「バス運転手が不足していて、今後の事業展開をどうしていこうか」などと考えているバス会社の経営者の方も多いのではないでしょうか。
実際に、肌身で人材不足を感じているかもしれませんが、第二種大型自動車運転免許保有者は平成15年からの15年間で、約20%も減少しています。
人手不足を補うために民間企業だけでなく国土交通省も、さまざまな施策を計画ならびに実行中です。
この記事では、バス運転手が不足している原因と、10年後に備えた5つの対応策などについて紹介していきます。ぜひ参考にして、自社の業務改善に活かしてみてください。
バス運転手不足を含むバス業界が抱える問題
第二種大型自動車運転免許保有者は平成15年からの15年間で、約20%も減少しています。特に、地方のバス運転手の減少が著しい状況です。
バス運転手が不足している理由は、主に3つです。
- 運転手が定年退職している
- 給料が低く若い世代が魅力を感じていない
- 2024年問題が影響している
それぞれについて解説します。
運転手が定年退職している
バス運転手は高齢化が顕著です。団塊ジュニア世代のバス運転手が、続々と定年退職を迎えています。また、厚生労働省の『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、全産業の平均年齢は43.4歳ですが、バス運転手の平均年齢は53.0歳に到達しています。
さらに、長年、バス業界を支えてきたベテラン運転手が退職すると、経験や知識を継承できる人材が不足し、運転技術の低下や安全性の低下にもつながりかねません。
参考:統計からみるバス運転者の仕事|厚生労働省
参考:交通事業における就業及び 生産性の現状について|国土交通省
給料が低く若い世代が魅力を感じていない
バス運転手の仕事は、長時間労働や夜勤、責任の重さに加え、給与が比較的低いと言われています。厚生労働省の『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、全産業の平均年収は約489万円ですが、バス運転手の平均年収は約404万円でした。
したがって、若い世代がバス運転手に魅力を感じていないのが現状です。
特に、都市部では他の業種と比べて給与水準が低く、生活の安定を重視する若者にとって、バス運転手は選択肢に入りづらい状況と言われています。
2024年問題が影響している
2024年4月から施行される改正労働基準法により、バス運転手の労働時間規制が強化されます。
労働時間の規制強化により、バス運転手の年間労働時間の上限が3,300時間に引き下げられます。さらに、休息時間もこれまで以上に確保しなければなりません。
2030年には、36,000人ものバス運転手が不足すると言われています。したがって、運転手不足を加速させる悪循環が生み出される可能性が高いと言えるでしょう。
バス業界が終わりと言われている3つの理由
バス業界が終わりと言われている理由は、主に3つです。
- 地方バスの乗客数が減少している
- バス運転手不足で路線の廃止がでている
- マイカー時代の到来でバス利用者が減少している
それぞれについて解説します。
地方バスの乗客数が減少している
地方バスは、過疎化と高齢化の影響を受けて、利用者が減少し、採算の合わない路線が続出しています。30車両以上保有する事業者のうち、約70%が赤字経営です。
バス運転手不足で路線の廃止がでている
バス運転手の高齢化と人材不足は、業界全体の大きな課題です。2007年度から2015年度の間における路線バスの廃止路線キロの推移は、13,991kmにも上ります。
長時間労働や低賃金などの問題が改善されない現状では、若い世代がバス運転手を就職の選択肢に加えることが難しく、深刻な人材不足は続く可能性があります。
マイカー時代の到来でバス利用者が減少している
マイカーの普及により、人々の移動手段はバスから車へと大きく変化しました。
特に、郊外地域ではマイカーがなければ生活が困難な状況となっており、バスの利用者は減少の一途を辿っています。
『一般社団法人日本自動車工業会』によると、2021年の乗用車世帯保有率は77.9%です。また、地方圏中都市になると、マイカーの保有率は80%を超えています。
バス運転手不足に関する5つの対策
昨今、バス運転手の不足が深刻な問題です。高齢化に伴う運転手の減少や、労働環境の厳しさなどが原因として挙げられます。深刻なバス運転手不足に関する、主な対策は5つです。
- 長時間労働を改善する
- 新卒採用に力を入れる
- 女性運転手の採用をしていく
- 定年延長をうまく活用する
- デジタル化をうまく活用する
それぞれについて解説します。
長時間労働を改善する
バス運転手の仕事は、早朝や深夜の勤務も多く、長時間労働になりがちです。長時間労働が改善されると、バス運転手への求職者が増える可能性があります。
改正労働基準法により2024年4月から労働時間の規制が厳しくなりますが、企業ごとの自主的な取り組みが、これまで以上に求められるでしょう。
たとえば、福岡県の西日本鉄道株式会社では、改善基準告示改正に対応した勤怠管理システムで労働時間の可視化を図っています。
新卒採用に力を入れる
バス運転手の高齢化が進み、若い人材の確保が課題となっています。長期的な人材不足の問題を解決するには、新卒採用への注力が必要です。
たとえば、兵庫県の株式会社ウイング神姫では、中途採用だけでなく新卒採用にも力を入れています。実際に、地元の学校へのインターンシップの働きかけやハローワークとの連携などを行っています。
女性運転手の採用をしていく
現在、バス運転手の仕事に従事する人は男性中心です。2018年時点で女性のバス運転手は全体のわずか1.5%でした。
しかし、近年では女性運転手の活躍も目立っており、採用を積極的に進めることで、人材不足解消に貢献できます。
たとえば、先ほども触れた兵庫県の株式会社ウイング神姫では、中途採用・新卒採用に加えて、女性の採用にも力を入れています。具体的には、女性運転手の採用のために、労働環境の整備などに力を入れているようです。
