準中型免許と聞いて、どのような車両を運転できるのか、具体的にはどれくらいの大きさのトラックが運転可能なのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
特に、準中型免許は「5t限定」という言葉が付随することが多く、5t限定の準中型免許の場合は運転できる車両に違いが出ることにも注意が必要です。
そこで本記事では、「そもそも準中型免許とは何なのか」「準中型免許の「5t限定」で乗れる車両の種類」「準中型免許の取得方法」などを解説します。
準中型免許5t限定ができた背景
まずは、そもそも「準中型免許とは何か」というところから解説します。
準中型免許とは
準中型免許は2017年より新たに導入された日本の運転免許の一種で、普通車に加えて最大総重量が7.5t未満、最大積載量が4.5t未満のトラックやバスを運転することができる資格を指します。
具体的には、荷物を運ぶトラックや、一定の人数を乗せることができるバスの運転が許可されています。しかし、11人以上の乗客を運べる大型バスや、大型トラックの運転にはこの免許では対応できず、大型免許が必要です。
準中型免許ができた背景
準中型免許導入には、大きく2つの理由が存在します。
1つ目は、トラックドライバーの不足が挙げられます。
日本の経済成長と並行して、物流業界も急激に進展してきました。その中心に位置するのが「2tトラック」と呼ばれる車両です。
この「2tトラック」は、最大積載量が3t~4.5tの範囲にあり、以前は中型免許を持っていない限り、運転することは認められませんでした。
しかし、中型免許の取得には「20歳以上」という年齢要件や「普通免許を2年以上保持」という条件があったため、たとえば高校を卒業したての18歳の新入社員がすぐに運転を始めるのは困難でした。
この「中型免許のハードル」が原因で、トラックドライバーの人手不足は深刻化していたのです。
しかし、新たに導入された準中型免許は、18歳からの取得が可能となり、前の免許の保有期間の要件も撤廃されました。これにより、新卒で入社したばかりの社員も、準中型免許を手にして、すぐに配送の現場に足を踏み入れることができるようになったのです。
そして2つ目は、交通事故の削減です。
2017年までの免許制度では、普通免許のみで車両総重量5tまでの車を操縦することが認められていました。しかし、普通免許の教習内容は一般的な乗用車を中心にしていたため、実際に教習を受けていない大型車の運転が可能という状態でした。
5t以上の車の事故発生率は、他のカテゴリの車よりも高かったため、この状態に対する危機感が高まっていたのです。
この問題を解決するために、準中型免許が新たに設けられました。一部では「本当に事故が少なくなるのか?」という疑念が持たれましたが、2007年に中型免許が導入された際の事故減少のデータが根拠として挙げられました。
具体的には、警視庁の統計によれば、中型免許が導入される前の2006年の事故は23,144件で、導入後の2007年は20,441件、2008年は15,222件と、事故の数は着実に減少していたのです。
このデータを基に、新しい免許制度の導入が事故減少に効果的であると判断され、準中型免許もその効果を期待されることとなったのです。
そして、実際の準中型免許誕生後の交通事故死亡者人数は以下のように推移していきました。
年度 | 人数 |
2015年 | 4,117 |
2016年 | 3,904 |
2017年 | 3,694 |
2018年 | 3,532 |
2019年 | 3,215 |
2020年 | 2,839 |
2021年 | 2,636 |
2022年 | 2,610 |
出典:警察庁「統計表」
2015年と2022年の数字を比較すると、約37%も減少しています。
準中型免許の誕生と交通事故死亡者の数の関係を直接結び付けることはできないにしろ、準中型免許が交通事故の減少に一定の効果をもたらしていると言っても過言ではありません。
出典:東京車人武蔵境教習所「準中型免許って? 免許制度改正についても紹介」
準中型免許5t限定とは:車両総重量5t未満のトラック
準中型5t限定免許は、車両総重量が5tまでの自動車を操縦できる資格を指します。
準中型5t限定免許を持っていれば、通常の乗用車だけでなく、車両総重量5t未満のトラックやバスも運転することができます。しかし、5tを超える車両や、11人を超える乗客の大型バスを運転することは認められていません。
この5t限定の準中型免許が存在する背景には、2017年の法制度の変更が関係しています。
