あらゆる車両の修理や点検を行う自動車整備士は、人々の生活に欠かせない存在であり将来性の高い職種の1つです。
今後、整備士として働いていきたいと考えている人も少なくありません。
しかしながら、自動車整備士として働くには整備士免許を取得する必要があり、誰でも簡単になれるわけではありません。
今回は、自動車整備士になる方法を中心に、資格の種類や仕事内容についても分かりやすく解説していきます。
自動車整備士になるには2つの方法がある
自動車整備士になるには、整備に関する知識やスキルを身に付けたうえで、試験に合格しなければなりません。
整備士を目指す方法としては、2つのケースがあります。
・専門学校に通うケース
・実践経験を積むケース
どのように整備士を目指すこととなるのか、ケースごとで解説していきます。
専門学校に通う
整備士を目指すうえで多くの人が選択する方法に、整備学校への進学があります。
整備学校には、整備士の種類ごとにさまざまなカリキュラムが用意されており、学科教習や実技教習を受けながら専門知識とスキルを身に付けていきます。
【整備士資格別の養成期間】 ・三級整備士:1年間 ・二級整備士:2年間 ・一級整備士:4年間 |
整備士試験を受けるには、所定の実務経験を満たす必要がありますが、整備学校を卒業している場合は、卒業と同時に挑戦できます。
進学費用がかかるものの、最短で整備士を目指せることが魅力と言えるでしょう。
実践経験を積む
自動車整備士は、整備学校に進学していなくても資格を取得できます。
学校に通っていない未経験者が、最初に目指すのは三級整備士で、受験するには所定の実務経験を満たさなければなりません。
実務経験の内容は、過去に専攻した学科で異なります。
【三級試験を受けるために必要な実務経験】 ・未経験者:1年以上の実務経験 ・機械工学系の学科専攻者:6ヶ月以上の実務経験 ・自動車学科の専攻者:実務経験必要なし |
実務経験は、整備に関する業務なら何でも認められるわけではなく、就労先にも指定がありますので注意が必要です。
関連記事:
・自動車整備士への転職は何歳まで?社会人から転職するコツと年齢制限
・無資格でも自動車整備士を目指せる?実務未経験で働く方法・求人の探し方
自動車整備士になるには学校に通うのが近道
整備士を最短で目指したい場合は、整備学校への進学がおすすめです。
所定の養成カリキュラムを修了すれば、実務経験なしで試験に挑戦できます。
また、未経験者の場合は必ず三級整備士からの取得となりますが、整備学校に進学すれば飛び級ができます。
二級養成カリキュラムを養成した場合は、すぐに二級試験に挑戦可能であり、一級試験も同様です。
働きながら学ぶ必要がなく、学習に集中できる環境が整っていることも魅力と言えるでしょう。
自動車整備士になるには適性の有無を知るのも重要
整備士として長く働いていくうえで、重要なのが仕事に対する適性です。
時間をかけて資格を取得しても、業務内容が合わなければ仕事を続けられません。
【自動車整備士の適性がある人】 ・車が好きで構造に興味がある ・忍耐力がある ・手先が器用である ・人と話すのが好き ・探求心や向上心がある |
整備士を目指すうえで欠かせないのが、車が好きであるということです。
整備業務に関しては、地味で細かい作業が続くことから、忍耐力があり手先が器用な人が向いていると言えるでしょう。
車の状態について、依頼主に分かりやすく説明するのも重要な仕事の1つであるため、コミュニケーション能力も重要です。
自動車の構造は常に進歩し続けているため、常に学び続けなければなりません。
【自動車整備士の適性がない人】 ・車に興味がない ・潔癖症である ・皮膚が弱い人 ・体を動かすのが苦手な人 |
整備業務のほとんどは手作業であり、オイルやグリスなどを扱うため、手先は常に汚れがちです。
オイルや洗車では、さまざまな溶剤を扱うことから皮膚が弱い人は、手先を傷めてしまう可能性があります。
床に寝転んで車の様子をチェックするようなこともあるため、潔癖症の人も向いていないと言えるでしょう。
点検や修理で扱う整備道具、車の各種部品は重いものが多いため、体力がなく体を動かすのが苦手な人も向いていないと言えます。
あくまでも向き不向きの話であるため、適性がない人に当てはまる場合も、整備士になることは十分可能です。
自動車整備士になるには4つの国家資格が必要
自動車整備士は一級・二級・三級に分けられており、扱える車種や従事できる整備業務に違いがあります。
ここでは、各資格の概要について解説していきます。
一級自動車整備士
整備士資格の最上位となるのが一級資格で、8トン未満の自動車であれば、構造に関係なくあらゆる自動車の整備に携われます。
整備内容にも制限がなく、整備士としてキャリアアップするうえでおすすめの資格と言えるでしょう。
ちなみに、二級整備士でもある程度の整備をこなせることもあり、一級資格の保有者は全体の約3%しかいません。
二級自動車整備士
国内で働くほとんどの整備士が保有する資格であり、点検整備だけでなく分解整備や緊急整備といった高度な知識が必要となる業務もこなせます。
ただし、扱える車種に制限があり「ガソリン・ジーゼル・シャシ・二輪車」の4種類に分類されています。
三級自動車整備士
整備士として働くうえでの入門資格であり、簡単な整備業務のみに従事できます。
具体的には「タイヤ交換・オイル交換・点検整備」などがあります。
