物流業界

【取材レポート】実際、AIってどこまで出来るの?物流DX推進に不可欠なAIについてソホビービーが解説

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物流業界において、昨今話題になっているのが2024年問題です。

2024年問題とは、2024年の4月から施行される働き方改革関連法において、時間外労働の上限規制がかけられる問題のことです。

これによって、物流業界には売上の減少や人員不足の加速など、さまざまな問題が発生すると予想されています。

こういった問題への対策として、物流業界のDX化が注目を集めています。そこで今回、クロスワーク・マガジン編集部は物流現場でのAI導入をテーマに扱ったソホビービー株式会社のセミナーを取材してきました。

ソホビービーは、クラウドシステム導入コンサルやAIプラットフォーム「HAMPANAI AI」の開発を手がける会社です。

AIを導入することでどんな変化があるのか、セミナー内容を詳しくレポートしていきます。ぜひ最後まで読み進めてください。

AIの定義

AIとは「Artificial Intelligence」を略した言葉で、通称「人工知能」と呼ばれます。

ディープラーニング(深層学習)を重ねることで、学習・処理・品質向上が自動的に行えるものです。

簡単にいうと、AIは人間の考え方を人工的に行うものです。そのため人間と同様、手順や手間がかかる複雑な作業はAIにとっても簡単ではありません。

一方で、AIが得意とする作業タイプもあります。

たとえば、傷や印字不良がないかのダブルチェック、長時間の監視といった「単純だけどめんどくさい」作業や、検品や判定、梱包といった「人によって差が出る」作業には、AIが適しています。

特にAIが優れているところは、常に高品質で速度感や臨機応変性を保ったまま作業が行える点です。

人間の場合、いくら優秀であっても、疲れや体調が悪いなどといったその日のコンディションによってスピードが落ちたり、ミスが発生します。つまり、精度や速度は良くも悪くも個人に依存します。しかし、AIには、そういった心配がありません。

AIを導入することで、人物依存からの脱却、採用コストの削減、人手不足の解消といったさまざまなメリットがあります。

3 Stepを知って、自社へのAI導入を具現化しよう

AIが優秀であることは理解できていても、「どのようにAIを活用すればいいのか」「そもそも自分の会社にAIが必要なのかわからない」といった疑問を持たれていませんか?

実は、自社の現場でAIが稼働できるかどうかの判断には、以下の適切な3つのステップがあります。

  1. AIの性能や事例を把握
  2. 予算とROI(投資収益率)の把握
  3. 導入するまでの流れと期間を把握

順を追って、詳しく説明していきます。

Step 1.AIの性能や事例を把握

物流業界において、AIは既存のシステムに組み込むことができます。ここではWMS(倉庫管理システム)とWCS(倉庫制御システム)のTMS(配送管理システム)への組み込み例を紹介していきましょう。

WMS(倉庫管理システム)

WMSは主に商品や在庫の動きを管理するものです。導入することで倉庫にある膨大な在庫の管理を可能にします。

しかし、予測誤差による人員やコストのロスが発生する問題や使える人員不足、EC利用拡大による物流増加などさまざまな課題を抱えていました。

特に予測機能において、WMSは単純なルールベースの予測で臨機応変な対応や過去データから予測を行うことは出来ませんでした。

一方、AIは機械学習を行い、過去データから未来を予測することができます。単純に商品が減った分の補充を指示するのではなく、減り方の変化から今後の売れ行きの変化を予測できます。

これまで人間が担当していた業務をAIが代行できるため、仕事の品質向上を行えるようになります。

WCS(倉庫制御システム)

WCSはコンベアや自動制御ロボットなどのシステムと連携したマテハン設備のことを指します。

近年では自律走行型ロボットなどの活躍もあり、AIが最も融合している分野の1つです。

WCSを導入する前は、人間の手で作業を行っていたため、作業スピードや品質のばらつきがありました。また、最低賃金の向上などによって人件費の高騰といった問題も発生していました。

WCSが導入されたことで大量生産が可能となり、品質も均一化されました。

しかし、一度マテハン機器を導入すると他の機器への変更を行うことがコスト的に難しく、時代の物流事情の変化に柔軟に対応しにくいというデメリットがありました。

ところが、WCSにAIが加わる際は既存の環境で導入できます。そのため、新たにレーンを設置するなどといった、大がかりな工事は必要ありません。

事例として、ソホビービーが開発した『HAMPANAI AI』を紹介します。

HAMPANAI AIは、業務効率化や人手不足といった課題のソリューションを提供するAIプラットフォームです。

WCSに、このHAMPANAI AIの技術を活用することで、不良品を判定する画像検査サービスなどが開発できます。

ラベル剥がれや印字不良といった不良品は通常、複数人体制で行われますが、

「年末年始に人が集まらない」
「作業員の検査の質にバラつきがある」
「作業員の入れ替わりが激しく、そのたびに採用コストや教育コストがかかる」

といった問題があります。

そうした問題へのソリューションとして、HAMPANAI AIを利用することを検討できます。
利用者からは下のような報告が寄せられています。
「作業員の人数を8人から1人にできた」
「1箱12本入りのペットボトルの検査時間が約35秒と大幅に短縮できた」
「判定精度が99%とかなり高精度になりました」

HAMPANAI AI技術と連携した不良品判定ロボット

また、AIは使えば使うほど精度が上がっていくという特徴があります。

データを蓄積するごとに不良品の判定データが溜まっていくため、判定精度も徐々に上がっていきます。

TMS(配送管理システム)

