危険物取扱者は、消防法で定められた危険物を正しく取り扱うための国家資格です。甲種・乙種・丙種に分類されており、取得した資格区分により取り扱える危険物や従事できる業務内容が異なります。
危険物取扱者は、消防試験研究センターが実施する試験に合格することで取得できますが、定期的な再手続きを行うことが義務付けられています。
再手続きが必要なことは理解しているものの「再手続きの時期や、具体的な手続き内容が分からない」という方もいるでしょう。
この記事では、資格の再手続きについて、分かりやすく解説していきます。内容を理解したうえで、期限切れとなる前にライセンスの再手続きを行うようにしましょう。
危険物取扱者は10年ごとに再手続きが必要
消防法では、ライセンスに使用する顔写真は10年以内に撮影したものでなければならないと記されています。
そのため、ライセンスは10年ごとの再手続きが必要です。この10年の期間は、試験に合格した日ではなく、ライセンスが交付された日を基準として計算します。1度再手続きした方の場合は、前回の再手続き日から10年以内となります。
10年を過ぎなければ、具体的な再手続きのタイミングに指定はありませんが、手続きには数週間から1ヶ月ほどかかるため、できるだけ早めに手続きしましょう。
また、これとは別に住所や名前に変更があった場合にも再手続きが必要です。
関連記事:危険物取扱者・丙種とは?難易度や乙種・甲種との違いについて
そもそも危険物取扱者の免状とは?
消防法で定められた危険物を取り扱う際には、危険物取扱者の資格が必要です。筆記試験に合格すると、ライセンスが交付されます。カード状のもので、運転免許証と同じサイズです。
ライセンスには、上側に資格取得者の氏名・生年月日・本籍、下側には取得した資格区分の詳細が記載されています。右上には保有者の顔写真、その下にライセンスの使用可能な期間が記載されています。
危険物取扱者のライセンスは、常時携帯する必要はありません。ただし、移動タンク貯蔵所による危険物の運搬時には、ライセンスの携帯が義務付けられています。
参考:危険物Q&A集|京都市
関連記事:危険物取扱者試験に挑む前に知っておくべき基礎知識と取得方法
危険物取扱者の再手続きはなぜ必要?
危険物取扱者ライセンスの再手続きに関する規則は、消防法の「危険物の規制に関する規則」において、以下の通り定められています。
令第三十三条第五号の総務省令で定める免状の記載事項は、過去十年以内に撮影した写真とする。
参考:e-GOV1法令検索
上記の規定により、ライセンスの写真は、10年以内に撮られたものでなければならないと定められています。そのため、定期的な手続きにより写真を新しくする必要があります。
なお、再手続きの際に危険物の取扱に関する講習を受けたり、再度試験に合格したりする必要はありません。
参考:危険物取扱者の資格|一般財団法人 全国危険物安全協会
参考:危険物取扱者について|一般財団法人 消防試験研究センター
危険物取扱者を更新するタイミング
危険物取扱者を更新するタイミングは、免状が交付された日から10年以内となります。具体的な時期に指定はありません。
また、10年の中で住所や名前に変更があった際には、できるだけ早いタイミングで再交付の手続きが必要です。
免状の更新については、各地域の消防試験研究センターで受け付けていますので、不明な点がある場合は、近くのセンターに問い合わせてみましょう。
危険物取扱者の更新手順
危険物取扱者の再手続き方法は、窓口での申請と郵便送付での申請の2種類があります。ここでは、各再手続き手順について解説します。
郵便手配の場合
郵便手配でライセンスの継続手続きを行う場合、以下の手順で進めます。
- 危険物取扱者ライセンスの書換・再交付申請書を入手後、記入する
- 写真を申請書に貼り付ける
- 手数料を支払い、収入証紙を用意する
- 返送用の封筒と一緒に、担当機関に郵送する
