どの業界・業種においても、売上高を上げるために欠かせないのが原価率です。
特に製造業では、原価率に売上高を大きく左右されると言われています。
そのため、製造業では売上高を上げるために原価率の見直しから入る企業も少なくありません。
原価率を見直すことは大切ですが、原価率の目安や基準を知っておくことも必要です。
今回は製造業における原価率だけでなく、原価率の目安や下げるポイントについて解説していきます。
製造業における原価率とは
原価率とは、売上高における原価の割合を示す数字です。
例えば、A社とB社がそれぞれ、同じようなデザイン、素材を用いて、1枚1500円でTシャツを発売します。A社とB社は工場にそれぞれTシャツを発注しましたが、A社の商品は原価率が500円なのに対して、B社の商品の原価率は750円です。
その場合、A社の商品は1枚売れると1000円の売上になるのに対して、B社の商品は1枚売れると750円になります。企業側の目線から見ると、原価率が低いほど利益が上がるため、この2社を比較するとA社の方が利益が出ます。
しかし、これが製造業における原価率になってくると話が変わってきます。
製造業における原価率は製造原価率と呼ばれ、材料費だけでなく人件費・経費・外注費などのその製品を作るのにかかったもの全てが含まれているのです。
製造業以外の場合、単純に原価交渉を行い仕入れ値を安くすることで原価率を下げる方法などがあります。
これが製造業の話になってくると、材料費だけでなく制作工程や人件費なども考えなくてはならないのです。
製造業における原価率の目安
経済産業省によると、製造業における原価率の目安は80.8%です。他業種を見てみると、卸売業が87.6%、小売業が71.2%という結果になっています。
飲食業では原価率を30〜60%前後に設定されていることが多いと言われているので、製造業は原価率が高い業種です。
原価率が高い理由としては、原材料の高騰化や運搬費用などがかさむことが考えられており、製造原価率を下げることが困難な状況が多いと言われています。
また、製造業は商品を製造するうえでのロスも多く発生しがちになり、その廃棄にもコストがかかることも課題になっています。
製造原価率を下げることは企業にとって困難な課題と考えられますが、その課題を乗り越えることによって売上高が上がることになるため、目をそらすことを許されない課題です。
製造業の原価率の計算方法
続いては、製造業の原価率の計算方法を解説します。
手順⑴原価を計算する
まず最初に、原価の計算を行います。
原価率は以下の方法で計算できます。
・原価率(%)=売上原価(製造原価・仕入原価)÷ 売上高 × 100
製造業の場合は製造原価と仕入原価を両方含める必要があります。
ここで出てきた原価率が100%未満の場合は売上高が黒字になりますが、100%を超えた場合は赤字になるため改善が必要です。
基準が80.8%と言われているので、その前後の数値が適正と言えるでしょう。
手順⑵販売価格に対する割合を計算する
原価を計算できたら、販売価格に対する計算を行います。
販売価格に対する計算方法は以下の通りです。
・販売価格=原価(仕入価格)÷ 原価率
わかりやすく説明すると、原価100円の商品を原価率80%で販売する場合、計算式は以下の通りです。
・100 ÷ 0.8 = 125(円)
同じ原価で原価率を50%にすると以下のような計算式になります。
・100 ÷ 0.5 = 200(円)
このように、原価率の割合が上がると販売価格は安くなり、原価率の割合が下がると販売価格は高くなります。
製造原価率を把握していない場合に想定されるリスク
続いては、製造原価率を把握していない場合に想定されるリスクを4つ紹介します。
材料費の値上がりに気づかない
製造原価率を把握していない場合に想定されるリスクの1つ目は、材料費の値上がりに気づかないことです。
製造業の原価率に含まれている材料費ですが、経済状況(円高・円安)だけでなく気候や人件費の高騰などで値上がりするケースは珍しくありません。
