スマートフォン・自動車・遊具などの機械をつくりあげる機械設計の仕事には、専門的な知識やスキルが欠かせません。機械設計技術者2級は、その知識やスキルを証明するための資格です。
機械設計の仕事をこなすうえで、資格が必須になるわけではないものの、就職の際に有利になるだけでなく、設計士としてのキャリアアップに役立ちます。
今回は、機械設計技術者の2級試験について、受験資格や実務経験などを詳しく解説していきます。
【この記事で分かること】 ・2級試験の受験資格 ・2級試験の試験日程や難易度 ・2級試験の概要 ・2級試験に関するよくある質問 |
機械設計技術者試験2級とは
機械設計技術者試験2級は、日本機械設計工業会が実施する試験で、設計技術者としての中級レベルの技術力を認定する資格です。
1級、2級、3級のうち中間に位置する2級は、基本設計に基づき、機械や装置の機能や構造を具体的に形にする計画設計のスキルを測定します。
対象分野には、材料力学、機械力学、熱力学、流体力学といった4大力学に加え、機械要素、製図、加工方法などの知識が含まれ、実務における応用力も問われます。
国家資格ではありませんが、業界内での認知度が高く、技術士取得へのステップとしても役立つため、多くの技術者がキャリアアップに向けて挑戦する資格です。
機械設計技術者試験の2級と3級では実務経験の長さや試験内容が異なる
機械設計技術者資格は、1級・2級・3級に分けられており、各試験で内容が異なります。
3級試験 | 機械設計に欠かせない機械工学の基礎的な知識が問われ、実務経験などに定めはなく誰でも受験可能。 8分野において出題され、試験は前半と後半で各2時間ずつ実施される。 試験問題は、全てマークシート方式で出題される。 |
2級試験 | 基礎設計に基づく機構・構造・機能の設計を実際の業務でこなせるレベルの知識と技術が問われる。 学歴や専攻科目により3〜7年(3級合格者は2〜4年)の実務経験が必要。 試験問題は、マークシート方式のほかに一部記述式の問題が出題されることもある。 |
1級試験 | 実際の業務において、機械装置の基本仕様を自分で決められるほどの知識と技術が問われる。 学歴や専攻科目により5〜10年(2級合格者は次年度から受験可能)の実務経験が必要。 試験問題は、全て記述式で出題される。 |
既に機械設計業務に従事しており、所定の実務経験を満たしていれば、すぐに1級を受験することも可能です。
機械設計技術者試験2級の受験資格
機械設計技術者試験は、1級・2級・3級のそれぞれに受験資格が設けられています。
基本的な設計に基づき、あらゆる機械の構造・機能・機構を具体的に設計できる能力が試される2級試験の場合、設計に関する実務経験が必要です。
実務経験は、過去に専攻した学科や学歴ごとに定められており、受験者によって詳細が異なるため注意しましょう。
ちなみに、機械設計の入門資格となる3級には受験資格が設けられておらず、学歴や職歴関係なく、誰でも挑戦できます。
3級試験に合格すると、2級試験で定められている実務経験が1〜3年免除されます。
関連記事:
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・機械設計エンジニアは30代未経験でもなれる?転職成功のコツ
機械設計技術者試験2級に必要な実務経験
2級試験に挑戦する際に、満たしておかなければならない実務経験は、以下の通りです。
最終学歴 | 2級試験から取得する場合 | 3級資格保有者 |
工学系の大学院・高等専門学校専攻科・高度専門士・職業能力開発大学を卒業 | 3年 | 2年 |
2年制大学・高等専門学校・職業能力開発短期大学を卒業 | 5年 | 3年 |
その他(工学系の科目や学校を卒業していない) | 7年 | 4年 |
3級資格保有者における受験資格は、学歴に関係なく1年免除されていましたが、令和5年度試験より上記の通り変更されています。
実務経験に関しては、受験申込み時に満たしておく必要はなく、翌年の3月末日時点で満たす予定であれば受験可能です。
令和5年度試験の場合は、令和6年3月末日をもって上記実務経験を満たす予定であれば受験できます。
3級資格保有者の実務経験は、3級取得後の経験だけでなく取得前も含めたトータルの年数です。
機械設計技術者試験2級の合格率
令和5年度における機械設計技術者試験の結果は、以下の通りです。
試験 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
1級試験 | 143名 | 52名 | 36.4% |
