タクシーは人々の生活に欠かせない移動手段の一つであり、そのタクシーを運転するタクシー運転手は今後もなくなることのない、将来性のある仕事です。
最近ではコロナウイルスの影響も限定的で、外国人観光客の増加により都市部や観光地では更にタクシー需要が高まってきています。
未経験であっても就職しやすいことから、これからタクシー運転手への転職を検討している方もいるのではないでしょうか。
しかし、ネット上では「タクシー運転手はすぐに辞める人が多い」といったネガティブな情報も見受けられます。
そこで今回は、タクシー運転手になってすぐに辞めてしまう人の退職理由について、詳しく解説していきます。
この記事でわかること
・タクシー運転手を辞めずに長く続けるコツ
・タクシー運転手になるメリット
・タクシー運転手をすぐに辞めにくい人の特徴
タクシー運転手になってすぐ辞めた人は多いのか?
タクシー運転手になってすぐに辞める人は多少いるものの、他の職種と比べて突出して多いわけではありません。
東京ハイヤー・タクシー協会によると新卒者の離職率は約10%程度で、他の産業の平均である30%を大きく下回っています。
研修制度の充実など、新入社員を受け入れる体制がどれだけ整っているかにもよるため、中には離職率の高いタクシー会社もあります。
参考元:東京ハイヤー・タクシー協会|Taxi of Tokyo東京のタクシー2020|タクシー乗務員の労働環境と今後の取り組み
タクシー運転手になってすぐ辞めた人に多い5つの理由
タクシー運転手として働き始めてすぐに辞めてしまう人の退職理由はさまざまですが、主な理由は5つあります。
・お客様への対応がストレスだから
・長時間労働がきついから
・事故や違反を起こさないか不安だから
・生活リズムが乱れがちだから
5つの退職理由ごとに、どのようなことで不安や不満を感じたのか仕事内容を踏まえながら解説していきます。
収入が不安定だから
就職してすぐに辞めてしまった理由の1つ目が「収入の不安定さ」です。
タクシー運転手の給与形態は、多くの会社で歩合制が採用されています。
具体的な給与形態は「基本給+歩合制+賞与」と「完全歩合制」の2種類があります。
歩合制とは売上に応じて給与が支給される給与形態のことであり、売り上げが高いほど収入も上がる仕組みです。
経験年数などに関係なく、結果次第で稼げる魅力がある一方で、売り上げが上がらなかった月は当然収入も下がります。
入社年数などは一切関係なく、ベテラン社員であったとしても売り上げが少ないと収入は低いままです。
ある程度営業スキルを身に付けられれば、一定額以上の売り上げを達成できるようにはなりますが、景気などの影響を受ける可能性もゼロではありません。
最近では、コロナウイルスの流行によりタクシーの利用者が激減し、営業スキルに関係なくほとんどの運転手が収入減となりました。
また、世界情勢によりガソリン価格高騰の影響を受けることもあります。
このような収入の不安定さを理由に、タクシー運転手を辞める人も少なくありません。
お客様への対応がストレスだから
タクシー運転手は1人で仕事をするイメージがありますが、ドライバー職の中でも特にお客様との距離が近い仕事と言えます。
毎日20組前後の乗客を目的地へ送り届ける中で、さまざまな出来事があります。
感謝の言葉をかけてくれるような人もいる一方で、「急いでいるから」と無理な指示を出してくるような乗客も中にはいるでしょう。
また、夜間に利用する乗客は酔っ払っている人が多いため、普通の接客では経験しないような酷い扱いを受けることもあります。
1人で黙々と仕事ができると思っていた人にとっては大きな苦痛となるため、長続きしないのも当然でしょう。
長時間労働がきついから
タクシー運転手の勤務形態は主に3種類あります。
・夜日勤:17:00~翌2:00など
・隔日勤務:7:00~翌2:00など
昼日勤や夜日勤は他の職種と同じように休憩を含めて9時間労働ですが、タクシー業界で主流の働き方である隔日勤務は1回の勤務で16〜20時間働きます。
途中3時間の休憩を入れながらではありますが、過去に長時間勤務の経験がない人からすると体力的にかなり辛いと言えるでしょう。
タクシー運転手はちょっとした油断が大事故に繋がるため、常に集中して業務をこなす必要があり余計に大変です。
隔日勤務の場合、仕事が終わってから次の勤務までは20時間以上の休息が取れるのですが、そのリズムに慣れる前に辞めてしまう人も少なくありません。
事故や違反を起こさないか不安だから
タクシー運転手として働く上で、最も気を付けなければならないのが「交通違反」です。
ちょっとした交通違反であったとしても免許の点数が引かれてしまい、累計点数によって30〜90日間の免許停止となります。
これは仕事以外で交通違反した場合も同様で、違反内容によっては免許取り消しの可能性もあるため注意が必要です。
運転免許がなくなれば、当然タクシー運転手として働き続けられないため、職を失うことになります。
最近では自動車の事故防止機能が向上し、ドライブレコーダーである程度自分の身は守れますが、リスクがなくなったわけではありません。
