「電気工事施工管理技士」と聞いて、どんな仕事をしているのかをすぐに思い浮かぶ人は、少ないかもしれません。
電気工事施工管理士は、建築物や施設の電気工事に関する仕事を行う人ですが、活躍の場面は多岐に渡ります。
本記事では、電気工事施工管理技士とは何か、資格取得の難易度や1級・2級の違い、年収などを紹介します。
また、電気工事施工管理技士になるメリットや取得方法も解説するので、参考にしてください。
電気工事施工管理技士とは
電気工事施工管理技士とは、建築物や施設の電気工事において、施工管理や安全管理を行う資格を持った職種のことを指します。
電気工事施工管理技士の主な仕事は、工程管理、原価管理、安全管理、品質管理が基本となります。
電気工事施工管理技士は、電気設備の専門家として現場で指揮を執り、工事が計画通りに進行し、安全かつ効率的に完了するように努めるのが役割です。
【電気工事施工管理技士の主な仕事内容】
- クライアント(発注者)との連絡業務
- 役所の担当部署への申請書の作成、申請
- 工事日程や内容を下請け業者などへ伝達
- 施工現場や周辺の調査
- 作業工程の作成、管理
- 電気資材などの発注、調達
- 現場の安全管理
- 見積もりの作成
国土交通省管轄の国家資格である
電気工事施工管理技士は、国土交通省管轄の国家資格のひとつです。
電気工事施工管理技士は、電気工事の施工における安全性や作業の進捗をスムーズに行うために、工事全体を管理します。
この資格を持つことで、電気工事の管理や監督業務を行うことができるほか、独立して施工業者としても活躍することができます。
1級と2級とがある
電気工事施工管理技士の資格には、1級と2級があります。
1級と2級の大きな違いは、携われる現場の規模の大きさと権限です。
建設現場では「監理技術者」か「主任技術者」を置くことが必須ですが、1級電気工事施工管理技士は両方の役割を担うことができます。
また、総額4,500万円以上の大規模な電気工事現場に携わることも可能です。
電気工事施工管理技士ができること
電気工事施工管理技士の資格を得て、経験を積んでいくことで、以下のような工事を担当することができるようになります。
発電設備工事
発電設備工事とは、自家発電を有する施設の常用発電設備と非常用発電設備を設置する工事です。
災害時などの非常時に、自家発電で対応しなければならないと消防法で定められている工場や病院、学校、大型ショピングモールなどで需要の高い仕事です。
変電設備工事
変電設備工事は、電力の変換や配電を行うための設備を構築する工事のことです。
発電所から送られてきた高電圧の電気を、施設内の変電設備で通常使用できる電圧に変換する設備を作らなければなりません。
変電設備工事は、電力の供給や安定供給を確保するために不可欠な作業であり、産業施設や商業施設、住宅など様々な場所で行われます。
照明設備工事
照明設備工事は、建物や施設に照明設備を取り付ける作業を指します。
照明設備の配置や種類を決定し、設計図を作成し、照明効果や照度など、照明に関する計算、照明器具を安全に取り付けるための配線の確認を行います。
照明のプランニングなども含まれるため、設備を作る技術だけでなく、美的センスも必要です。
送配電線工事
送配電線工事は、電力会社や施設管理会社が行う電力供給のための線路や設備を取り扱う工事のことです。
主に送電線や配電線、電柱の敷設や修理、交換、増設などが含まれます。
送配電線工事は電力の安定供給を確保するために重要な役割を果たしている仕事です。
構内電気設備工事
構内電気設備工事は、建物内部の電気設備を設計・施工する工事のことです。
これには、配電盤や電灯、コンセント、スイッチなどの電気機器の設置や配線工事、点検・保守などが含まれます。
構内電気設備工事は、建物の電気設備を適切に設置し、安全かつ効率的に利用できるようにするために重要な工程です。
電車線工事
電車線工事は、鉄道の電化設備を整備・更新するための工事であり、電車が安全かつ効率的に運行できるようにするために行われます。
主な工程は、変電所から送られてきた電力を、電車の上に備え付けられているパンタグラフを通して電車に送る電車線の撤去・新しい電車線の敷設です。
また、架線や電柱の修復・更新、変圧器や分電盤の取り付けなどが含まれます。
