電気主任技術者

電気主任技術者の合格率は?試験概要や合格するための5つのコツも

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電気主任技術者を目指す男性(イメージ)

第三種電気主任技術者(電験三種)合格率は、令和3年度が11.5%、令和4年度上期が8.3%、下期が15.7%、令和5年度上期が16.6%です。

合格率は総じて低く、電気関連の資格の中でも難易度は最も高いと言われています。

そこでこの記事では第三種電気主任技術者(電験三種)の合格率の実態、合格するコツ、昨今の試験の変更ポイントなどを解説します。

第三種電気主任技術者の合格率

現場で設備点検をする様子

第三種電気主任技術者(電験三種)は、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物の工事、維持、運用の保安を担当する国家資格です。ここでは、電験三種の合格率、年齢別の合格者の割合、合格基準点の推移を紹介します。

電験三種の合格率の推移

電気技術者試験センターが公表している試験結果データによると、第三種電気主任技術者の合格率は以下のように推移しています。

年度電験三種の合格率
令和2年度9.8%
令和3年度11.5%
令和4年度上期8.3%
令和4年度下期15.7%
令和5年度上期16.6%

電験三種の合格率は毎年1割ほどで推移しています。電気業界で働いたことがない未経験者が受験可能であることを考慮しても、難易度はかなり高いと言えるでしょう。

ただし、電験三種の試験は難易度が高い代わりに、合格した一部の科目を翌年に持ち越せるルールがあります。厳密には、合格した年から3年間は有効です。

たとえば、1回目の受験で4科目のうち2つのみ合格だった場合、翌年の受験では不合格だった残り2科目に合格すれば資格を取得できます。

科目合格者率は毎年約3割で推移しているため、どうしても一発合格が難しいと感じる場合は、数回に分けて3年以内に合格するのも1つの戦略です。

参照:令和5年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について|一般財団法人 電気技術者試験センター

年齢別・電験三種の合格者の割合

令和3年度における電験三種の合格者の年齢別割合は以下の通りです。

10代20代30代40代50代60代
電験三種約6%約34%約25%約20%約10%約5%

最も割合が多いのが20代で、特に少ないのが10代・60代という結果でした。

参考:令和3年度電気技術者試験受験者実態調査|一般財団法人 電気技術者試験センター

科目別・電験三種の合格基準点の推移

直近の科目別の電験三種の合格基準点は、以下のように推移しています。

年度理論電力機械法規
2023年度上期60点60点60点60点
2022年度下期60点60点60点60点
2022年度上期60点60点55点54点
2021年度60点60点60点60点
2020年度60点60点60点60点
2019年度55点60点60点49点

以前は合格基準点が60点を切る科目もありましたが、全体的には60点以上を基準点とする年が多い傾向にあります。2023年度上期の電験三種試験でも、理論、機械、電力、法規の4科目すべてで合格基準点が60点以上でした。

参考:令和5年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について|一般財団法人 電気技術者試験センター

電験三種の何が難しいのか

難易度が高いと言われる電験三種ですが、最も難しいと言われてる科目が「理論」です。この科目は、電気の基本的な性質や電気回路、電子回路に関する広範な知識を要求され、数学的な計算問題も多く含まれます。

そのため、初めて電験三種に挑戦する人は、理論と数学に焦点を当てた学習からスタートすることが望ましいです。

次に「電力」科目では、発電所や変電所の設計・運用、送配電システム、電気材料など、電力システム全般について学ぶ必要があります。「機械」科目では、変圧器やその他の電気機器、パワーエレクトロニクス、照明、デジタル回路などが扱われます。電力と機械の内容は密接に関連しているため、こちらの2つはどちらを先に学習しても問題ありません。

最後に「法規」科目では、電気事業法や電気用品安全法などの法的規制を学びます。この科目では暗記が必要ですが、計算問題も出題されるため、他の3科目の知識が無いと対応が難しい問題があります。そのため、法規は他の科目の学習を進めた後で、最後に取り組むと効果的です。

