宅建は「宅地建物取引士」が正式名称であり、不動産取引のスペシャリストであることを証明する国家資格です。
不動産取引の中には、宅建士にしかできない独占業務があり、不動産業界にかかせない存在と言えます。
不動産を扱う金融業界や建設業界での需要も高く、毎年2万人近くの人が受験する人気資格の1つです。
この記事を読んでいる人の中には、不動産業界へ転職するために、宅建資格の取得を検討している人もいるのではないでしょうか。
今回は、宅建資格を取得するメリット・デメリットを中心に、詳しく解説していきます。
【この記事で分かること】 ・宅建資格を取得する5つのメリットと2つのデメリット ・宅建資格が役に立たないと言われている3つの理由 ・宅建資格の取得にかかる費用や時間 ・宅建資格の取得に関するよくある質問 |
宅建資格を取得する5つのメリット
不動産業界を中心に需要のある宅建資格は、取得することで以下のようなメリットがあります。
・高収入が目指せる
・就職や転職に役立つ
・女性の再就職に有利になる
・独立も目指せる
・一生使える国家資格になる
ここでは、宅建士の収入やキャリアアップ事情について、詳しく解説していきます。
高収入が目指せる
宅建士は、不動産取引に欠かせない存在であり、資格保有者しか行えない独占業務もあります。
不動産取引に関する豊富な知識が求められるため、誰でも簡単に取得できない分、他の職種と比べて収入が高い傾向にあります。
令和3年度賃金構造基本統計調査によると、不動産業・物品賃貸業の平均年収は約530万円であることから、宅建士の年収は500~600万円と推測されます。
宅建士として経験を積み重ねていくことで、より高い年収も目指せます。
出典:令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類|厚生労働省
就職や転職に役立つ
宅建士には独占業務があり、不動産取引に関する知識はさまざまな業種で役立つため、関連業界への就職や転職にも役立ちます。
宅建士にしかできない独占業務は、以下の3つです。
・契約締結前の重要事項に関する説明 ・重要事項説明書面への記名 ・契約内容書面への記名 |
これらは、不動産の売買契約に関する業務です。
この他にも、宅地建物取引業者の事務所において、5人に1人の割合で宅建士を設置しなければならない法律もあります。
そのため、業界未経験だとしても、宅建士の資格を持っているだけで、就職や転職が有利になります。
女性の再就職に有利になる
前述した通り、宅建士は保有しているだけでも重宝される存在であるため、一時的に仕事から離れていた女性の再就職にも役立ちます。
数年ほど働いておらず、不動産業界や建設業界、金融業界に詳しくなかったとしても、就職活動を有利に進められます。
ちなみに、宅建士証は5年に一度の更新が義務付けられており、期限内に講習を受講すれば、現役で働いていない場合も更新が可能です。
宅建士の資格取得後に長年働いておらず、更新期限が切れた状態である場合も、講習を再受講すれば、宅建士証を再交付してもらえます。
独立も目指せる
宅建士として不動産取引に関する経験を積むことで、将来的な独立も可能です。
サラリーマンとは違い、会社の設立費用やスタッフの人件費などが必要であるものの、経営が上手くいけば、年収1,000万円以上も目指せます。
ファイナンシャルプランナーや、マンション管理士といった資格を取得し、別の業種へ転職することも可能です。
一生使える国家資格になる
宅建資格は、一度試験に合格すれば生涯有効です。
試験合格後に、一定の条件を満たすことで交付される「宅地建物取引士証」に関しても、5年に一度の更新だけで使用し続けられます。
更新期限を過ぎた場合、宅建士証は無効となり返却しなければならないものの、講習の受講により再交付が可能です。
ちなみに、試験合格後に宅建士証を交付してもらうためには、以下の条件のいずれかを満たす必要があります。
・2年以上の実務経験がある ・宅建士の登録実務講習を修了する |
不動産業界で働いたことがない場合も、登録実務講習を受講すれば、宅建士証を交付してもらえます。