実際に勤務をした結果、長時間労働ということもあり、「事故のリスクが高いから」と転職する人もいます。
生活リズムが乱れがちだから
タクシー運転手は隔日勤務が主流であり、20時間近く働くのが普通です。
出勤時間も複数の時間帯があるため、生活リズムを一定に保つのが難しいと言えます。
疲れてお昼に帰ってきても明るくて眠れないこともあります。
また、生活リズム以外でも長時間座り続けるため、腰痛などの持病にも注意が必要です。
中には視力が急に低下したり、意識障害に関する病気が発覚したりして辞めざるを得ない状態になる人もいます。
「若いうちは大丈夫でも、年を取ったら働けなくなる」と不安になり、別の業界へ転職する人も珍しくありません。
タクシー運転手になっても「すぐ辞めた」とならずに長く続けるコツ
タクシー運転手をすぐに辞めてしまう人の退職理由を紹介してきましたが、決してやめておいた方が良い仕事というわけではありません。
働き始めた頃は慣れない業務が多く、大変かもしれませんがいくつかのコツを意識することで、辞めずにタクシー運転手を続けられます。
タクシー運転手を続けるための具体的なコツは主に5つあります。
・接客スキルを磨く
・安全運転を心がける
・ワークライフバランスを取る
・条件に合うタクシー会社を見つける
この5つのコツについて、どのようなことを意識すればいいのか詳しく解説していきます。
効率的に稼ぐノウハウを構築する
タクシー運転手は歩合制であり収入が不安定と解説しましたが、効率良く稼ぐノウハウを身に付ければ、一定額は安定して稼げます。
効率良く稼ぐためには、3つのポイントを意識すると良いでしょう。
・新しいエリアの研究も常に行う
・乗客を目的地まで送り届けた後の効率を良くする
タクシーの利用客は時間帯によって見つけやすいエリアが異なります。
例を挙げるならば、夜遅くの繁華街は終電に間に合いそうにない乗客が多くいます。
人気の飲食店が多くあるエリアなど、さまざまな地域の研究を行うようにしましょう。
乗客を見つけて送り届けた後は、ただ元の場所に戻るのではなく、近くで乗客が見つけられそうなエリアに移動することで稼働率を上げられます。
最初から結果を出すのは難しいと思うかもしれませんが、入社して1年以内に高収入を達成した運転手も少なくありません。
接客スキルを磨く
接客スキルを磨けば乗客とトラブルになりにくく、接客によるストレスを抑えられます。
タクシーを利用する人の中には気難しい人もいるため、以下のポイントを意識しましょう。
・感情をなくし冷静さを保つ
・いつまでも負の感情を引きずらない
乗客を楽しませようと積極的に話しかける人がいますが、全ての人が車内で話したいとは限らず、話の内容の好みも異なります。
無口すぎるのもよくありませんが、適切な距離感を保って乗客を怒らせないようにしましょう。
酔っ払った乗客の場合、丁寧な接客をしていても怒られることがあります。
この際に「自分は間違っていないから」と正論してしまっては、余計に揉めてしまうだけです。
相手の言うことは気にせず、ひたすら適切な接客を提供するようにしましょう。
接客態度に落ち度がないのであれば、どれだけ酷いことを言われても気にする必要はありません。
安全運転を心がける
タクシー運転手が最も気を付けるべき交通違反の多くは、無理をしようとしたタイミングで起きています。
例えば、売り上げを意識しすぎてしまって黄色信号で止まらなかったり、スピードを上げすぎたりするケースです。
特に勤務に慣れてき始めた頃には注意が必要となります。
高度な運転技術を身に付けることも大切ですが、常に安全意識を持てるようになるだけで交通違反のリスクを大きく減らせます。
仮に乗客に「急いでほしい」と言われたとしても、無理な指示は受けないようにしましょう。
ワークライフバランスを取る
タクシー運転手に限ったことではありませんが、一度に全てを覚えようと頑張りすぎるのもよくありません。
仕事が終わったら自分なりの楽しみを見つけ、プライベートもしっかり楽しむようにしましょう。
前述した通り、隔日勤務は1回の勤務で20時間ほど働く一方で、仕事が終わった日は休みのような感覚でゆっくりできます。
次の日が休みであれば2連休のような時間の使い方も可能です。
タクシー運転手の仕事は毎日完結するため、仕事を持ち帰るようなこともありません。
新しい楽しみを見つけられれば、それをやりがいに仕事も頑張りやすくなります。
条件に合うタクシー会社を見つける
タクシー運転手の求人は数多くあり、会社ごとに勤務時間や給与形態が異なります。
また、働きやすさに力を入れている会社もあるため、自分の求める条件に合った会社を探すようにしましょう。
業界未経験で何を基準に会社を比較すればいいのか分からない方は、以下のポイントをチェックするのがおすすめです。
・給与形態の種類
・勤務時間
研修制度が充実しているかによって、就職直後の働きやすさが全く異なります。
資格取得支援制度や接客マナーの研修に関しては、タクシー会社のホームページに記載されているため、事前にチェックするようにしましょう。
給与形態に関しては歩合制と解説しましたが、具体的には3種類あります。
・B型賃金:完全歩合
