二級自動車整備士の年収はどのくらいか気になる方も多いでしょう。
車両の点検や修理を通じて人々の生活を支える整備士の需要は、車社会が続く限り安定しています。今回は、二級自動車整備士の年収に加え、仕事内容や資格取得方法、将来性についても解説します。
【この記事で分かること】 ・自動車整備士の平均年収 ・職場ごとの自動車整備士の平均年収 ・自動車整備士の仕事内容と将来性 |
二級自動車整備士の年収は469.3万円
自動車整備士の資格は、扱える車種や整備内容の範囲によって一級・二級・三級に分かれます。
二級自動車整備士の場合、ガソリン車やディーゼル車など、扱える車両に制限があるものの、整備の範囲に制限はありません。
一級整備士の場合は、8トン以下の車両であれば制限なく整備できます。
ここでは各整備士資格の年収やその推移について、解説していきます。
二級自動車整備士の平均年収
職業情報提供サイトjobtagが公表している令和4年度の自動車整備士の平均年収(二級自動車整備士を含む)は、469.3万円です。
年代別で最も年収が低かったのは19歳以下で、264万5,900円でした。
この年代では二級整備士試験の受験条件を満たせないことから、三級整備士や整備士見習いとして働いている人の年収と推測できます。
逆に最も平均年収が高かったのは50代前半で、564万1,400円でした。
二級整備士として経験を積み、ピットリーダーや工場長へと出世して収入が上がっていると考えられます。
全産業の平均年収が458万円であるため、他の職種よりも年収が高いことが分かります。
出典:職業情報提供サイトjobtag・自動車整備士|厚生労働省
一級自動車整備士の平均年収
あらゆる車の整備ができる一級自動車整備士ですが、平均年収は二級整備士とほぼ同じです。
二級整備士資格だけでもほとんどの整備業務をこなせるため、一級整備士を必要とする整備工場が少ないことが理由として考えられます。
ただし、一級整備士しか携われない電気自動車が普及すれば、今後待遇が良くなっていく可能性は十分あります。
また、上位資格を取得しているほど技術者として評価されやすく、出世は一級整備士の方がしやすいと言えるでしょう。
自動車整備士の平均年収の推移
自動車整備士の年収は約469万円で、全産業の年収を上回っていると解説しましたが、昔から高かったわけではありません。
日本自動車整備振興会連合会が公表した調査結果によると、整備士の年収は年々上がってきています。
雇用状態 | 平成28年 | 令和3年 | 5年間のアップ額 |
ディーラー整備士 | 449万5,000円 | 468万5,000円 | 19万円 |
兼業整備士 | 367万9,000円 | 384万円 | 16万1,000円 |
専業整備士 | 350万1,000円 | 362万4,000円 | 12万3,000円 |
上記の通り、平成28~令和3年の5年間でディーラーでは19万円も年収が上がっています。
年収の上昇に大きく影響していると考えられているのが「整備士の人手不足」です。
近年は、若手人材の参入が減少しており現役整備士の高齢化も進んでいます。
この状況を受けて、各整備会社では整備士の待遇面や労働環境の改善を進めている状況です。
そのため、今後も自動車整備士の年収は上がっていく可能性が高いと言えるでしょう。
参照:令和3年度自動車特定整備業実態調査結果の概要について|一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
年収が高い自動車整備士の特徴
自動車整備士の年収を解説してきましたが、全ての整備士が高収入というわけではありません。
経験年数だけでなく、自動車整備士の年収には「勤務先」が大きく影響しています。
「平均年収の推移」で紹介した通り、専業や兼業の自動車整備士よりも、ディーラー勤務の整備士の方がかなり年収が高い傾向です。
その理由として考えられるのが「待遇面の充実」と「労働時間の長さ」です。
ディーラーといった規模の大きな企業は、福利厚生や労働環境の整備に積極的で、資格手当といった各種手当も充実しています。
また、仕事量が多く他の職場と比べて残業時間も長い傾向にあることから、残業代でも平均年収が上がっていると考えられます。
