危険物取扱者は「甲」「乙」「丙」の3種類があり、取り扱える危険物によってさらに細かく分類されています。
種類に応じて複数の試験があるため、種類別の難易度や勉強時間が気になっている人は多いのではないでしょうか。
本記事では、危険物取扱者の資格の種類や難易度、必要な勉強時間について解説します。
また、資格取得にチャレンジする際のおすすめの順番も解説していきます。
危険物取扱者の難易度を知って受験級を検討したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
危険物取扱者の種類と難易度
危険物取扱者の種類は、「甲」「乙」「丙」の3つに分けられています。
それぞれの種類の詳細と難易度について解説します。
【甲種】全ての危険物において定期点検や保安の監督ができる
甲種は、全ての危険物の定期点検や保安の監督ができる資格です。
危険物は消防法によって以下のとおり分類されています。
分類 | 取り扱える危険物 |
第1類 | 過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類、臭素酸塩類、硝酸塩類、亜塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、塩素酸塩類 |
第2類 | マグネシウム、金属粉、硫黄、鉄粉、硫化りん、赤りん、引火性個体などの可燃性固体 |
第3類 | アルキルリチウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、カリウム、黄りんなどの自然発火性物質や禁水性物質 |
第4類 | ガソリン、灯油、石油、軽油、アルコール類、動植物油類などの引火性液体 |
第5類 | 硝酸エステル類、ニトロ化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、ヒドロキシルアミンなどの自己反応性物質 |
第6類 | 過酸化水素、硝酸、過塩素酸、ハロゲン間化合物などの酸化性液体 |
甲種に合格するとこれらのすべてを取り扱えるようになります。
扱える危険物が幅広い甲種は、危険物取扱者の試験のなかで最も難しいと言われています。
【乙種】指定の危険物のみ定期点検や保安の監督ができる
乙種は、指定の危険物の定期点検や取り扱いのみできる資格です。
すべて取り扱い可能な甲種と異なり、乙種は第1類~第6類のうち試験に合格した類のみを扱えます。
自分に必要な類を選択して資格取得できるため、特定の危険物を取り扱う場合に適しているでしょう。
難易度はそこまで高くありませんが、受験者数が多い第4類のみ例外的に合格率が低くなっています。
【丙種】指定の危険物の定期点検や取り扱いのみできる
丙種は、指定の危険物の定期点検や取り扱いのみできる資格です。
第4類のうち特定の危険物についてのみ取り扱いが可能で、乙種よりもさらに限定されています。
甲種や乙種との大きな違いは、定期点検や取り扱いのみが可能で保安の監督は認められていない点です。
3種類のなかでは最も合格率が高く、勉強しやすい試験です。
危険物取扱者の受検資格と難易度
乙種と丙種には特別な受験資格はありません。
甲種の受験のみ、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。
- 中等教育の専攻科、高等学校の専攻科、高等専門学校、短期大学、専修学校、大学、大学院などで化学に関する学科(課程)を卒業している
- 高等専門学校、短期大学、専修学校、大学、大学院などで化学に関する科目を15単位以上取得している
- 危険物取扱者乙種の資格を持っており実務経験を2年以上有している
- 危険物取扱者乙種の「第5類」「第3類」にプラスして「第1類または第6類」「第2類または第4類」の4種類以上を持っている
- 博士、修士の学位を持っており、化学に関する学科(課程)を専攻している
大学などで化学に関する学科を卒業した人や、一定以上の単位を取得した人は問題なく受験可能です。
学歴で条件を満たさない人は、乙種試験に関する上記の条件を満たす必要があります。
関連記事:危険物取扱者とは?仕事内容や資格の取得方法を詳しく解説
危険物取扱者の合格率と難易度
危険物取扱者の難易度について合格率の視点から解説します。
甲種試験の合格率
過去5年間の合格率は以下のとおりです。
年度 | 合格率 |
2019年(令和元年) | 39.5% |
2020年(令和2年) | 42.5% |
2021年(令和3年) | 39.6% |
2022年(令和4年) | 36.8% |
2022年(令和4年) | 31.7% |
甲種試験の合格率は30~40%程度です。
大学などで化学を学んだ人や乙種を持っている人でも3人に1人程度しか受からない状況を考えると、難易度が高いといえるでしょう。
乙種試験の合格率
過去5年間の類別の合格率は以下のとおりです。
年度 | 第1類 | 第2類 | 第3類 | 第4類 | 第5類 | 第6類 |
2019年(令和元年) | 67.9% | 68.5% | 68.2% | 38.6% | 68.7% | 67.0% |
2020年(令和2年) | 71.5% | 70.8% | 70.8% | 38.6% | 71.2% | 68.5% |
2021年(令和3年) | 70.5% | 72.3% | 71.0% | 36.1% | 71.0% | 70.7% |
2022年(令和4年) | 69.4% | 68.9% | 71.1% | 31.5% | 71.0% | 70.0% |
2022年(令和4年) | 70.0% | 66.8% | 69.2% | 32.0% | 68.4% | 69.2% |
乙種の合格率は60~70%ほどで、第4類のみ30%前後です。
第4類の合格率の低さは以下の2つの理由が挙げられます。
- 受験者数が圧倒的に多い
- 勉強不足で受験する人も多い
第4類は石油関係の危険物が対象で、ガソリンスタンドの従業員やタンクローリーの運転手などさまざまな職業に活かせる人気の資格です。