宅建資格を取得する2つのデメリット
就職や転職を有利に進められる宅建資格ですが、取得する上で2つのデメリットがあります。
・プライベートを削って勉強しなければいけない
・資格の交付や登録に費用がかかる
ここでは、2つのデメリットについて、資格取得の難易度などを踏まえながら解説していきます。
プライベートを削って勉強しなければいけない
宅建士の試験に合格するには、独学の場合で約600時間の学習が必要と言われています。
例年の合格率は15~18%で推移しており、誰でも簡単に取得できる資格ではありません。
宅建士を取得するには、プライベートの時間を削り、半年~1年かけて勉強に取り組まなければなりません。
試験は1年に1回のみの開催となるため、不合格となった場合、さらに1年の時間がかかってしまいます。
資格の交付や登録に費用がかかる
宅建の試験に合格し、業務で必要となる宅建士証を交付してもらうまでには、登録実務講習や取引士証の申請が必要です。
各種申請や手続きにかかる手数料は、以下の通りです。
・宅建士試験の受験料:8,200円 ・登録実務講習費用:20,000円前後 ・資格登録費用:37,000円 |
これに加えて、試験用のテキスト代も踏まえた場合、7万円前後の費用が最低限かかります。
ちなみに、宅建士証の5年に一度の更新では、講習受講料が12,000円、交付手数料が4,500円の計16,500円が必要です。
宅建資格が役に立たないと言われる3つの理由
宅建資格の取得メリットを紹介してきましたが、ネット上では「宅建資格は役に立たない」といった声も見受けられます。
宅建資格が役に立たないと言われている主な理由は、以下の3つです。
・不動産営業では実力の方が重視される
・宅建資格に合格するだけでは給料が上がらない
・宅建の知識自体は実用的ではない
宅建資格は本当に役立たないのか、理由ごとに詳しく解説していきます。
不動産営業では実力の方が重視される
宅建士には独占業務が3つありますが、3つの業務を繰り返し行うわけではなく、不動産営業などもこなします。
不動産営業において最も優先されるのは売上であり、資格保有や経験ではありません。
無資格で契約数の多い営業マンと、宅建士を取得している契約数の少ない営業マンでは、前者の方が優遇されます。
宅建士は不動産業界に欠かせない存在であることは確かですが、資格だけで優遇されるわけではありません。
宅建資格に合格するだけでは給料が上がらない
前述した通り、不動産営業では契約による売上げが最優先であり、営業マンの評価に直結します。
宅建資格を取得しただけで、会社の売り上げが上がるわけではないため、それだけで収入を上げ続けるのは難しいと言えます。
宅建資格で学んだ知識を活かしながら、さらに成長し続けることが大切です。
ただし、不動産業界では資格手当を支給している企業が多く、宅建資格を取得すると5,000〜30,000円が毎月支給されるようになります。
宅建の知識自体は実用的ではない
宅建資格を取得する上で学ぶ知識は、不動産取引に関する法律が多く、普段の営業で役立つ内容ではありません。
法律を基準に不動産を選ぶような顧客が少ないためです。
物件の間取りや立地の利便性に関する情報は喜ばれるものの、関連する法律を説明したところで成約確率を上げることはできません。
この2つの理由に「宅建資格は役立たない」といった声が少なからずあります。
確かに、宅建資格だけでは活躍が難しいと言えますが、宅建士を取得した上で営業に関するスキルを身に付ければ、より活躍できます。
また、宅建資格で身に付けた知識は、他の関連資格の取得に役立てることも可能です。
宅建士の資格が、全く役に立たないことはありません。
宅建資格取得にかかる費用と時間
宅建の試験は、特別な受験条件がなく学歴や経歴に関係なく誰でも受験可能です。
ただし、業界未経験者がゼロから学んでいくには、それ相応の時間が必要です。
ここでは、宅建の資格取得にかかる費用や時間について、詳しく解説していきます。
資格取得にかかる費用
宅建資格を取得するのにかかる、最低限の費用は約7万円となり詳細は以下の通りです。
