電気主任技術者

電気主任技術者に必要な実務経験の内容と年数を資格別に解説

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男性の後ろ姿の様子

電気主任技術者は、さまざまな電気設備の点検やメンテナンスを行う役割を担っています。

電気設備を適切に持続させる上で欠かせない存在であり、非常に需要の高い国家資格です。

電気設備の保安監督業務は、電気に関する幅広い知識と経験が求められるため、誰でもすぐに電気主任技術者に挑戦できるわけではありません。

電気主任技術者になる上で、実務経験が必須であることは理解しているものの、具体的な条件が分からない人もいるのではないでしょうか。

今回は、電気主任技術者になるために必要な実務経験を中心に分かりやすく解説していきます。

【この記事でわかること】
・電気主任技術者になる上で実務経験は必要なのか
・実務経験と認められる具体的な業務内容
・実務経験と認められない具体的な業務内容
・令和3年より施行された実務経験の緩和内容について
・電気主任技術者は認定と受験のどちらがいいのか

電気主任技術者になるには実務経験が必要?

屋根の点検をする様子

実務経験は電気主任技術者になる上で必要です。

ただし、取得方法によって条件が異なります。

電気主任技術者になるには、実務経験をこなし経済産業省の認定を受ける方法と、試験を受けて合格する2種類の方法があります。

認定により、電気主任技術者になる場合には実務経験が必要であり、試験を受けて取得を目指す場合には、実務経験に関する条件はありません。

また、認定により電気主任技術者になれるのは「経済産業大臣認定の学校で所定の科目を修めて卒業した人」のみとなります。

認定校で所定の科目を修めていない人は、実務経験をこなしていたとしても、試験に合格しなければ取得できません。

ちなみに、電気を取り扱う他の資格に関しても、実務経験が求められるものが多くあります。

・第一種電気工事士:学歴に応じて実務経験が必要
・電気工事施工管理技士:学歴に応じて実務経験が必要
・電気通信工事施工管理技士:学歴に応じて実務経験が必要
・消防設備士の甲種:保有資格によって実務経験が必要
・工事担任者:実務経験の指定なし

関連記事:電気主任技術者の合格率は?合格するための5つのコツとは

電気主任技術者の認定取得には実務経験が必要

男性作業員が腕を組む様子

前述した通り、経済産業省の認定を受けて電気主任技術者になる場合、実務経験が必須となります。

ただし、どのような業務内容でも実務経験と認められるわけではないため、注意が必要です。

また、経験内容だけでなく、経験年数にも指定があります。

ここでは、電気主任技術者の取得認定に必須となる、実務経験の詳細について解説していきます。

資格の種類ごとに異なる実務経験の内容

電気主任技術者は、扱う電気工作物によって第一種・第二種・第三種に分けられています。

種類ごとで定められている、実務経験の内容は以下の通りです。

・電験一種:電気工作物(電圧5万ボルト以上)の運用・持続・配線や設置経験
・電験二種:電気工作物(電圧1万ボルト以上)の電気機器の運用・配線や設置経験
・電験三種:電気工作物(電圧500ボルト以上)の電気機器の運用・配線や設置経験

具体的には、電気工作物のメンテナンスや設計、検査などがあります。

ちなみに既に第三種電気主任技術者の資格を持っている人も、第二種や第一種の取得を目指す場合には、別で実務経験が必要となります。

資格の種類ごとに異なる実務経験年数

電気主任技術者を認定取得する場合、実務経験の年数にも指定があります。

 大学卒業短大・高等専門学校卒業高校卒業
第三種・電気主任技術者1年以上2年以上3年以上
第二種・電気主任技術者3年以上5年以上5年以上
第一種・電気主任技術者学歴に関係なく5年以上

前述した通り、上記の実務経験をこなし、認定によって電気主任技術者を取得できるのは「経済産業大臣認定の学校で所定の科目を修めて卒業した人」だけです。

認定校以外を卒業している人は、経験年数や内容に関係なく、受験に合格しなければ電気主任技術者にはなれません。

ちなみに、所定の科目には以下のような内容があります。

科目区分授業科目
電子工学、電気の基礎電気計測、システム基礎論、電気電子物性、電気磁気学
発電、変電、送電、配電等発電工学、変電工学、送電工学、配電工学
電気応用実験、電気実習電気応用試験、電気実習
電気製図電気製図
電気機器及び電気材料電気材料、電気機器学、パワーエレクトロニクス
電気応用照明、電熱、電動機応用、電気化学変換、電気光変換、電気加工、自動制御または制御工学、メカトロニクス
電気機器設計、製図電気機器設計、自動設計図(CAD)、電子回路設計、電子製図
電気法規、電気施設管理電気法規、電気施設管理

