タクシー業界への転職を検討し始めると、最近、よく聞くライドシェアについても気になるのではないでしょうか。
ライドシェアとは、自動車のスマートフォンアプリなどを活用して、自動車を持つ一般のドライバーと乗客を結びつけ、有償で相乗りするサービスです。
ライドシェアが普及すると、タクシー業界に大きな影響があると言われています。
本記事では、ライドシェアがタクシー業界に与える影響を2つ紹介します。ぜひ、気になる人は最後まで読んでみてください。
ライドシェアがタクシー業界に与える2つの影響
ライドシェアがタクシー業界に与える影響は、主に2つです。
- 価格競争が起きる可能性がある
- 運転手不足を解消できる可能性がある
それぞれについて解説します。
価格競争が起きる可能性がある
ライドシェアが普及すると、価格競争が起こる可能性があります。ライドシェアは、タクシーと同じ運賃で運行される予定ですが、将来的にはダイナミックプライシングの導入も検討されています。
ちなみに、ダイナミックプライシングとは、需給に応じて料金が変動する仕組みです。
したがって、タクシー業界がライドシェアに顧客を奪われ始めると、価格競争を余儀なくされるでしょう。
一方で、タクシーはライドシェアと違って、乗り場で営業できる利点があります。さらに、タクシーは安全性や信頼性の面でライドシェアより優位と言われています。
今後、タクシーとライドシェアが共存するためには、それぞれ差別化を図る必要があるでしょう。
運転手不足を解消できる可能性がある
ライドシェアが普及すると、一般のドライバーが送迎サービスの運用側に加わり、タクシー業界の運転手不足を解消できる可能性があります。
タクシー業界は、コロナの影響やドライバーの高齢化などで運転手が減少しており、深刻な人手不足に悩んでいます。ライドシェアでは、普通第一種自動車免許を持つ一般のドライバーをタクシー会社が雇用できる見込みです。
ただし、ライドシェアは、タクシー不足が深刻な地域や時間帯に限定される予定です。その結果、運転手の稼働時間や収入は不安定になる可能性があります。
また、タクシー会社はライドシェアの運行管理や安全確保に責任を負うことになるので、中には「根本的な運転手不足の解決にはならないのではないか」との見方もあるようです。
ライドシェアとタクシー業界の関係性について
ライドシェアとタクシー業界の関係性について、次の2つの動きがあります。
- ライドシェア解禁に反対する声も多い
- 政府与党内ではライドシェア導入の動きが高まっている
それぞれについて解説します。
ライドシェア解禁に反対する声も多い
MM総研の『ライドシェアに関する社会受容性調査』によると、ライドシェアを利用したことがない人のうち、64.4%が解禁に反対しています。
一方で、海外などでライドシェアの経験がある人のうち、84.1%は解禁に賛成しています。
ライドシェアの利用経験がない人の多くは、安全性や信頼性を課題視しているようです。
参考:諸外国における ライドシェア法制と 安全確保への取り組み|内閣府
政府与党内ではライドシェア導入の動きが高まっている
タクシー不足の地域や訪日外国人観光客の需要に応えるために、ライドシェア導入の動きが高まっています。政府与党内では、タクシー事業者が運行管理を担う『日本版ライドシェア』の導入を検討しています。
参考:「日本版ライドシェア」の速やかな実現を求める ―タクシー事業者による一般ドライバーの限定活用|内閣府
参考:タクシー乗務員の働き方と ライドシェア参入への賛否|小前和智
ライドシェアとタクシーの役割について
ライドシェアとタクシー業界は、切っても切れない関係です。しかし、両者の役割について細かく見ると、異なると言われています。
- ライドシェア(同じ目的地に移動したい人をつなぐ)
- タクシー(相手が行きたい目的に合わせて移動する)
それぞれの役割について解説します。
ライドシェア(同じ目的地に移動したい人をつなぐ)
ライドシェアとは、自家用車を持つ一般のドライバーが、スマートフォンのアプリなどを通じて、同じ方向に向かう利用者とマッチングして、有料で送迎するサービスです。
ライドシェアのメリットは、タクシー不足の地域や時間帯に対応できたり、価格が安かったりする点などが挙げられます。一方で、デメリットは、事故やトラブルの対応が個人に任されたり、渋滞や環境への影響が懸念されたりする点などがあります。
タクシー(相手が行きたい目的に合わせて移動する)
タクシーとは、道路運送法に基づいて事業許可を受けた会社が、普通自動車第二種免許を持つプロのドライバーを雇って運用しているサービスです。タクシーの場合、路上や乗り場で呼び止められたり、アプリや電話で予約が入ったりして、利用者を目的地まで運びます。
タクシーのメリットは、運行や事故対応に責任を持っていたり、車両の安全性や整備が保証されていたりする点などがあります。一方で、デメリットは、価格が高かったり、地方や深夜などに不足したりする点です。
