自動車整備業界の人材不足は慢性化しつつあり、重要な経営課題になっています。今後も整備士の数は年々減少することが見込まれており、整備工場を営む経営者の皆様は人材確保に苦慮されているのではないでしょうか。
そこで今回、自動車整備士の人材不足を解消する選択肢の一つとなりうる外国人技能実習制度について、株式会社ナルネットコミュニケーションズ(以下、ナルネット)の「整備士不足解消の選択肢 その1 <技能実習制度を正しく知る>」を取材しました。
需要が高まりつつある技能実習制度と、外国人採用の特徴や注意点について、セミナー内容を以下に詳しくレポートしていきます。
外国人採用の需要拡大の背景
少子化に伴い、日本国内の生産人口は年々減少しています。
2030年には約300万人減少すると予想され、国の方針としてそのうちの200万人を外国人材で補おうとしている現状です。
そこで、近年話題になっているSDGsを意識し、持続可能な社会貢献と事業継続の両立を兼ね備える外国人材確保スキームに注目が集まっています。
では、特に技能実習制度が注目される理由はなぜなのでしょうか?
大きな理由としては、モータリゼーションの進展を見せる東南アジアなどの国々において自動車整備業は盛り上がりをみせており、そこで日本が誇る高い自動車整備技術の移管が注目されていることが挙げられます。そのため近年、現地諸国で技能実習制度が注目され、技能実習生の受け入れが増えているのです。
人材不足解消のキーは外国人材の確保にある?
冒頭でもありましたが、自動車整備士の人材不足解消の選択肢の一つとなりうるのが、外国人採用です。
自動車整備業界でも人材不足が話題になっている中で、技能実習生という言葉を聞く機会が増えています。
日本でも技能実習生が年々増えており、今後もその数は増えていくといわれています。
「技能実習生が日本で増えているのは知っているが、そもそも技能実習制度がどんな制度で、どのように活用するのか分からない」といった方もいますよね。
次に、技能実習制度について詳しく説明します。
技能実習制度とその目的とは?
技能実習制度とは、日本と提携している国の外国人が日本に来て技術を学び、母国の発展に寄与することを目的とした制度です。
労働能力としての見方が強まっていますが、本来は技術を学ぶための制度です。
技能実習制度の本来の理解が異なると、受け入れ後のトラブルの原因になる可能性があるため、ご注意ください。
近年では技能実習生を受け入れることにより、人手不足の解消に役立つと考えられ、受け入れを前向きに考えている企業も増えています。
そのため、業界全体としても今後の自動車整備業界の担い手として外国人材の受け入れ活用を推進しています。
技能実習生受け入れまでの流れ
実際に技能実習生の受け入れを検討される方へ、受け入れまでの流れを以下に説明します。
申し込み
まず、技能実習生を受け入れるには、日本の「監理団体」と呼ばれる非営利組織を通じて、提携している国の送り出し機関に申し込みをする必要があります。
気になる方は、公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)で送り出し機関の一覧を見れますので、下記のリンクからチェックしてみてくださいね。
https://www.jitco.or.jp/regulation_skill_service/
面接
続いて、申し込みが完了したら面接を行います。
申し込みからおよそ3〜4週間で技能実習の候補者が集まります。ナルネットが業務提携しているリネットジャパングローバルスタッフ株式会社(以下、リネット)の場合、自動車整備について学んでいる、もしくはすでに現地工場で働いている若い人材が候補として集まるため、日本の人材と比べて遜色はありません。
自動車整備士の技能実習生候補は、教育面が充実していることからフィリピン、カンボジア、ベトナムの方が多いといわれています。候補者が集まったら、WEBもしくは現地で面接を行います。
その中から補欠を含め5人ほど人材を決めていただくという流れになります。
実習開始まで
晴れて受け入れる技能実習生が決まると、受け入れの準備に進みます。
最初の申し込みからおよそ6〜8ヶ月で技能実習生が入国します。それまで、技能実習生は日本語を覚えるために現地で入国前の日本語講習を受講します。
さらに、入国後1ヶ月間の講習を受講してもらい、講習を受けた翌月に技能実習生として配属となります。
実習期間は3年または5年で、技能実習生の場合は転職などで急に人材が欠ける懸念がありません。また、優秀な技能実習生に継続して勤務してもらいたい場合には、特定技能という制度を利用してさらに5年延長してもらうことも可能です。
また、技能実習生が困りごとや悩みごとを相談できるよう、監理団体には母国語対応でのオンラインやコールセンターでのサポート対応もあります。技能実習生は一人で悩みを抱えることなく、安心して日本で生活できる仕組みが整っています。
かかるコストはどのくらい?
