さまざまな車両の点検や修理をおこなう自動車整備の仕事をするには、最低でも二級自動車整備士の資格を取得する必要があります。
自動車整備士の資格には、扱える車両によって複数の種類があり、最も取得者の多いのが二級自動車整備士資格です。
この記事を読む人の中には、自動車整備業界で働くために、これから整備士資格の取得を検討している方もいるのではないでしょうか。
今回は、二級自動車整備士について分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事で分かること】 ・二級自動車整備士の種類や年収 ・二級自動車整備士の仕事内容 ・二級自動車整備士になる方法 ・二級試験の概要と合格率 |
二級自動車整備士の種類
自動車整備士の中で最も上位となる一級整備士は、8トン以下の車両であれば構造に関係なく整備に携われます。
近年普及が進んでいる電気自動車や、水素自動車も含まれています。
二級自動車整備士の場合は、扱える車両によって種類が分かれており、詳細は以下の通りです。
- 二級ガソリン整備士:ガソリンエンジンで動く乗用車全般の整備ができる
- 二級ジーゼル整備士:ディーゼルエンジンで動く乗用車全般の整備ができる
- 二級シャシ整備士:エンジンやボディを除くシャシ部分の整備ができる
- 二級二輪自動車整備士:原付バイクや二輪自動車の整備ができる
最も受験者が多いのがガソリン整備士であり、資格取得することで点検整備に加えて、足回りやエンジンなどの分解整備もこなせます。
二級整備士の資格を取得すれば、整備業務の大半をこなせるようになります。
車検の完成検査を行う「自動車検査員」になるには、ガソリン整備士かジーゼル整備士を取得しておかなければなりません。
ちなみに、補助資格として自動車整備士には、以下のような特殊資格も存在します。
- 電気装置整備士:自動車の電気装置の点検や修理に関する知識やスキルを証明する資格
- 車体整備士:フレームやボディ外装の板金や塗装に関する知識やスキルを証明する資格
- タイヤ整備士:タイヤの異常チェックや選定に関する知識やスキルを証明する資格
二級自動車整備士の仕事内容
自動車整備士は、自動車の点検や修理といった整備全般を行います。
二級自動車整備士の資格があれば、扱える車両に制限はあるものの、整備内容に関してはほぼすべての作業をこなせます。
主な3つの仕事内容
二級整備士が行う主な整備は、以下の通りです。
- 点検整備:良好な車両状態を維持するために、定期的に行うメンテナンス作業
- 分解整備:車両点検の中で異常が見つかった場合に、さらに細かく分解したうえで部品などを交換する作業
- 緊急整備:急な故障や事故車両を対象とした整備
勤務先によって、板金塗装に力を入れている会社もあれば、事故車両などを専門に扱っている会社もあります。
また、ディーラーでは営業マンと連携して、整備以外のフロント業務をこなすことも珍しくありません。
二級自動車整備士にはできない仕事
二級自動車整備士にはできない仕事は、2つあります。
- 自動車検査員の仕事
- 特殊な技術が必要な分解整備
自動車検査員とは、車検時に定められた検査を行う検査員のことで、別で資格を取得しなければいけません。
分解整備に関しては、二級自動車整備士でもこなせるものの、近年は電気自動車やハイブリッド車といった電気制御車両が増えてきています。
別の資格が必須となるわけではないものの、車種や修理箇所によっては一級整備士のフォローが必要な業務もあります。
整備士としてさらに成長するには、特定の箇所に特化した特殊整備士の資格や一級整備士の取得が必須と言えるでしょう。
二級自動車整備士の平均年収
厚生労働省が公表した、令和4年度における自動車整備士の収入は以下の通りです。
【自動車整備・修理従事者】
・平均給与:30万3,600円
・平均賞与:77万5,600円
・推計年収:441万8,800円
自動車整備士は、若手人材の参入が少なく人材不足が続いていることから、各企業で労働環境や待遇の改善が積極的に進められています。
そのこともあり、整備士の平均年収は年々増加しており、今後さらに上がっていく可能性もあります。
ちなみに、上位資格である一級整備士の年収は二級整備士と大きな差がありません。
