不動産業界

不動産鑑定士試験の難易度とは?合格率・合格ラインについて解説

更新日:

不動産業界は、人々の生活と密接な関係にあり、需要がなくなることのない将来性のある業界と言えます。

業界内には、さまざまな職種があり、その中の1つに「不動産鑑定士」があります。

資格取得難易度が高い分、非常に貴重な存在であり不動産業界で幅広く活躍し続けられる職種の1つです。

不動産業界に従事しながら知識を身に付けたうえで、キャリアアップとしての取得を目指す人も少なくありません。

また、受験資格に特別な条件がないことから、不動産業界へ転職するために取得を検討する人もいるでしょう。

今回は、不動産鑑定士の難易度を中心に、試験の概要について詳しく解説していきます。

この記事で分かること
・不動産鑑定士試験の概要
・不動産鑑定士試験の合格ラインと合格率
・他の難関資格と比べた不動産鑑定士の難易度
・独学での不動産鑑定士の取得について

不動産鑑定士試験について

女性がデスクワークをこなす様子

土地や建物といった不動産は、社会情勢の変動や環境の変化などにより価値が変動します。

不動産は資産として用いられることが多く、適切な価値を設定する必要があります。

不動産に関する幅広い知識をもとに、不動産の価値を導き出す役割を担っているのが「不動産鑑定士」です。

土地や建物の売買を検討している人に対しては、不動産鑑定を通じたコンサルティングも行います。

不動産業界はもちろん、資産として土地や建物を扱う金融業界でも幅広く活躍できる存在です。

不動産鑑定士になるには、はじめに国家試験に合格しなければなりません。

ここでは、不動産鑑定士試験について以下の項目で詳しく解説していきます。

・そもそも不動産鑑定士の資格とは?
・受験資格
・出題範囲
・持ち物

これから試験に挑戦する人は、内容について理解しておくようにしましょう。

そもそも不動産鑑定士の資格とは?

不動産鑑定士の資格は、司法試験や公認会計士と並ぶ3大国家資格の1つです。

不動産鑑定のスペシャリストとして、さまざまな業界で活躍できる一方で、難易度が高く誰でも簡単に取得できる資格ではありません。

また、試験に合格した後には「実務修習」を受ける必要があり、国土交通大臣の修了確認を経て、不動産鑑定士として登録できます。

受験資格

不動産鑑定士試験では、短答式試験と論文式試験が行われますが、どちらも受験する上で特別な条件はありません。

年齢や学歴に関係なく、不動産業界に従事していない人でも試験に挑戦できます。

そのため、不動産業界にこれから挑戦しようとしている人も受験しています。

ちなみに、受験資格が撤廃されたのは平成18年で、それ以前に関しては誰でも受験できる資格ではありませんでした。

出題範囲

不動産鑑定士試験は、2段階に分かれており、はじめに実施されるのが「短答式試験」です。

その後に実施されるのが「論文式試験」であり、短答式試験の合格者しか受けられません。

短答式試験の出題範囲や内容は以下の通りです。

出題科目・不動産に関する行政法規
・不動産の鑑定評価に関する理論
出題形式マークシート方式
出題範囲(1)土地基本法、地価公示法、国土利用計画法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、建築基準法、不動産の鑑定評価に関する法律、マンションの建替え等の円滑化に関する法律、法人税法、土地収用法、農地法、土壌汚染対策法、不動産登記法、地方税法、所得税法、文化財保護法、租税特別措置法
出題範囲(2)住宅の品質確保の促進等に関する法律、宅地造成等規制法、公有水面埋立法、都市緑地法、新住宅市街地開発法、河川法、国有財産法、自然環境保全法、相続税法、海岸法、自然公園法、森林法、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、公有地の拡大の推進に関する法律、宅地建物取引業法、宅地建物取引業法、景観法、道路法、投資信託及び投資法人に関する法律、不動産特定共同事業法、資産の流動化に関する法律
試験日程5月上旬