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第三種電気主任技術者に合格する5つのコツ

会議をしている様子

ここでは第三種電気主任技術者(電験三種)に合格する5つのコツを紹介します。

勉強時間は1000時間前後

電験三種を取得するのに必要な勉強時間は1,000時間前後と言われています。

1日に2時間ずつ勉強した場合には、約1年と3ヶ月となり、4時間ずつ進めた場合には、8ヶ月前後です。

就職・転職したい時期が定まっている場合は、それに向かって一日の勉強時間を設定しましょう。

なお、1,000時間という基準はまったく知識のない人が挑戦する場合の時間です。これまでに修了した学科や、仕事経験値次第ではより早い期間での取得も目指せます。

基礎知識や公式の暗記は必須

電気主任技術者試験では知識に関する問題だけでなく、計算問題も多く出題されます。そのため、基礎知識はもちろん、関連の公式もすべて暗記しておくことが必須です。

ゼロベースで勉強を始める場合は、理論科目からの学習がおすすめです。他の科目にも共通する基礎が含まれており、最初に理解しておくことで、他の科目の理解度を高められます。

過去問で傾向を掴む

各科目の知識を身に付けた後は、過去問で試験問題に慣れていきましょう。現時点での実力を知ることもできます。

なお、過去問を解く際は同じ年度の問題を繰り返し解くのではなく、過去10年分をまんべんなくこなすことをおすすめします。インプットだけでなくアウトプットも同時におこなうことで、より知識が記憶に定着しやすくなるでしょう。

通信講座の活用

電気に関する知識がまったくなく、参考書の内容がなかなか理解できない人は、通信講座の活用をおすすめします。

通信講座では、初心者でも理解しやすいように、イラストや解説が付いた参考書やスマホ専用教材なども用意されており、好きな場所で学ぶことが可能です。

どうしても分からない箇所がある場合には、講師への質問も可能であり、しっかりとサポートを受けながら勉強を進められます。料金相場は3万円〜25万円程度まで幅広いので、予算に合わせて無理のない選択をしましょう。

科目別合格制度の活用

科目別合格制度の活用も、最短での資格取得に欠かせません。科目別合格制度とは、4科目のうち複数科目のみに合格した場合、翌々年度の試験まで合格した科目の受験が免除される制度です。

一度に4科目合格するのはかなり難易度が高いため、1回目の試験は2科目合格に絞るなどして、複数回の受験で資格取得を目指すのも1つの手です。

第三種電気主任技術者に合格するメリット

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ここでは第三種電気主任技術者(電験三種)に合格することで得られるメリットを4つ紹介します。

独占業務による安定した将来性

電験三種は、電気に関する業務の中でも独占的な作業が可能な資格です。この独占業務により、資格を持つ人は常に一定の需要があり、安定した仕事を得やすくなります。

さらに、再生可能エネルギー関連の設備が増加しているため、今後ますます需要が高まることが予想されるでしょう。このように、将来的にも需要が見込まれるため、長期的なキャリアを築く上で大きな強みとなります。

就職や転職で有利

電験三種を取得することで、電気設備に関する専門知識を証明できるため、就職や転職時に有利になります。

特に、電験三種の資格手当が支給される企業も多く、収入アップが期待できるのも魅力です。

また、難関資格であるため、合格した事実自体が評価されやすく、他の候補者との差別化を図れます。

実務経験を積めば独立も可能

電験三種の資格は、実務経験を積むことで独立開業もできます。独立すれば、定年に左右されることなく働き続けることができ、生涯にわたって収入を得ることも可能です。

自分のペースで働きたい、安定した収入源を確保したいと考えている人には、電験三種の取得がおすすめです。

仕事の選択肢が増える

電験三種に合格することで、選べる仕事の幅が大きく広がります。資格を活かしてビルメンテナンス、電気工事士、発電所の運転管理など、幅広い業界や職種での活躍が期待されます。