入門資格ではあるものの、受験するには実務経験が必要であり、誰でもすぐに取得できるわけではありません。
特殊整備士
特殊整備士とは、特定の箇所に特化した整備の知識やスキルを証明する資格で、以下のような種類があります。
・電気装置整備士 ・車体整備士 ・タイヤ整備士 |
タイヤ整備士は、現在試験が行われていません。
あくまでも補助資格であるため、特殊整備士だけでは車全体の整備はできません。
自動車整備士になるには仕事内容の理解も必要
普段の仕事で整備士は、3つの整備業務をこなします。
・点検整備
・緊急整備
・分解整備
各整備の具体的な業務内容について、解説していきます。
点検整備
点検整備とは、車を良好な状態で保つための点検業務のことです。
具体的には「タイヤ・エンジン・各種ライト・バッテリー・ブレーキ」などの作動に異常がないかをチェックします。
三級整備士は、この点検整備のみに従事できます。
緊急整備
緊急整備とは、走行中の急な故障や交通事故によって破損した車両の点検や修理を行う作業を言います。
故障の状況や破損状態から、どこまで影響が及んでいるのか細かく点検したうえで、部品の交換などを進めていきます。
見た目だけでは判断できない箇所もあり、高度な専門知識と経験が求められる整備業務と言えるでしょう。
分解整備
分解整備とは、何らかの異常が見つかった場合に点検したうえで、さらに細かく分解しながら修理する作業のことです。
緊急整備と同様に、各箇所の構造を熟知している必要があり、二級整備士でなければできない業務です。
この他にも、勤務先によって電気装置の取り付けや板金塗装、各種フロント業務をこなすこともあります。
自動車整備士になるには年収事情の把握も大切
自動車整備士の収入について調べると「低い」「割に合わない」といった、ネガティブな情報も見受けられます。
ここでは、整備士の収入事情について解説していきますので、整備業界を目指すかどうかを判断するうえで参考にしてみてください。
平均年収は約470万円
職業情報提供サイトjobtagが公表している、令和4年度の整備士の平均年収は469万3,000円です。
全産業の平均年収は458万円であるため、決して安くないと言えます。
整備業界は、現役整備士の転職や若手人材の参入減少により、人手不足が深刻化しています。
これを受けて、各企業では待遇面や労働環境の改善が積極的に進められている状況で、整備士の年収は年々増加傾向にあります。
出典:職業情報提供サイトjobtag・自動車整備士|厚生労働省
手当で年収が増える場合もある
自動車整備士は、勤務先によって収入に差があり、最も収入が高いとされているのは大手ディーラーです。
その理由としては、仕事量が多く残業の多さに加えて福利厚生が整っており、各種手当が支給されていることがあります。
具体的には、以下のような手当があります。
・資格手当 ・住宅手当 ・通勤手当 ・家族手当 ・役職手当 ・営業手当 |
ディーラーなどでは、整備業務の依頼を多く取るほど、営業手当が支給される会社もあります。
収入面を重視したい場合は、求人票の各種手当もチェックしてみるようにしましょう。
自動車整備士になる3つの魅力
長く整備業界で働いていくうえで、整備士の魅力も気になるのではないでしょうか。
自動車整備士として働く魅力には、以下のような内容があります。
・専門技術が身に付く
・最先端のテクノロジーに触れられる
・やりがいを感じやすい
各魅力について、仕事内容も踏まえながら解説していきます。
専門技術が身に付く
自動車整備士として経験を積み上げていくほど、車に関する専門技術が身についていきます。
仕事をこなす中で、多くの人のカーライフをサポートできるのはもちろん、プライベートでも身に付けた知識を活かせます。
整備士技術を活かして、車検を自分で通せば(ユーザー車検)、車検費用の節約も可能です。
最先端のテクノロジーに触れられる
自動車の構造は常に進歩しており、近年は電気自動車や水素自動車の普及が進んでいます。
整備士として、常に最先端の技術に触れられることも大きな魅力と言えるでしょう。
ディーラーに勤務していれば、最新の車両を誰よりも早く見ることもできます。
やりがいを感じやすい
整備士は車のオーナーと触れ合う機会が多く、車の症状や悩みをヒアリングした上で、点検や修理を行います。
車はただの乗り物ではなく、趣味や思い出の一部として大切にしている人が多いため、無事に修理できた時には感謝の言葉をかけてもらえます。
日々、多くの人の生活を支えられていることを実感しながら、やりがいをもって仕事に従事できるのも整備士の魅力と言えるでしょう。
関連記事:自動車整備士の7つの魅力は?将来性や向いている人の特徴も
自動車整備士になるにはに関するまとめ
自動車整備士になるには、整備学校に通うのが一般的ですが、働きながら実務経験を積み資格取得することもできます。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、現状を踏まえながら自分に合った方法で取得を目指してみましょう。
近年、整備士の年収は上昇傾向にあり、需要に関しても今後さらに高まっていくと予想されています。
仕事内容や魅力、適性も理解したうえで、整備業界への就職を検討してみてください。
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