2017年の法改正に伴い、2007年6月2日から2017年3月11日の間に普通免許を取得した人々は、2017年3月12日以降、準中型5t限定免許取得者として扱われることとなりました。
つまり、この法改正の結果、普通車に加えて、総重量5t未満、最大積載量3t未満の準中型車の運転が可能となったわけです。これは、法改正以前、普通免許だけで5t未満の車両の運転が巨かされていたことに起因しています。
さらに、2007年6月1日前に普通免許を取得し、現在8t限定の中型免許を所持している人は、普通車、準中型車、そして総重量8t以下、最大積載量5tまでの中型車の運転が許可されています。
準中型免許の5t限定:乗れるトラックの範囲
続いては、準中型免許の5t限定で乗れるトラックの範囲について解説します。
準中型免許の5t限定で乗れるトラックの車両総重量と最大積載量
各運転免許で乗れるトラックの車両総重量と最大積載量は下記の通りです。
免許 | 車両総重量 | 最大積載量 | 乗車定員 |
普通免許 | 3.5t未満 | 2t未満 | 10人まで |
5t限定準中型免許 | 3.5t以上5t未満 | 2t以上3t未満 | 10人まで |
準中型免許 | 3.5t以上7.5t未満 | 2t以上4.5t未満 | 10人まで |
8t限定準中型免許 | 3.5t以上8t未満 | 2t以上5t未満 | 10人まで |
中型免許 | 7.5t以上~11t未満 | 4.5t以上~6.5t未満 | 29人まで |
大型免許 | 11t以上 | 6.5t以上 | 30人以上 |
5t限定準中型免許の車両総重量は3.5t以上5t未満、最大積載量は2t以上3t未満となっています。
なお、車両総重量・最大積載量・乗車定員は、運転免許証と運転する自動車に車載されている自動車検査証に記載されています。
準中型免許の5t限定を解除する方法
限定解除とは、特定の制限を持つ運転免許を、その制限を取り除くための手続きや試験を経て、一般的な免許にアップグレードすることを指します。
なお、5t限定の解除を行う流れは以下のようになります。
まず、5t限定の解除を希望する場合、指定された教習所で必要な教習を受けることが求められます。この教習は、MTは4時間、ATは8時間と、時間が定められています。
そして、教習後の卒業試験に合格すれば、免許試験場で視力検査などの適性試験を受験し、その後に限定解除交付手続きを行ってはじめて、限定解除が可能となるのです。
準中型免許の5t限定の解除にかかる費用
準中型免許の5t限定解除をするために必要な費用は、下記の通りです。
所持している免許 | 限定解除後に取得する免許 | 費用 |
準中型(5t)限定AT免許 | 準中型免許 | 約10万円 |
準中型(5t)限定MT免許 | 準中型免許 | 約7万円 |
上記の金額に加えて、免許センターにて解除の申請をする際に1,450円の手数料が別途必要となります。
それなりに費用はかかるものの、普通自動車免許の取得に比べるとかなり安い金額であると言えます。
準中型免許5t限定:運転できる範囲を確認する方法
各運転免許で運転できる車両の範囲は、下記の表のとおりです。
免許 | 車両総重量 | 最大積載量 | 乗車定員 |
普通免許 | 3.5t未満 | 2t未満 | 10人まで |
5t限定準中型免許 | 3.5t以上5t未満 | 2t以上3t未満 | 10人まで |
準中型免許 | 3.5t以上7.5t未満 | 2t以上4.5t未満 | 10人まで |
8t限定準中型免許 | 3.5t以上8t未満 | 2t以上5t未満 | 10人まで |
中型免許 | 7.5t以上~11t未満 | 4.5t以上~6.5t未満 | 29人まで |
大型免許 | 11t以上 | 6.5t以上 | 30人以上 |
そのため、準中型免許の5t限定が運転できる範囲は、車両総重量が3.5t以上5t未満、最大積載量が2t以上3t未満、乗車定員が10人までの車両となります。
なお、車両総重量、最大積載量、乗車定員は、運転免許証と、運転する自動車に車載されている自動車検査証に記載されています。
準中型免許5t限定:免許の取得方法
準中型免許の取得方法は、「免許を保有していない人」「2007年6月1日より前に普通免許を取得した人」「2007年6月2日から2017年3月11日の間で普通免許を取得した人」で異なります。
では、それぞれ解説します。
免許を保有していない人の場合
初めて運転免許を取得する場合は、自動車教習所に通ったあと、運転免許センターで試験に合格する方法が一般的です。
具体的な免許取得の流れは下記の通りです。
【指定自動車教習所】
- 指定自動車教習所に入校
- 適性検査を受験(視力・聴力検査など)