参考:バス業界における女性の活用に関する座談会 報告書|国土交通省 近畿運輸局
参考:自動車運送事業等における 労働力確保対策について|国土交通省
定年延長をうまく活用する
バス運転手の高齢化が進んでおり、次々と定年を迎えています。近年、バス業界に限らず労働力確保のために、定年延長を活用する企業が増えています。
たとえば、東京都の国際興業株式会社では、2019年4月、定年を60歳から65歳に変更しました。
参考:バス業界における女性の活用に関する座談会 報告書|国土交通省 近畿運輸局
デジタル化をうまく活用する
近年、バス業界でもデジタル技術の発展が目覚ましく、さまざまな場面でデジタル化が進んでいます。デジタル化を活用できれば、業務の効率化につながり、人材不足を補えるでしょう。
実際に、多くの企業で、運行管理支援システムなどを導入して、業務の効率化を実現しています。
業務の効率化には、ロジポケがおすすめです。ロジポケは、運送業界に特化した業務改善・経営支援クラウドサービスです。
ロジポケを活用すれば、経営管理・運送手配・請求管理・安全教育・監査対策・採用などの業務を効率化できます。
参考:バス運転者の人材確保・育成による改善事例|厚生労働省
参考:導入事例紹介|国土交通省
バス運転手不足に関する国土交通省が実施している3つの対応策
民間の事業者だけでなく、国土交通省もバス運転手不足を懸念しています。バス運転手不足に関して、国土交通省が実施している対応は、主に3つです。
- 地方運輸局等への相談窓口の設置
- 地域毎の官民学連携体制の構築
- 先進的な取り組みに対する支援内容の検討
それぞれについて解説します。
地方運輸局等への相談窓口の設置
国土交通省は、地方運輸局等に、バス事業者向けの人材確保相談窓口を設置しました。人材確保の専門知識を持つ担当者が、個々のバス運転手からの相談に応じ、課題解決に向けた具体的なアドバイスを提供しています。
窓口に寄せられる相談の例は、次の通りです。
- 労働条件改善や働き方改革に関する助言
- 採用活動支援
- 人材育成・教育プログラムに関する情報提供
- 助成金・支援制度の案内
- 関係機関との連携
地域毎の官民学連携体制の構築
各地域における官民学連携体制を構築し、ニーズに合わせた人材確保・育成計画を策定・実行しています。
官民学連携体制の具体的な取り組み例は、次の通りです。
- 地域のバス事業者、教育機関、行政機関などが参加する協議会を設置
- 運転手不足に関する情報共有
- 人材育成・教育プログラムの共同開発
- 採用活動の共同実施
- 働き方改革に関する検討
- 助成金・支援制度の共同運用
関係機関が情報共有・役割分担をして、運転手不足の解消を目指しています。
先進的な取り組みに対する支援内容の検討
従来の取り組みだけでは、運転手不足の解消には不十分です。
AIや自動運転技術を活用した人材育成、外国人労働者の受け入れ、女性や高齢者など新たな人材層へのアプローチなど、先進的な取り組みを実施するバス事業者への支援内容を検討しています。
参考:自動車運送事業等における 労働力確保対策について|国土交通省
バス運転手不足に関するよくある質問
バス運転手不足に関するよくある質問は、次の通りです。
- バスの運転手はいつかなくなりますか?
- バス運転手不足は今後どうなりますか?
- バス運転手は10年後どうなりますか?
それぞれについて解説します。
バスの運転手はいつかなくなりますか?
バス運転手が完全に消える可能性は低いと考えられます。自動運転技術の発展は目覚ましいですが、大型車両の安全運行への導入は、まだ課題が多く、実用化には時間がかかるでしょう。
バス運転手は、単に運転するだけでなく、乗客の安全を守り、快適なサービスを提供する役割も担っています。自動運転では、安全面の役割や責任を完全に代替できません。
ただし、自動運転技術が進歩し、安全性が向上すれば、将来的には、一部の路線でバス運転手が不要になる可能性はあるでしょう。
バス運転手不足は今後どうなりますか?
バス運転手不足は、今後さらに深刻化する可能性が高いと言われています。
団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となり、バス運転手が人材不足になる見込みです。
さらに、バス運転手の労働環境は厳しく、長時間労働や低賃金などの問題があり、若い世代がバス運転手に魅力を感じにくい状況です。
バス運転手不足の問題解消に向けて、労働環境の改善、賃金の見直し、女性などへの就業支援など、さまざまな取り組みが求められています。
バス運転手は10年後どうなりますか?
バス運転手は10年後も需要の高い職業であると考えられます。ただし、自動運転技術の進歩により、一部の路線では自動運転バスが導入される可能性はあるでしょう。
また、バス運転手の仕事内容は、運転だけでなく、乗客へのサービス提供や、自動運転システムの監視など、より複雑になる可能性があります。
バス運転手不足についてのまとめ
今回は、バス運転手が不足している原因と、10年後に備えた5つの対応策などについて解説しました。
バス運転手が不足している原因は主に3つです。
- 運転手が定年退職している
- 給料が低く若い世代が魅力を感じていない
- 2024年問題が影響している
また、10年後のバス運転手不足に備えた5つの対応策は、次の通りです。
- 長時間労働を改善する
- 新卒採用に力を入れる
- 女性運転手の採用をしていく
- 定年延長をうまく活用する
- デジタル化をうまく活用する
他にも、バス運転手不足に関して、国土交通省も懸念しており、さまざまな対応策を実施しています。さらに、事業者もそれぞれ人材不足の解消に向けて取り組んでいます。
人手不足の問題には、採用や雇用に関して働きかけるだけでなく、業務の効率化を図ることも重要です。まずは、ロジポケを活用して業務の効率化を図ることを検討してはいかがでしょうか。