第一種冷凍機械責任者の資格は、冷凍設備の運転・管理に必要な専門知識と実務経験を求められる難関資格の一つです。第一種冷凍機械責任者は第二種と比較しても、管理できる冷凍設備の規模や範囲が広がり、責任の重さも増します。
しかし、第一種冷凍機械責任者試験はどうすれば取得できるのか、ご存じでない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、第一種冷凍機械責任者と第二種冷凍機械責任者の違い、第一種冷凍機械責任者の資格取得の難易度や勉強方法について詳しく解説します。
第一種冷凍機械責任者の資格の取得を検討している方や、冷凍機械責任者としてのキャリアアップを目指している方はぜひ参考にしてください。
第一種と第二種冷凍機械責任者の違い
第一種と第二種がある冷凍機械責任者の資格は、どちらも冷凍設備の運転・管理に必要な国家資格です。しかし、その業務範囲と責任の大きさは異なります。
責任者として管理できる施設の冷凍設備の性能
第一種冷凍機械責任者は、大型から小型まで幅広い冷凍設備を管理できる資格です。
第一種冷凍機械責任者の資格を取得することで、工場、商業施設、冷蔵倉庫など、さまざまな施設の冷凍設備の管理が可能になります。
特に、冷凍能力が高い設備の管理を担えるため、設備規模の大きい現場での業務範囲が広がるのが特徴です。
一方、第二種資格者は、1日の冷凍能力が300トン未満という制限があるため、スーパーなどにある小型冷凍庫などを主に管理する役割に制限されます。
第一種の資格を取得することで、就職先の選択肢の増加や昇給につながるでしょう。
責任者になる際の実務経験の要件
第一種冷凍機械責任者の資格を取得するためには、実務経験が重要です。
通常、第二種資格を取得した上で、冷凍設備の管理業務に従事していることが求められます。
実務経験としては、第一種冷凍機械責任者は1日の冷凍能力が100トン以上の製造施設を使用している高圧ガスの製造に1年以上携わっている必要があります。
一方、第二種冷凍機械責任者は、1日の冷凍能力が20トン以上の製造施設を使用している高圧ガスの製造に関する1年以上の実務経験が必要です。
資格取得の難易度
第一種冷凍機械責任者の試験の難易度は大学工学部卒業程度、第二種冷凍機械責任者の試験の難易度は工業高校卒業程度とされています。
どちらも、冷凍機械の運転理論や法令、構造に関する専門知識が問われ、幅広い分野の理解が必要です。
試験は科目ごとに分かれており、各科目で高い得点を求められます。
関連記事:第二種冷凍機械責任者は転職に有利?将来性やキャリアアップの方法を解説
参考:冷凍機械責任者|学校法人読売理工学院読売理工医療福祉専門学校
第一種冷凍機械責任者の受験資格
第一種冷凍機械責任者の受験資格は、以下の通りです。
第一種冷凍機械責任者の受験資格 |
冷凍・冷蔵・空気調和その他、低温・高温発生用機器に係る装置等の研究、開発、設計、製造、管理、調査、鑑定、教育などの関連業務に従事する経験、 または高圧ガス保安法に規定した冷凍設備を使用する高圧ガスの製造に係る経験が通算4年以上ある者。大学・短大・高専において工学・理学を修めて卒業し(又はこれと同等以上の学力を有し)、上記1.の実務経験が2年以上ある者。通算3年以上の実務経験を有する第二種冷凍空調技士。工業高校を卒業後、通算3年以上の実務経験を有する者。日本冷凍空調学会の通信教育を、別に定める優秀な成績で修了し、通算2年以上の実務経験がある者。 |
工業高校を卒業していれば高卒でも受験は可能ですが、実務経験の年数は大卒の方が短く有利となっています。また、学歴がなくても4年の実務経験を積んでいれば受験は可能です。
このように、第一種冷凍機械責任者の受験には一定の学歴と実務経験が必要です。
第一種冷凍機械責任者の難易度
続いては、第一種冷凍機械責任者の合格難易度を、受験方法別に解説します。
全科目受験者の合格率
令和2年度、第一種冷凍機械責任者試験における全科目受験者の合格率は20.0%となっています。
この合格率の低さは、試験範囲の広さや問題の難易度の高さだけでなく、厳しい合格基準によるものです。
特に冷凍サイクルの理論や計算問題が多く出題されるため、基礎を徹底的に理解していないと点数が取れません。
また、実務的な応用力も問われる試験内容になっているため、実務経験が浅いと問題を理解できないケースも増えています。