不動産鑑定士は、高く多角的な視点で不動産の価値を適正に導き出す必要があります。

上記の通り、関連する法律が非常に多く出題範囲の広さが特徴と言えるでしょう。

短答式試験は午前中と午後で1科目ずつ試験が実施され、各試験時間は120分です。

短答式試験は、アウトプットとインプットに重点を置きながら、満遍なく知識を身に付けていくことをおすすめします。

テキストである程度知識を身に付けた後は、過去の問題集を解きながら理解を深めていきましょう。

次に論文式試験の出題範囲や内容は以下の通りです。

出題科目民法、経済学、会計学、不動産の鑑定評価に関する理論
※不動産の鑑定評価に関する理論は論文と演習の2通りで出題
出題形式記述式
出題範囲・民法・民法の第1編~第3編を中心に第4編~第5編、特別法も含む
・建物の区分所有や借地借家法などに関する法律
出題範囲・経済学マクロやミクロの経済理論や経済政策論
出題範囲・会計学財務会計論(企業の財務諸表の理解に必要な会計理論や表の作成、関係法令や会計諸規則も含む)
出題範囲・不動産の鑑定評価に関する理論不動産鑑定評価基準運用上の留意事項や不動産鑑定評価基準
試験認定8月中旬

論文式試験の合格ラインは約6割ほどと言われているため、各科目とも満遍なく知識を身に付ける必要があります。

「不動産の鑑定評価に関する理論」は600満点中300点を占めているため、点が取れるようバランスを考えながら学習を進めていきましょう。

短答式とは違い、記述式による解答となるため、得た知識を正しくアウトプットすることも重要です。

人に対して分かりやすく説明できるレベルの理解が必須と言えるでしょう。

出典:不動産鑑定士試験:国土交通省

持ち物

不動産鑑定士試験は、試験に持参する持ち物に関してもルールが定められています。

短答式試験と論文式試験では、持ち物のルールが異なりますので注意しましょう。

短答式試験の持ち物

必要な持ち物注意点
受験票試験終了後も合格発表まで保管しておくこと
筆記用具・鉛筆でBまたはHBであること

 

※メモへの使用に限りシャープペンシルの使用も認める

・プラスチック製の消しゴム

論文式試験の持ち物

必要な持ち物注意点
受験票試験終了後も合格発表まで保管しておくこと
筆記用具・ボールペンまたは万年筆
※消しゴムで消せるボールペンは不可
※答案の下書き用に鉛筆や消しゴムの使用を認める
計算機器電子式卓上計算機
※使用時に音がならずアラーム機能のないもの
※プログラム記憶機能を有しないもの
その他不動産の鑑定評価に関する理論(演習)のみホチキスの使用を認める

ハンカチやティッシュは、衣服のポケットに入れず、机の上に置いて使用します。

試験中の飲食は原則禁止であるものの、蓋つきペットボトルに限り、試験中に飲んでも問題ありません。

ちなみに、試験に関する注意点として、他にも以下のような内容がありますので、理解しておくようにしましょう。

不動産鑑定士試験に関する注意点

・試験官が携行品に確認を求めた場合、必ず指示に従うこと

 

・携帯電話などの通信機器は電源を切り、卓上の封筒に入れて鞄の中にしまうこと

・試験中の飲食は原則禁止であり、飴やガムも含む

・マスクの着用は許可するが、耳栓の使用は認めない

試験中に不正があった場合、内容によっては合格の決定が取り消され、以後3年間は試験自体が受けられなくなるため注意しましょう。

不動産鑑定士試験の合格ライン、合格率

スマホを操作する様子

不動産鑑定士試験を受けるうえで合格ラインや試験の合格率も理解しておくようにしましょう。

ここでは、短答式試験と論文式に分けて、合格ラインや合格率を紹介していきます。

不動産鑑定士 短答式試験の合格率・合格ライン

不動産鑑定士試験・短答式試験の合格ラインは、200満点中140点前後です。

過去5年間の短答式試験の合格率は以下の通りです。

試験実施年度受験者数合格者数合格率
2023年1,647名553名33.6%
2022年1,726名626名36.3%
2021年1,709名621名36.3%
2020年1,415名468名33.1%
2019年1,767名573名32.4%

