バス運転手

バス運転手の労働時間は年間3,380時間から3,300時間へ

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バスが夜間に走行している様子

運送業界は、現役運転手の高齢化や若手人材の参入が少ないことから、運転手不足が深刻化しています。

バス運転手も例外ではなく、最近ではインバウンド需要が回復してきていることから、観光地や都市部を中心に混雑が目立つ状況です。

人材不足により、運転手1人あたりの労働時間が増える中で、2024年4月より改善基準告示が適用される予定です。

今回は、ルール変更によって、バス運転手の労働事情がどのように変わるのか、分かりやすく解説していきます。

この記事で分かること
・改善基準告示の適用による労働時間の変更点
・ルール適用外となる「予期し得ない事象」について
・バス運転手の労働時間に関するよくある質問

2024年実施のバス運転手の労働に関する改正内容4選

バスのハンドルを握る様子

近年、トラックやバス運転手の長時間労働が問題視されており、専門家による話し合いにより、労働時間が見直されることになりました。

大きな改正は20年以上行われてきておらず、2024年4月からスタート予定です。

今回の主な改正内容は、以下の通りです。

・拘束時間が1時間短縮される
・運転時間2日平均9時間以内になる
・1日の休息時間が9時間を下回ってはいけない
・連続で運転できるのは4時間までにしなければいけない

ここでは、各変更点の詳細について解説していきます。

運転手はもちろん、運送業界の事業者も理解しておくようにしましょう。

拘束時間が1時間短縮される

今回の改正をうけて、バス運転手の1日の拘束時間は、最大16時間までであったのが15時間までに短縮されます。

また、規定の時間以上拘束するのは、週3回が限度です。

年間の拘束時間に関しても、現在の3,380時間が2024年4月からは3,300時間へと変更されます。

ちなみに、拘束時間の長さは、バス運転手が仕事を辞めるきっかけとして最も多い意見であり、現役運転手からも以下のような声が上がっています。

・日帰りプランは、観光地を複数回るが、もっと楽しみたいからと指定の時間に戻ってこなくなる人が多い。結果、拘束時間も伸びて日によっては15時間拘束されることもあって辛い

 

・ダイヤに合わせて休憩しなければならないし、安全面のルールにも縛られていたこともあり、とにかく拘束時間がながかった。休日出勤もあってプライベートの時間がなかった。

運転時間2日平均9時間以内になる

勤務中の休憩時間を除いた運転時間に関しては、2日間で1日あたりの平均を9時間以内に抑えなければなりません。

これにより、連続して長時間の時間外労働ができなくなり、運転手の負担が軽減されます。

1週間の運転時間は平均を40時間に抑えなければなりません。※4週間のデータで算出

ただし、貸切バスや高速バスといった一時的に需要が高まる運行に関しては、労使協定により、44時間(1週間)までなら延ばすことができます。※年間で16週まで

ちなみに、長時間運行に対しての意見には以下のような内容がありました。

・新型コロナウイルスのせいで人が一気に減ったこともあり、毎日残業が当たり前になっている。運転時間に対して適切な休憩が入れられているが、そんなことよりも早く帰りたいというのが正直な意見。

 

・シフト制だが、人が足りていないので毎日早出していた。会社側もしんどいのをしっていたし残業を申告するのも嫌だった。

1日の休息時間が9時間を下回ってはいけない

休息時間とは、業務が終了してから次の業務を開始するまでの時間を指します。

残業で退勤時間が遅くなったとしても、9時間以上がマストになります。

また、11時間以上休めることが基準として設けられています。

休息時間に関する運転手の声には、以下のような内容がありました。

・人が足りていないせいで残業が多いだけでなく、遅番から早番になることも多々あった。知人の観光バス運転手も、運行によって行き先が変わるので休息時間がバラバラになっている。

連続で運転できるのは4時間までにしなければいけない

運行中の連続した運転時間に関しては、4時間が限度であり連続30分以上の休憩を取らなければいけません。

ただし、1回の休憩時間が10分以上であれば、分割して取ることが認められています。

連続運転に関する現役バス運転手の声には、以下のような内容がありました。

・観光地はとても混みやすいので、休憩を取り過ぎると時間通りに到着できない。乗客が休憩時間を守ってくれたらいいが、サービスエリアから戻ってこなくなる人もいる。遅れを取り戻すためにも、休憩回数を減らさざるを得ないことがある。

予期し得ない事象の2つのケース

バスが高速を走る様子

労働時間に関する変更内容について解説してきましたが、運行中に「予期し得ない事象」が起きた際には、このルールが適用外となります。

・トラック・バス運転手の場合
・タクシー・ハイヤー運転手の場合

ここでは、上記2職種別で予期し得ない事象の具体例について解説していきます。

トラック・バス運転手の場合

トラック・バス運転手における、予期し得ない事象は以下のような内容です。

・運行で乗船する予定だったフェリーが欠航した
・運行中に車両が故障した
・自然災害や事故により道路が封鎖されたり渋滞したりしている
・異常気象により走行自体が困難な状況