二級整備士だけでも十分整備業務をこなせることから、一級整備士を必要としていない会社が多いためと考えられます。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|厚生労働省
二級自動車整備士の受験資格
二級自動車整備士は、誰でもすぐに挑戦できるわけではなく、学歴や修了科目によって受験するための条件が定められています。
学歴や修了した科目 | 受験資格 |
自動車学校の二級整備士養成課程の修了者 | 卒業と同時に受験可能 |
機械工学科系の学科を大学や高等専門学校で修了 | 三級整備士取得後に1年6ヵ月以上の実務経験 |
機械工学科系の学科を高校や専門学校で修了 | 三級整備士取得後に2年以上の実務経験 |
自動車整備や機械工学系の学科以外の学校を卒業 | 三級整備士取得後に3年以上の実務経験 |
具体的な学科や三級整備士取得の条件は、国土交通省や自動車整備振興会連合会のホームページで確認できます。
ちなみに、実務経験は指定の工場などでの業務が対象であり、ガソリンスタンドなどでのオイル交換や各種パーツ交換は認められません。
二級自動車整備士を受験する流れ
二級自動車整備士になるには、大きく分けて4つのステップに分かれます。
・⑴自動車整備振興会に申請する
・⑵自動車整備技能登録試験を受験する
・⑶自動車整備振興会で手続きをする
・⑷自動車整備士の合格証明書を受け取る
受験資格は学歴や修了科目によって異なるため、注意が必要です。
ここでは、上記5つのステップについて詳しく解説していきます。
⑴自動車整備振興会に申請する
二級整備士試験の受験資格を満たしたあとは、試験を実施する各都道府県の「自動車整備振興会連合会」へ受験を申請します。
【受験申請で必要なもの】
・登録試験受験申請書
・横4.5cm、縦6cmの証明写真
・郵便はがき
・受験資格を証明する書類
受験手数料は学科試験が7,200円、実技試験が14,000円です。
郵便はがきは学科試験のみの受験は2枚、実技試験も受ける場合は4枚必要です。
受験資格を証明する書類には、実務経験証明書や卒業証書があります。
受験詳細は、変更される可能性があるため、必ず自動車整備振興会で確認するようにしましょう。
⑵自動車整備技能登録試験を受験する
この試験は日本自動車整備振興会連合会(通称:日整連)が実施しており、一級、二級、三級、特殊整備士の試験が用意されています。
試験は学科試験と実技試験に分かれており、学科試験に合格することで、実技試験の受験資格を得られます。さらに、この試験に合格することで、国土交通省がおこなう検定試験が免除される特典もあります。
なお、学科試験は学歴や修了科目に関係なく全員が受けますが、実技試験は一定の条件を満たすことで免除が可能です。
【二級整備士試験・実技試験の免除条件】
自動車学校に通い、二級整備士養成課程を修了している
自動車整備振興会が実施する技術講習を受講する
技術講習は、二級の場合で約半年の教育期間が設けられており、働いている方向けに平日の夜間や日曜の昼間に受けられるコースもあります。
⑶自動車整備振興会で手続きをする
試験に合格したあとは、2年以内に全面申請をすることで、二級整備士の合格証明書が届きます。
【全面申請で必要なもの】
・学科試験合格証明書
・整備技能講習修了書
・検定申請書
・郵便はがき2枚
・三級整備士合格証書
・印鑑
・申請料
・実務経験証明書
必要なものは、受験条件の満たし方によって変わるため、必ず自動車整備士振興会に確認しましょう。
⑷自動車整備士の合格証明書を受け取る
自動車整備士振興会に全面申請することで、合格証明書が送られてきます。
一度資格を取得すると、更新の必要はなく、取り消しやはく奪になることも原則ありません。
二級自動車整備士の試験概要
二級整備士の試験は学科試験と実技試験に分かれており、どちらにも合格しなければなりません。
ここでは、各試験の内容について解説していきます。
二級自動車整備士の学科試験の内容
二級・学科試験の内容は以下の通りです。
二級・学科試験 | 試験内容 |
試験時間 | ・ガソリン、ジーゼル、二輪:80分 ・シャシ:60分 |
出題数 | ・ガソリン、ジーゼル、二輪:40問 ・シャシ:30問 |
