昨今の不安定な情勢や物価高の影響もあり、職業として少しずつ脚光を浴び始めたエネルギー管理士とは、誰でも取得可能な資格なのでしょうか。
本記事では、エネルギー管理士に合格するための勉強時間や独学方法、選択専門課目の「熱分野」の学習方法などを詳しく解説していきます。
計画的に学習し、合格できるように、過去問を使用した勉強方法や熱分野の独学方法をご紹介します。
業界で働きながらキャリアアップを目指している人、他業種から資格を取得して転職を考えている人もぜひ参考にしてください。
エネルギー管理士の受験資格
エネルギー管理士の受験資格は、特に設けられていません。
エネルギー管理士は国家資格ですが、学歴や年齢などの制限もなく、熱分野や電気分野に関して一定の実務経験があれば受験できます。
資格取得の一つは独学でエネルギー管理士試験に合格することであり、その際は合格した後に実務経験を積んでエネルギー管理士になることも可能です。
二つ目は、エネルギー管理研修を受けて、修了試験に合格する方法です。
ただし、エネルギー管理研修を受けられるのは、3年以上の実務経験がある方のみです。
出典:エネルギー管理士の取得方法|一般財団法人 省エネルギーセンター
エネルギー管理士の試験日と試験時間
ここでは、エネルギー管理士の試験日と試験時間などを詳しく見ていきましょう。
エネルギー管理士の試験は、毎年1回、7月下旬〜8月上旬の日曜日に行われるため、試験の申し込みは4月上旬〜6月中に予定されています。
願書は、インターネットか郵送で受け付けています。
合否の発表は9月下旬ごろ、一般財団法人省エネルギーセンターのホームページで発表された後、郵送で通知されます。
試験会場は、北海道・宮城県・東京都・愛知県・富山県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県と会場が決まっているため注意が必要です。
試験の費用は17,000円で、合格後にエネルギー管理士の免状を申請する場合は、別途3,500円の交付手数料が必要です。
エネルギー管理士の試験概要
ここでは、エネルギー管理士の試験概要について説明します。
実務経験1年以上でエネルギー管理士の試験を受験する場合の試験の概要をご紹介します。
エネルギー管理士は、熱分野か電気分野のどちらかを選択して受験できるため、自身の得意な分野を選びましょう。
エネルギー管理士の試験は、すべてマークシート方式(穴埋め選択問題)で実施されます。
試験当日は、HBの鉛筆かシャープペンシルが必要です。
また、一般電卓の持ち込みも可能ですが、関数電卓は認められていません。
合格の基準は、各問題の60%以上の正解率を得ることが求められ、テスト全体で60点以上を取る必要はないため、注意しましょう。
出典:「受験の手引」取り寄せ方法|一般財団法人 省エネルギーセンター
エネルギー管理士の試験時間
次に、エネルギー管理士の試験時間と試験の内容です。
試験は必須共通課目と、熱分野か電気分野の選択専門課目で構成されてます。
【必須共通課目】
試験内容 | 試験時間 | |
課目Ⅰ | エネルギー総合管理及び法規 | 80分 |
【専門区分・熱分野】
試験内容 | 試験時間 | |
課目Ⅱ | 熱と流体の流れの基礎 | 110分 |
課目Ⅲ | 燃料と燃焼 | 80分 |
課目Ⅳ | 熱利用設備及びその管理 | 110分 |
【専門区分・電気分野】
試験内容 | 試験時間 | |
課目Ⅱ | 電気の基礎 | 80分 |
課目Ⅲ | 電気設備及び機器 | 110分 |
課目Ⅳ | 電力応用 | 110分 |
出典:「受験の手引」取り寄せ方法|一般財団法人 省エネルギーセンター
エネルギー管理士に合格するための勉強時間
それでは、エネルギー管理士に合格するための勉強時間は、どれほど必要なのでしょうか。
エネルギー管理士を受験する人の中には、大学などで理系の学部を専攻していたり、エネルギー管理士の試験内容と重なる電験三種などの受験経験があったりする場合も多く見受けられます。
理系専攻や電気、エネルギー関係の仕事のバックグラウンドのある人が受験までに備える期間はだいたい6ヶ月が目安です。
また、6ヶ月の準備期間でエネルギー管理士に合格した人の1日の勉強時間は、平日が平均2時間、休日が平均4時間ほどでした。
全く知識や経験なく資格に挑戦する場合は、トータルで300〜500時間ほどを見込んでスケージュールを組むことをおすすめします。
いずれにしても、仕事をしながら学習する場合は、勉強時間の確保を意識的に行う必要があるようです。
エネルギー管理士は過去問だけで受かる?勉強方法は?