次に気になるのが、受け入れに際して発生するコストですよね。
まず大前提として、技能実習制度はコストを抑えるための方法ではありません。あくまで、技能実習生に技術を学んでもらうことが目的です。教えるべき仕事についても、用意されている計画書に沿って仕事をしていただきます。
実際のコストは、監理団体によって異なりますので、各監理団体へご確認ください。
現地の人材送り出し機関
技能実習制度の活用に際して、技能実習法という法制度があることをご存じでしょうか?
技能実習法とは、母国で同様の職業に携わっているもしくは学んでいる人が対象になり、労働職業訓練省と連携し研修を実施する仕組みのことです。
カンボジアを例に、ここからは現地の送り出し機関について、リネットの説明内容をご紹介します(※他の送り出し機関も同様とは限りませんのでご注意ください)。
カンボジアでは、トップレベルの工科大学や職業訓練校の自動車工学科といった恵まれた環境の中で実践トレーニングを行っています。
この研修では、日本で新人が行う多頻度作業を安全かつ正確に作業ができるように、独自の80時間プログラムを実施しています。そのほか、e-ラーニングといったコンテンツも充実しています。
また、自動車工学を1年間学んだ学生に、基礎知識や安全衛生、現場で使う日本語、多頻度作業、点検などを学んでもらいます。その際、日本人2級整備士講師が入国前講習として直接教えるので、質の高いレベルで研修が実施されています。特に、良好なコミュニケーションをはかるためには日本語の習得が必須です。技能実習生は3ヶ月の日本語教育完了後、翌月に語学試験を受験します。万が一、不合格だった場合も、6ヶ月目に再受験できるので心配いりません。
入国前に、こうした手厚いサポートを現地で行ってもらえるのはありがたいですよね。
受け入れ企業が気を付けること
企業側が注意しなければならないこととして、
- コミュニケーションを大切にすること
- 送り出し機関の選択に気を付ける
以上の2点があります。
まず、当たり前のことではありますが、コミュニケーションを積極的にとっていく必要があります。日本人でも、職場でのコミュニケーションがあまりとれず、意思疎通ができなくて辞めるといったケースは少なくありません。積極的にコミュニケーションをとることで、技能実習生の職場での居心地の良さにもつながるので大切にしてください。
次に、申し込みをする際、送り出し機関の選択に注意が必要です。中には、借金問題に関与して、日本に来ても稼げないくらいの金額を投じてくるような機関もあります。そのため、法律に従って正しく実習生の送り出しを行っている機関を選択することが重要です。
また、テレビなどで、技能実習生の失踪ニュースを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
ただし、実際のところ、技能実習生の失踪率は全体のわずか約2%です。98%の実習生は、受け入れ企業で期間が満了するまで実習生活を送ることができています。重要なのは、受け入れ企業が責任を持って、実習生の不安を少しずつ解消してあげることです。
コミュニケーションを大切にし、企業と実習生がお互いを尊重しあいながら仕事を進めることで、このような悲しいトラブルを回避することができます。
技能実習生の受け入れならナルネットコミュニケーションズがおすすめ
ナルネットが業務提携しているリネットは、企業での外国人採用の動きが加速しているなか、入国前でなく、配属後もサポートを続けて欲しいという声に応えるため、2000年に設立されました。
現地での採用から入国・配属後の定着まで、リネットジャパングループ各社とともに、ワンストップでサービスを提供しています。
実際に、JICAを通じた長年の現地貢献活動からカンボジア政府の信頼を獲得しています。現地の国立職業訓練大学校(NPIC校)内に送出し事務所を設置し、同訓練校の卒業生を中心に質の高い候補者を選定し、徹底した入国前研修を行っている機関です。
また、職場への不安から起こる技能実習生の失踪問題に関しても、リネットは監理団体と日頃から連携することで離脱者をゼロに抑えています。そのため、信頼実績の高い送り出し機関といえます。
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編集部のまとめ
近年は男性だけでなく、女性の整備士も増えています。実際に、日本でも京都府で女性の技能実習生が活躍しています。例えば、女性専用の更衣室の用意や日本人女性スタッフのサポートがあることで、女性が活躍できる環境づくりが施されています。
周囲の支援があれば男女関係なく、純粋に自動車が大好きな若者が、技能実習生として日本に来て技術を学び活躍してくれるでしょう。
日本の整備技術を世界に広め、また、自社の整備士不足解消の一助ともなりうる技能実習制度を前向きに検討してはいかがでしょうか?