また、会社から指示されて「やりたくないけど仕方なく受けている」という人もいるため、勉強不足の状態で試験に臨む人も多いようです。
一方で、他の類は第4類を取得後にチャレンジする人が多く、科目免除で負担が軽減されることから合格率が高くなっています。
このような合格率からみても、乙種試験の難易度はそれほど高くないと考えられるでしょう。
丙種試験の合格率
過去5年間の合格率は以下のとおりです。
年度 | 合格率 |
2019年(令和元年) | 50.4% |
2020年(令和2年) | 54.0% |
2021年(令和3年) | 51.4% |
2022年(令和4年) | 51.0% |
2022年(令和4年) | 48.4% |
丙種の合格率は50%前後です。
受験者の約2人に1人が合格しており、難易度は決して高くないといえます。
危険物取扱者の試験内容と難易度
試験はマークシートで、5択から1つ(丙種のみ4択から1つ)を選択する方式です。
各種の出題内容と難易度について解説していきます。
甲種試験の出題内容
受験科目 | 問題数 |
危険物に関する法令 | 15問 |
物理学及び化学 | 10問 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 20問 |
甲種は高度な物理・化学の知識が問われる試験となっており、難易度はかなり高めです。
専門的な内容に加えて試験範囲も幅広いため、しっかりと対策する必要があるでしょう。
出典:危険物取扱者試験 試験科目及び問題数|一般財団法人消防試験研究センター
乙種試験の出題内容
受験科目 | 問題数 |
危険物に関する法令 | 15問 |
基礎的な物理学及び基礎的な化学 | 15問 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10問 |
乙種は第1類~第6類のうち受験する類を学習すれば問題ありません。
甲種と比べて物理と化学の難易度は低いものの、取り扱う危険物の細かな知識が問われる試験です。
出典:危険物取扱者試験 試験科目及び問題数|一般財団法人消防試験研究センター
丙種試験の出題内容
受験科目 | 問題数 |
危険物に関する法令 | 15問 |
燃焼及び消火に関する基礎知識 | 10問 |
危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 | 10問 |
丙種は問題数がもっとも少ない試験です。
内容も基礎的なものが多く出題されるため、初心者でも取り組みやすくなっています。
出典:危険物取扱者試験 試験科目及び問題数|一般財団法人消防試験研究センター
乙種と丙種のみ受験科目の免除が可能
危険物取扱者試験で受験科目の免除が可能なのは、乙種と丙種のみです。
受験区分ごとの受験科目の免除について以下にまとめました。
受験区分 | 免除の可否 | 受験科目の免除内容 |
甲種 | 認められない | なし |
乙種 | 可能 | 乙種の他の類に合格している場合は「法令」「物化」がすべて免除される火薬類免状を所持している場合は第1類と第5類の一部免除が受けられ、「法令」15問、「物化」4問、「性消」5問となる |
丙種 | 可能 | 「5年以上消防団員として勤務し、消防学校の教育訓練のうち基礎教育または専科教育の警防科を修了した者」は「燃焼及び消火に関する基礎知識」の試験がすべて免除される |
甲種は他の2つと異なり受験科目の免除がありません。
乙種を持っていても全科目受ける必要があり、この点からも難易度が非常に高いといえるでしょう。
関連記事:消防設備士とは?資格の種類と違いについて紹介します
危険物取扱者の取得する際におすすめの順番
危険物取扱者は、全部で8種類の区分があります。
現在の仕事や目指している業界に資格を活かしたい場合は、必要な種類を受験するのがベストです。
仕事とは関係なく資格を取得しておきたい人は、おすすめの順番を紹介しますので参考にしてみてください。
受検資格を満たしている場合は甲種がおすすめ
受検資格を満たしている場合は甲種がおすすめです。
甲種はすべての危険物が取り扱えるため、さまざまな業種において有効な資格です。
前述したとおり、甲種を受験するには学歴や乙種取得に関する条件を満たす必要があり、誰でも受けられるわけではありません。
これらの受検資格を満たしている人は、ぜひ甲種試験にチャレンジしてみましょう。
乙種を取得するなら乙4類がおすすめ
乙種を取得するのであれば乙4類がおすすめです。
乙4類が必要とされる職種・業種は多く、ガソリンスタンドやタンクローリーの運転手をはじめ、石油会社や化学系メーカーで働くうえでも役立ちます。
必要な類が決まっていない場合は、汎用性の高い乙4類を優先するのが良いでしょう。
乙種が難しいと感じたら丙種がおすすめ
乙種が難しいと感じたら丙種の受験をおすすめします。
乙種は甲種より基礎的な内容とはいえ、物理や化学の知識が必要のため難しいと感じる人もいるでしょう。
そのような場合は、まずは難易度が低めの丙種に取り組んでみてください。
丙種で経験を積んでから乙種や甲種へステップアップするのも1つの方法です。
危険物取扱者の勉強時間と難易度
危険物取扱者の勉強時間の目安は以下のとおりです。
甲種 | 乙種 | 丙種 |
約70~80時間 | 約40~60時間 | 約20~30時間 |
試験範囲が幅広く難易度が高い甲種は、他2つと比べて多くの勉強時間を確保しなければなりません。
試験は暗記要素が強いため、なるべく日にちを空けずに取り組んで知識を定着させましょう。
危険物取扱者の難易度を理解したうえで受験級を決めてみよう
今回は危険物取扱者の難易度について解説しました。
危険物取扱者は、取り扱える危険物の範囲が大きいほど難易度が高い試験です。
受験資格を満たす場合は甲種がおすすめですが、難しい場合は乙4類の受験を検討してみてください。
それぞれの難易度をよく理解したうえで、受験級を決めて危険物取扱者の取得を目指しましょう。
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