電車線工事は、交通インフラの維持や向上に重要な役割を果たす作業であり、安全性や効率性の確保が求められます。
信号設備工事
信号設備工事とは、道路や鉄道などの交通路における信号機や標識、誘導灯などの設置や改修工事のことを指します。
主に鉄道電気整備の専門の会社が請け負うことが多い工事で、専門知識や技術が必要な作業であり、安全性の確保が重要な要素となります。
電気工事施工管理技士の資格取得の難易度
電気工事施工管理技士の資格取得の難易度は高いと言えます。
電気工事施工管理技術検定には1級と2級があり、それぞれ第一次検定と第二次検定があります。
まず第一次検定に合格したら「電気工事施工管理技士補」を称することができ、その後第二次検定に合格すると晴れて「電気工事施工管理技士」を名乗ることができるようになります。
第一次検定の電気工事施工管理技士補の試験は、午前・午後で計4時間半ほど設けられており、全体での正答率が60%を越えなければなりません。
それに合格後、第二次検定の電気工事施工管理技士の試験は全国10地区の会場で行われ、約3時間、こちらも60%以上の正答率が必要です。
なお、令和元年度~令和5年度までの1級電気工事施工管理技士試験の合格率は以下の通りです。
【第一次検定】
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5年度 | 16,265 | 6,606 | 40.6% |
令和4年度 | 16,883 | 6,458 | 38.3% |
令和3年度 | 15,001 | 7,993 | 53.3% |
令和2年度 | 14,407 | 5,493 | 38.1% |
令和元年度 | 15,048 | 6,128 | 40.7% |
【第ニ次検定】
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5年度 | 8,535 | 4,527 | 53.0% |
令和4年度 | 7,685 | 4,537 | 59.0% |
令和3年度 | 7,922 | 4,655 | 58.8% |
令和2年度 | 6,723 | 4,887 | 72.7% |
令和元年度 | 8,114 | 5,382 | 66.3% |
出典:1級電気工事施工管理技士受験者数・合格率動向|KGIC 建設技術教育センター
電気工事施工管理技士の年収
電気工事施工管理技士の年収は、経験や所属する企業、地域などによって異なりますが、平均的な年収は487万円です。
日本の平均年収と比べて高い水準となっているため、高収入の職種と言えます。
特に経験豊富な技士や大手企業に所属する技士は1,000万円を超えるなど、より高い年収を得ることができる場合があります。
また、資格保有者の中には独立して自営業を行い、自らの技術や経験を活かして収入を得ている人もいます。
出典:電気工事施工管理技士関連の仕事の年収・時給・給料|求人ボックス 給料ナビ
関連記事:電気施工管理はきつい?やめとけ?そうとも言えない4つの理由
電気工事施工管理技士を取得するメリットとは
では、電気工事施工管理技士を取得するメリットとはどういうものがあるでしょうか。
以下、大きく3つのポイントを紹介していきます。
転職で有利になる
電気工事施工管理技士の資格を取得することで、転職が有利になる可能性があります。
特に電気工事関連の企業や施工管理会社では、この資格を持っていることで電気工事における施工管理能力があることを証明できるため、重視されることが多いです。
電気工事施工管理技士が所属する企業は公的な事業を請け負う際の信頼度も高まるため、需要はかなり見込める資格と言えます。
人材としての価値を証明できる
電気工事施工管理技士の資格を取得することで、人材としての価値を証明できるという点も挙げられます。
上でも述べた通り、企業としても電気工事施工管理技士を常駐させておくことで、通常の施工管理者よりも信頼度が高まり、工事の受注などの量や幅も広がります。
また、建設業の営業許可を受けるには、各営業所において「専任の技術者」の配置が必要ですが、1級電気工事施工管理技士は特定建設業の専任技術者になることができます。
昇給や昇格のチャンスが広がる
