トラックやバス、タクシーなどの運送業において、事故を起こさないようにすることは必然でもあり、重要事項です。
安全運行を遂行していくためのキーパーソンとなるのが運行管理者です。
ここでは運行管理者の仕事内容や資格の取得方法、給料などを詳しく解説しています。運行管理者になりたい人、興味のある人にはピッタリな内容となっています。ぜひ最後まで読み進めてください。
運行管理者とは
運行管理者とは、国家資格の1つでトラックやバス、タクシーなど旅客や貨物を運送する事業において安全に運行をするための管理を行う人を指します。
運行管理者制度のもと、各企業の営業所ごとに1名以上の運行管理者を配置することが義務付けられています。
運行管理者の仕事内容
運行管理者とは一言でいうと安全に運送業が行えるように人や車を管理する人達のことです。その運行管理者が普段どういった仕事を行っているのか、詳しく紹介していきましょう。
ドライバーの管理
運行管理者はドライバーの管理を行わないといけません。この管理とは主にスケジュールの管理や安全管理、労務管理の3つです。
スケジュール管理ではドライバーのシフトを作成したり、配送スケジュールを組んだりし、指示を与えています。ドライバーの能力や体調などを考慮しないといけないため、観察力や普段のコミュニケーションが必要になります。
安全管理では事故防止のための指導を行います。運送業界において事故を防ぐことは何より大事なことです。安全運転を心がけてもらうように普段から安全意識を高めてもらわないといけません。
具体的には講習や危機予知トレーニングを行い、どういった状況で事故が生まれるのか、どうすれば事故を防げるのかをドライバー自身で考えさせることが重要です。
労務管理ではドライバーの労働時間や残業時間を確認し、働きすぎていないか、無駄に残業していないかなどをチェックします。
車両管理
企業が所有している車両の管理も運行管理者が行います。普段使っている車両に不備があると事故の原因やトラブルのもとになってしまいます。こういったことがないように日常点検や管理を行わないといけません。
実際の点検や修理は整備士が行いますが、その指示や報告書の確認をするのは運行管理者の仕事であります。また、ドライバーから車両の不備が伝えられるのは運行管理者です。報告があった際は迅速に対応しなければいけません。
また、故障した車両がある場合、運行に支障がないように代車の用意を行わないといけません。その手配や管理なども運行管理者の仕事となります。
点呼
ドライバーは毎日始業前に点呼を受けなければいけません。この点呼では健康状態やアルコール、免許証の形態や車両状態などさまざまなチェックを行っています。
点呼自体は運行管理者以外のものが行っても大丈夫ですが、点呼記録簿は運行管理者が管理しなければいけません
運送ルートの確認
貨物を運ぶ運送業においてはどの運送ルートをたどるか検討することが重要な仕事です。配送ルートを誤ると納期に間に合わない、無駄に燃料費がかかるといった問題が発生するほか、ドライバーの勤務時間も長くなるため、健康面、人件費でもよくありません。
最短距離を見つけるのではなく、効率よくスムーズにいけるルートを見つけ出すことが運行管理者の腕の見せ所です。
また、運送中に配送状況を管理することも仕事です。渋滞や事故などがあった場合にルート変更の指示を行うこともあります。
運行管理者になるためには
運行管理者になるためには国家試験に合格しないといけません。試験は1年に2回、3月と8月に行われています。
運行管理者は「旅客」と「貨物」の2種類あります。タクシーやバスの運行管理者は旅客、配送トラックなどの運行管理者は貨物を受験します。
運行管理者の資格取得の流れ
運行管理者の資格取得の流れについて解説していきましょう。
関連記事:運行管理者資格の試験難易度を解説!資格取得の近道とは?