ライセンスの申請用紙は「試験実施機関の専用ページ」からダウンロードするか、近くの消防署で入手します。
申請書に貼り付ける写真は縦4.5cm×横3.5cmで、申請前6ヶ月以内に撮影したものを使用しましょう。
返送用の封筒は、定形封筒(長さ14〜23.5cm、幅9〜12cm)のものを用意し、郵便番号・住所・氏名を記入後、460円分の切手を貼ります。封筒の中には、再交付申請書と現在交付されているライセンスを入れます。
窓口の場合
各都道府県の担当機関の窓口にて継続手続きを行う場合も、用意するものに違いはありません。手順は以下の通りです。
- 当日までに危険物取扱者ライセンスの書換・再交付申請書を入手するか、当日窓口にて入手する
- 写真を申請書に貼り付ける
- 担当窓口に申請書と交付されているライセンスを提出する
- 手数料を支払う
手数料(1,600円)の支払い方は3種類に分かれており、申請先によって異なります。
- 新潟県、埼玉県、東京都、大阪府、京都府、岡山県、鳥取県、広島県以外の地域で申請する場合:収入証紙による納付(収入印紙ではありません)
- 新潟県、埼玉県、東京都、大阪府、京都府、鳥取県、広島県で申請する場合:納付所による納付
- 岡山県で申請する場合:手数料処理専用レジカウンターによる納付
申請先によって詳細が異なるため、事前に確認するようにしましょう。
危険物取扱者の更新はどこですればいい?
ライセンスの継続手続きを行う場所は、以下のいずれかとなります。
- 勤務地または居住地の試験実施機関のセンター支部
- ライセンスの交付を受けた都道府県の試験実施機関のセンター支部
ここでは、東京都の場合とそれ以外の地域に分けて、再手続きを行う場所を紹介します。
東京都の場合
ライセンスの継続手続きは、試験実施機関のセンター支部にて行います。東京都の場合は「中央試験センター」となります。
また、東京都内の消防出張所や消防署に置いてある書類に記入し、郵便送付にて申請することも可能です。※一部地域を除く
【中央試験センター】
TEL:03-3460-7798
FAX:03-3460-7799
住所:〒151‐0072|東京都渋谷区幡ヶ谷1-13-20
東京都以外の場合
東京都以外の場合は、現在の勤務地・現在の居住地・ライセンスの交付を受けた都道府県のいずれかにある試験実施機関の支部で再手続きを行います。
各地域の支部は「本部・支部等住所連絡先」で確認できます。
危険物取扱者の更新時に必要なものと費用
危険物取扱者の再手続きの際に準備するものと、費用は以下の通りです。
準備するもの | ・手続き用の専用申請書・写真1枚(縦4.5cm×横3.5cm)・再手続き前のライセンス・ライセンス送付用の封筒(郵便配送の場合) |
再手続きに必要な費用 | 1,600円 |
前述の通り、手数料の支払い方法は3種類に分かれており、申請先によって異なります。変更されている可能性もあるため、必ず事前に確認しましょう。
危険物取扱者の更新は「交付」「再交付」「書換え」
ライセンスの再手続きには「交付」「再交付」「書換え」の3つのパターンに分かれており、それぞれで申請先や申請時期などが異なります。詳細は以下の通りです。
【交付の場合】
申請時期 | 指定はなくいつでも申請可能 |
申請先 | 試験が行われた地域の都道府県知事 |
交付に必要な書類 | ・試験結果通知書・ライセンス交付申請書・ライセンスの送付用封筒(郵便送付の場合) |
【再交付の場合】
申請時期 | 指定はなくいつでも申請可能 |
申請先 | ・ライセンスの交付をうけた都道府県のセンター支部・書換えを行った都道府県のセンター支部 |
交付に必要な書類 | ・再交付申請書・破損、汚損したライセンス・本人確認書類(運転免許証など)・ライセンスの送付用封筒(郵便送付の場合) |
