あらゆる施設に設置してある電気設備ですが、配線工事が完了すれば終わりというわけではありません。
施設が稼働し始めた後も、電気設備の定期的な点検や保安管理が欠かせません。
これらの役割を担う存在が「電気主任技術者」です。
電気工事業の中でも上位資格に位置しており、毎年多くの人が受験する人気資格となります。
しかし、あらゆる電気設備を管理する大きな責任があることから、試験の難易度は高く、容易に合格できるわけではありません。
今回は、試験の合格率や難易度を中心に、電気主任技術者について詳しく解説していきます。
電気主任技術者試験に合格するコツや取得メリットなども解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事でわかること】 ・電気主任技術者の仕事内容や種類 ・電気主任技術者の試験の合格率や難易度 ・第三種電気主任技術者の需要 ・第三種電気主任技術者の試験概要と試験制度の見直し内容 ・電気主任技術者の取得メリットと試験に合格するコツ |
電気主任技術者とは
冒頭で解説した通り、電気主任技術者とは電気工事が終わり、設備が稼働し始めた後に、点検や保安管理を行う人のことです。
電気設備が正常に運用されなくなった場合、人々の生活に大きな影響を及ぼします。
病院といった施設では、人の命にも直結するため、責任重大なポジションと言えるでしょう。
一口に電気設備と言っても規模や種類はさまざまで、第三種電気主任技術者になれば、全ての施設の保安管理ができるわけではありません。
ここでは、電気主任技術者の種類や具体的な仕事内容、資格を取得する2つの方法について解説していきます。
3つの種類がある
電気設備の点検や保安管理は、規模や種類によって必要となる知識や経験が異なります。
そのため、電気主任技術者は携われる電気設備の規模によって3種類に分けられます。
資格の種類 | 携われる業務の範囲 |
電験三種(第三種電気主任技術者) | 電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物 ※5,000kw出力以上の発電所を除く |
電験二種(第二種電気主任技術者) | 電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物 |
電験一種(第一種電気主任技術者) | 事業用電気工作物のすべて |
はじめに目指すこととなる、第三種電気主任技術者を取得できた場合、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物の点検や保安管理に従事できます。
3種類の中では、最も携われる業務の範囲が少ないものの、数多くのビルや工場が該当するため、非常に需要が高いと言えます。
ちなみに、電気工作物とは電気供給に必要な設備の総称であり、受電設備や屋内配線、変電所や発電所などがあります。
また、電気工作物はさらに3つの種類に分類されます。
事業用電気工作物 | 3種類の電気事業者が電気を供給するために必要な電気工作物で、具体的には大規模な発電所や変電所がある |
一般電気工作物 | 600ボルト以下の低圧電気設備で、住宅や小規模な店舗の照明といった電気機器 |
自家用電気工作物 | 電気の供給以外を目的とした、600ボルトを超える電圧受電設備や施設 |
近年は電気を一括購入する高層ビルやマンションが増えてきており、より第三種電気主任技術者の需要は高まっていくと推測されています。
電気主任技術者の仕事内容
電気主任技術者は、電気設備の点検や保安管理を行うのが仕事であり、具体的な仕事内容は以下の通りです。
・電気設備の保安管理や点検 ・電気設備が故障した際の対応 ・電気工事における現場監督 |
電気設備の保安管理や点検には以下のような作業があります
・絶縁体の抵抗測定 ・非常用発電機の点検 ・電流や電圧の計測や記録 ・配線ネジの劣化や緩みの確認 |
各電気工作物でこのような点検を行い、些細な不具合でも見逃さないようにしています。
また、電気機器に汚れやホコリが溜まると、電気配線がショートしてしまう恐れがあるため、周辺の清掃作業も重要な業務の1つです。
電気設備が故障した際には、原因を突き止め故障個所の修理を行ったり、必要に応じて電気工事士を呼んだりもします。
電気主任技術者の一日は以下のような流れで進みます。
8:00 | 出勤後、現場に向かう場合は試験器などの準備を進める |
8:15~8:45 | 朝礼を行い、担当現場の竣工検査や定期点検がないかチェックする |
8:45~12:00 | メールの返信などを済ませた後に、現場に向かい点検作業を行う |
12:00~13:00 | 昼休憩 |
13:00~16:00 | 別の現場で電気工作物の点検や検査を行う |
16:00~17:00 | 会社に戻り、報告書や見積書の作成といった事務作業を進める |
