「1級自動車整備士を取得したいけど、難易度が気になり挑戦するか迷っている」などと考えている人もいるでしょう。
実際、1級は自動車整備関係の中で最も難易度の高い国家資格です。
合格率は25%から45%程度と言われています。
この記事では、1級の試験の難易度・合格率・受験資格など知っておきたい情報を包括的に解説します。
また、仕事内容や待遇についても触れるので、ぜひ参考にしてください。
難易度が高いと言われる1級自動車整備士の合格率
1級は、自動車整備関係の中で最も難易度の高い資格です。
- 全体の合格率:25〜45%
- 筆記試験の合格率:50〜60%
- 口述試験の合格率:95〜97%
- 実技試験の合格率:35〜64%
それぞれについて解説します。
全体の合格率:25〜45%
1級自動車整備士の合格率は、25〜45%程度と言われています。
1級の試験は、大きく分けて学科と実技の2つです。さらに、学科は筆記と口述に分かれています。
ただし、実技は、一種養成施設又は二種養成施設の所定の課程を修了していれば、2年間は免除されます。
たとえば、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会の技術講習です。
筆記試験の合格率:50〜60%
令和4年度第2回筆記試験の合格率は53.0%です。
また、令和3年度第2回の合格率は59.0%でした。
筆記試験の合格率は、おおむね50%~60%前後を推移するケースが多いようです。
口述試験の合格率:95〜97%
2級や3級の学科で、口述試験はありません。
しかし、1級の学科に限り、口述試験が設けられています。
令和4年度第2回口述試験の合格率は97.6%です。
また、令和3年度第2回の合格率は95.1%でした。
口述試験は受験した人の大半が合格しています。
したがって、学科試験に合格するには、筆記の対策が特に重要と言えるでしょう。
実技試験の合格率:35〜64%
令和4年度第2回実技試験の合格率は64.3%です。
また、令和3年度第2回の合格率は56.1%でした。
さらに、令和2年度第2回の合格率は35.5%でした。
したがって、年度によって実技試験の合格率は大きく異なっていると言えるでしょう。
参考:令和4年度第2回|一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
参考:令和3年度第2回|一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
1級自動車整備士の難易度以外に知っておきたいポイント
1級を目指すにあたって、難易度以外に認識しておきたいことは次の通りです。
- 1級自動車整備士の定義
- 1級自動車整備士の種類
- 2級自動車整備士との違い
- 1級自動車整備士の仕事内容
- 1級自動車整備士の待遇
それぞれについて解説します。
1級自動車整備士の定義
1級の定義は、取り扱える車種や作業内容の広さで表せます。
具体的には、1級を取得していると、ガソリン車・ディーゼル車・ハイブリッド車・電気自動車・水素自動車など、あらゆる車種の整備ができます。
また、民間工場ならびにディーラーなど、さまざまな自動車整備工場で資格を活用した勤務が可能です。
1級自動車整備士の種類
1級は3種類に分類されています。
- 1級小型
- 1級大型
- 1級二輪
それぞれについて解説します。
1級小型
1級小型は総重量8t未満・最大積載量2t以下・乗車定員11名以下の普通自動車、四輪・三輪の小型自動車、さらには軽自動車を整備できます。
1級では、ガソリン・ジーゼル・シャシの区分がなく、すべての車両を整備可能です。
1級大型
1級大型はバスやトレーラーなどの、総重量8t以上・最大積載量2t以上・乗車定員11名以上の車両を整備できます。
しかし、1級大型の試験はまだ実施されておらず、資格取得者は存在しません。
1級二輪
1級二輪は、二輪自動車全般を整備できます。
しかし、1級二輪の試験はまだ実施されておらず、資格取得者は存在しません。
したがって、『1級=1級小型』と認識されているケースが一般的です。
2級自動車整備士との違い
2級は、次の4種類に分けられています。
- 2級ガソリン
- 2級ジーゼル
- 2級シャシ
- 2級二輪
したがって、二輪と三輪・四輪以外の区分に加えて、エンジンごとに資格が異なります。
しかし、1級は、小型・大型・二輪の区分のみです。そのため、1級があれば、どのエンジンの車両でも整備できます。
また、近年では電気自動車や自動運転システムを搭載した自動車など多種多様です。したがって「今後、1級の価値が高まる」との声も多くあるようです。
他には2級の合格者数は年間20,000人程度いますが、1級は年間1,000人程度にとどまっています。
参考:自動車整備士技能検定の申請者数及び合格者数|国土交通省
1級自動車整備士の仕事内容
1級があれば、点検・修理・整備など、幅広い業務を担当できます。
具体例は、次の通りです。
業務区分 | 業務内容 |
点検 | エンジン・ブレーキ・サスペンション・電気系統などの部分をチェックし、異常があれば修理や調整ができます。 |
分解整備 | 故障した部品を取り外し、修理または交換ができます。たとえば、エンジンのオーバーホール、トランスミッションの修理、ブレーキの整備などです。 |
板金・塗装 | 車体の修理や塗装ができます。具体的には、事故で損傷を受けた車両の修復や、塗装の仕上げ作業です。 |