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電気主任技術者の実務経験に認められる業務

点検をする様子

電気主任技術者の認定を受ける上で必須となる実務経験ですが、電気関連の仕事であれば何でも認められるわけではありません。

実務経験として認められる、具体的な業務内容は6つあります。

・性能検査と機器調整
・配線工事
・設備持続のための保安管理
・設備安定と経済的運転検査
・電気設備や器具の設計
・系統の変更

各業務の詳細について、詳しく解説していきます。

性能検査と機器調整

まず1つ目の業務内容が「電気設備の機器調査や性能検査」です。

電気設備には、給電設備・変電設備・送配電設備・発電設備などがあり、さまざまな電気機器が設置されることとなります。

性能検査は、これらの電気設備が、設計された通りの性能を保持しているかを確認する作業です。

性能検査は、電気機器の出荷前に行われ、各施設に設置された後にも現地調査を実施します。

検査時に異常が見つかった場合には、症状に応じた機器調整を行います。

配線工事

2つ目の業務内容は「配線工事」となります。

住宅やビルといった施設に電気設備を設置する場合、配線工事が必須となります。

配線工事は、電気工事士の仕事であり、電気主任技術者として行うことはないものの、実務経験としては認められます。

電気設備関連の会社で電気工事士として働き、キャリアアップとして電気主任技術者を目指すような人が当てはまる実務経験です。

配線工事で身に付けた知識や技術は、電気工作物の保安監督業務でも十分活かせます。

設備持続のための保安管理

3つ目の業務内容は「設備持続のための保安管理」となります。

電気主任技術者の仕事に最も関係する業務内容であり、すでに運用が始まっている電気設備の保安管理を行います。

電気設備は、他の機器と同様に長期間使用し続けていると、絶縁劣化などにより機能や能率が低下します。

そのまま運用を続けると故障に繋がり、施設の健全な運用が利用できません。

これを防止するための保安管理に携わっていれば、業務経験として認められます。

設備安定と経済的運転検査

4つ目の業務内容は「設備安定と経済的運転検査」となります。

工場や病院といった大規模な施設には、大掛かりな電気設備が設置されており、時間帯によって電気の使用量が大幅に増えることがあります。

このような状態でも電気が不足することなく稼働するには、設備安定を目的とした保安管理業務が欠かせません。

また、高圧受電設備は無駄な電気使用量が増加しやすく、経済的な運転検査も必須となります。

効率良く稼働しているかの運転検査を行い、経費削減を行います。

電気設備や器具の設計

5つ目の業務内容は「電気設備や器具の設計」となります。

電気設備の設計では、建物のコンセントやスイッチの場所などを設計していきます。

大規模な施設に関しては大量の電気設備が設置されるため、配線の量も踏まえた設計が必要です。

また、ちょっとした設計ミスが多くの人に影響を及ぼす可能性があることから、電気工事全体に精通する知識が求められます。

系統の変更

6つ目の業務内容は「系統の変更」となります。

事業用電気工作物を設置する場合、設備ごとに持続や運用に関する保安規定の策定が義務付けられています。

組織詳細や保安教育、保全の方法などを詳しく取り決めておかなければ、多くの人に影響が及んでしまうからです。

このような保安規定の変更業務も、電気主任技術者の実務経験として認められます。

具体的な系統の変更事例としては、以下のような事例があります。

・発電所や非常用発電機を設置した場合
・人事異動などにより、社内保安体制を変更した場合
・電力会社との財産分界点や責任を変更した場合
・電気主任技術者を新たに選任した場合