17:30 | 退社 |
点検や検査は時間が決まっているため、時間管理も大切です。
現場によっては夜間の作業もあり、繁忙期は残業が続くこともあります。
電気主任技術者になる方法は2通り
電験三種(第三種電気主任技術者)になる方法としては2種類あります。
・電気主任技術者試験に合格する ・実務経験を積み認定により取得する |
まず1つ目が電気主任技術者試験に合格する方法です。
第三種電気主任技術者試験の場合、受験資格がないため過去の経験や学歴に関係なく、誰でも挑戦できます。
2つ目は実務経験を積んだ上で、認定により電気主任技術者になる方法です。
認定を受ける方法に関しては、誰でも目指せるわけではなく、経済産業大臣認定の学校を所定の科目を修めた上で、卒業していなければなりません。
卒業した学校により、以下のような実務経験が必要です。
【第三種電気主任技術者の場合】
学歴 | 必要な実務経験年数 |
高校卒業 | 3年 |
高等専門学校・短大卒業 | 2年 |
大学卒業 | 1年 |
また、実務経験の内容にも指定があり、電気主任技術者の認定を受けられる業務内容は以下の通りです。
・系統の変更 ・設備安定と経済的運転検査 ・電気設備や器具の設計 ・設備持続のための保安管理 ・性能検査と機器調整 ・配線工事 |
電気機器を製造していたり、操作したりするような業務は実務経験として認められません。
電気主任技術者の試験の合格率と難易度
電気工事業で活かせる資格には、電気工事士や電気工事施工管理技士、工事担任者などさまざまな種類があります。
電気主任技術者はその中でも上位資格に位置しており、難易度もかなり高いと言えるでしょう。
ここでは、電気主任技術者の種類別で試験の合格率や難易度について解説していきます。
第三種電気主任技術者
電気技術者試験センターが公表している、試験結果データによると、第三種電気主任技術者の合格率は以下のように推移しています。
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和4年度 | 62,571人 | 7,307人 | 11.6% |
令和3年度 | 37,765人 | 4,357人 | 11.5% |
令和2年度 | 39,010人 | 3,836人 | 9.8% |
令和元年度 | 41,543人 | 3,879人 | 9.3% |
平成30年度 | 42,976人 | 3,918人 | 9.1% |
電験三種の合格率は毎年1割ほどで推移しており、難易度はかなり高いと言えます。
ただし、電験三種の試験には受験資格がなく、電気工事業界で働いたことのない人も多く受験しています。
業界未経験者が試験に合格することは決して珍しくなく、誰でも合格を狙える資格とも言えるでしょう。
また、電験三種の試験では4科目が出題され、全てに合格すれば資格取得となりますが、一部の科目に合格した場合は、翌年と翌々年に持ち越せます。
例として、1回目の受験で2つの科目のみ合格した場合、2回目の受験では残り2科目に合格すれば資格が取得できます。
科目合格者率は毎年約3割で推移しているため、これも踏まえるとそこまで難しいとは言えません。
計画を立てた上でしっかり勉強すれば、未経験者でも合格を十分狙えます。
ちなみに、合格率だけでみた場合、同じ10%前後の合格率の資格としては、公認会計士や行政書士、ファイナンシャルプランナー1級などがあります。
参照:令和4年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について|一般財団法人 電気技術者試験センター
第二種電気主任技術者
第二種電気主任技術者試験の場合、第一次試験と第二次試験に分かれており、どちらにも合格すれば資格取得となります。
各試験の合格率は以下の通りです。
【第二種電気主任技術者・一次試験】
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和4年度 | 6,189人 | 2,178人 | 35.1% |
令和3年度 | 5,979人 | 1,539人 | 25.7% |
令和2年度 | 6,235人 | 1,695人 | 27.1% |
令和元年度 | 6,915人 | 1,633人 | 23.6% |
平成30年度 | 6,631人 | 1,600人 | 24.1% |
【第二種電気主任技術者・二次試験】
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和4年度 | 2,904人 | 698人 | 24% |
令和3年度 | 2,407人 | 413人 | 17.1% |
令和2年度 | 2,512人 | 701人 | 27.9% |
令和元年度 | 2,513人 | 574人 | 22.8% |