次に、エネルギー管理士の試験に合格した人たちの体験をもとに、過去問や参考書を使った効率的な勉強方法についてお伝えしていきます。
過去問だけで受かるには3周は解くこと
過去問だけで受かるには最低3周は解くことが必須と言えます。
1周目から3周目までに問題を解いていく時の各ポイントをまとめました。
回数 | ポイント |
1周目 | 1日1科目を解く間違った箇所を解答例と参考書で調べる難しい問題でつまづいたらパスする1周目の成績を記録する |
2周目 | 一日2課目を解く間違った箇所を参考書で調べて、ノートにまとめる難しい問題も挑戦する2周目の成績を記録する |
3周目 | 今までで正答率の低い問題に挑戦する間違った箇所を参考書で調べて、さらに詳しくノートにまとめる正解率70%以上を目標にする3周目の成績を記録する |
2周目、3周目と問題を解いていくうちに、スピードも速くなり、内容の理解も進んでいることに気がつくようになります。
勉強に対するモチベーションを下げないためにも、1周目はノートを付けずに軽く進めることをおすすめします。
一方で、成績を毎回記録しておくことで、どの部分につまずきやすいのかが明確になり、重点的に勉強できます。
問題を解いて解説を理解する
正解率を上げるには、問題を解いて解説を理解することが大事です。
まったく知識がない場合は、まず問題を解かずに問題文を読み、解説を確認して内容を知識として吸収する方法も効果的です。
基本知識を補うために参考書の利用もおすすめ
基礎知識を補うために参考書の利用もおすすめです。
最初に購入する参考書は、4課目が1冊にまとまったもので、現在の知識レベルに合ったものが使いやすいです。
2冊目以降は、不得意な部分や補強したい部分がわかる過去問挑戦2周目以上に追加するのをおすすめします。
一般的な参考書として、オーム社から発売されている「エネルギー管理士試験(電気分野)徹底研究」などがあります。
ただし、参考書は学習をサポートするものであることが重要ですので、自分の理解度や知識に応じた読みやすいものを選ぶようにしましょう。
関連記事:エネルギー管理士の勉強におすすめの過去問サイトやアプリまとめ
エネルギー管理士の選択問題は「熱分野」がおすすめ
選択問題の専門分野をどちらにしようか悩んだ場合、エネルギー管理士の選択問題は「熱分野」がおすすめという声が多くあります。
その理由はどういったところにあるのでしょうか。
実際に受験した人の感想をもとに、熱分野が向いてる人、電気分野が向いてる人に分けて、それぞれの特徴などを解説していきます。
暗記が得意な場合は「熱分野」
過去問や受験をした人たちの声をまとめると、暗記が得意な場合は「熱分野」が向いているとされています。
熱分野と電気分野の合格率を公表していた2012年までのデータによると、熱分野を選択した人の方が電気分野の人より約10%合格率が高い結果が出ています。
おすすめの理由として、熱分野の試験問題は文字の選択問題が多く、計算問題があまりないという点が挙げられます。
微分・積分方程式を使う程度の数学の知識があれば、文系の人でもじっくりと知識を習得し、資格取得を目指すことが可能です。
予備知識がまったくなく、また将来的にどっちの仕事をしていくか具体的に決まっていない場合などは、熱分野で問題を選択した方が合格の可能性が高まるでしょう。
出典:エネルギー管理士情報|一般社団法人全国エネルギー管理士連盟
数学や物理が得意な場合は「電気分野」
一方、数学や物理が得意な場合は「電気分野」がおすすめです。
電気分野の試験は、熱分野とは逆に計算問題が多く、理系のバックグラウンドがある人は問題に取り組みやすいと言えます。
また、電気分野でのキャリアアップを目指している人や、電気関連の仕事に従事している人、電験三種などの受験経験などがある人も、電気分野を選択した方が効率的に学習できるかもしれません。
出典:エネルギー管理士情報|一般社団法人全国エネルギー管理士連盟
エネルギー管理士の熱分野の独学方法
ここからは、エネルギー管理士の熱分野の独学方法についてお伝えします。
先に述べたように、熱分野の方が計算問題が少なく、理系のバックグラウンドがない、また業界の経験のない人でも独学で合格できる可能性が高いです。
やみくもに勉強を始める前に、押さえておきたいポイントをご紹介します。
必須基礎課目「エネルギー総合管理および法規」からすすめる
エネルギー管理士の熱分野を独学する際のポイントの1つ目は、必須基礎課目「エネルギー総合管理及び法規」からすすめることです。
エネルギー総合管理及び法規の必須基礎課目Ⅰの出題内容は以下の3つです。
内容 | 配点 |
1.エネルギーの使用の合理化等に関する法律及び法令 | 50点 |
2.エネルギーの情勢、政策、エネルギー概論 | 50点 |
3.エネルギー管理技術の基礎 | 100点 |
このうち1と3は例年、似たような問題が出されることが多く、過去問をしっかりと解いておくことが有効な対策となります。