また、電気設備の設置や保守業務をおこなう企業だけでなく、再生可能エネルギーや省エネに関する新しい分野にも挑戦できる可能性があります。

令和4年度以降の第三種電気主任技術者試験の注目ポイント

夜間に設備点検する様子

電気主任技術者は、エネルギー発電関連の設備増加に伴い、地方を中心に電気主任技術者が大きく不足すると予想されています。そのため、近年は電気主任技術者試験の合格者増加に向けた取組みが、経済産業省を中心におこなわれているのです。

ここでは、電験三種の試験制度がどのように見直されたのか、3つの注目ポイントを紹介します。

試験は年1回から年2回へ

従来、電験三種の試験は年に1回のみの開催でしたが、令和4年度の試験から年2回に変更されました。上期試験は7〜8月、上期試験は翌2〜3月に実施され、どちらとも受験することが可能です。

一度落ちた場合も半年後に再受験できるため、モチベーションを維持しやすいでしょう。また、試験時期が2回に分かれているため、働いている人でも繁忙期を避けて受験しやすいのもメリットです。

CBT方式による受験が可能

同じく令和4年度から、筆記試験に加えてCBT方式が導入されました。CBT方式とは、パソコンを活用し、オンラインで受けられる試験方式のことです。

これまでと違い、すべてパソコンによる操作となりますが、特別難しい作業はなく、誰でも簡単に受験できます。

従来通りの筆記試験も別で開催されるため、都合の良い試験会場や試験日時を指定しやすくなります。

一方で、パソコンになれていない人の場合、操作ミスによって不正解となるようなトラブルも予想されるため、予め試験方法を理解しておきましょう。

難易度の変更はなし

試験回数の増加や新たな試験方法の新設により、合格者は増加すると予想されていますが、試験自体の難易度が下がったわけではありません。

電気設備のトラブルは、人々の生活に大きく影響し、病院などの施設では人の命にも直結します。

電気主任技術者の質が落ちることの社会への影響は大きいため、試験の難易度が下げられる予定は現時点でありません。

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第三種電気主任技術者の試験概要

ここでは電験三種の試験に申し込む流れ、スケジュール、出題範囲を紹介します。

申し込みの流れ

電験三種の申し込みの手続きは、原則としてインターネット上で受け付けています。

一般財団法人電気技術者試験センターのサイトを開き、「インターネット受験申込」のバナーをクリックしてください。

初めての人は「個人申込」「新規登録」を選び、マイページを作成しましょう。その後、サイト内の指示に従って申し込み手続きをおこなってください。

なお、インターネットからの申し込みでは、受験手数料として7,700円の支払いが必要です。

参考:第三種電気主任技術者の資格取得フロー|一般財団法人 電気技術者試験センター

スケジュール

令和6年度の第三種電気主任技術者試験のスケジュールは、以下の通りです。

申込期間試験実施日
上期試験2024年5月20日(月)~6月6日(木[筆記方式]2024年8月18日(日)[CBT方式]2024年7月4日(木)~7月28日(日)(25日間)
下期試験2024年11月11日(月)~11月28日(木)[筆記方式]2025年3月23日(日)[CBT方式]2025年2月6日(木)~3月2日(日)(25日間

参考:令和6年度電気主任技術者試験の実施日程等のご案内|一般財団法人電気技術者試験センター

具体的な試験実施日は、年度ごとに異なるため、必ず電気技術者試験センターのホームページで確認しましょう。なお、以下のいずれかの項目に該当する場合、受験できなくなることがあるので注意してください。

  • 受験票を当日持参していない
  • 各科目試験が始まってから30分以上の遅刻
  • 申込写真と受験者の顔が異なる
  • 受験票で指定された会場以外での受験