1級は、自動車に関するほとんどの業務を担当できます。しかし、検査員の検査業務のみ担当できません。
1級自動車整備士の待遇
厚生労働省が公開している令和4年賃金構造基本統計調査の結果を踏まえた自動車整備士の平均年収は、次の通りです。
年代 | 平均年収 |
~19歳 | 249.28万円 |
20歳~24歳 | 325.84万円 |
25歳~29歳 | 385.58万円 |
30歳~34歳 | 457.55万円 |
35歳~39歳 | 511.19万円 |
40歳~44歳 | 527.98万円 |
45歳~49歳 | 541.09万円 |
50歳~54歳 | 529.13万円 |
55歳~59歳 | 516.32万円 |
60歳~64歳 | 399.21万円 |
65歳~69歳 | 347.54万円 |
70歳~ | 305.63万円 |
しかし、自動車整備士の平均年収には、1級以外の資格保持者も含まれています。
1級に限定すると、もう少し平均年収は高くなるでしょう。
参考:自動車整備士 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
難易度が高いと言われる1級自動車整備士の受験資格
1級の受験資格は、受験者によって異なります。
次の3つの視点で1級の受験資格について解説します。
- 学校に通う場合
- 独学で受験する場合
- 実技が免除される人もいる
学校に通う場合
学校に通う場合、大きく分けて2つのケースです。
- 一種養成施設(整備専門学校・高校・職業能力開発校など)
- 二種養成施設(各都道府県自動車整備振興会の自動車整備振興会技術講習所)
一種養成施設で養成課程を修了した場合、実務経験がなくても1級の受験資格を得られます。
一種養成施設ならびに二種養成施設で養成課程を修了した場合、修了後2年間は実技試験が免除されます。
二種養成施設での学習の場合は、2級を取得後、3年の実務経験が必要です。
参考:受験資格について|国土交通省
参考:自動車整備士養成施設について|国土交通省
独学で受験する場合
独学で1級を受験する場合、2級の取得後、3年の実務経験が必要です。
難易度が高いと言われる1級自動車整備士の試験概要
1級の試験は学科と実技の2種類です。また、学科は筆記と口述に分かれています。
- 筆記試験
- 口述試験
- 実技試験
それぞれの試験概要について解説します。
筆記試験
筆記試験の内容は次の通りです。
- 構造・機能および取り扱い法
- 点検・修理・調整および完成検査の方法
- 整備用機械に関する初等知識
- 整備用の試験機・計量器および工具の構造・機能および取り扱い法
- 材料および燃料油脂の性質および用法
- 図面に関する一般知識
- 保安基準その他の自動車の整備に関する法規
口述試験
口述試験の内容は次の通りです。例年、問題が2つ用意されています。
- 故障診断(問診)
- 整備内容説明の問題
実技試験
実技試験の内容は次の通りです。
- 基本工作
- 点検・分解・組立て・調整および完成検査
- 修理
- 整備用の試験機・計量器および工具の取り扱い
難易度が高い1級自動車整備士の過去問
一般社団法人日本自動車整備振興会連合会のホームページ内に過去問題が掲載されています。
例として、令和4年度第2回筆記試験の第二問を紹介します。
デジタル式サーキット・テスタに関して述べた(イ)から(ハ)の文章の正誤の組み合わせとして、適切なものは(1)から(4)のうちどれか。
(イ) 電源電圧が5Vで、抵抗値500kΩの抵抗2個を直列に接続した回路で、片方の抵抗の両端に内部抵抗50kΩのテスタ(電圧計)を接続したとき、計算で求められるテスタの表示値は、約1.66Vになる。
(ロ) クレスト・ファクタとは、デジタル・テスタがもっている交流波形に対する測定能力を表すもので、交流測定時、交流波形の波高の最大値(P)と実効値(RMS)との比(最大値/実効値)を係数で示しており、正弦波の場合、「P/(P/√2)=√2≒1.414」の式で表わされる。
(ハ) テスタの直流電圧表示値が12.494Vのとき、直流電圧計の性能表に確度が50Vレンジで「0.03+2」と記載されていた場合の実際の電圧値は、12.488V~12.500Vの範囲になる。
(1)(イ)正 (ロ)誤 (ハ)正
(2)(イ)誤 (ロ)正 (ハ)正
(3)(イ)誤 (ロ)正 (ハ)誤
(4)(イ)正 (ロ)誤 (ハ)誤
出典:令和4年度第2回自動車整備技能登録試験 「学科試験」の問題と解答について 一級小型自動車(筆記)|一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
1級自動車整備士の難易度に関するまとめ
今回は、1級自動車整備士の難易度・合格率・受験資格などについて解説しました。
1級自動車整備士は自動車整備関連で最も、難易度の高い国家資格です。
令和4年度第2回の試験別の合格率は、次の通りです。
- 筆記試験:53.0%
- 口述試験:97.6%
- 実技試験:64.3%
ただし、一種ならびに二種養成施設で養成課程を修了した場合、修了後2年間は実技試験が免除されます。
また、1級自動車整備士の難易度は高いですが取得できれば、取り扱える車両が多かったり担当できる業務が広がったりするメリットがあります。
1級自動車整備士の取得を検討しているのであれば、挑戦してはいかがでしょうか。
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