近年は、新型コロナウイルスの流行が収まってきたこともあり、インバウンド需要が回復しつつあります。
都市部や観光地を中心に、外国人観光客などで賑わいを見せている一方で、バス停留所などでの混雑が問題となっています。
根本的な原因となっているのが、バスの運転手不足であり、運転手1人あたりの負担が増えているのが現状です。
これからバス運転手への転職を検討しており、休憩時間などがしっかりとれるのか気になる人もいるのではないでしょうか。
今回は、バス運転手の休憩時間に関するルールについて解説していきます。
【この記事のまとめ】 ・バス運転手の休憩時間について ・ワンマン運行する際の3つの条件 ・長距離、夜間運行のツーマン運行ルール ・バス運転手の主な休憩所 ・バス運転手の休憩時間に関するよくある質問 |
バス運転手の休憩時間は4時間経過前後に基本30分以上
長時間の連続運転は、事故のリスクが高まることから、運送業界では休憩時間に関するルールが設けられています。
バス運転手の場合、運行の内容に関係なく「継続して運転できるのは4時間まで」と決められています。
4時間運転した後には、必ず30分以上の休憩を取るようにします。
「天候が悪く渋滞で遅れているから」「前の休憩で2回分の休憩をとったから」といった理由で、運転手が希望したとしても認められません。
ちなみに、休憩時間は分割することも可能であり、1回10分以上であれば自由に調整して問題ありません。
ワンマン運行(運転手1名)をする3つの条件
夜行バスや観光バスの場合、長距離配送が多く運転手への負担が大きくなりやすいため、過去には死傷者が出るような事故も発生しています。
これをうけて、国土交通省ではワンマン運行の条件を明確でより厳しいものにしています。
【ワンマン運行の条件】 ・1運行あたり9時間が限度 ・運行距離は昼まで500kmまでで夜間は400kmまで ・一日で2運行こなす場合は、合計600kmまで ・夜間の場合、連続勤務は4回まで ・継続して運転できるのはおおむね2時間まで ・休憩時間は4時間ごとに30分以上 |
上記条件を満たしていない限り、運行を1人の運転手でこなすことはできません。
ちなみに、運転時間や運行距離は乗客が乗っていない回送運転も含まれます。
拘束時間が最大で13時間以内になっている
ワンマン運行を行う場合、乗務前の車両点検から営業所に戻って業務を終えるまでの時間は13時間までが基本的なルールです。
運行中にしっかり休憩をとっていたとしても、13時間以上の拘束はできません。
ただし、必要に応じて最大15時間までであれば延長可能です。
運転時間が9時間以内になっている
運転時間に関しては、走行距離や走行時間、一日にこなす運行数に関係なく、9時間までが基本です。
ただし、夜間でなければ週に2回まで1運行あたり10時間に延長できます。※2日間の運転時間平均は9時間を超えてはならない。
連続運転が2時間以上になっていない
ワンマン運行の場合、継続して運転できる時間はおおむね2時間までです。
運行に遅れが出ていたり、渋滞で走行した距離が短かったりした場合も継続して運転できるのは2時間までです。
実車距離が昼間500km・夜間400kを超えていない
実車距離は、昼間で500km・夜間で400kmまでしか運転できません。
また、1日に2つの運行に乗務する場合は合計で600kmまでがルールです。
ただし、昼間の場合は運行の中で、1時間以上の休憩を取り(1回20分以上で分割可)乗務中の体調について連絡を取り合うことを条件に600kmまで延長できます。
夜間に関しても、以下の条件を満たせば500kmまで延長できます。
【夜間運行における実車距離の延長条件】 ・運行前に11時間の休息を取っている ・1運行の乗務時間が10時間以内 ・運行指示書上、実車2時間ごとに20分以上の休憩を確保 ・乗務中の体調について連絡を取り合う ・デジタコによる運行管理 |
長時間や夜間の運転はツーマン運行が必要になる
ここまで、ワンマン運行に関するルールを解説してきましたが、目的地などによってはどうしてもルールを満たせないことがあります。
このような場合は、ツーマン運行しか認められません。
ちなみに、長距離運行を想定していないマイクロバスはツーマン運行自体が禁止されています。
大型バスのツーマン運行の場合、待機する運転手は運転席の真後ろの2席を使用するため、乗せられる乗客数が2名分少なくなります。
バス運転手の休憩場所|5選
バス運転手の休憩時間について解説してきましたが、どこで休憩しているのかが気になる方もいるのではないでしょうか。