2023年度の試験における受験者の最年少年齢は19歳で、最高齢は78歳の方が試験に挑戦しています。

ちなみに、不動産鑑定士には免除制度があり、短答式試験に合格してから2年間は、短答式試験免除を申請することで、論文試験のみになります。

不動産鑑定士 論文式試験の合格率・合格ライン

不動産鑑定士試験・論文式試験の合格ラインは、600満点中370点前後です。

民法・経済学・会計学が各100点満点で、不動産の鑑定評価に関する理論は300点満点です。

過去5年間の論文式試験の合格率は以下の通りです。

試験実施年度受験者数合格者数合格率
2023年885名146名16.5%
2022年871名143名16.4%
2021年809名135名16.7%
2020年764名135名17.7%
2019年810名121名14.9%

2023年度の試験における受験者の最年少年齢は20歳で、最高齢は65歳の方が試験に挑戦しています。

短答式試験と論文式試験の一発合格率は、5〜7%です。

ちなみに、論文試験に関しても免除制度があり、一定の条件を満たすことで、以下の科目が免除されます。

免除科目免除条件
民法高等専門学校や大学などにおいて、通算して3年以上法律学に属する科目で教授や准教授として働いていた人
経済学大学などで通算して3年以上経済学に属する科目で教授や准教授として働いていた人
会計学大学などで通算して3年以上商学に属する科目で教授や准教授として働いていた人
合格した試験で受験した科目高等試験本試験に合格した人
民法司法試験か旧司法試験第二次試験に合格した人
会計学と合格した試験で受験した科目公認会計士試験か旧公認会計士試験第二次試験に合格した人