ライドシェアとタクシーに影響がある自家用有償旅客運送制度
2024年4月以前から、タクシー会社がライドシェアに協力しているケースがあります。タクシー会社が協力しているのは、自家用有償旅客運送制度の運用です。自家用有償旅客運送制度について、次の2点を解説します。
- 事業者協力型自家用有償旅客運送の概要
- 事業者協力型自家用有償旅客運送の意義
事業者協力型自家用有償旅客運送の概要
事業者協力型自家用有償旅客運送とは、市町村やNPO法人などが、自家用車を使って地域の移動ニーズに応えるサービスです。
この制度では、バスやタクシー事業者が運行管理や車両の整備管理に協力できます。
事業者協力型自家用有償旅客運送の意義
事業者協力型自家用有償旅客運送の意義は主に2つです。
- 地域の暮らしの足の確保と持続性の向上
- 地域の関係者の協働と地方創生の促進
それぞれについて解説します。
地域の暮らしの足の確保と持続性の向上
バスやタクシー事業が成り立たない場合でも、地域住民や観光客などの移動手段を提供できます。
交通事業者のノウハウ活用は、市民などの利用者にとって安心・安全です。
また、交通事業者にとっても、新たな収入源になり得ます。
地域の関係者の協働と地方創生の促進
市町村やNPO法人、交通事業者などが連携するので、地方創生のチャンスです。観光客などの来訪者も輸送対象になれば、地域の魅力発信にもつながります。
事業者協力型自家用有償旅客運送の制度は、改正道路運送法の施行で始まりました。現在、全国各地で導入されつつあり、制度を通して、地域の交通課題にアプローチしています。
参考:自家用有償旅客運送ハンドブック|国土交通省
参考:自家用有償旅客運送制度の改正について|国土交通省
ライドシェアがタクシー業界に与える影響に関するよくある質問
ライドシェアとタクシーの影響に関するよくある質問は次の5つです。
- ライドシェアが禁止されている理由は何ですか?
- ライドシェアの問題点は何ですか?
- ライドシェアのデメリットは何がありますか?
- タクシーとライドシェアの違いは何ですか?
- ライドシェアは日本では禁止されていますか?
それぞれについて解説します。
ライドシェアが禁止されている理由は何ですか?
ライドシェアとは、一般ドライバーが自家用車を用いて有償で利用者を運ぶサービスのことです。日本では、道路運送法により、普通自動車第二種免許を持たない人の有償での送迎が、原則禁止されているためです。
2024年2月時点で、ライドシェアは、規制に違反する『白タク』行為とみなされるため、原則禁止されています。
ライドシェアの問題点は何ですか?
ライドシェアの問題点は、いくつかありますが、代表的なものは次の通りです。
- ドライバーや乗客の安全性が保証されない
- ドライバーの労働条件や社会保障が不十分
- タクシーやバスなどの既存の公共交通事業者に不公平な競争圧力がかかる
他にも、さまざまな問題があるようです。
ライドシェアのデメリットは何がありますか?
ライドシェアのデメリットはいくつかあります。代表的なデメリットは次の通りです。
- ドライバーや車両の信頼性が低い
- サービスの品質が低い可能性がある
タクシーとライドシェアの違いは何ですか?
タクシーとライドシェアの違いはいくつかあります。
たとえば、タクシーは専用車両を使用する一方で、ライドシェアは自家用車で送迎可能です。また、タクシーは相手が行きたい目的に合わせて移動しますが、ライドシェアは同じ目的地に移動したい人をつなぎます。
ライドシェアは日本では禁止されていますか?
ライドシェアは日本では原則禁止されていますが、例外的に認められる場合があります。
たとえば、自家用有償旅客運送と呼ばれる公共交通機関の乏しい地域を中心に、市町村やNPO法人などが自家用車で有償で乗客を送迎するサービスです。
ライドシェアがタクシー業界に与える影響のまとめ
今回は、ライドシェアがタクシー業界に与える影響や双方の関係性、役割などについて解説しました。
ライドシェアがタクシー業界に与える影響は主に2つです。
- 価格競争が起きる可能性がある
- 運転手不足を解消できる可能性がある
ライドシェアには、タクシー不足の地域や時間帯に対応できたり、価格が安かったりするメリットがあります。一方で、事故やトラブルの対応が個人に任されたり、渋滞や環境への影響が懸念されたりする点はデメリットです。
ライドシェアに関する問題はありますが、一部の地域では住民にとって必要不可欠なサービスになりつつあります。
もし、タクシー運転手への転職を考えており、ライドシェアにも興味があれば、新たに視野に入れてみるのはいかがでしょうか。
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