系統の変更を適切に行うには、電気工作物や保安管理に関する知識や経験が求められ、規定に応じた変更が必要です。

電気主任技術者の実務経験に認められない業務

作業員が立っている様子

電気主任技術者の実務経験に認められない業務もあります。

・電気機械器具の製造業務
・高電圧が発生する機械器具の業務
・海外での業務
・実験設備での業務
・船や車両等の電気設備に係る業務

具体的にどのような業務が上の5つに該当するのか、詳しく解説していきます。

電気機械器具の製造業務

実務経験として認められない1つ目の業務が「電気機械器具の製造業務」です。

精密機械・家電の製造作業といった業務は、発電や受電する電気工作物の取扱には含まれないため、実務経験には認められません。

また、設置やメンテナンス業務を行わない、電気設備に関する営業なども実務経験には認められません。

高電圧が発生する機械器具の業務

実務経験として認められない2つ目の業務が「高電圧が発生する機械器具の業務」です。

自動車の製造工場などで、大きな機械を操作するといった業務であり、保安管理や点検業務には該当しません。

定期的に、機械の清掃などを行っていたとしても、実務経験とは認められません。

海外での業務

実務経験として認められない3つ目の業務が「海外での業務」です。

日本企業が開発した電気機器は、世界各国で使用されており、定期的なメンテナンスや修理が行われています。

これらの業務は、電気工作物の取扱いとなりますが、海外では日本の電気事業法が適用されないため、電気主任技術者の実務経験にはなりません。

ただし、海外の電気工作物の保安管理業務で身に付けた知識は、国内の関連業務にも活かせます。

電気主任技術者として仕事に携わることはできないものの、関連業務を行う会社への転職では海外の経験が役立ちます。

逆に電気主任技術者になれば、身に付けた知識を海外で発揮することも可能です。

実験設備での業務

実務経験として認められない4つ目の業務が「実験設備での業務」です。

高電圧が発生する電気機器を扱う業務と同様に、それらの機器が多く配置されている発電所やビルでの仕事も実務経験には含まれません。

具体的には事務業務や清掃業務、機器の操作業務などが該当します。

船や車両等の電気設備に係る業務

実務経験として認められない5つ目の業務が「船や車両等の電気設備に係る業務」です。

自動車や船といった乗り物の電気設備は、発電や受電をする電気工作物ではないため、実務経験には認められません。

ただし、電気自動車の普及により増えている急速充電器は、自家用電気工作物扱いとなり、その持続や工事に関する業務は実務経験として認められます。

令和3年に外部委託の場合の実務経験年数が緩和

会議をしている様子

外部委託により、保安監督業務を行う場合に必要な実務経験年数が、令和4年より5年から3年に緩和されました。

現役の電気主任技術者の年齢構成は、60代が31%(2021年3月末時点)と最も多く、将来的に不足すると言われています。

その解決策の1つとして、外部委託の場合、実務経験年数が3年以上であれば保安監督業務に従事可能となります。

ちなみに、3年以上の実務経験で保安監督業務に従事する際には「保安管理業務講習」を修了しなければなりません。

参考:電気主任技術者制度について|経済産業省

電気主任技術者の認定取得には学歴も必要

現場打合せの様子

電気主任技術者の認定取得には実務経験とは別に、学歴にも指定があります。

冒頭でも解説した通り「経済産業大臣認定の学校で所定の科目を修めて卒業した人」のみ、認定による電気主任技術者の取得が可能です。
学歴を証明するには、単位取得証明書と卒業証明書が必要となります。

申請について分からないことがある場合には、卒業した学校に問い合わせてみましょう。

電気主任技術者になるなら試験と認定のどちらがいいのか?

腕を組む技術スタッフの様子

電気主任技術者になる方法は、認定学校を卒業し実務経験を積む方法と試験に合格する方法があります。

これから資格取得を目指す上で、どちらの方法がいいのか迷っている人もいるのではないでしょうか。

ここでは各取得方法のメリット・デメリットについて、解説していきます。

認定がオススメである理由

実務経験を積んだ上での認定による、電気主任技術者の取得メリットは主に2つあります。

・受験する必要がなく、勉強が苦手な人手も取得しやすい
・認定校を卒業していれば、実務経験を積むだけで取得できる

認定による資格取得は、実務経験により知識と技術が証明されるため、一切試験を受ける必要がありません。

普段の仕事をこなしながら、昔習った科目を復習するような必要はなく、働きながら経験を積むだけで取得できます。

一方で、大卒の人であっても最短1年の実務経験が必要であるため、最速の取得年齢は23歳となります。

試験のデメリット

受験により電気主任技術者を取得するデメリットは「電気に関する幅広い知識を、勉強により身に付ける必要がある」ことです。

電気主任技術者は、電気業界でも上位に位置する資格であり、難易度はかなり高いと言えます。

令和4年度・第三種電気主任技術者試験で4科目全てに合格したのは、全体の8.3%です。

未経験から勉強をスタートして試験に合格するのは、容易ではないと言えるでしょう。

一方で、受験条件が一切ないため、23歳未満で取得できることはメリットと言えます。

参照:令和4年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について|一般財団法人 電気技術者試験センター

電気主任技術者の実務経験に関してよくある質問

夜間に設備点検する様子

最後は、電気主任技術者に関する、実務経歴証明書の作成について解説していきます。

実務経験を正しく証明しなければ、認定されないため、事前に理解しておくようにしましょう。

実務経歴証明書はどうやって作成すればいいですか?

実務経験を積んだ上での認定により、電気主任技術者を取得するには、経済産業省が定めた方法で経験の証明をしなければなりません。

実務経歴証明書はフォーマットがあるため、それに従って記載していくようにしましょう。

日本電気技術者協会では「実務経歴証明書の記載例」が紹介されています。

証明書では、実務経験について職務の内容や、電気工作部物の概要、役職名などを時系列で詳しく記載していきます。

また、証明人のサインも必要です。

参考:実務経歴証明書記載例|公益社団法人 日本電気技術者協会
参考:電気主任技術者免状交付に係る運用について|経済産業省

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電気主任技術者の実務経験についてのまとめ

現場で作業をチェックする様子

電気主任技術者は電気業界に欠かせない存在であり、実務経験の認定と試験合格の2つの方法で取得できます。

実務経験による認定を受けるには、経済産業省が定めた認定校で所定の科目を修了している必要があり、資格の種類によって実務経験が定められています。

認定校以外を卒業している場合には、実務経験による認定を受けられないため、受験合格により取得しなければなりません。

ちなみに、第三種・電気主任技術者試験に実務経験は必要ありません。

今回紹介した実務経験の詳細を基に、自分に合った方法で電気主任技術者の取得を目指してみてください。

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