運転システムの開発を目指しています。

競技の概要

競技の内容としてはショベルとダンプが使用され、盛り土をキャリアダンプに載せる作業と、ダンプで盛り土を移動させる2つの作業が含まれています。

参加チームはそれぞれ、デジタルに強い20代、現場にもデジタルにも強い40代、現場の大ベテランである70代から各1名ずつバランス良く構成されました。

ショベルの操作は両手の操作レバーにより行われ、現場の映像がさまざまな視点から確認が可能です。

キャリアダンプに関しては、搭載した前後カメラ、サラウンドビュー(360度)の映像を頼りに規制されたコースを走行させていきます。

遠隔操作における安全性や可能性、通信環境の課題など今後の普及について、多くの注目を集めた大会となりました。

e建機やデジタルテクノロジーを活用した新しい建設業界を目指そう

今回は建設業界における課題とその原因を踏まえたうえで、それらを解決するための先進的な取り組みであるe建機について、TDBC Forumでの発表内容をレポートしました。

いま、運輸業界や建設業界はもともとの人材不足に加えて、働き方改革関連法への適応など、大きな変革を求められています。これらの改革を一社のみで対処するのは大変な労力が必要ですが、TDBCでは会員企業が会社や業界といった枠を超えてグループを組み、技術や解決策の検討、実証実験を進めています

「なんとかしたいが、何から始めたらよいか分からない」

「他社の取り組みを知りたい」

「アイディアがあるので、知見を持った企業の力を借りたい」

こういった方は、ぜひTDBCのワーキンググループへ参加してみてはいかがでしょうか。

TDBCに関心をお持ちの方

TDBCについて詳しく知りたい方や入会希望は公式HPから問い合わせ可能です。

TEL:03-5962-7370

問い合わせ:https://unyu.co/form/contact/

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TDBCホームページはこちら

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クロスワーク編集部

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