特に3は、「工場等判断基準に関連する事項」に関する問題が多く出題される傾向にあります。
省エネルギーセンターのホームページに工場等判断基準が掲載されていますので、こちらも必ずチェックが必要です。
また、2は毎年、問題を予想するのが難しい内容ですが、過去には省エネルギーセンター出版の「月刊省エネルギー」から出題されたことがあります。
エネルギーに関する法律はしばしば改正されていますので、法律に関する参考書は常に新しいものを用意するようにしましょう。
「熱と流体の流れの基礎」の理論を理解する
エネルギー管理士の熱分野を独学する際の2つ目のポイントは、「熱と流体の流れの基礎」の理論を理解することです。
エネルギー管理士の試験では、熱と流体の流れの基礎は課目Ⅱで出題され、熱分野の試験の中でも計算問題が多く、難易度が高いことで有名です。
課目Ⅱ:熱と流体の流れの基礎の内容は、以下の3つです。
内容 | 配点 |
1.熱力学の基礎 | 100点 |
2.流体工学の基礎 | 50点 |
3.伝熱工学の基礎 | 50点 |
全て選択式の問題ですが、選択肢が多く、理論が理解できていないと、勘で正解するのが難しい問題です。
大学レベルの理工学の内容が出題されるため、少なくとも高校レベルの物理と数学の知識が必要です。
独学が難しい場合は講座に申し込むのもおすすめ
エネルギー管理士の熱分野の独学が難しい場合は、講座に申し込むのもおすすめです。
仕事との両立が難しく勉強に時間を確保できない場合や、効率的な学習が難しい場合、または理工系の知識がまったくない場合は、通信講座を受けてみるのも一つの有効な手段です。
まず大事なことはモチベーションを落とさず、気持ちを萎えさせないことです。他者の力を借りることは心身のバランスを保つための有効な手段です。
1年以内に資格を取りたいのか、もしくは3年ほどかけてゆっくり向き合う予定なのか、まずは自分のスケジュールと目標を確認しましょう。
エネルギー管理士の勉強時間に関するよくある質問
最後に、エネルギー管理士の勉強時間に関するよくある質問をご紹介していきます。
エネルギー管理士は難しいですか?
エネルギー管理士は比較的難しい国家資格試験だと言われています。
その理由として、一般財団法人省エネルギーセンターが発表した直近のデータが挙げられます。
それによると、令和5年度のエネルギー管理士試験の合格率は37.8%、令和4年度は33.9%、令和3年度は31.9%で、毎年3割程度の合格率です。
しかも、年度によっては20%後半の合格率という低い水準の場合もあります。
業界未経験で理数系のバックグラウンドがない人は、1〜3年の長い目で取得を考えることが一般的です。
エネルギー管理士と電験三種はどちらが難しいですか?
エネルギー管理士と電験三種のどちらが難しいかは、よく比較されることがらです。
人によっては「電験2.5種」と言うこともあり、電験三種よりも難易度が高いイメージがついています。
個人差はありますが、電験三種を先に受験した人の中には、エネルギー管理士の方が比較的簡単だったと感じる人もいます。
電験三種とエネルギー管理士の試験内容には重複が多いため、電験三種の勉強がエネルギー管理士の試験に役立つことも、その理由の一つです。
エネルギー管理士になるには何年必要ですか?
エネルギー管理士の国家試験を受けるには、1年以上の実務経験が必要です。
この実務経験は、試験合格前でも合格後でもどちらでも可能です。
実務経験として認められる職種は、エネルギー管理士の主な就職先である製造業、工業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の5つの業種である第一種エネルギー管理指定工場や事業所です。
また、3年以上の実務経験がある場合は、エネルギー管理研修を受講して修了試験に合格することで、エネルギー管理士の資格を取得できます。
出典:エネルギー管理士の取得方法|一般財団法人 省エネルギーセンター
エネルギー管理士に合格するために学習計画を立ててから勉強しよう
今回は、エネルギー管理士に合格するための勉強時間や、独学方法、「熱分野」の学習方法などを紹介しました。
エネルギー管理士は、誰でも受験ができる開かれた資格の一つです。
ただし、理工系や数学の知識は基本的に必要です。
理系の人も、文系の人も、未経験の人も、エネルギー管理士に合格するためには、無理のない学習計画を立ててから勉強に取り組みましょう。
なお、「エネルギー管理士の資格を活かせる職場で働きたい」「自分に合う職場を見つけられるか不安」とお悩みの方は、建設業界に特化した転職エージェント建職キャリアにご相談ください。
特に初めての転職の場合は、自分の強みや経験を活かせる職場を見つけ出すのは難しいかもしれません。転職が初めてでない方も、入社前後のギャップが生じないように自分に合う求人を見つけることが大切です。
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