このような場合、1日の拘束時間(2日平均)や連続運転時間のルールが適用されません。

ただし、どのタイミングで勤務が終了した場合でも、9時間以上の休息を与えなければなりません。

予期し得ない事象により、このような処置を行う場合は客観的な記録が必要です。

タクシー・ハイヤー運転手の場合

タクシー・ハイヤー運転手も、前述したバス運転手の予期し得ない事象と同じ内容になります。

タクシー・ハイヤー運転手も、業務が終了した時間帯に関わらず、9時間以上の休息を与えなければなりません。

バス運転手の労働時間に関するよくある質問

バスが横に並ぶ様子

ここからは、バス運転手の労働時間に関する、7つのよくある質問に答えていきます。

・改善基準告示とはどのようなものですか?
・改善基準告示はいつから適用されますか?
・2024年4月から適用の改善基準告示に関する労働問題は?
・改善基準告示に違反した場合の罰則はありますか?
・ルールが25年ぶりに改正される背景は?
・バス運転手の待機時間は労働時間ですか?
・バスの運転手は1日何時間働いていますか?

バス運転手だけでなく、バス事業者の運用にも関わる内容ですので、理解しておくようにしましょう。

改善基準告示とはどのようなものですか?

自動車運転者の労働時間などの改善のために設けられたのが改善基準告示です。

過酷な運転業務は、運転手だけでなく他の運転者や道路付近の通行者の安全にも関わるため、一般的なルールとは別に設けられています。

出典:トラック運転者の改善基準告示|厚生労働省

改善基準告示はいつから適用されますか?

改善基準告示は2022年12月に見直しが行われ、改正は2024年4月1日からです。

例外となる運送事業者はなく、バス・トラック・タクシー・ハイヤーの会社全てが対象です。

2024年4月から適用の改善基準告示に関する労働問題は?

改善基準告示により、今まで以上に長時間労働が減り休息時間が確保されるようになりますが、メリットばかりではありません。

長時間労働によって成り立っている配達が非常に多く、ルールの改正により物流効率が落ちてしまうからです。

また、長時間労働がなくなれば運転手の収入も下がってしまうため、これまで以上に運転手離れが加速するといった懸念もあります。

運送事業者だけでなく、荷主側の配慮も必要と言えるでしょう。

ちなみに現役運転手の声には以下のような内容がありました。

・ルールが変わったからと依頼者に言ったとしても「じゃあ他で頼みます」と言われてしまっては対策のしようがない。運転手の待遇を良くするためと、運賃を上げても同様のことが起こると思うし根本的な解決ができるのか不安

 

・運送業界を利用する側の決まりを変えなければ、現役運転手が辛い思いをするばかりになる。運行の負担は減るが仕事を続けていきにくくなりそう。

改善基準告示に違反した場合の罰則はありますか?

改善基準告示は法律ではないため、違反したとしても罰則はありません。

ただし、国土交通省による行政処分を受ける可能性はあります。

処分内容は、違反内容によるものの、車両が10〜40日間稼働できなくなります。

安心安全な運行を維持するためにも、改善基準告示の内容は守るようにしましょう。

ルールが25年ぶりに改正される背景は?

ルールが改正された背景には、運転手の長時間運転や過重労働問題があります。

冒頭でも解説した通り、運送業界は人手不足が深刻化しており1人当たりの負担が高まっている状況です。

近年では、脳や心臓の疾患による運転手の事故が増加傾向にあり、運転手だけでなく国民の安全を確保するためにも改善基準告示が改正されました。

バス運転手の待機時間は労働時間ですか?

運送業には、荷主の都合や運行ダイヤによる待機時間が発生することがあります。

機時間は何もしないため、労働時間ではないと考えている人もいますが、立派な労働時間であり、休憩にも含まれません。

待機時間が長かったとしても、拘束時間を延長していいというわけではなく、時間外賃金も発生します。

バスの運転手は1日何時間働いていますか?

バス運転手は、全体でみると1日あたり8時間労働が一般的です。

ただし、観光バスや貸切バスなどの場合、遠方まで向かう運行も珍しくなく、宿泊勤務や長時間の運転が発生することもあります。

また、一概には言えないものの、安全性の確保から休憩時間を長めにとっている会社が多い傾向にあり、他の仕事よりも拘束時間は長めと言えます。

まとめ

バス運転手が乗客を案内する様子

バス運転手は、車両のサイズが大きく多くの人が利用することもあり、安全な運行を最優先に考える必要があります。

今回紹介した改善基準告示の改正内容は、運転手だけでなく乗客の安全を確保するうえで非常に重要なものです。

人手不足などの問題があるものの、必ず守る必要があります。

バス会社では、この他にもさまざまな労働環境の改善が進められており、若手人材の確保を行っています。

運転免許取得支援制度を設ける会社も増えてきていますので、前向きに転職を検討してみてはいかがでしょうか。

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