平成30年度 | 2,624人 | 381人 | 14.5% |
第二種電気主任技術者試験の合格率は、第一次試験で約3割、第二次試験で約2割となります。
第三種よりも合格率が高い理由としては、既に第三種の資格を取得しており、電気業界に従事している人の割合が多いからと推測されます。
第二種電気主任技術者試験に関しても一次試験は科目合格があり、3年間かけて4科目に合格すれば問題ありません。
また、一次試験に合格した場合は、1年間一次試験が免除となり、2次試験だけに合格すれば資格取得となります。
ちなみに、第二種電気主任技術者試験も受験資格がなく、誰でも受験できます。
稀ではあるものの「勉強時間を短縮したいから」と、いきなり第二種の試験に挑戦して合格する人も中にはいます。
参照:令和4年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について|一般財団法人 電気技術者試験センター
第一種電気主任技術者
第一種電気主任技術者試験も、第一種と第二種に分かれており、どちらともどちらにも合格すれば資格取得となります。
各試験の合格率は以下の通りです。
【第一種電気主任技術者・一次試験】
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和4年度 | 1,436人 | 442人 | 30.8% |
令和3年度 | 1,225人 | 379人 | 30.9% |
令和2年度 | 1,508人 | 759人 | 50.3% |
令和元年度 | 1,566人 | 379人 | 24.2% |
平成30年度 | 1,566人 | 378人 | 24.1% |
【第一種電気主任技術者・二次試験】
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和4年度 | 685人 | 143人 | 20.9% |
令和3年度 | 899人 | 72人 | 8% |
令和2年度 | 933人 | 134人 | 14.4% |
令和元年度 | 598人 | 103人 | 17.2% |
平成30年度 | 615人 | 84人 | 13.7% |
第一種電気主任技術者試験の合格率は第一次試験で約3割、第二次試験で1~2割となります。
受験者のほとんどが経験者であることを踏まえると、かなり難易度は高いと言えるでしょう。
受験者数が少ない理由としては、第一種でなければ務まらないような大規模な施設が国内に多く存在しておらず、需要が少ないことが考えられます。
ちなみに、第一種電気主任技術者試験にも科目合格制度があり、第一次試験の合格者は翌年度の一次試験が免除となります。
受験する上で特殊な条件は一切なく、誰でも挑戦可能です。
参照:令和4年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について|一般財団法人 電気技術者試験センター
関連記事:電気通信主任技術者の難易度は高い?平均年収や合格のコツも解説
電験三種(第三種電気主任技術者)は特に需要が高い
3つある電気主任技術者の中でも、特に電験三種は需要が高いと言われています。
電気主任技術者の入門編ということもあり、毎年多くの人が受験しています。
ここでは、電験三種の需要が高い理由や、受験者層の詳細について解説していきます。
電験三種の需要が高い理由
電験三種の需要が高い理由としては主に3つあります。
・未経験者でも挑戦しやすく、対象となる設備が多い ・将来的により需要が伸びると予想されている ・AIによって仕事がなくなる可能性が低い |
電験三種は、他の種類と比べて扱える事業用電気工作物の範囲が狭い一方で、対象となる施設や設備は全国に数多く存在します。
電験一種でなければ携われないような事業用電気工作物は、ほとんどありません。
今後更にオール電化が進むと予想されており、近年は太陽光発電も増えてきています。
そのため、電験三種は他の種類と比べても需要が高いと言えるでしょう。
また、電験三種の仕事は資格保有者しか従事できない業務独占資格であり、非常に重要な役割を担っているため、AIに仕事を任せるのは難しいと言えます。
これらの理由により、電験三種は需要が特に高まってきています。
電験三種の受験者層
電気主任技術者の受験者層は、種類によって年代が異なります。
資格の種類 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 |
電験三種 | 5% | 36% | 29% | 18% | 10% |
電験二種 | 0.2% | 22% | 38% | 26% | 12% |
電験一種 | 0% | 17% | 49% | 22% | 8% |
※平成21年度の調査結果より