- 技能講習と学科講習を受講
- 技能終了検定(敷地内での運転試験)・仮免許学科試験を受験
- 仮免許証交付
- 技能講習(路上講習)・学科講習
- 技能卒業試験(路上での運転試験)
【運転免許センター】
- 適性検査(視力検査など)・学科試験を受験
- 準中型自動車免許証を交付
なお、教習の期限に関しては下記の通り規定が存在します。
- 教習期限:教習開始日より9ヶ月
- 卒業検定期限:全教習終了日より3ヶ月※その期限内に万が一教習が終了しなかったり、検定に合格しなかった場合はそれまでの教習が無効になる。
- 仮免許証の有効期間:6ヶ月
教習所に通学する場合は、上記の期限に関しても注意しなければなりません。
また、準中型免許の取得方法には「合宿免許」という選択肢も存在します。
合宿免許は、教習所の宿泊設備を利用しながら、短期集中で教習を進めるスタイルです。コスト面でのメリットや、短時間での取得を希望する人たちに支持されています。なお、取得の手順は、通常の教習所通学と大差はありません。
さらに、運転免許試験場での「一発試験」も選択肢の一つです。
この方法は、自分で学習してから、試験場で筆記と実技の試験を受ける形となります。一発試験のメリットは、教習所の受講料を節約できる点ですが、初心者にとっては準備が難しいと感じることが多いです。
つまり、準中型免許の取得には「教習所通学」「合宿免許」「一発試験」の3つの方法があり、どの方法でも試験に合格すれば免許を取得できます。
ただし、試験の中でも「技能試験」は難易度が高いとされています。合宿や教習所通学の場合、教習所のコースでの練習が多いため、合格しやすいと言われています。しかし、一発試験は慣れないコースでの試験となるため、他の方法と比べて難易度が高いと感じる場合が多いです。
このため、準中型免許の取得方法を選ぶ際には、各方法の特徴や難易度をよく理解し、慎重に選択することが求められます。
2007年6月1日より前に普通免許を取得した人の場合
2007年5月31日までに免許を取得した人は、現行基準の準中型自動車に加えて、車両総重量8t未満、最大積載量5t未満、乗車定員10人以下の中型自動車を運転することができます。
なお、免許証には「中型車は中型車(8t)に限る」と記載されます。
2007年6月2日から2017年3月11日の間で普通免許を取得した人の場合
2007年6月2日から2017年3月11日までに普通免許を取得した者は、2017年の法改正以降、「5t限定準中型免許」として扱われ、車両総重量5t未満、最大積載量3t未満の準中型車の運転が許可されます。
しかし、5tを超え、7.5tまでの車両を運転するための通常の準中型免許を取得するには、限定を解除する手続きが必要です。
この限定解除の手続きには、指定の教習所でのMT車は4時間、AT車は8時間の教習が求められます。その後、教習所の卒業試験をクリアすると、免許試験場での視力テストや適性試験を受けることになります。
これらの手続きを無事に終え、限定解除の手続きを完了させることで、限定解除が実現されるのです。
準中型免許5t限定に関するよくある質問
ここからは、準中型免許の5t限定に関する疑問について回答します。
「準中型免許の5t限定」に該当する人は、免許更新の際に適性検査の基準が変わりますか?
準中型免許の5t限定の適性検査については、改正前の普通免許と同じ合格基準で行うため、免許更新時の視力検査等の基準も改正前の普通免許と同様です。
準中型免許ができる前(法改正前)に普通免許を取得していた人はどういう扱いですか?
準中型免許ができる前に普通免許を取得していた人は、準中型(5t)限定免許とみなされ、下記の規格の車両を運転することができます。
- 車両総重量:5t未満
- 最大積載量:3t未満
- 乗車定員:10人以下
なお、現行の準中型免許の規格の車両を運転する場合には、限定解除が必要になります。
準中型免許を取得したら初心者マークが必要ですか?
令和2年12月の道路交通法改正により、改正施行後に準中型免許を取得して、準中型免許または普通免許を取得してから1年未満の人には、初心者マークの使用が義務付けられています。
初心者マークは、他のドライバーに対して運転経験が浅いことを知らせ、周囲の配慮を求めるためのものです。安全運転を心掛け、経験を積むことで、より確かな運転技術を身につけることができます。
準中型免許の5t限定についてのまとめ
今回は、準中型免許の5t限定について解説しました。
準中型免許の取得を検討している方、もしくは現在準中型免許の5t限定を取得している方は、本記事を参考にして、ぜひ準中型免許の取得や限定解除に挑戦してみてください。