受験資格
受験資格は下記の2つのうち、どちらかを満たしている必要があります。
①1年以上の実務経験
運行管理者の補助業務経験が1年以上あれば受験資格を与えられます。この実務経験として認められるものは貨物軽自動車運送事業を除いた自動車運送事業者や特定第二種貨物利用運送事業者の運行管理です。
②基礎講習を修了している
もし実務経験がない場合でも国土交通大臣が認定する講習実施期間で基礎講習を修了していると受験資格が与えられます。試験日の2週間前までに修了予定であれば問題ありません。
試験内容
運行管理者試験は旅客と貨物の2種類あり、それぞれ少し試験内容が異なります。出題分野はそれぞれ下記の通りです。
旅客
出題分野 | 出題数 |
道路運送法関係 | 8問 |
道路運送車両法関係 | 4問 |
道路交通法関係 | 5問 |
労働基準法関係 | 6問 |
運行管理者として実務上の必要な知識や能力 | 7問 |
貨物
出題分野 | 出題数 |
貨物自動車運送事業法関係 | 8問 |
道路運送車両法関係 | 4問 |
道路交通法関係 | 5問 |
労働基準法関係 | 6問 |
運行管理者として実務上の必要な知識や能力 | 7問 |
旅客と貨物の違いは、旅客は道路運送業、貨物は貨物自動車運送事業法が出題されるところです。他の部分では車両の安全に関する内容や運行管理に関する分野、労働基準法といった共通する内容となっています。
難易度
近年の運行管理者の合格率を見ていきましょう。
貨物 | 旅客 | |
2017年 | 35% | 35.3% |
2018年 | 32.8% | 34.1% |
2019年 | 31.7% | 31.8% |
2020年 | 30.7% | 31.2% |
2021年 | 29.8% | 32.6% |
これらを見てわかるように徐々に合格率が低くなっています。資格が誕生した当初は50%程度あり、比較的取得しやすい資格でしたが、最近は年々難しくなっている傾向があります。
その理由としては、自動車事故が多発していることと考えられています。コンプライアンスを遵守する傾向が高まっているため、運行管理者としての責務が高まっていることが理由の1つとされています。
試験対策としては試験前に基礎講習を受けることが最も有効です。ただし、それだけでは少し心もとないので、市販のテキストや過去問が記載されている問題集を購入するのが良いでしょう。
運行管理者の魅力
運行管理者の魅力や資格を取得することで得られるメリットを紹介していきましょう。
一生の武器になる
運行管理者の資格を一度取得すると一生使い続けることができます。2年に1度の講習を受けさえすればずっと持ち続けられます。
責任感のあるポジションにつける
運行管理は運送業界の中で司令塔のような存在です。ドライバーに指示を出したり、仕事の管理をしたり、車両の状態や台数などを管理したり、運送ルートの確認、決定をしたりと多くの業務に携わっています。
立場上、上のポジションにつきやすいので、キャリアアップしていきたい人には魅力的です。
ニーズが高い
運送業、特に貨物の方は年々需要が高まっています。アマゾンや楽天といったネットショッピングが主流となってきたことや、日常の買い物もネットスーパーで行う人が増えてきたことで運送業の需要が高くなってきています。
倉庫を増設したり、車両を増やしたり、営業所を増やしたりと規模を拡大している企業が出てきています。
その中で運行管理者は営業所に必ず1人以上設置することが義務付けられています。つまり、運行管理者のニーズも高まっているので、仕事がないということはないでしょう。実際求人を見ていても募集をしているところは多くあります。
運行管理者の給料
運行管理者の給料や年収はどれくらいなのでしょうか。
関連記事:運行管理者の給料相場は?年収や求人例について詳しく解説
運行管理者の平均年収
運行管理者の平均年収は350~450万円です。月収に換算すると約29~38万円です。この金額について経験や年収はもちろん、地方によっても異なります。
一般的な会社員と比較すると同程度か若干少ない傾向にあります。ただし、大手運送業では600万円以上稼げるところもあります。
ドライバーの平均年収
運送業のドライバーの給料と比較をしてみましょう。ドライバーの平均年収は350~500万円と言われています。トラックのサイズが大きくなればなるほど給料が高くなる傾向があります。
運行管理者よりも少し高い年収のところが多いです。この理由としてドライバーは常に自己のリスクを抱えており、危険と隣り合わせであることが給料に反映していると考えられています。
運行管理者に向いている人
ドライバーの管理や車両の管理など運行管理の仕事量は膨大です。そんな運行管理者にはどういった人が向いているのか紹介していきましょう。
リーダーシップのある人
運行管理者は運送業の中心的なポジションにいます。ドライバーや整備士などさまざまな立場の人に指示を出すことが多いです。そのため、リーダーシップのとれる人が向いています。
クセのあるドライバーをまとめあげるためにはリーダーシップがないと統率がとれません。運送業の要ともいえる車両を管理する整備士との連携も重要です。信頼性が重要なので、リーダーシップのある人が向いているといえるでしょう。
コミュニケーション能力がある人
運行管理者はコミュニケーション能力がある人が向いています。仕事上、いろんな部署の人とコミュニケーションをとることが多いです。仕事の指示を与えたり、お願いをしたりすることがあるので、信頼関係の構築ができていないとスムーズに仕事が運びにくいでしょう。
そのためには普段からコミュニケーションを取って関係性を築いておくことが大切です。
マルチタスクができる人
運行管理者の仕事はたくさんあります。仕事を1つ1つ丁寧に確実に行うことは重要ですが、それでは仕事が回りません。
1つの仕事をしている最中でも他の仕事の進捗具合を頭にいれておくこと、同時にできることは行うなどマルチタスクができないと仕事が回りにくいでしょう。
細かいことに気が付く人
細かいことに気が付く人も運行管理者に向いています。
ドライバーや商品を管理する仕事であるため、仕事を指示するだけでなく体調や仕事に不満がないかなどの日頃から気にかけておくことが必要です。商品であれば状態のチェックや配送ルートで渋滞情報など細かく確認できる方がいいでしょう。
細かいことに気が付く人はなんらかの異変やトラブルの発生を未然に防ぐことができます。
関連記事:運行管理者になるデメリットとメリットは?年収や取得方法も紹介
まとめ
運行管理者には多くの仕事があります。しかし、その分やりがいのある仕事とも言えます。会社内では中心的な立場であるため、将来的に上層部へステップアップしていけるでしょう。
資格の難易度は高いですが、しっかり勉強をすれば一発合格も十分に可能です。仕事にやりがいを持ちたい人、上昇志向のある人はぜひ運行管理者を目指してください。
関連記事:統括運行管理者とは?運行管理者との違いや選任方法について解説します!
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