受験票の持参忘れは特に多く、上期試験においては雪による公共交通機関の遅延が予想されるため、余裕を持って出発しましょう。

試験に合格した場合は、経済産業大臣に免状交付申請(手数料2,350円)をおこない、免状交付となる流れです。

出題範囲

電験三種の試験で実施される試験科目は、理論・電力・機械・法規の4科目となります。

各科目の試験時間は90分であり、1日ですべて実施されます。具体的な出題範囲は以下の通りです。

試験科目出題範囲
理論電気・電子の計測、電子・電気の理論に関する内容
電力変電所・発電所の設計や運転、配電線路・送電線路の設計や運用、電気材料に関する内容
機械電動機応用・電気機器・電気加工・パワーエレクトロニクス・電気化学・自動制御・照明・メカトロニクス・電力システムに関する情報処理と伝送に関する内容
法規電気施設の管理や電気法規に関する内容

理論・電力・機械ではA問題が14問、B問題が3問出題されます。法規に関しては、A問題が10問、B問題が3問出題されます。

A問題は1つの問いに対して1つ解答をおこなう方式で、B問題は1つの問いの中に小問が2つ設けてある方式です。

第三種電気主任技術者の合格率に関連してよくある質問

ビルで工事の話し合いをしている様子

最後に電験三種の試験の合格率に関連して、よくある質問に回答します。

電験三種は意味がないと言われる理由は何ですか?

電験三種が有用か否かについて、ネガティブな意見がある理由は、取得難易度の高さにあります。「合格には最低1000時間の勉強が必要」と言われており、一部ではその労力に対する報酬が低いと感じる人がいたのです。

しかし、近年は試験の開催数が年1回から2回に増えたこともあり、科目別合格制度を利用すれば、従来よりもスムーズに取得できるようになりつつあります。

また、資格があるかないかで手当による収入の差も生まれますし、今後は人手不足から電験三種保有者の需要が高まることが予想されます。

このように、「電験三種の取得に意味がない」という意見は、昨今の電験三種の実態とは乖離していると言えるでしょう。

電験三種と二種・一種との違いは何ですか?

電験三種、二種、一種は、いずれも電気設備の管理や保安業務に関連する国家資格ですが、対応可能な電圧レベルや施設の規模が異なります。

まず電験三種は、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物に関わり、主に小規模な工場やビル、商業施設の電気設備の工事、保守、運用を担当します。

一方、電験二種は電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物を扱い、中規模から大規模な再生可能エネルギー発電設備や大型工場の保安管理が可能です。

最上位の電験一種は、電圧制限なく事業用電気工作物全般の保安監督をおこなうことができ、大規模な発電所や変電所を含む広範な施設を担当します。

電験二種・一種の合格率はどれくらいですか?

電験二種と一種の合格率は以下の通りです。

電験二種の合格率電験一種の合格率
令和元年度22.8%17.2%
令和2年度27.9%14.4%
令和3年度17.2%8.0%
令和4年度24.0%20.9%
令和5年度17.7%17.9%

電験二種は17%〜27%の範囲で推移し、電験一種は8%〜20%の範囲で推移しており、年度によってばらつきがあることがわかります。

参考:令和5年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について|一般財団法人 電気技術者試験センター

第三種電気主任技術者の合格率や勉強時間についてのまとめ

第三種電気主任技術者(電験三種)合格率は過去数年で変動があり、令和2年度は9.8%、令和3年度は11.5%、令和4年度は上期8.3%、下期15.7%、そして令和5年度上期は16.6%でした。

合格率が一貫して低く、電気関連資格の中でも特に難しいとされています。しかし、受験資格の制限がなく、業界未経験者でもチャレンジが可能であることは、多くの人にとってチャンスです。

試験の開催数も年1回から2回に増えたので、科目別合格制度を利用することで、数回に分けて資格を取得する道も開かれています。計画的に学習すれば、合格は充分に目指せると言えるでしょう。

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