物流業界

ホワイト物流とは?物流推進運動の内容や取り入れるメリットを解説

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ホワイト物流

物流業界では、近年「ホワイト物流」という言葉が注目されています。

ホワイト物流は、国土交通省が中心となって物流業者や荷主企業、ドライバーなどの関係者全体の課題解決を目指す新たな取り組みです。

そこでこの記事では、ホワイト物流の概要や、それを導入した企業の事例について解説します。物流業者の方は参考にしてください。

「ホワイト物流」とは

物流で働く女性

ホワイト物流とは読んで字のごとく、商品を生産者から消費者へ運ぶ人たちの労働環境を改善することです。

ホワイト物流を推進している国土交通省は次のように定義しています。

近年、働きやすい労働環境が「ホワイト」と表現されるようになっています。「ホワイト物流」推進運動は、トラック輸送の生産性向上・物流の効率化や、「より働きやすい労働環境(より「ホワイト」な労働環境)」の実現を目指す社会運動であるため、名称に「ホワイト物流」という表現を用いることと致しました。

また「ホワイト物流」を推進する活動について国土交通省は二つの要件を提示しています。

詳しい内容は同じく国土交通省がリリースしたこちらの動画を見てもわかりやすいでしょう。

なぜホワイト物流が生まれたのか

ホワイト物流が生まれた背景には、トラック運転者の深刻な人手不足や劣悪な労働環境が挙げられます。

長時間労働や低賃金といった問題に加え、運転者の高齢化が進み、業界全体で人材確保が難しい状況が続いていました。

これにより、物流の安定供給が危ぶまれ、国民生活や産業活動にも影響を与えることから、この取り組みが開始されました。

ホワイト物流を取り巻く状況

「ホワイト物流」が求められる背景には、数年前から物流業界がブラックであると指摘され続けていることがあります。
ネットの声をまとめました。

国勢調査によると道路貨物運送業におけるドライバー数は、平成7年で約98万人いたのですが年々減少傾向にあり平成27年時点で約77万人ほどとなっています。

また、現役で働いているドライバーも高齢化が進んでおり、今後更にドライバー不足が深刻になると言われています。

このようなことが原因で労働時間が長くなったり、作業負荷が増えていると考えられています。

厚生労働省の調査によると、トラック運転手の労働時間は全産業に比べて約450時間ほど多いことがわかっています。

また、ドライバー不足だけではなく荷主や天候の都合による荷待ちなども、ドライバーの労働環境が悪いと言われている原因の1つです。

このようなことが要因となって上記口コミのようなことが起きていたり、若手ドライバーが育たず悪循環となってしまっています。

5年内の大改革を迫られていた物流業界

近年、物流業界では働き方改革が加速してきました。具体的には2018年に安倍政権が「働き方改革法案」を打ち出し、2019年には「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」が策定されました。

これに伴い、2024年4月からはトラック運転手に対する時間外労働の上限規制が罰則付きで施行され、厳しい労働時間の管理が求められるようになったのです。

この猶予期間の5年間を経て、現在、物流業界はこれまで以上に大きな変革を迫られている状況にあります。2024年4月から規制が開始された今、物流業界全体で生産性の向上と労働環境の改善が急務となっています。

「ホワイト物流」は、この改革の一環として推進され、今後も引き続き物流業界の効率化や労働環境の改善に向けた取り組みがおこなわれています。

ちなみに下記は、全日本トラック協会が公開している「働き方改革関連法の施行スケジュール」です。

出所:働き方改革関連法の施行スケジュール・全日本トラック協会

関連記事:【取材レポート】迫る2024年問題!配車はどうしたらいい?ゼンリン様主催セミナーに参加してきました

ホワイト物流にどう参加するか

物流

ホワイト物流へのシフトを具体的にはどのように行って行けば良いのでしょうか?

ホワイト物流推進活動への参加を促した3,600社について、国土交通省はノルマを与えたり、きちんとできているかを調査したりということは現在していないようです。

代わりに、企業にはホワイト物流に参画する、という「自主行動宣言」を行います。
自主行動宣言には必須項目とそうでない項目があり、少なくとも必須広告に関して実行する旨を記して(賛同表明)、「ホワイト物流」推進運動の事務局に提出することが求められます。

必須項目は以下の3つです。

【取組方針】

事業活動に必要な物流の持続的・安定的な確保を経営課題として認識し、生産性の高い物流と働き方改革の実現に向け、取引先や物流事業者等の関係者との相互理解と協力のもとで、物流の改善に取り組みます。

【法令遵守への配慮】

法令違反が生じる恐れがある場合の契約内容や運送内容の見直しに適切に対応するなど、取引先の物流事業者が労働関係法令・貨物自動車運送事業関係法令を遵守できるよう、必要な配慮を行います。