再交付は、ライセンスが破損したり紛失した際に行います。都道府県によっては、センター支部の窓口で受付しておらず、郵便送付のみ対応しているため、事前に確認しましょう。
【書換えの場合】
申請時期 | できるだけ早く |
申請先 | ・ライセンスの交付をうけた都道府県のセンター支部・勤務地または居住地のセンター支部 |
交付に必要な書類 | ・再交付申請書・交付されたライセンス・ライセンスの送付用封筒(郵便送付の場合) |
書換え申請は、氏名や本籍が変わった際に手続きが必要です。
参考:免状の交付・書換え等|一般財団法人 消防試験研究センター
危険物取扱者再手続き時の注意点
危険物取扱者ライセンスを再手続きする際には、以下のような内容に注意しましょう。
- 再交付申請書の記入は黒字のボールペンを使用し、書き間違えた場合は修正液ではなく、横2本線で消してから余白に書き直す。
- 再手続きの手数料は、写真書換えの場合は1,600円で、本籍や名前の変更などで書換えする場合は700円。再交付は1,900円。
- ライセンスの紛失や破損による再交付を申請する場合のみ、本人確認ができる身分証明書が必要(運転免許証、マイナンバーカード)
この他にも、手数料の支払い方法がセンター支部によって異なるため、事前に確認するようにしましょう。
新しいライセンスが届くまでには、数週間〜1ヶ月ほどかかるため、できるだけ早めに手続きするようにしましょう。
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危険物保安講習を受講しよう
危険物保安講習とは、危険物に関する最新の法令や安全対策法を習得し、安全管理の向上と事故防止を図るためのものです。
任意ではなく、消防法第13条の23の規定に基づいて、対象者全員の受講が義務付けられています。対象者と受講のタイミングは以下の通りです。
対象者の区分 | 保安講習受講のタイミング |
新たに従事する者 | 従事し始めた日から1年以内に受講 |
危険物を取り扱う業務に従事している者 | 受講後、次の4月1日から3年以内に再度受講 |
従事しなくなった者または従事していない者 | 法令上、特に受講する義務はなし。任意で受講可能。 |
講習の時間は約3時間で、危険物関係法令に関する事項と、危険物の火災予防に関する事項に分けて行われます。
講習は対面講習のほか、オンライン講習による受講も可能です。各都道府県の消防機関や指定の講習機関が実施していますので、日程などを確認した上で受講しましょう。
関連記事:危険物取扱者・甲種は難易度が高い?試験概要や勉強時間について
危険物取扱者再手続き時によくある質問
最後は危険物取扱者ライセンスの再手続きの際によくある、6つの質問に答えていきます。
- 危険物取扱者ライセンスは10年を過ぎたらどうなる?
- 危険物取扱者の再手続きのやり方は?
- 危険物取扱者のライセンスの再手続きを忘れたらどうなる?
- 危険物取扱者の写真を再手続きしないとどうなる?
- 危険物保安講習の期限が切れた場合の罰則は?
- 危険物取扱者は国家資格ですか?
状況次第では、ライセンスを没収される可能性もあるため、事前に確認しておくようにしましょう。
危険物取扱者免状は10年を過ぎたらどうなる?
危険物取扱者ライセンスの写真の切り替えを行った後も、10年ごとに写真の切り替えが必要です。ライセンスの再手続きは、危険物を扱う業務に従事していない人も対象となります。
写真の切り替えとは別に、住所や氏名が変更となった場合はすぐに変更手続きが必要です。
関連の仕事を退職し、ライセンスを必要としなくなった場合は、都道府県知事あてに自主返納できます。今後危険物を取り扱うことがなく、10年ごとの写真の再手続きが面倒だという場合は、返納を検討してみましょう。
ちなみに、自主返納した資格は再発行できません。資格が必要な場合は再度試験に合格しなければなりません。
危険物取扱者の再手続きのやり方は?