2級試験 | 574名 | 234名 | 40.8% |
3級試験 | 1,838名 | 865名 | 47.1% |
各試験とも合格率は5割を下回っており、全受験者が実務経験を積んでいることを踏まえると、難易度は高めと言えるでしょう。
参考:令和5年度機械設計技術者試験受験者数と合格率|一般社団法人日本機械設計工業会
機械設計技術者試験2級の合格点は公表されていない
難易度が高めの機械設計技術者試験ですが、試験の合格点は公開されていません。
各年度の難易度に多少の差が生じるため、その内容に合わせて合格点を調整しているとのことでした。
そのため、試験問題が例年よりも簡単だったからといって、合格率が大きく上がるわけではありません。
機械設計技術者試験2級の試験概要
ここでは、2級試験の概要について以下の通り解説していきます。
- 科目
- 出題範囲
- 出題形式
- 試験時間
- 受験料
- 試験会場
- 試験日程
今後、資格取得を検討している方は、参考にしてみてください。
科目・出題範囲
2級試験は、3時限に分けて実施されます。
1時限目・9:30~11:40 | 機械設計に関する分野・流体や熱に関する分野・メカトロニクスに関する分野が出題 |
2時限目・12:40~14:40 | 力学に関する分野・安全や環境に関する分野・加工や材料に関する分野が出題 |
3時限目・15:00~16:30 | 機械設計に関する応用が記述式で出題 |
※令和5年度試験の場合
出題される各分野の詳細は以下の通りです。
出題される分野 | 具体的な出題範囲 |
機械設計 | 機械の製図・機械要素設計・機構学に関する問題 |
力学 | 材料や機械における力学に関する問題 |
流体・熱 | 流体や熱工学に関する問題 |
メカトロニクス | デジタル制御や制御工学、自動化技術、RPAなどに関する問題 |
材料・加工 | 工作法や工業材料に関する問題 |
安全・環境 | 機械設計するために必要な安全や環境に対する知識に関する問題 |
応用・総合 | 機械工業・機械工学の基礎に関する知識を設計に応用させるための総合能力に関する問題 |
出題内容に対する学習方法のサポートを目的に、JMC(日本機械設計技術者クラブ)では、受験者を対象に講習会を実施しています。
「効率良く学習を進める方法が分からない」という方は、受講を検討してみてください。
各受講情報は、日本機械設計工業会の「機械設計技術者試験 受験講習会情報」で確認できます。
参考:機械設計技術者試験 受験講習会情報(JMC主催)|一般社団法人日本機械設計工業会
出題形式
出題形式は、1時限目と2時限目はマークシート方式で、3時限目のみ記述式が予定されています。
ただし、開催年度によって3時限以外でも記述式問題が出題される可能性があります。
試験時間
2級試験の試験は、午前中に1時限、午後に2時限で実施されます。
1時限は130分、2時限は120分、3時限は90分となりますので、時間内に解答できるように対策しておきましょう。
受験料
機械設計技術者試験の受験料は、以下の通りです。
・1級試験:33,000円 ・2級試験:22,000円 ・3級試験:8,800円 |
受験申請とは別に、入金申請の期限も設けられているため、忘れないように注意しましょう。
令和2年度からは各受験者のマイページが設置され、受験票の発送や入金の確認ができるようになりました。
試験会場
試験会場は、開催年度によって異なり、令和6年度試験に関しては以下の都道府県での実施を予定しています。
【令和6年度・機械設計技術者試験を実施予定の都道府県】 北海道/青森県/東京都/埼玉県/愛知県/静岡県/富山県/石川県/福井県/滋賀県/大阪府/広島県/香川県/愛媛県/山口県/福岡県/熊本県/沖縄 |
車での来場ができない会場もありますので、事前に交通機関を調べておくようにしましょう。
試験日程
試験は、受験級にかかわらず同じ日に試験が実施されます。
令和6年度(第30回)の試験スケジュールは、以下の通りです。
受験申請の受付期間 | 令和6年7月19日(金)~9月30(月) |
受験料の振込期限 | 令和6年10月7日(月)まで |
試験実施日 | 令和6年11月17日(日) |
合格発表 | 令和6年12月予定 |
試験の実施時期は毎年11月ですが、必ず同じ日に実施されるわけではなく変更となる可能性もあるため、必ず試験案内を確認するようにしましょう。
機械設計技術者試験2級に関してよくある質問
最後は、機械設計技術者の2級試験に関する、4つのよくある質問に答えていきます。
・機械設計技術者試験2級に合格するのは意味がないですか?