・宅建士試験の受験料:8,200円 ・登録実務講習費用:20,000円前後 ・資格登録費用:37,000円 ・テキスト代:3,000円前後 |
ただし、試験に挑戦する上で通信講座や予備校に通った場合、別途費用が必要です。
・通信講座の場合:2~15万円 ・予備校への通学の場合:10~15万円 |
1回で合格したとしても通信講座の場合は約10万円、通学の場合は約17万円が必要と考えておくようにしましょう。
参考:宅地建物取引士資格登録申請提出書類と持参するもの|東京都住宅政策本部
資格取得にかかる時間
宅建資格の取得にかかる時間は、初学者で600時間ほどと言われています。
ある程度知識がある人でも、最低400時間ほどの学習が必要です。
資格取得にかかる期間の目安は以下の通りです。
【初学者で600時間勉強する場合】
・1日2時間勉強の場合:10ヶ月前後 ・1日3時間勉強の場合:6~7ヶ月 ・1日4時間勉強の場合:5ヶ月前後 |
実際に宅建資格を取得した人の声としては、半年前後かけて対策したといった声が多い印象でした。
試験は1年に1回しかないため、なるべく余裕のある計画を立てるようにしましょう。
宅建資格のメリットに関してよくある質問
最後は、宅建資格の取得メリットに関する、3つのよくある質問に答えていきます。
・宅建を持っていたら何ができますか?
・宅建士が人気なのはなぜですか?
・宅建と一緒に持っておくと良い資格はありますか?
宅建資格保有者ができることや、宅建資格とのダブルライセンスとしておすすめの資格に関する内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
宅建を持っていたら何ができますか?
宅建資格の保有者にしかできない独占業務は、3つあります。
・契約締結前の重要事項に関する説明 ・重要事項説明書面への記名 ・契約内容書面への記名 |
不動産取引業務以外では、不動産の鑑定などにも活用可能であり、金融業界でも活躍できます。
宅建士が人気なのはなぜですか?
宅建士が人気資格である理由には、以下のような内容があります。
・不動産取引における独占業務がある ・金融業界や建設業界でも知識を活かせる ・需要が高く将来性がある ・経験を積めば高収入を目指せる ・特別な受験条件がない |
前述した通り、不動産取引の業務には宅建士だけしか行えない独占業務があります。
宅建業の事務所では、5人に1人の割合で宅建士が在籍していなければならず、不動産業界では需要の高い存在です。
高収入を目指せる資格でもあり、資格試験に挑戦する上で、特別な受験資格がないことも人気の理由と言えるでしょう。
宅建と一緒に持っておくと良い資格はありますか?
宅建資格と一緒に持っておくと良い資格には、以下のようなものがあります。
・FP(ファイナンシャルプランナー) ・マンション管理士 ・管理業務主任者 |
FPを一緒に持っておくことで、不動産売買と関りのある金融関係のアドバイスもできるようになります。金融業界で働きたい人におすすめの資格です。
マンション管理士は、マンションで起こるさまざまなトラブルに対処するアドバイザーです。賃貸マンションを扱う不動産会社で重宝されます。
管理業務主任者は、マンション管理会社として、建物の安全管理や快適な生活環境をサポートするための資格です。
宅建資格のメリットに関するまとめ
宅建士には、不動産取引における独占業務があり、不動産業界に欠かせない存在です。
未経験者でも取得可能であり、取得することで就職や転職を有利に進められます。
試験の難易度が高く、誰でも簡単に取得できるわけではないものの、時間を割いて勉強する価値は十分あると言えるでしょう。
資格を取得するだけで、長く活躍し続けられるわけではないものの、不動産営業に関する知識と組み合わせていくことで、さらに成長できます。
関連資格も一緒に取得できれば、活躍できる範囲をさらに広げることも可能です。
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