物流業界

【取材レポート】運送会社経営者、必見!自社の生き残りを賭けるM&Aという選択肢

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2024年から施行される働き方改革関連法を前に、運送業界は大きな変化が求められています。

2024年4月から始まる時間外労働の上限規制によって、今までの業務フローでは業務が追い付かず、売上の減少や人手不足の加速、労働環境の悪化などが懸念されています。

2024年問題を前に、コンプライアンスや規制をどのようにクリアしていくのかが事業継続において大きな課題となっています。

M&Aを1つの選択肢にしませんか?運送経営者向けセミナーを取材

今回、編集部は株式会社fundbookが開催した「譲渡経営者が語る戦略的事業承継の選択~運送業界が直面する5年後の未来~」に参加しました。

ここではM&Aを活用した生き残り戦略について、実際に譲渡を行った運送会社経営者も登壇のもと、詳しく解説されました。本記事ではその内容をレポート形式で詳しく紹介していきます。

株式会社fundbookの概要

株式会社fundbookは、東京都港区に本社拠点を置く日本の独立系M&A仲介企業で、代表の畑野幸治氏が2017年に設立しました。

従来の属人的なM&A仲介の課題を解決するため、マッチングに自社開発のプラットフォームを活用したり、成約までを専門部門で連携しながらサポートするなど、独自のM&A仲介モデルを展開する企業です。

下記のロゴをクリックで、fundbookのコーポレートサイトに移動します。

M&Aについて詳しく知りたい方は、下記のリンクをご参照ください。
M&Aとは:https://fundbook.co.jp/what-is-ma/

運送業界の課題

多くの運送会社が2024年問題に直面しています。

しかし、問題はそれだけではなく、後継者不足もあります。運送会社の経営者の年齢層は55~65歳とかなり高いです。

事業を進めつつ、次の後継者探しを行わないといけない中、見つからず廃業に追い込まれているところも少なくありません。

また、2030年問題という新たな課題もあります。2030年問題とは、CO2削減に向けた取り組みとして、ガソリン車の新規販売を禁止することが発表されています。排ガス規制も進むため、今後は電気自動車への切り替えが必要となるでしょう。しかし、既存のトラックをEVに変えていくというのは自社の投資となるため、財政的に厳しい企業が多くあります。

この問題を解決するための1つとして、どこかの企業と組んで乗り越えるという方法があります。

それがM&A(企業の合併・買収)です。

国内のM&A件数の推移

近年国内のM&Aの件数は増えており、このコロナ禍でさらに加速しています。特に中小企業におけるニーズが高まっており、2011年は約1,900件から2020年では約4,000件と、この10年間で件数が2倍以上伸びています。

運送業界においては、2024年問題や2030年問題への対応が自社だけでは困難という理由から増加の一途をたどっています。

今後の運送業界の展望

現在大手運送会社では、トラックのEV化を進めています。例えば、日本通運では中型EVトラックを10台、トナミ運輸では2台、エスラインでは5台、ロジネットジャパンでは、EV軽自動車を試験導入しています。

また、そのほかでも、大手EC事業者が大手運送会社とタッグを組み、自社の物流化を進めている事例も多数あります。

例を挙げると、

  • Yahoo!とヤマト運輸が組み、ヤフーショッピングやペイペイモールの物流最適化を行っている
  • 楽天と日本郵政グループが合併会社「JP楽天ロジスティクス」を新設しました。現在は楽天市場を主に取り扱っていますが、将来的には他の事業者にもオープンなプラットフォームの構築を目指している
  • ファーストリテイリングと大和ハウス工業が共同出資による物流事業会社「オンハンド」を設立。東京の有明に大型物流倉庫を建設し、物流サービスの向上を目指している

などがあります。

これまで外注していた事業者が内製化すると、中堅中小企業の仕事量や売り上げへの影響は避けられません。

自社が生き残るためのM&Aという選択肢

後継者がいないからといった理由だけではなく、更なる発展や自社の生き残りのために戦略的なM&Aという方法の可能性が大きくなっています。

M&Aには、「会社にとってのメリット」と「経営者にとってのメリット」、「従業員にとってのメリット」と3者にとってのメリットがあります。

会社にとってのメリット

  • エリアや業績の拡大
  • コスト削減
  • 採用力の強化
  • 積載率や実働率の向上

経営者にとってのメリット

  • 個人保証や担保の解除
  • 創業者利益の確保
  • 後継者問題の確保

従業員にとってのメリット

  • ドライバーの待遇改善
  • 安定した雇用の確保

M&Aに成功した企業

fundbookを通じてM&Aに成功した企業があります。
それは有限会社六ツ星運送です。

六ツ星運送は徳島県で一般貨物運送を生業とする企業です。
代表の山本氏は30年前に休眠会社の営業権を譲受し、長らく六ツ星運送を経営していました。

今回、検討の末、2022年4月に京都府の株式会社五健堂とM&Aを実施しました。

その理由や経緯などについて、fundbookと山本氏の対談の一部を以下抜粋します。

質疑応答インタビュー

—M&Aを検討したきっかけはいつですか?

検討したのは約5年前です。
ただ、当初は譲渡ではなく、買収する側として考えていました。

—買収から譲渡に切り替えたきっかけはなんですか?