・AB型賃金:固定給+一定の売り上げを超えた時に発生する歩合+賞与
未経験者におすすめするのは「AB型賃金」を採用している会社です。固定給の割合が多く、結果が出せなくても一定以上の収入が確保できます。
勤務時間に関しては隔日勤務が多いのですが、どうしても難しい場合は昼日勤や夜日勤を募集している会社を探すようにしましょう。

タクシー運転手になる3つのメリット
タクシー運転手は長時間勤務で辛いことも少なくありませんが、メリットもいくつかあります。
・頑張り次第で収入がアップ
・プライベートを大切にしやすい
各メリットの詳細について、解説していきます。
年齢や経験を問わずに活躍できる
タクシー運転手には役職がなく、出世するごとにポジションがなくなっていくようなことはありません。
年齢に関係なく運転ができるうちは、現役のタクシー運転手として活躍可能です。
未経験からでも挑戦しやすく、タクシー運転手の求人の多くは中途採用となっています。
そのため、他の業界では転職が難しい40〜50代の人でも応募できます。
頑張り次第で収入がアップ
タクシー運転手は歩合制であることから、結果さえ出せれば未経験の新入社員であっても高収入を目指せます。
最低限の営業スキルや接客マナーは必須となりますが、覚える業務量は比較的少ないと言えるでしょう。
勤務エリアにもよりますが、稼いでいるタクシー運転手の中には年収1,000万円に達する人もいます。
また、最近では3つの要因により、昔よりも稼ぎやすいと感じているタクシー運転手が増えてきてます。
・コロナウイルス収束による需要アップ
・タクシー運転手不足
コロナウイルスにより多くのタクシー運転手が辞めてしまったため、転職を考えている方にとっては今が大きなチャンスと言えるでしょう。
プライベートを大切にしやすい
多くのタクシー会社が採用している隔日勤務は、休息期間を20時間以上設けなければならず、1ヶ月の勤務回数は13回までとなっています。
一回の勤務時間が長いとはいえ、月の半数近くをプライベートに充てられます。
拘束時間の上限の兼ね合いもあり、長時間の残業もありません。
家族との時間をしっかり取りたい人におすすめです。
タクシー運転手になっても「すぐ辞めた」とならない人の特徴
タクシー運転手の適性を事前に知っておくことにより、働き始めてすぐに辞めてしまうリスクを減らせます。
タクシー運転手になってもすぐに辞める可能性の低い人の特徴は以下の3つです。
・臨機応変に判断できる
・実力主義の仕事が向いている
なぜこのような人がタクシー運転手に向いているのか、詳しく解説していきます。
運転が好き
タクシー運転手は仕事中のほとんどを運転しながら過ごします。
多い時には1日で300㎞以上の運行をこなすこともあります。
そのため、運転が好きな人はタクシー運転手に向いていると言えるでしょう。
逆に運転が嫌いであったり、苦手で何度も交通違反を繰り返してしまっていたりする人は、長続きしにくいため、おすすめしません。
臨機応変に判断できる
タクシー運転手はさまざまな場所へ乗客を送り届けますが、予定していたルートが工事や事故で混んでいるケースがあります。
このような時に最適なルートを順次に組み直し、迅速に搬送することで売り上げアップに繋がります。
他にも、タクシー運転手は営業中自由に動けるため、稼げるかどうかは自分のプラン次第となります。
勤務日のイベントを考慮した上で最適なプランを判断できるような人は、タクシー運転手に向いていると言えるでしょう。
一方で自分で判断するのが苦手であり、指示されて働くほうが好きな方にはおすすめしません。
実力主義の仕事が向いている
数字にこだわらずみんなで仲良く働くのではなく、自分の実力を仕事で試したいといった考えの人もタクシー運転手に向いています。
タクシー業界は実力社会であり、経験に関係なく努力次第でしっかり稼げます。
必ず稼げるとは言えませんが、自分の実力を試してみたい方にはおすすめの仕事です。
タクシー運転手になってすぐ辞めた人についてのまとめ
今回はタクシー運転手になってすぐに辞めてしまう人の、退職理由について解説してきました。
タクシー運転手は歩合制で収入が不安定であり、1人で仕事をこなすものの、さまざまな乗客の接客をしなければなりません。
また、隔日勤務が主流であるため、1回の勤務で20時間前後働くこととなります。
このような仕事内容に耐えきれず辞めてしまう人も多いですが、効率の良い営業方法や接客スキルを身に付ければ、誰でも十分に活躍できる仕事です。
タクシー運転手ならではのメリットも多くあるため、興味がある方は諦めずに転職を検討してみると良いでしょう。
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国際基督教大学卒。エン・ジャパンの新規事業企画室でHRTech(SaaS)の事業企画と営業を経験。シード期のHR系スタートアップでインサイドセールスとキャリアコンサルタントに従事し全社MVPを獲得。その後、5年で300名と急成長するベンチャー企業ネクストビートにて、高所得女性向け情報メディア事業、ホテル向け人材事業の立ち上げを行う。