最近の物流業界では「ホワイト物流」という言葉が注目を浴び始めています。
ホワイト物流とはなんだろう、ホワイト物流を推進するとどんないいことがあるのかな?
そうお考えではありませんか?
国土交通省がリードするホワイト物流は物流業者、荷主企業、ドライバーなどの物流に関わる全ての人の悩みに応える新しい概念なのです。
この記事ではホワイト物流とは何か、取り入れた企業はどこかなど、様々な疑問にお答えしています。
この記事が皆様のお役に立つことを祈っています。
「ホワイト物流」とは
ホワイト物流とは読んで字のごとく、商品を生産者から消費者へ運ぶ人たちの労働環境を改善することです。
ホワイト物流を推進している国土交通省は次のように定義しています。
近年、働きやすい労働環境が「ホワイト」と表現されるようになっています。「ホワイト物流」推進運動は、トラック輸送の生産性向上・物流の効率化や、「より働きやすい労働環境(より「ホワイト」な労働環境)」の実現を目指す社会運動であるため、名称に「ホワイト物流」という表現を用いることと致しました。
また「ホワイト物流」を推進する活動について国土交通省は二つの要件を提示しています。
- トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化
- 女性や60代以上の運転者等も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現
出所:「ホワイト物流」推進運動公式HP よくある質問
詳しい内容は同じく国土交通省がリリースしたこちらの動画を見てもわかりやすいでしょう。
ホワイト物流を取り巻く状況
「ホワイト物流」が求められる背景には、数年前から物流業界がブラックであると指摘され続けていることがあります。
ネットの声をまとめました。
何度も言う。物流業界は超のつくブラックだよ。セブンのロジスティックなんか無茶苦茶。下請企業ごと使い捨て。:「息子はどんどん痩せていった」食事は運転中におにぎり、43歳コンビニ配送ドライバーが過労死認定(BuzzFeed Japan) https://t.co/miZClJHFWm
— Masa da Oldskooler (@itsgroovymasa) 2017年8月31日
私の乏しい経験だと、25年ぐらい前の佐川急便の物流センター(3次請けぐらい)は残業の多さも含めてかなりきつかった。あまりにきつくて過労死出まくりでその後改善された、っていう話につながるわけだけれど。で、今のブラック企業の話を聞くと当時の佐川急便をどうしても思い出してしまう。
— Kenichi Tomura/戸村賢一 (@kenichi_tomura) 2016年10月8日
私の乏しい経験だと、25年ぐらい前の佐川急便の物流センター(3次請けぐらい)は残業の多さも含めてかなりきつかった。あまりにきつくて過労死出まくりでその後改善された、っていう話につながるわけだけれど。で、今のブラック企業の話を聞くと当時の佐川急便をどうしても思い出してしまう。
— Kenichi Tomura/戸村賢一 (@kenichi_tomura) 2016年10月8日
台風で物流が1日とまってた影響により、ここ3日間は家で寝る暇も無い忙しさ。
3日間で東北全県制覇!
仙台から青森、秋田、盛岡、酒田、郡山、山形とずっと走りっぱなし。
ちょっと働き過ぎたかなぁ。https://t.co/ACXVu3CDSc— 軽貨物事業の始め方 (@sendai_kei) 2019年10月16日
国勢調査によると道路貨物運送業におけるドライバー数は、平成7年で約98万人いたのですが年々減少傾向にあり平成27年時点で約77万人ほどとなっています。
また、現役で働いているドライバーも高齢化が進んでおり、今後更にドライバー不足が深刻になると言われています。
このようなことが原因で労働時間が長くなったり、作業負荷が増えていると考えられています。
厚生労働省の調査によると、トラック運転手の労働時間は全産業に比べて約450時間ほど多いことがわかっています。
また、ドライバー不足だけではなく荷主や天候の都合による荷待ちなども、ドライバーの労働環境が悪いと言われている原因の1つです。
このようなことが要因となって上記口コミのようなことが起きていたり、若手ドライバーが育たず悪循環となってしまっています。
5年内の大改革を迫られる物流業界
こうした社会の要請を受けて官民一体での「働き方改革」が進められています。
安倍政権は2018年3月には、一連の働き方改革法案の一環として、「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」策定し、2019年4月には労働基準法の改正を行いました。2024年の4月から、特にトラック運転手の労働に関しては罰則付きの時間外労働の上限規制などの厳しい規制がかかります。
この5年間の猶予期間の間に、物流業界は大改革を迫られているといえるでしょう。
「ホワイト物流」はこのアクションプランの一環として推進されており、現在、国土交通省はホワイト物流の推進を2023年4月1日までの間行うとしています。
下記は全日本トラック協会が公開している「働き方改革関連法の施行スケジュール」です。
ホワイト物流、どう参加する?
ホワイト物流へのシフトを具体的にはどのように行って行けば良いのでしょうか?