試験内容 | ・修理、調査、点検、完成検査の方法 ・整備で使用する計量器や試験機、工具の構造や機能、取り扱い方法 ・機能や構造と取り扱い方法の一般的な知識 ・燃料油脂や材料の性質と用法の一般的な知識 ・図面の初等知識 ・保安基準や自動車整備に関する法規 |
ガソリン・ジーゼル・二輪試験の場合、40点満点中28点以上をとり、各科目で4割以上の正答率であれば合格です。
シャシ試験の場合は、30点満点中21点以上をとり、各科目で4割以上の正答率で合格です。
二級自動車整備士の実技試験の内容
二級・実技試験の内容は以下の通りです。
二級・実技試験 | 試験内容 |
試験時間 | 30分 |
出題数 | 3問 |
試験内容 | ・一般的な修理 ・基本工作 ・分解、組立、点検、調整と完成検査 ・整備用の計量器や試験機、工具の取り扱い |
実地試験の合格基準は、30点満点中18点以上で、各問題の配点で4割以上の成績で合格です。
ちなみに、一級整備士試験の場合は学科・実技試験にプラスして口述試験があります。
二級自動車整備士の合格率
直近で行われた二級試験の合格率は、以下の通りです。
二級・筆記試験 | 令和4年 | 令和3年 | 令和2年 |
二級・ガソリン | 88.3% | 87.1% | 89.8% |
二級・ジーゼル | 96.3%% | 94.8% | 95.5% |
二級・シャシ | 73.7 | 91.8% | 90.7% |
二級・実技試験 | 令和4年 | 令和2年 | 平成30年 |
二級ガソリン | 41.7% | 46.2% | 22% |
二級・実技試験 | 令和5年 | 令和3年 | 令和元年 |
二級ジーゼル | 33.3% | 33.3% | 0% |
二級・筆記試験の合格率は、90%前後で推移しており、実技試験に関しては30〜40%程で推移しています。
実技試験の合格率が低いのは、受験対策が十分に行えていないことが主な要因です。
自動車学校の整備士カリキュラムを修了している場合や、専用施設での整備技術講習を受講した場合、実技試験は免除されます。
そのため、実技試験を受けるのは自動車学校に通っておらず、働きながら試験に挑戦している人がほとんどです。
仕事中に試験対策の練習ができるわけでもないため、半数以上の人が試験に落ちていると考えられます。
筆記試験の受験者が1万人近くいるのに対し、実技試験の受験者数は毎年数十名ほどなので、ほとんどの人は実技試験が免除になっていると考えられます。
参照元:試験結果(受験者及び合格者数等)|一般社団法人日本自動車整備復興会連合会
二級自動車整備士の過去問
二級自動車整備士の学科試験の過去問には、以下のような内容があります。
【ピストン・リングに関する記述で不適切なものは?】 1・フラッタ現象により、ピストンリングの機能が損なわれ、ガス漏れによってエンジン出力が低下する。また、リング溝や上下面の異常摩擦が促進する 2・ピストンリングには強じん性、耐摩耗性、耐熱性、オイル保持性などが要求されることから、コンプレッションリングの材料は特殊鋳鉄か炭素鋼、オイルリングは炭素鋼が用いられる 3・スカッフ現象は、大きな荷重や、オイルの不良、オーバーヒートした際に起こりやすい 4・バレルフェース型のピストンリングは、吸入行程では、シリンダ壁面と線接触する。また、燃焼行程では高い面圧でシリンダ壁面に密着しているため、セカンドリングに持ち答えるのが一般的 【正解は4】 |
上記問題のように、複数の選択肢から正解を選ぶ問題が続きます。
関連記事:二級自動車整備士の履歴書に関する書き方|例文やチェック項目
二級自動車整備士についてのまとめ
二級自動車整備士は、扱う車両によって4つの種類に分けられており、一級整備士のように、あらゆる車両の整備ができるわけではありません。
しかしながら、整備範囲に制限がないことから、二級資格を取得すれば整備工場などで十分整備士として活躍できます。
資格を取得するには、学歴や修了科目によって実務経験の条件が定められているため、詳細を確認したうえで取得を目指してみましょう。
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