TMSではチャットボットによって再配達の自動化やシステム化が可能となりました。

また、配車計画やドライバーの割り振り、走行ルートのシミュレーションやドライバーの日報管理などを行うようになりました。

人員不足や人件費のコストカット問題などを解決できるため、今物流業界で最も注目を浴びています。

これにAIを組み込むことで翌日手配の最適化や積載率の最適化、乗務員の時間管理などが行えるようになります。

ただし、TMSは内容が細かいため、設定をカスタムする必要があります。そのため、人間がやる作業とAIがやる作業の区別があいまいになりやすいという欠点があります。

AIの性能や事例の把握のまとめ

要点をまとめると、以下の通りです。

  • 物流業界のAIは新規構築ではなく、既存のシステムに組み込むことができる
  • ベテラン社員や人海戦術に頼っていた業務をAIが代行できる
  • 人では処理できない、蓄積データをAIは処理できる

AIは、物流業界においては既存システムの活用によって初期導入のハードルが抑えられるほか、精度を上げていくことでベテラン社員や人手を必要としていた業務を担うことができます。

Step 2.予算とROI(投資収益率)の把握

AIが実現する機能が理解できたところで、次に気になるのは導入費用です。

AI導入は商品によって大幅に費用が異なるため、ここでは具体的な金額については明示しません。ただし、導入前に覚えておきたいことは、AIは1回導入して終わりではないということです。AIによって出来ることは異なるため、自社に導入すべきAIを適切に把握し、事例や効果を調査する必要があります。

実は物流業界の場合、目的(解決したい課題)さえ明確になれば、他業界よりも予算を抑えてAI導入できる可能性があります。

なぜかというと、物流業界にはもともと既存システムが存在し、また抱えている課題も業界内で類似していることが多いためです。

そのため、導入する目的がすでに開発されたAIで賄える場合、パッケージ商品やサブスクリプションモデルの商品を導入することによってコストを抑えられることもあります。

また、ROI(投資収益率)では、

  • AIを使って「何をどれくらいの数値に改善したいのか」
  • 投資費用を「どれくらいの期間で回収できるのか」

を念頭に把握することが重要です。

これらを正確に把握するためには、現場から直接話を聞いて自社内での意見を1つにまとめることが重要です。

IT業界には、「PoC死」という言葉があります。AIを導入する前に、「AIがどれくらいの数値を出せるのか」を検証する作業をPoCといいます。PoC死は、このPoCに費用と時間を費やしてしまい、結局計画がロストになることを指します。

実際のPoC検証作業の様子

これは、AIを導入したい企画部や上層部と、現場の認識(目的)が違った状態でプロジェクトが進むことで起こってしまいます。

そのため、AI導入前には、まず経営側と現場が密に話をコミュニケーションをとることが重要になるのです。

また、AIを導入する際には、それによって獲得したい具体的な数字・インパクトをあらかじめROIで決めておくべきです。

例えば、最低でも不良品の検知率を99%以上にしたい場合、AIが代用することで人件費として120人分(≒1.2億円)/月のインパクトが生まれます。

Wチェック用途として機械学習モデルを取り入れた場合、お客様への付加価値向上として最終的に500万円/月ほどのインパクトがある、などです。

収益だけでは予算の回収は難しいので、工数の削減状況など、全社のオペレーションにもたらすインパクトも加味することが大切です。

Step 3.導入までの流れと期間を把握

AIの導入前の期間について、結論から言うと以下の通りです。

  • 最短で2週間
  • 案件によっては1年以上かかることもある
  • 平均すると4~6ヶ月

この導入までの期間を決める要素は3つあります。

  1. 使用するAIの種類
  2. データの回収速度
  3. 連携システム

順を追って説明していきます。

使用するAIの種類

構築済みのパッケージ製品、WMSやAMR、チャットボットは時間がかかりませんが、オリジナルのAIを導入する場合は要件定義から始める必要があります。その場合には、要件定義と準備に時間がかかります。

ソホビービーのHAMPANAI AIの場合、PoCに1ヶ月、本導入までに1~3ヶ月程度となります。

データの回収速度

たとえば不良画像の判定にAIを導入する場合、あらかじめ学習に使用できる画像を正規品・不良品ともに50~200枚用意する必要があります。どのような画像が正規品でどこの箇所が不良品にあたるのか、事前に情報を準備しておくことでスムーズな導入に繋がります。

システム連携

連携するシステムの数やデータ・項目の数はシステム開発の調整が必要になり、だいたい1ヶ月程度かかります。その際、「どこまでを人がやり、どこからを自動化させるか」をあいまいにしてしまいやすく、導入後の完全自動化に遅れが生じやすくなります。システム連携までにAIに求める自動化の範囲を明確にしておくことで、自社の求める要件に沿ったAIのスムーズな導入が実現しやすくなります。

セミナーのまとめ

今回のセミナーのまとめは以下です。

①AIの性能や事例の把握
→AIが何をできるのかをしっかり情報収集をして知っておくこと

②予算とROIの把握
→利益で予算の回収を図るのではなく、AIを導入することで得られるコストカットと付加価値を根本としておく

③導入するまでの流れと期間を把握
→導入する期間は案件によって異なる。

ソホビービーでは、コストを抑えた提案も可能です。

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