長く付き合いのある取引先の場合、多少の値上がりでも取引をそのまま続けるケースが多いのではないでしょうか。
ここで製造原価率を把握していなかった場合、原価率が上がっていることに気づかずにそのままの販売価格になっていたことで赤字につながる恐れがあります。
材料費は定期的に確認して、販売価格の改定が必要かどうかをチェックしておきましょう。
人件費の払い過ぎ
製造原価率を把握していない場合に想定されるリスクの2つ目は、人件費の払い過ぎです。
人件費は給与や賞与、各種手当、役員報酬、退職一時金などが挙げられます。
人件費は必ず発生するもので、企業は必ず支払わなければならないものです。
しかし、製造効率が悪く残業代を多く払っていたり必要以上の人を雇っていると売上高が赤字になる可能性が出てきます。
製造原価率の中には人件費も含まれているので、それを把握していないと赤字につながる可能性が高くなります。
不要な経費が発生
製造原価率を把握していない場合に想定されるリスクの3つ目は、不要な経費が発生することです。
製造業における経費は、製品を保管する倉庫の賃貸料や電気やガスなどの光熱費が挙げられます。
製造原価率が把握していない場合、不必要な経費が発生していることに気づかずに経営困難に陥る可能性が出てきます。
経費の見直しを定期的に行うことで製造原価率の改善につながるので、どの経費にどれくらいの費用が掛かっているのかは必ず把握しておくことが必要です。
資金繰りが悪化
製造原価率を把握していない場合に想定されるリスクの4つ目は、資金繰りの悪化です。
製造原価率を把握せずに赤字になっていることに気づかないまま経営を続けていると、会社に残る資金はどんどん減っていきます。
資金が枯渇していくと、納めなければいけない税金が未納になったり支払いが滞る事態が発生します。
このような状況が長く続く場合、信用を失い銀行からの融資が受けられなかったり、最悪の場合倒産に追い込まれます。
製造原価率を把握しておくことで、このような事態に陥るリスクが減らせるのです。
製造業で原価率を下げるポイント
製造業で原価を下げるポイントは様々な方法があります。
視野を広く持ち、様々な観点から状況を把握することで原価率を下げることが可能です。
今回は仕入れ編、製造編、販売編、在庫・労務編の4つに分けてポイントを解説していきます。
仕入れ編
まずは、製造業の仕入れ段階で原価率を下げるポイントを3つ解説します。
材料費の見直し
製造業の仕入れ段階で原価率を下げるポイントの1つ目は、材料費の見直しです。
現在の材料費が様々な理由で値上げした際に、同じような費用で仕入れられるかどうかを確認しておくことも大切です。
材料費の値上げというのは避けられないところではあるものの、原価率に大きく関わってくる部分になるため全てを見直す必要が出てきます。
材料費もあらかじめいくらまでの値上げに対応できるかを決めておくことで、値上げした時に材料費を見直すきっかけになります。
仕入れ先の見直し
製造業の仕入れ段階で原価率を下げるポイントの2つ目は、仕入れ先の見直しです。
仕入れ先を変えるきっかけとしては、材料費の値上げだけでなく運送費がかさんでいることや品質など様々で、見直すポイントは現状を知れば見えてきます。
今使用している材料がその仕入れ先にしかないことは、よほど特殊なものではない限り考えにくいです。
ずっと同じ取引先から材料を仕入れることは、会社同士の繋がりとしては大切なことかもしれませんが、原価率を下げるために仕入先を変えることも視野に入れておきましょう。
仕入れ量の見直し
製造業の仕入れ段階で原価率を下げるポイントの3つ目は、仕入れ量の見直しです。
材料を仕入れるにあたって、多すぎず少なすぎずの適切な量であることが大切です。
多すぎれば余剰在庫としてロスに繋がりますし、少なすぎると再度発注して届くまでの時間をロストしてしまいます。
原価率を下げるためには必要なものを必要な分だけ仕入れることが大切です。
製造編
続いては、製造業の製造段階で原価率を下げるポイントを2つ解説します。
製造工程を効率化
製造業の製造段階で原価率を下げるポイントの1つ目は、製造工程を効率化することです。