電気工事施工管理技士の資格を取得することで、昇給や昇格のチャンスも広がります。
電気工事施工管理技士の資格を取得することで、電気工事の施工管理に関する知識や技術が身につきます。
これにより、現場での実務経験を積み、所属する営業所の専任技術者、監理技術者、または主任技術者として工事現場の統括業務も可能です。
さらに、電気工事施工管理技士の資格があれば、専門家としての信頼性が高まり、顧客や取引先からの信頼向上、仕事の依頼や案件の獲得につながる可能性があります。
頑張りと本人の価値が認められて、昇給や昇格などにつながりやすくなるでしょう。
電気工事施工管理技士の取得方法とは
それでは、電気工事施工管理技士の取得方法について解説していきます。
資格を取得するまでの流れ
電気工事施工管理技士の資格を取得するまでの流れは1級と2級で少し異なります。
事前に前に必ず確認して申し込むようにしましょう。
【電気工事施工管理技士1級】
- 第一次・第二次検定の受験申込
- 第一次検定の実施
- 第一次検定の合格発表
- 第二次検定の申し込み
- 第二次検定の実施
- 合格発表
- 合格証明書交付申請・合格証明書交付
- 資格の取得
【電気工事施工管理技士2級】
- 第一次・第二次検定の受験申込
- 第一次・第二次検定の実施
- 合格発表
- 合格証明書交付申請・合格証明書交付
- 資格の取得
受験料は、1級の第一次検定・第二次検定それぞれ13,200円で、2級の第一次検定・第二次検定はそれぞれ6,600円です。くわしくは、一般財団法人建設業振興基金 施工管理技術検定のホームページをご確認ください。
出典:令和6年度1級電気工事施工管理技術検定のご案内|一般財団法人建設業振興基金 施工管理技術検定
電気工事施工管理技士に必要な受検資格
電気工事施工管理技士になるために必要な受検資格には以下の条件があります。
電気工事施工管理技士1級 | ⚪︎第一次検定:19歳以上 (試験実施年度末時点で)⚪︎第二次検定: ※1級第一次検定合格後の場合特定実務経験を含む実務経験3年以上監理技術補佐の実務経験1年以上その他実務経験5年以上 ※2級第二次検定合格後の場合 実務経験5年以上特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 (いずれも1級一次合格者に限る) |
電気工事施工管理技士2級 | ⚪︎第一次検定:17歳以上 (試験実施年度末時点で)⚪︎第二次検定: 2級第一次検定合格後に実務経験3年または、1級第一次検定合格後に実務経験1年 |
受験資格の要項は、令和6年に変更されていますので、受験の際は必ず確認しておきましょう。
出典:令和6年度1級電気工事施工管理技術検定のご案内|一般財団法人建設業振興基金 施工管理技術検定
電気工事施工管理技士の試験概要
電気工事施工管理技士の試験概要についてまとめています。
【試験の日程と各受講料】
級 | 検定項目 | 各日程 |
1級 | 第一次検定と合格発表日 | 検定:令和6年7月14日(日)合格発表:令和6年8月23日(金)受講料:13,200円 |
第ニ次検定と合格発表日 | 検定:令和6年10月20日(日)合格発表:令和7年1月10日(金)受講料:13,200円 | |
2級 | 第一次検定のみ(前期)と合格発表日 | 検定:令和6年6月9日(日)合格発表:令和6年7月10日(水)受講料:6,600円 |
第一次・第二次検定(後期)と合格発表日 | 検定:令和6年11月24日(日)合格発表:⚪︎第一次(後期)令和7年1月10日(金)⚪︎第一次・第二次/第二次検定のみ 令和7年2月7日(金)受講料:第二次検定のみ6,600円 第一次・第二次検定13,200円 |
出典:令和6年度1級電気工事施工管理技術検定のご案内|一般財団法人建設業振興基金 施工管理技術検定
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電気工事施工管理技士とは?についてのまとめ
今回は、電気工事施工管理技士とは何かを解説しました。
電気工事施工管理技士の資格の取得や、就職・再就職などを検討している方は、本記事を参考にしてください。
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