二級自動車整備士の年収は職場で変わる
前述した通り、二級自動車整備士の年収は所属する会社によって異なります。
ここでは、自動車整備士の主な勤務先であるディーラーと、民間の整備工場における整備士の年収について解説していきます。
ディーラーの平均年収
令和3年度・自動車特定整備業実態調査結果によると、ディーラーに勤務している整備士の平均年収は以下の通りです。
平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 |
456万9,000円 | 466万1,000円 | 460万6,000円 | 466万円 | 468万5,000円 |
450万円を上回っており、他の産業の収入と比べても低くない収入と言えます。
民間整備工場の平均年収
次は、同データにおける民間整備工場の平均年収です。
平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 |
357万3,000円 | 358万2,000円 | 362万2,000円 | 365万3,000円 | 367万4,000円 |
※専業と兼業整備士の平均を算出した数値です。
仕事内容に大きな差がないにもかかわらず、約100万円の差があることが分かります。
民間の整備工場の収入が低い理由としては、残業時間が少なく比較的休みが多いことが考えられます。
参照:令和3年度自動車特定整備業実態調査結果の概要について|一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
メーカーごとの初任給ランキング
整備士に関する情報を発信している「整備士JOBS」が、全国のディーラー636社を対象に初任給を調査した結果は、以下の通りです。
【初任給の高いディーラーランキング】 ・第一位:いすゞ自動車自動車:17万7,133円 ・第二位:日野自動車:17万6,879円 ・第三位:マツダ:17万6,074円 ・第四位:ホンダ:17万5,986円 ・第五位:トヨタ:17万2,473円 |
最も整備士の初任給が高かったのは、トラック整備を行ういすず自動車で、次いで日野自動車と続いています。
ちなみに、最も低かったのはダイハツで16万6,742円でした。
参照:自動車整備士の給料は安いって本当?実情と高収入整備士の特徴を紹介|整備士JOBS
二級自動車整備士とは
あらためて二級自動車整備士とはどのような資格であり、どのような仕事をするのか、また1級との違いなども解説します。
二級自動車整備士の種類
現在、自動車整備士2級は以下の4種に別れています。
- 2級自動車シャシ整備士
- 2級自動車ガソリン・エンジン整備士
- 2級自動車ジーゼル・エンジン整備士
- 2級二輪自動車整備士
しかし、2027年からの制度改正により、2級資格は「自動車整備士(総合)」と「自動車整備士(二輪)」の2種類に統合され、従来の細かい分類は廃止される予定です。
この改正後は、総合的な整備スキルと、電子制御装置など最新技術に関する知識が新たに求められるようになり、より幅広い整備業務に対応できる人材の育成が図られます。
自動車整備士の仕事内容
自動車整備士は、名前の通りあらゆる車両を整備するのが仕事です。
整備業務は、作業内容によって3つの種類に分かれています。
・点検整備:車両を良好な状態で維持するための、点検作業 ・分解整備:点検作業などで、部品の劣化や破損などが見つかった際に、より細かく分解したうえで修理する整備作業 ・緊急整備:急な故障や事故車両を対象とした整備 |
この他にも会社によって、板金塗装業務や各種パーツの取り付けといった作業を行っている会社もあります。
ディーラーは、特に仕事の種類が幅広く、整備業務以外に洗車やフロント業務もこなします。
一級自動車整備士との違い
2級で一般的な整備ができるのに対し、1級は指導者としての役割も担える点が異なります。
1級を取得すると、現場の安全管理や後進の指導ができるため、キャリアアップとしても有利です。
さらに、1級には電気自動車や自動運転システムなど、最新技術に対応するための高度な知識が求められるため、これから普及が進む分野での対応力が備わります。
二級自動車整備士の資格取得の方法