【契約内容の明確化・遵守】

運送及び荷役、検品等の運送以外の役務に関する契約内容を明確化するとともに、取引先や物流事業者等の関係者の協力を得つつ、その遵守に努めます。

※【】は筆者が追加しました。
出所:「ホワイト物流」推進運動への参加手順・「ホワイト物流」推進運動

上記の必須項目に加えて自社でさらに取り組む項目を指定のフォーマットで明らかにして事務局へ提出すれば完了です。

まずは「ホワイト物流」推進運動事務局のWEBサイトから指定のフォーマット(Excelファイル)をダウンロードしましょう。

全国各地で「ホワイト物流」推進運動セミナーも行われていますので、詳しくは「ホワイト物流」推進運動HPから最新情報をご覧ください。

ホワイト物流に関するセミナーの参加について

トラック輸送業界の改善を目的とするホワイト物流推進運動ですが、走行状態の把握が難しかったり、常に忙しいことから余裕を持って参加できる会社は少ないのが現状です。

また、ホワイト物流推進運動の内容を正確に理解するのも大変です。

そこで現在、国土交通省を中心としたセミナーが開催されています。

セミナーでは、会社ごとで考えて取り組む『自主公道宣言』について以下のような内容を受講することができます。

・既にホワイト物流推進運動を取り入れている企業が具体的にどのような取り組みをしているのか、事例の紹介

・実際に起こったトラブルの概要や取扱の説明

・トラック運送業者間での契約の書面化など、取引適正化

コロナウイルスなどの影響もあるため、事前に問い合わせ等が必要ですが、参加費は無料となっているため気軽に参加することが可能です。

ホワイト物流の具体的な取り組み事例について

トラック運送業にある共通の問題点について、ホワイト物流推進運動の具体的な取組例にはどのようなものがあるのか紹介していきます。

【荷役作業の負担軽減の課題】

・パレット等の活用
・運転以外の作業の分離
・荷役作業時の安全対策
・物流の改善提案と協力

トラック運転手の負担としてあるのが手積みと手降ろしです。 この作業は事前にパレットに組み付けるなど荷主などとの話し合いを行うことで負担を減らすことが可能です。
また、難しい場合においても、別のスタッフが手積みだけを担当するなどして負担の軽減をするなどの工夫も対策として挙げられています。

【荷待ち時間の削減の課題】

・予約受付けシステムの導入
・荷主空の依頼情報等の事前提供
・出荷に合わせた生産等の改善

トラックドライバーによくあるのが、荷主の都合で数時間待機させられるという点です。

飛行機など天候により到着が遅れる場合は仕方ないのですが、なるべく直前まで情報を共有し合うことでなるべく待機時間を減らせる対策が考えられています。

企業が「ホワイト物流」に参加するメリット

物流

ホワイト物流の実現は、ドライバーをはじめとする労働者はもちろん、企業にとってメリットがあるとされています。企業が「ホワイト物流」に参加するメリットは主に以下の4つです。

人材の定着

「ホワイト物流」に参加することで、トラック運転者をはじめとした物流従業員にとって働きやすい環境が整備されます。

長時間労働や過酷な作業環境の改善が進むことで、従業員の満足度が向上し、離職率の低下が期待できるでしょう。結果的に、企業にとっては労働力不足の解消にもつながります。

生産性の改善

「ホワイト物流」では、トラック輸送の生産性向上を目的としています。

例えば、配送ルートの見直しや荷待ち時間の短縮など、物流業務全体の最適化が図られることで、コスト削減や配送スピードの向上が実現します。これにより、生産性の改善が期待できるでしょう。

CO2排出量の削減

物流の効率化は、トラックの稼働時間や燃料消費の削減につながり、結果としてCO2の排出量が減少します。これにより、企業は環境負荷を軽減でき、持続可能な社会の実現に貢献できます。

イメージアップ

「ホワイト物流」に参加する企業は、働きやすい職場環境の整備や環境問題への取り組みが評価され、顧客や取引先からの信頼を得やすくなります。これにより、企業のブランドイメージが向上し、長期的な事業の成長にもつながるでしょう。

「ホワイト物流」実現に参画している企業一覧

物流

国土交通省・経済産業省・農林水産省は、およそ6,300社の主要企業の代表者に対し、「ホワイト物流」推進運動への参加を要請する文書を送付し、
2019年9月末現在277社が「ホワイト物流」推進運動への賛同を表明しているとしています。
ただし、2019年10月現在、具体的な企業名はまだ公式に発表されていません。

日刊ケミカルニュースによると大手では三菱ケミカルが「自主行動宣言」の提出を済ませたと発表しているそうです。

また、ホワイト物流の実現へのコミットメントをすでにある程度しているものと思われる「全日本物流改善事例大会2019」の参加企業のリストも掲載します。この大会は今年5月に公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会が開催したもので、業務効率化や働き改革などの事例を発表したものです。

  • アサヒロジ株式会社
  • SBSロジコム株式会社
  • 株式会社オカムラ物流
  • コクヨサプライロジスティクス株式会社
  • サッポログループ物流株式会社
  • サンインテルネット株式会社
  • サンコーインダストリー株式会社
  • ジヤトコ株式会社
  • 株式会社スバルロジスティクス
  • 株式会社デンソーロジテム
  • 東芝ロジスティクス株式会社
  • TOTO株式会社
  • 日通・パナソニック ロジスティクス株式会社
  • 日本ロジテム株式会社
  • 株式会社日立物流
  • ブリヂストン物流株式会社
  • 株式会社ホームロジスティクス (ニトリグループ)
  • 本田技研工業株式会社
  • ホンダロジコム株式会社
  • 山村ロジスティクス株式会社
  • 株式会社UACJ Marketing & Processing
  • ロジスティックスオペレーションサービス株式会社


出所:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会HP・全日本物流改善事例大会2019-参加者募集のご案内-(東京)

ホワイト物流についてのまとめ

物流

ホワイト物流は企業、労働者双方にメリットのあるものです。確かに国土交通省のリードする「ホワイト物流」推進運動に強制力はありません。

しかし、罰則規定を伴った将来の法改正への対応を企業に促すものです。セミナー、説明会への参加と合わせ、インターネットでの情報収拾なども積極的に行い、早めの対応を心がけましょう。

さらに、2024年問題に向けた働き方改革をサポートするため、ロジポケを活用してみてはいかがでしょうか?

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