電験三種の場合、20代が最も多く次いで30代となっています。
電気技術者活動実態調査によると、20代受験者の受験動機として最も多かったのが「勤務先の指示や勧め」で全体の48.5%でした。
次いで多かったのは「自分の実力を試すため」が37.7%であり、今後の就職や転職を有利にしたいからと答えた人の割合は約18%でした。
ちなみに、電験三種の取得者が就職している業界には、以下のような種類があります。
電気設備管理・ビルメンテナンス等 | 17.7% |
製造業(電気機器以外) | 15.5% |
公務員・団体職員・教職員 | 12.7% |
製造業(電気機器) | 10.7% |
電気供給業(電力会社) | 9.3% |
電気工事・電気設備架設工事業 | 5.9% |
建設業 | 2.8% |
自営業 | 2.2% |
※平成21年度の調査結果より
電験三種で従事できる事業用電気工作物としては、ビルや病院といった施設のものがほとんどです。
そのため、電験三種の需要が最も高いのは、電気設備管理やビルメンテナンス会社となります。
製造業に関しては、自社が保有する事業用電気工作物のメンテナンスを行う部署での活躍と推測されます。
電験二種や電験一種は、より大規模な事業用電気工作物を扱えるようになるため、就職先として最も多かったのは、電気供給業(電力会社)でした。
参考元:電気技術者活動実態調査結果報告書(概要版)|財団法人 電気技術者試験センター
電験三種(第三種電気主任技術者)の試験制度の見直しについて
電気主任技術者は、国内に存在する全ての事業用電気工作物の健全な運営に、欠かせない存在です。
しかしながら、今後はエネルギー発電関連の設備が増えていくこともあり、地方を中心に電気主任技術者が大きく不足すると予想されています。
技術者不足を解消するため、近年は電気主任技術者試験の合格者増加に向けた取組みが、経済産業省を中心に行われています。
取り組みの1つとしてあるのが、電気主任技術者の試験制度の見直しです。
ここでは、電験三種の試験制度がどのように見直されたのか、詳しく解説していきます。
試験回数の変更
これまで、電験三種の試験は年に1回のみの開催でしたが、令和4年度の試験からは年2回に変更されました。
上期試験は7〜8月、上期試験は翌2〜3月に実施され、どちらとも受験することも可能です。
試験回数が2回に増えることのメリットは主に3つあります。
・合格の可能性があがり、落ちた場合も半年後に再受験できるため、モチベーションを維持しやすい ・試験時期が2回に分かれているため、働いている人でも受験のチャンスがある(繁忙期を避けて受験ができる) ・科目別合格制度を活かせる試験が増加する |
一方で、試験回数2回になる分過去問も増えるため、対策範囲が広がるため注意が必要です。
また「どうせ次があるから」と怠けないようにしましょう。
CBT方式の導入
2つ目の変更点としては、筆記試験に加えてCBT方式が導入されます。
CBT方式とは、パソコンを活用し、オンラインで受けられるテスト方式の試験です。
これまでとは違い、全てパソコンによる操作となりますが、特別難しい作業はなく誰でも簡単に受験できます。
従来通りの筆記試験も別で開催されるため、都合の良い試験会場や試験日時を指定しやすくなります。
一方で、パソコンになれていない人の場合、操作ミスによって不正解となるようなトラブルも予想されるため、予め試験に慣れておくようにしましょう。
難易度の変更はなし
試験回数の増加や新たな試験方法の新設により、合格者は増加すると予想されていますが、試験自体の難易度が下がったわけではありません。
電気設備のトラブルは、人々の生活に大きく影響し、病院などの施設では人の命にも直結します。
電気主任技術者が増えたとしても、質の低い人ばかりでは意味がありません。
そのため、試験自体の難易度が引き下げられる予定は現時点でありません。
電験三種(第三種電気主任技術者)の試験概要
ここでは、電験三種の試験概要について詳しく解説していきます。
手続きの方法やスケジュール、試験範囲を理解した上で勉強の計画を立てていきましょう。
手続きの方法
第三種電気主任技術者試験を受験する場合、2つの方法で申し込みを行います。
・インターネットによる試験の申込み ・書面による試験の申込み |
インターネットにより申込みする場合は、電気技術者試験センターのホームページから申請します。
ホームページ下部にある「インターネット受験申込・マイページ作成・ログイン」をクリックし、手続きを進めていきましょう。
書面で申込みする場合は、電気技術者試験センター本部事務局窓口に取りに行くか、郵送してもらうこととなります。
書面を郵送してもらう方法は、電気技術者試験センターのホームページ「お知らせ・受験案内の配布」に記載されています。
受験料金(非課税)は以下の通りです。