二級自動車整備士の受験資格
現在、二級自動車整備士の資格は国家試験を通じて取得できます。受験資格を得る方法は主に以下の3つです。
一種養成施設での学習
「一種養成施設」は国土国通大臣によって指定されている専門学校や高等学校などで、約1,800時間のカリキュラムを修了することにより、卒業後の実技試験が免除され、受験資格が付与されます。なお、この過程は2~3年程度を要します。
二種養成施設での学習
「二種養成施設」とは、都道府県ごとに自動車整備振興会が提供している技術講習所です。
同施設では自動車整備士3級を取得したのち、さらに1~3年の実務経験が求められます。修業期間は約6ヶ月で、卒業後には2年間の実技試験免除が認められます。
独学での実務経験
一種養成施設に通わず独学で二級自動車整備士を目指す場合、実務経験を積むことで受験資格を得ることが可能です。
しかし、自動車整備士としての単なる実務経験のみでは二級の受験資格は得られません。まず三級自動車整備士の資格を取得し、その後に実務経験を重ねることで、ようやく二級の受験資格が与えられます。
二級自動車整備士の試験内容
二級自動車整備士の試験は毎年2回実施されており、その試験内容は学科と実技に分けられます。詳しくは以下の通りです。
学科試験
学科試験はマークシート方式で、自動車の構造、素材、保安基準などに関する幅広い知識が問われます。
出題数はシャシ分野が30問、それ以外の分野が40問の合計70問で、合格基準は正解率70%以上です。受験料は4,200円で、内容が多岐にわたるため、試験前の十分な準備が重要です。
実技試験
実技試験では、自動車整備の実作業を行い、試験官がその手順や技術を採点します。
試験は30分間で、基本工作や修理、完成検査などから3つの項目が出題されます。受験料は12,000円と高額なため、一度で合格するためには職場での実務経験や指導を受け、確実な準備をして臨むことをおすすめします。
二級自動車整備士の難易度
二級自動車整備士の試験は合格率が高い傾向にあり、日本自動車整備振興会連合会が発表した令和5年度のデータによると、全体の合格率は80%以上に達しています。特に「2級自動車ジーゼル・エンジン整備士」の合格率は最も高く、93.4%という数値です。
ただし、る第1回試験と第2回試験では合格率に約40%の開きがあり、令和5年度も第1回の合格率は第2回に比べて半分ほど低い結果となりました。
参考:令和5年度第2回(第108回)自動車整備技能登録試験「学科試験」の試験結果について|日本自動車整備振興会連合会
二級自動車整備士の将来性
自動車整備士として、今後働いていくうえで将来性が気になるという方もいるでしょう。
ここでは、自動車整備士の将来性について解説していきます。
自動車整備士の将来性
近年、AI技術の進歩によりロボットによる作業の代替が進んでおり、近い将来多くの仕事がなくなると言われています。
しかしながら、自動車整備士の業務はロボットによる代替が難しく、今後も仕事はなくならないと言えるでしょう。
自動車整備は、ちょっとしたミスが人の命に関わる仕事であり、見た目だけでなく些細な音や臭いの変化を見つけなければなりません。
自動車整備士は、人手不足が続いており今後さらに需要が高まっていくとも予想されています。
自動車の構造が変わったとしても、整備士の仕事がなくなることは考えにくく、将来性の高い仕事の1つと言えるでしょう。
二級は三級よりも転職に有利
二級自動車整備士は、携われる車両に制限があるものの、整備全般をこなせます。
そのため、一部の整備作業しかできない三級整備士よりも、需要は高いと言えます。
現時点で三級整備士を保有している場合は、実務経験を積んだ上で二級資格の取得を目指してみましょう。
二級自動車整備士の年収についてのまとめ
自動車整備士の年収は、改善されつつあり、今後も需要が高まる職種の一つです。特に二級自動車整備士は整備全般に携われるため、三級に比べて転職や就職に有利です。
また、職場によって収入差があるため、年収面を重視する場合は、待遇が整っているディーラーを検討するとよいでしょう。
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