・機械設計技術者試験2級の勉強時間はどれくらいですか?
・機械設計技術者試験2級の過去問はどこで学べますか?
・機械設計技術者試験2級は国家資格ですか?
資格取得のメリットや学習方法などに関する内容ですので、受験を検討するうえで参考にしてみてください。
機械設計技術者試験2級に合格するのは意味がないですか?
機械設計技術者資格の取得には、さまざまなメリットがあり決して意味のないことではありません。
【資格取得のメリット】 ・就職や転職がしやすくなる ・社内での評価が高まり昇給や出世しやすくなる ・スキルが向上し仕事の幅を広げられる |
各メーカーなどで機械設計者として働くうえで、必須となる資格はないことから、取得しても意味がないといった声もあります。
しかしながら、資格を取得できれば設計に関する知識や技術を証明できるため、就職や転職の際に役立ちます。
既に働いている場合も、より幅広く知識を身に付けられるため、設計士としてのキャリアアップにも役立てられるでしょう。
機械設計技術者試験2級の勉強時間はどれくらいですか?
2級資格の取得に必要な勉強時間は、400時間前後と言われています。
ただし、過去の専攻科目や実務経験によって異なるため、初学者の場合は出題範囲における知識を身につけることから始めていきましょう。
実務経験をある程度積んでおり、専門知識が身についている場合は、過去問を繰り返し解きながら試験対策を進めてみましょう。
機械設計技術者試験2級の過去問はどこで学べますか?
2級試験の過去問や各種教材は、日本機械設計工業会の公式ホームページで確認できます。
また、学習の進め方が分からないという方向けには、JMC(日本機械設計技術者クラブ)が講習会を実施しています。
試験地や日程は、日本機械設計工業会で確認できますので、興味がある方は受講してみてください。
参考:機械設計技術者試験 過去問題集(電子書籍)のご紹介|一般社団法人日本機械設計工業会
機械設計技術者試験2級は国家資格ですか?
機械設計技術者試験は、日本機械設計工業会が実施する民間資格です。
ちなみに、機械設計の業務で役立つ資格には、ほかにも「CAD利用技術者」や「技術士」などがあります。
CAD利用技術者試験は民間資格で、技術士(機械部門)は国家資格です。
参考:CAD利用技術者試験|一般社団法人|コンピュータ教育振興協会
参考:技術士|公益社団法人日本技術士会
機械設計技術者試験2級についてのまとめ
機械設計技術者の2級は、機械設計に関する専門的な知識と技術を証明できる民間資格です。
試験では、基礎設計に基づく機能・構造・機構の設計を仕事で活かせるほどの知識や技術が問われます。
設計技術者として働くうえで必須となる資格ではないものの、就職や転職で役立つだけでなくキャリアアップにも活かせます。
これから設計関連の会社への就職を目指している方や、設計士としてさらに成長したい方は、資格取得を検討してみてください。
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