免除するには、受験の際に事前の申し込みが必要です。

条件などが変更されている可能性もあるため、国土交通省の不動産鑑定士試験のページで確認しましょう。

他資格から見る不動産鑑定士の難易度

女性が事務職をこなす様子

不動産鑑定士の一発合格率は5~7%と低く、難易度は高いと言えます。

ただし、合格率の低さは受験資格に特別な条件がなく、誰でも挑戦できることなどが影響していると考えられます。

ここでは、他の難関資格と比較しながら、不動産鑑定士の難易度について解説していきますので、資格取得に挑戦するうえで参考にしてみてください。

宅地建物取引士との比較

不動産業界で最も有名な資格と言っても過言ではないのが「宅地建物取引士」です。

不動産に関する知識のない一般人でも、公正な不動産取引ができるようにサポートする役割を担っています。

宅建士には、不動産契約に関する3つの独占業務があります。

また、宅地建物取引業者の事務所には、従業員5人あたりに対して1人の宅建士の配置が義務付けられており、不動産業界に欠かせない存在と言えるでしょう。

宅建士も国家試験に合格することで資格取得が可能であり、試験に特別な受験条件がありません。

マークシートによる試験のみであり、合格率に関しては17%前後で推移しています。

出題範囲は非常に幅広いものの、不動産鑑定士のように2段階に分かれていないため、宅建士の方が難易度は低めと言えるでしょう。

ちなみに、勉強時間に関しても不動産鑑定士を取得する場合、宅建士の7~10倍は時間がかかると言われています。

公認会計士との比較

公認会計士とは、税務や会計に関するスペシャリストで、企業や個人の財務諸表の監査や税務相談を行える国家資格です。

各企業の財務情報の信頼性を保証する、非常に重要な役割を担っています。

企業が作成した財務諸表が、会計基準や法令に従った内容であるかを確認したうえで、監査報告書を作成する仕事は、公認会計士の独占業務です。

この他にも、税理士としての業務や会計業務をこなすほか、独立して税務や会計に関するコンサルティングを行う人もいます。

公認会計士の試験に受験資格はなく、年齢や学歴に関係なく誰でも挑戦できます。

試験内容は、不動産鑑定士と同じように「短答式試験」と「論文式試験」の2段階に分けて行われます。

試験の合格率は、11%前後で推移していたものの、令和3年以降は10%を下回る結果となりました。

合格率は若干高いものの、不動産鑑定士とほぼ同じくらいの難易度と言えるでしょう。

弁護士との比較

弁護士とは、さまざまな法令や憲法をもとに、基本的人権を守り社会正義の実現を使命としています。

社会生活の中で起こるあらゆる対立を、該当する法律のもとで問題点を明らかにしたうえで、適切なアドバイスを行います。

個人の困りごとや企業の取引など、依頼内容に応じてトラブルの防止や解決に導くのが仕事です。

事件が起きた際は、被告人や被疑者の権利を弁護人として擁護します。

弁護士になるには司法試験に合格する必要がありますが、試験の合格率は30〜40%で推移しており、そこまで低いわけではありません。

しかしながら、司法試験に挑戦するには予備試験に合格しなければならず、その合格率は3%前後と非常に難関であると言えます。

法科大学院に通い指定の課程を修了することで、司法試験のみの受験になりますが、大学院に通う時間とお金が必要です。

予備試験に特別な受験資格はなく、誰でも挑戦できるものの、資格取得難易度は不動産鑑定士よりも高いと言えるでしょう。

合格者の出身大学から見る不動産鑑定士の難易度

複数人で一緒に仕事をする様子

不動産鑑定士の合格者は、平成14年まで出身大学が公表されていました。

平成12~14年における、累計合格者の数が多い大学は以下の通りです。

・早稲田大学:94名
・慶応義塾大学:91名
・中央大学:56名
・同志社大学:45名
・立命館大学:31名

どの大学も日本を代表する難関大学であることから、不動産鑑定士の難易度は高いと言えるでしょう。

ちなみに、公認会計士や税理士に関しても、早稲田大学や慶応大学出身の合格者が多い傾向です。

不動産鑑定士は独学で取れる?

タイピングの様子

不動産鑑定士は、関連する法律のほぼ全てを暗記しなければならず、合格率は5~7%と低く非常に難易度の高い資格と言えます。

特別な受験条件がないため、不動産業界に従事していない人でも挑戦可能であり、独学でも問題ありません。

そのため、独学で不動産鑑定士に合格する人も中にはいるものの、一般的に独学での取得は難しいと言えるでしょう。

実際に不動産鑑定士を目指した人の声として、以下のような内容がありました。

・市販のテキストは解説が足りていないものが多く、アウトプットできるレベルになれない

 

・論文式は内容の判断に客観性が必要であるため、自分以外の人に採点してもらわないと間違いや改善点に気付きにくい

・最低でも数千時間の勉強が必要と言われており、自分の今いる位置が分からない状態でモチベーションを維持するのが難しい

ネット上では、独学で不動産鑑定士試験に合格した人のブログなどがあり、それぞれで効率の良い勉強法が紹介されています。

どうしても独学で合格したい人は、各種方法を試しながら挑戦してみましょう。

短答式試験だけ独学で学び、論文式試験に関しては、通信講座を利用したといった声もありました。

不動産鑑定士試験の勉強時間は?

男性従業員がほほ笑む様子

不動産鑑定士試験に合格するための勉強時間は、勉強方法などにもよるため、さまざまな声がありますが、2,000〜3,700時間が一般的と言われています。

ちなみに勉強時間の内訳は、短答式が700〜1,000時間、論文式が1,300〜2,700時間です。

勉強時間を短縮したい場合は、独学ではなく通信講座の利用をおすすめします。

通信講座は、試験に詳しい講師陣による講座の監修が行われており、初学者でも分かりやすいさまざまなテキストが準備されています。

オンライン受講相談などを実施している講座もあり、分からないことがあれば質問できるため、独学よりも効率よく学べます。

受講費用として20~50万円かかりますが、大幅に時間を短縮したうえで合格率を上げられるため、決して高くはないと言えるでしょう。

まとめ

話し合いの様子

不動産鑑定士は、土地や建物といった不動産の価値を適正に判断する役割を担っており、不動産業界や金融業界などで需要のある資格です。

不動産に関する幅広い知識が求められるものの、試験自体に特別な受験条件はなく、誰でも挑戦できます。

ただし、試験で行われる短答式試験と論文式試験に一発で合格する人は、5〜7%と非常に少なく難易度の高い資格です。

独学で取得したいという人は、不動産鑑定士の通信講座を利用するなどして、効率良く学習を進めていきましょう。

不動産業界に就職したうえで、徐々に知識を身に付けながら取得を目指すのも1つの方法です。

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