ホワイト物流推進活動への参加を促した3,600社について、国土交通省はノルマを与えたり、きちんとできているかを調査したりということは現在していないようです。
代わりに、企業にはホワイト物流に参画する、という「自主行動宣言」を行います。
自主行動宣言には必須項目とそうでない項目があり、少なくとも必須広告に関して実行する旨を記して(賛同表明)、「ホワイト物流」推進運動の事務局に提出することが求められます。
必須項目は以下の3つです。
【取組方針】
事業活動に必要な物流の持続的・安定的な確保を経営課題として認識し、生産性の高い物流と働き方改革の実現に向け、取引先や物流事業者等の関係者との相互理解と協力のもとで、物流の改善に取り組みます。
【法令遵守への配慮】
法令違反が生じる恐れがある場合の契約内容や運送内容の見直しに適切に対応するなど、取引先の物流事業者が労働関係法令・貨物自動車運送事業関係法令を遵守できるよう、必要な配慮を行います。
【契約内容の明確化・遵守】
運送及び荷役、検品等の運送以外の役務に関する契約内容を明確化するとともに、取引先や物流事業者等の関係者の協力を得つつ、その遵守に努めます。
※【】は筆者が追加しました。
出所:「ホワイト物流」推進運動への参加手順・「ホワイト物流」推進運動
上記の必須項目に加えて自社でさらに取り組む項目を指定のフォーマットで明らかにして事務局へ提出すれば完了です。
まずは「ホワイト物流」推進運動事務局のWEBサイトから指定のフォーマット(Excelファイル)をダウンロードしましょう。
全国各地で「ホワイト物流」推進運動セミナーも行われていますので、詳しくは「ホワイト物流」推進運動HPから最新情報をご覧ください。
ホワイト物流に関するセミナーの参加について
トラック輸送業界の改善を目的とするホワイト物流推進運動ですが、走行状態の把握が難しかったり、常に忙しいことから余裕を持って参加できる会社は少ないのが現状です。
また、ホワイト物流推進運動の内容を正確に理解するのも大変です。
そこで現在、国土交通省を中心としたセミナーが開催されています。
セミナーでは、会社ごとで考えて取り組む『自主公道宣言』について以下のような内容を受講することができます。
・既にホワイト物流推進運動を取り入れている企業が具体的にどのような取り組みをしているのか、事例の紹介
・実際に起こったトラブルの概要や取扱の説明
・トラック運送業者間での契約の書面化など、取引適正化
コロナウイルスなどの影響もあるため、事前に問い合わせ等が必要ですが、参加費は無料となっているため気軽に参加することが可能です。
ホワイト物流の具体的な取り組み事例について
トラック運送業にある共通の問題点について、ホワイト物流推進運動の具体的な取組例にはどのようなものがあるのか紹介していきます。
【荷役作業の負担軽減の課題】
・パレット等の活用
・運転以外の作業の分離
・荷役作業時の安全対策
・物流の改善提案と協力
トラック運転手の負担としてあるのが手積みと手降ろしです。 この作業は事前にパレットに組み付けるなど荷主などとの話し合いを行うことで負担を減らすことが可能です。
また、難しい場合においても、別のスタッフが手積みだけを担当するなどして負担の軽減をするなどの工夫も対策として挙げられています。
【荷待ち時間の削減の課題】
・予約受付けシステムの導入
・荷主空の依頼情報等の事前提供
・出荷に合わせた生産等の改善
トラックドライバーによくあるのが、荷主の都合で数時間待機させられるという点です。
飛行機など天候により到着が遅れる場合は仕方ないのですが、なるべく直前まで情報を共有し合うことでなるべく待機時間を減らせる対策が考えられています。
「ホワイト物流」の実現は企業にメリットがあるか?
ホワイト物流の実現はドライバーをはじめとする労働者はもちろん企業にとってメリットがあるとされています。
物流企業のメリットに絞るとメリットは3点です。
- ブラックな労働環境を作ってしまう無駄な作業を取り除くことで効率化を実現
- 職場環境が改善されることで物流業界の人手不足が緩和されること
- ホワイト物流への賛同は企業の社会的責任(CSR)を果たすことになる
社会的な利点なども含めた詳しいことを知りたい方は「ホワイト物流」推進運動公式HPのよくある質問をお読みください。
「ホワイト物流」実現に参画している企業は?
国土交通省・経済産業省・農林水産省は、およそ6,300社の主要企業の代表者に対し、「ホワイト物流」推進運動への参加を要請する文書を送付し、
2019年9月末現在277社が「ホワイト物流」推進運動への賛同を表明しているとしています。
ただし、2019年10月現在、具体的な企業名はまだ公式に発表されていません。
日刊ケミカルニュースによると大手では三菱ケミカルが「自主行動宣言」の提出を済ませたと発表しているそうです。
また、ホワイト物流の実現へのコミットメントをすでにある程度しているものと思われる「全日本物流改善事例大会2019」の参加企業のリストも掲載します。この大会は今年5月に公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会が開催したもので、業務効率化や働き改革などの事例を発表したものです。
- アサヒロジ株式会社
- SBSロジコム株式会社
- 株式会社オカムラ物流
- コクヨサプライロジスティクス株式会社
- サッポログループ物流株式会社
- サンインテルネット株式会社
- サンコーインダストリー株式会社
- ジヤトコ株式会社
- 株式会社スバルロジスティクス
- 株式会社デンソーロジテム
- 東芝ロジスティクス株式会社
- TOTO株式会社
- 日通・パナソニック ロジスティクス株式会社
- 日本ロジテム株式会社
- 株式会社日立物流
- ブリヂストン物流株式会社
- 株式会社ホームロジスティクス (ニトリグループ)
- 本田技研工業株式会社
- ホンダロジコム株式会社
- 山村ロジスティクス株式会社
- 株式会社UACJ Marketing & Processing
- ロジスティックスオペレーションサービス株式会社
まとめ
ホワイト物流は企業、労働者双方にメリットのあるものです。確かに国土交通省のリードする「ホワイト物流」推進運動に強制力はありません。しかし、罰則規定を伴った将来の法改正への対応を企業に促すものです。セミナー、説明会への参加と合わせ、インターネットでの情報収拾なども積極的に行い、早めの対応を行えると良いですね。