・インターネットによる申込み:7,700円 ・書面による申込み:8,100円 |
インターネットによる申込みの場合は、銀行振り込みやクレジットカード決済、コンビニ決済などから選べます。
書面による申込みの場合はゆうちょ銀行にて支払います。
詳しくは、電気技術者試験センターの「受験申込方法・受験案内」に記載されていますので、確認しましょう。
受験の申し込みをした上で手数料の支払を済ませれば、試験日の約2週間前に、試験センターより受験票が郵送されてきます。
スケジュール
第三種電気主任技術者試験のスケジュールは以下の通りです。
受験申込受付期間 | 試験実施時期 | |
上期試験 | 5月中旬~6月上旬 | ・CBT方式:7月上旬~7月下旬 ・筆記試験:8月中旬 |
下期試験 | 11月中旬~11月下旬 | ・CBT方式:2月上旬~2月下旬 ・筆記試験:3月下旬 |
具体的な試験実施日は、年度ごとに異なるため、必ず電気技術者試験センターのホームページで確認するようにしましょう。
以下のいずれかの項目に該当する場合、受験できなくなるため注意が必要です。
・受験票を当日持参していない ・各科目試験が始まってから30分以上の遅刻 ・申込写真と受験者の顔が異なる ・受験票で指定された会場以外での受験 |
受験票の持参忘れは特に多く、上期試験においては雪による公共交通機関の遅延が予想されるため、余裕を持って出発しましょう。
試験に合格した場合は、経済産業大臣に免状交付申請(手数料2,350円)を行い、免状交付となる流れです。
出題範囲
第三種電気主任技術者試験で実施される試験科目は「理論・電力・機械・法規」の4科目となります。
各科目の試験時間は90分であり、1日で全て実施されます。
具体的な出題範囲は以下の通りです。
試験科目 | 出題範囲 |
理論 | 電気・電子の計測、電子・電気の理論に関する内容 |
電力 | 変電所・発電所の設計や運転、配電線路・送電線路の設計や運用、電気材料に関する内容 |
機械 | 電動機応用・電気機器・電気加工・パワーエレクトロニクス・電気化学・自動制御・照明・メカトロニクス・電力システムに関する情報処理と伝送に関する内容 |
法規 | 電気施設の管理や電気法規に関する内容 |
理論・電力・機械ではA問題が14問、B問題が3問出題されます。
法規に関しては、A問題が10問、B問題が3問出題されます。
A問題とは、1つの問いに対して1つ解答を行い、B問題は1つの問いの中に小問を2つ設けて、それぞれに解答する方式です。
【試験中の注意事項】
・時計は電卓機能や通信機能があったり、音が出たりするものは着用できません ・スマホや携帯電話を時計や電卓の代わりに使用する行為はできません。 ・数式が記録できる電卓や関数電卓、印字機能を有する電卓は使用できません。 |
上の条件に当てはまらない電卓であれば、試験中に使用できます。
試験の合格基準に関しては、第三種電気主任技術者試験委員会によって決定されます。
令和4年度の上期試験の場合、各科目の合格点は以下の通りでした。
【科目別合格点・100点満点中】
・理論:60点以上 ・電力:60点以上 ・機械:55点以上 ・法規:54点以上 |
試験内容や合格点は年度によって変わる可能性があるため、事前にチェックするようにしましょう。
電験三種(第三種電気主任技術者)を取得するメリット
電験三種は事業用電気工作物の点検や保守管理ができるようになる資格ですが、3つの取得メリットがあります。
・昇進や昇給を期待できる
・転職に有利
・AIに奪われにくい
電験三種の取得により、なぜ昇進や昇給に繋がり、転職に有利となるのか詳しく解説していきます。
昇進や昇給を期待できる
電験三種を取得することにより、事業用電気工作物の点検や保安管理業務に携われるようになるため、仕事の幅が広がります。
会社としてより多くの点検や、保安管理の依頼を受注できるようになるため、利益も上げやすくなり、個人の評価も高まります。
そのため、昇進しやすくなり、昇給額を上げることも可能です。
また、公共工事を直接請け負う建設業許可業者の場合、企業の客観的な評価を行うために「経営事項審査」が行われます。
審査では、従業員が保有している資格も加点の対象となり、電気主任技術者もそれに含まれていることから、企業にとっても取得メリットがあります。
転職に有利
事業用電気工作物は、工場・商業施設・病院・マンション・発電所などあらゆる建物に設置されています。
そのため、活躍できる業界も幅広く、電気設備管理会社やビルメンテナンス会社、各種メーカーの機械メンテナンス部などさまざまな会社で需要があります。
電気主任技術者の需要は、今後も下がることがなくより高まっていくと予想されており、資格を持っていれば、転職の際に評価を得やすくなるでしょう。
既に電気業界で働いている人に関しても、より条件の良い企業への転職が可能となります。