危険物取扱者ライセンスの再手続きは、各地域の試験実施機関の支部に専用の申請書を提出することで手続きできます。手続きは窓口で直接書類を渡すほかに、郵便送付での申請も可能です。
新規交付・再交付・写真などの書換えによって、申請のタイミングや手数料が異なるため、注意しましょう。また、センター支部によって手数料の支払い方法なども異なります。
再手続きする場合は、事前に申請先のセンター支部に確認するようにしましょう。
危険物取扱者の免状の再手続きを忘れたらどうなる?
危険物取扱者ライセンスの再手続きを忘れた場合、罰則などはなく、ライセンスが失効することも基本的にありません。ただし、不備のあるライセンスを携帯していることになります。
事故などが発生し、行政機関の立ち入り検査などでこの事実が発覚した場合、業務上の責任や個人の処分が重くなる可能性があります。
危険物取扱者の写真を再手続きしないとどうなる?
危険物取扱者の写真を再手続きしないままでは、所持するライセンスに不備があることになり、会社から正式なライセンスとみなされない可能性があります。
前述の通り、事故などによる立ち入り検査でこの事実が発覚した場合は、処分が重くなる可能性もあるため、早めに再手続きするようにしましょう。
会社から「自己管理ができていない」と判断され、評価が下がる可能性もあり得ます。
危険物保安講習の期限が切れた場合の罰則は?
危険物保安講習の受講期限を過ぎてしまった場合、最終的に免許返納しなければならなくなる可能性があります。
受講期限を過ぎてしまったとしても、すぐに罰則を受けるわけではありません。ただし、法令に基づく措置点数制度が適用されます。
消防法第13条の2第5項に基づいたもので、受講対象者が講習を受けなかった場合、措置点数として4点が加算されます。他の違反も含めて過去3年間で合計20点に達した場合、ライセンスの返納命令が都道府県知事より下されます。他の違反項目は以下の通りです。
- 危険物保安講習の未受講:4点
- 危険物の不適切な貯蔵:3点
- 危険物の不適切な取扱い:3点
- 危険物の移送に関する違反:2点
- 危険物施設の技術基準不適合:2点
- 消防法第17条の4第1項の命令違反:1点
受講漏れに気付いた場合は、事実を伝えた上ですぐに関連機関に受講の申請を行うようにしましょう。
参考:駿東伊豆消防組合危険物取扱者免状返納命令事務処理要領|駿東伊豆消防本部
危険物取扱者は国家資格ですか?
危険物取扱者は、消防法で定められた危険物を扱うための国家資格です。取り扱う危険物の種類や業務内容に応じて、3つの資格区分に分かれています。
甲種 | 全ての危険物を取り扱えて、6ヶ月以上の実務経験を満たせば、危険物保安監督者になれる。 |
乙種 | 6種類に分かれており、合格した区分の危険物を取り扱える。合格した区分の危険物であれば、無資格者の立ち合いもできる。 |
丙種 | 一定の第4類危険物のみ取り扱える。無資格者が危険物を扱う際の立ち合いができず、危険物保安監督者として選任できない。 |
資格取得に関しては、甲種のみ学歴などの受験資格が設けられており、乙種と丙種は誰でも受験可能です。
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危険物取扱者を取得した際に交付されるライセンスは、消防法により10年に1度のタイミングで再手続きが義務付けられています。資格取得者の写真を、新しいものに変える目的があり、資格取得者全員が対象です。
各都道府県の試験実施機関の支部にて手続きできますので、できるだけ早めに申請するようにしましょう。また、危険物を取り扱う業務に従事している場合は、再手続きとは別に「危険物保安講習」も定期的に受講しなければなりません。
危険物取扱者は、ガソリンスタンドや化学工場、各種製造工場といった施設に欠かせない存在であり、転職の際にも有利になる資格です。不備のあるライセンスにならないよう注意しましょう。
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