休憩時間を与えられたものの、ゆっくり休める場所がなければ意味がありません。
バス運転手は、主に以下のような場所で休憩しています。
- 仮眠施設
- 日帰り温泉施設
- バス内の仮眠室
- 観光地
- 事務所
ここでは、バス運転手の休憩場所について解説していきます。
仮眠施設
まず1つ目の休憩場所が仮眠施設です。
バス運転手にとって居眠り運転は絶対にあってはならないため、バス営業所には仮眠室が設けられています。
路線バス運転手は、運行の途中で立ち寄り仮眠を取ることが可能です。
また、必ずあるとは限らないものの観光地にはバス運転手用の休憩施設があり、仮眠が取れるケースもあります
日帰り温泉施設
目的地が温泉施設といった場合、休憩時間に施設で体を休める運転手もいます。
一般のお客様と同じ施設を利用することもあれば、前述したように乗務員やバス運転手用に休憩施設が設けられているようなケースもあります。
プライベートのように、ゆっくり観光地を満喫するのは難しいものの、地域の食べ物などを食べられることは、観光バス運転手の魅力と言えるでしょう。
バス内の仮眠室
ツーマン運行で、営業所が近くになく目的地にも到着していない場合、バス内の仮眠室を利用するのが一般的です。
客席の下には、お客様の荷物を乗せるスペースとは別に、運転手専用の仮眠室が用意されています。
内部はカプセルホテルのようになっており、エアコンや運転手と会話できる電話などが備え付けられています。
観光地
休憩といえば仮眠を想像する人が多いのですが、観光地を散歩するなどして眠気を覚ましているような運転手も多くいます。
休憩時間は自由に過ごせるため、適度に体を動かしてリフレッシュすることも大切と言えるでしょう。
事務所
遠方から来た旅行客を地元の観光地に案内する場合、バス運転手は乗客のように宿泊することはありません。
ホテルに乗客を送り届けたあとは、営業事務所に戻り一度帰宅するか、事務所内の仮眠施設で休息を取ります。
各バス会社のホームページでは、福利厚生の一環として休憩施設なども紹介されていますので、気になる会社があればチェックしてみましょう。
バス運転手の休憩時間に関するよくある質問
最後は、バス運転手の休息時間に関する、3つのよくある質問に答えていきます。
- バスの運転手は1日何時間運転できますか?
- バス運転手の休息時間が9時間になるのはいつからですか?
- 2024年問題でバス運転手の労働時間はどうなりますか?
バス運転手の働き方に関する内容ですので、転職を検討するうえで参考にしてみてください。
バスの運転手は1日何時間運転できますか?
バス運転手の1日の運転時間は9時間までが基本であり、残業したとしても2日間で1日あたりの平均が9時間以内に収まるようにしなければなりません。
そのため、繁忙期などで忙しかったとしても、2日以上連続で長時間の残業はできません。
バス運転手の休息時間が9時間になるのはいつからですか?
従来の改善基準告示は、連続した休息時間は8時間以上と定められていましたが、改正をうけて2024年4月1日より9時間に変更されます。
また、継続11時間を基本としており、事業者はなるべく11時間の休息時間を与えられるように努めなければなりません。
2024年問題でバス運転手の労働時間はどうなりますか?
2024年4月より、運送業界でも適用となる「働き方改革関連法」では、時間外労働などの規制が強まります。
これによって、バス業界では以下のような内容が懸念されています。
・昼間や夜間の乗車数が少ない時間帯の運行本数の減便 ・路線数の現象 ・利用者の少ない地方からの撤退 ・運行本数の減便による朝夕の混雑 ・乗車運賃の値上がり |
バス運転手の長時間労働が改善される一方で、上記のような問題が生じると予想されています。
事業所の売上が落ちれば、結果的にバス運転手の収入減少にもつながるため、働き方改革関連法の内容に反対する声も少なくありません。
バス運転手の休憩時間に関するまとめ
バス運転手は、大きな車両を運転するだけでなく、多くの乗客を乗せることから、安心安全な運行を徹底しなければなりません。
そのため、運行する際の拘束時間や連続運転時間、休憩時間にも細かいルールが定められています。
バス運転手は、運行内容に関係なく、連続した4時間の運転ごとに30分以上の休憩が義務化されています。
近年、運転手不足による負担増加が問題となっているものの、全く休めないというわけではありません。
また、人材確保に向けた取り組みが各社で進められているのが現状です。
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