5年ほど前から運送業界の労働時間について、個人的に問題視していました。うちは長距離輸送を扱っているので、拘束時間や労働時間をなんとかしなければコンプライアンスを守って仕事していけないという思いがあり、最初は各拠点を設けるために買収を考えていたんです。
ただ、やはり名古屋や関東といった中継地点を一気に買っていくとなれば資金繰りにかなりの覚悟が必要です。

私はとにかく、会社を継続させることにこだわっていました。だからこそ、早めに手を打たないと先は見えていると思い、譲渡に方向転換しました。

—六ツ星運送においては、業績が好調でしたよね。あえて、このタイミングを選んだのはなぜでしょうか?

2024年になってからではもう遅い、と考えていたからです。

ビジネス自体には自信を持ってやってきましたが、「コンプライアンスだけは、どんなに考えてもクリアにできない」という悩みが自分にありました。そこを守れる企業にのみ、未来があるのです。だからこそ、利益を上げているうちにどこかのグループに入り、一緒に事業をやらせていただく展開を望んでいました。

—山本様には御子息が後継者として社内にいましたが、その関係は?

むしろ息子がいたからこそ、譲渡で会社を残すことを目指しました。
継がせる相手がいるからこそ、継続できる会社にしなきゃいけないと思ったんです。

—譲渡を検討するにあたって重要視したポイントは?

重視したのは運送の会社の継続と、社名を残すことです。
譲渡しても飛躍し続けたいという思いがとても強かったからです。

—譲渡しても経営には関わっていきたいという思いがあった?

株式の譲渡をすることによってどこまで変わっていくのか、当初は分かりませんでした。
ただ、譲渡しても経営には携わりたい、自分が描いた「事業所を日本各地に持ちながら会社が飛躍していく」という方向性を望んでいました。譲渡先の企業にも、当社をアテにしてほしいと願いながら譲渡先を探しましたね。

~M&Aを実施した後、会社の変化について~

—従業員に話したときの反応は、いかがでしたか?

発表後、一週間ほどかけて従業員一人ひとりと個別に話す機会を設け、譲渡に至った背景を説明しました。

会社の存続と発展を目指して譲渡に至った想いを各ドライバーや従業員に伝えると、その誠意もあってか全員が理解を示してくれました。結果として譲渡をきっかけに離職した従業員はゼロでしたね。

—社内で変化したことは?

まったくありません。当社の役員の異動もないですし、五健堂様からの役員なども入ってきていません。社内にはなんの変化も起きていないんです。

変化があるといえば、社長である私や役員である息子が本社(五健堂)の役員会に月1回、参加させてもらっているだけですね。

—M&Aを実施したいま、今後の展望は

今やっと落ち着きかけてきたところですが、名古屋と関東方面の拠点作りに向けて、fundbookさんに協力してもらいながら、今度は譲受側としてM&Aの準備を進めている最中です。

拠点作りの実現こそが、五健堂様とM&A(譲渡)をした理由でもあるので、2024年に間に合うように急ピッチで進めています。

~これからM&Aを検討する企業に向けてリアルな声を~

—M&A以外の選択は考えていた?

会社の存続と発展のためにありとあらゆることを考え抜きましたが、特に長距離輸送の仕事は考えどころがないんです。

毎日の仕事がケースバイケースであるがゆえ、労働時間の見当もつきません。一社だけで対応できる時代ではないと思うに至りましたね。

スーパーも個人店が減って大手スーパーが増えているとか、そういうのと状況は似ていると思います。

—M&Aを進める中で、悩んだことは?

私はあくまで会社を残したい、飛躍したい、と考えていました。会社の内情もみれば、実は去年は過去最高の利益も出していたんです。そのため、内心まだ頑張れたかなあという思いも少しはありました。ですが、「上手くいっているうちに譲渡すべき」と考えたんです。

私も様々なセミナーに参加して知ったのは「会社も株と同じ」ということです。上昇しているときに売却すればいいが、下降しているときに売却すれば損をする。それで言うと、今回苦労することはなかったですね。

—M&Aをこれから検討する方に向けて伝えたいこと

特に長距離やってる運送会社は、今後ますます厳しい時代になってくると思います。
一社で解決しようと考えるから、答えが出ずに振り出しに戻ってしまうのです。「ダメになったらその時はやめたらいい」という経営者も時々聞きますが、それだけは考えてほしくないと私は思います。

会社には従業員がいます。私も譲渡を説明する際、とある従業員に「いけるところまでやっていこうよ」と言われました。けど、いざいけなくなったときに困ってしまうのは従業員です。私は、従業員や後継者のことを念頭に置いて、譲渡を決めました。

コンプライアンスを守れていないと、労働監督署によって営業停止させられてしまいます。従業員の生活の支えをする義務が経営者にはありますので、それを考えながら判断してもらいたいですね。

編集部のまとめ

M&Aというと会社が買収される、自社を乗っ取られるのではないかといったマイナスのイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、譲渡先との相性や交渉次第では、理想の形で会社の生き残りに成功することもできます。

事業を継続していくことは会社の看板だけでなく、従業員の生活を守ることにも繋がります。2024年問題や2030年問題を前に、自社が生き残っていくための戦略方法としてM&Aを検討してみてはいかがでしょうか。

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クロスワーク編集部

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