AIに奪われにくい
電気主任技術者の仕事内容は、AIによって奪われる可能性もかなり低いと言えます。
近年は、人工知能(AI)技術の急成長により、さまざまな作業が機械ロボットによって行われるようになってきているのが現状です。
将来的には、AI技術が更に進歩することが確実視されており、荷物の配達業務や事務職がなくなると言われています。
しかし、電気主任技術者の仕事は多くの人々に影響する重要な業務であり、ロボットが行えないような複雑な作業もあります。
その場の状況に応じた判断も求められることも多いため、電気主任技術者の仕事がAIに奪われる可能性は低いと言えるでしょう。
電気主任技術者に合格するための5つのコツ
電気主任技術者試験は、比較的取得しやすい第三種でも合格率が10%ほどであり、難易度の高い資格です。
試験に合格するには、覚える内容や勉強の進め方などについて理解した上で効率良く勉強を進めていく必要があります。
ここでは、電気主任技術者に合格するために知っておくべき、5つのコツについて解説していきます。
これから資格取得に挑戦しようとしている人は、ぜひ参考にしてみてください。
勉強時間は1000時間前後
電験三種を取得するのに必要な勉強時間は1,000時間前後と言われています。
1日に2時間ずつ勉強した場合には、約1年と3ヶ月となり、4時間ずつ進めた場合には、8ヶ月前後です。
就職したい時期などが定まっている場合には、それに向かって一日の勉強時間を設定しましょう。
ちなみに、1,000時間という基準は全く知識のない人が挑戦する場合の時間です。
これまでに修了した学科や、仕事経験によって、より早い期間での取得も目指せます。
基礎知識や公式の暗記は必須
電気主任技術者試験では知識に関する問題だけでなく、計算問題も多く出題されます。
そのため、基礎知識はもちろん、関連の公式も全て暗記しておくことが必須と言えます。
全く知識のない状態から勉強を始める場合には、理論科目からの学習がおすすめです。
他の科目にも共通する基礎が含まれており、最初に理解しておくことで、他の科目の理解度を高められます。
理論の後には、電力と機械科目を同時に進めていきましょう。
理論科目で学んだ基礎内容で解ける問題が多く、出題内容が似ている範囲もあるため、まとめて覚えやすいと言えます。
過去問で傾向を掴む
ある程度、各科目の知識を身に付けた後には、過去問で試験問題の傾向に慣れていきましょう。
現時点での実力を知れるだけでなく、過去問に似た内容の出題も珍しくありません。
過去問を解く際には、同じ年度の問題を繰り返し解くのではなく、過去10年分をまんべんなくこなすことをおすすめします。
インプットだけでなくアウトプットも同時に行えば、実地的な解答力も身に付けられます。
通信講座の活用
電気に関する知識が全くなく、参考書の内容がなかなか理解できないといった人は、通信講座の活用をおすすめします。
近年は、多くの通信講座が販売されており、それぞれに特徴があります。
初学者でも理解しやすいように、イラストや解説が付いた参考書やスマホ専用教材なども用意されており、好きな場所で学ぶことも可能です。
どうしても分からない箇所がある場合には、講師への質問も可能であり、しっかりとしたサポートを受けながら勉強を進められます。
通信講座の料金は種類によって異なりますが、3〜25万円となります。
科目別合格制度の活用
科目別合格制度の活用も、最短での資格取得に欠かせません。
科目別合格制度とは、4科目のうち複数科目のみに合格した場合、翌々年度の試験まで合格した科目の受験が免除される制度です。
一気に4科目合格するのはかなり難しいため、1回目の試験は2科目合格に絞るなどして、複数回の受験で資格取得を目指してみましょう。
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電気主任技術者の合格率についてのまとめ
電気主任技術者は、あらゆる建物に設置された事業用電気工作物の点検や、保守点検を行う役割を担っています。
電気工事業や建設業、ビルメンテナンス業といったさまざまな業界に欠かせない存在です。
近年は、自然エネルギーを活用した発電設備も増えてきており、将来的にはより需要が高まると予想されています。
試験の合格率は10〜30%と非常に低いものの、試験回数の増加や新しい試験方式の導入により、合格しやすくなってきています。
取得することで、就職や転職に有利になり長期的に活躍し続けられるでしょう。
特別な受験条件はなく、誰でも挑戦できる資格であるため、今回紹介した勉強方法のコツを基に、取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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