製造工程の効率化を行うことで無駄な工程を省いたり、人件費を削減したりすることが可能です。
労力を減らすだけでなく、生産量を増やしたりクオリティの高い商品を作ることもできるので、原価率を下げるだけでなく売上高を上げることにもつながります。
製造工程を見える化
製造業の製造段階で原価率を下げるポイントの2つ目は、製造工程を見える化することです。
製造工程を効率化することも大切ですが、現在の製造工程を把握しておかないとどこを改善すればいいかわかりません。
そこで、改善点がどこにあるのかを見極めるために製造工程はプログラムやデータなどで見える化しておくことをおすすめします。
こうすることで、改善点だけでなく製造ラインの不具合が起きたときの対処も迅速に出来るので、きちんと残しておくようにしましょう。
販売編
続いては、製造業の販売段階で原価率を下げるポイントを3つ解説します。
販売価格の見直し
製造業の販売段階で原価率を下げるポイントの1つ目は、販売価格の見直しです。
仕入れ編で少し解説しましたが、製造業にとって避けられないのは原材料の高騰化です。
価格を変えずに販売を続けるのも、顧客のためには大切なことかもしれませんが、やはり優先するべきなのは会社を存続させることです。
原材料が値上げした場合は販売価格を確認し、早めに値上げを検討することが大切になります。
コンセプトの見直し
製造業の販売段階で原価率を下げるポイントの2つ目は、コンセプトの見直しです。
自分たちが今作っている商品は誰に向けた商品なのか、消費者の分析をしてみることで売れる商品を考えていくことで売上高を伸ばします。
どの業種にとっても消費者の研究は大切で、現在のコンセプトが消費者にあっているのかを再認識することも大切です。
セット販売の検討
製造業の販売段階で原価率を下げるポイントの3つ目は、セット販売の検討です。
単体で商品を売ることが難しい場合、セット販売で単体価格より少し価格を下げることで販売数を増やす方法があります。
過剰在庫が気になってきた時など、応急処置としておこなうとロスや廃棄を少なくすることができます。
ただし、セットにする商品の内容によっては全然売れない場合もあるので組み合わせには注意しましょう。
在庫・労務編
続いては、製造業の在庫・労務段階で原価率を下げるポイントを3つ解説します。
不良在庫の削減
製造業の在庫・労務段階で原価率を下げるポイントの1つ目は、不良在庫の削減です。
製品を生産している過程で必ず発生するのが不良在庫です。
少ない数だったとしても不良在庫が発生すると、売れない商品を抱え込む結果になってしまうので利益の減少に直結します。
製造工程の見直しや、不良在庫への対応を考えることで原価率を下げることが大事です。
労務費の削減
製造業の在庫・労務段階で原価率を下げるポイントの2つ目は、労務費の削減です。
労務費とは人件費の一部で給料や賞与、残業代などが労務費としてよく知られています。
給与や賞与の見直しも大切ですが、ここを削減しすぎると従業員のモチベーションの低下に繋がってしまうので慎重に考えることが必要です。
勤怠管理の見直しや、残業を減らして労務費を削減するといった対策も、原価率を下げることに繋がります。
経費の削減
製造業の在庫・労務段階で原価率を下げるポイントの3つ目は、経費の削減です。
電気代や水道代は必要経費とはいえ高額になってくると、経営を圧迫する要因にもなってきます。
そのため、毎月かかってくる必要経費を削減することは大切です。
近年では電力や通信の自由化が進んできているため、固定費の見直しや節電に取り組むなどの小さなことで原価率を下げることができます。
製造業の原価率についてのまとめ
製造業における原価率は、ただ単に費用を削減するだけでなく、工程の見直しや製品のコンセプトを考え直すことでも下げることができます。
今回の記事を参考にして、自分の会社はどこに課題を抱えているのかを考えてみましょう。
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