過去問での復習を入念に行って、試験に臨む必要があると言えるでしょう。
参考:令和2年度 高圧ガス製造保安責任者試験結果(大臣試験)出願者数・受験者数・合格者数・合格率一覧表|高圧ガス保安協会
科目免除者(法令のみ)の合格率
第一種冷凍機械責任者試験では、製造第六講習の講習修了証を有していると、「保安管理委技術科目」が免除される仕組みです。その際の受験科目は、「法令」と「学識科目」となります。
また、第一種冷凍機械講習の講習修了証を有している場合は、「保安管理技術科目」と「学識科目」が免除となり、受験科目は「法令」のみとなります。
そして、免除制度を活用した場合の合格率は令和2年度で87.5%となっており、難易度はそこまで高くなさそうです。
参考:令和2年度 高圧ガス製造保安責任者試験結果(大臣試験)出願者数・受験者数・合格者数・合格率一覧表|高圧ガス保安協会
講習検定の合格率
令和2年度、第一種冷凍機械責任者試験における講習検定の合格率は54.3%です。
本講習では3日間に渡って専門家から直接指導を受けられるため、受験者は効率よく必要な知識を習得できます。
講習検定の受講料は一般申込が29,600円、インターネット申込が29,000円と安くはないものの、検定に合格すれば第一種冷凍機械責任者試験の受験科目が大幅に免除されます。
参考:『冷凍機械責任者 試験問題と解答例』 |日本冷凍空調学会
第一種冷凍機械責任者取得に必要な勉強時間
第一種冷凍機械責任者の資格取得には、合格に向けた十分な準備と学習時間が必要です。
一般的に、第一種冷凍機械責任者試験の合格までに必要とされる勉強時間は約500時間と言われています。この時間は、第二種、第三種試験に合格したあとの勉強時間となるため、第三種から第一種まですべての資格を取得する場合は、さらに数百時間の勉強が必要となります。
なお、講習を受けてから第一種冷凍機械責任者試験の受験をする場合は、講習時間が21時間と定められており、その後の検定試験に合格すれば受験科目が免除されるため、勉強時間は相対的に少なくなる可能性があります。
第一種冷凍機械責任者の効果的な勉強方法
第一種冷凍機械責任者の試験に合格するためには、効率的な勉強方法が不可欠です。
ここでは、効果的な勉強方法について詳しく解説します。
テキストで基礎知識を定着させる
第一種冷凍機械責任者の効果的な勉強方法の1つ目は、テキストで基礎知識を定着させることです。
第一種冷凍機械責任者試験の勉強では、まずは公式テキストや参考書を使って基礎知識をしっかり定着させるところから始めます。
特に冷凍機械に関する理論や技術的な内容は複雑なため、時間をかけて公式テキストを読み込むことが必要となります。
冷凍機械責任者試験の公式テキストは第一種から第三種までの共通問題が掲載されているため、1冊持っておくと便利です。
過去問で問題傾向と習得度を確認する
第一種冷凍機械責任者の効果的な勉強方法の2つ目は、過去問で問題傾向と習得度を確認することです。
難易度が高い第一種冷凍機械責任者の試験は、基礎だけでなく応用問題も多数出題されます。
その際、過去問を解いて出題傾向を把握しておくことで、現在の自分の理解度を確認でき、苦手分野をあぶりだせます。
さらに、間違えた箇所を公式テキストで再確認することで、効率よく知識をインプットできます。
なお、第一種冷凍機械責任者試験の過去問は公式テキストに過去5年分掲載されているため、何回も繰り返し解いてみるのがおすすめです。
講習に参加し効率的に学習する
第一種冷凍機械責任者の効果的な勉強方法の3つ目は、講習に参加し効率的に学習することです。
講習を受けると試験科目の一部が免除されるため、合格率が高くなります。講習はインターネットからも申し込み可能です。
なお、第一種の講習は全国5か所で受講できますが、開催は年1回となっているため、受講を希望する場合はスケジュール調整が必要となります。
関連記事:冷凍機械責任者の資格は設備管理に必要ない?取得までの時間や勉強方法についても解説
第一種冷凍機械責任者取得で携われる業務例
第一種冷凍機械責任者を取得することで、冷凍設備の運転や保守に加え、設計や製造にも携わることが可能になります。
以下では、具体的な業務例について詳しく解説します。
小型~大型のあらゆる施設での冷凍設備の管理
第一種冷凍機械責任者取得で携われる業務例の1つ目は、小型~大型のあらゆる施設での冷凍設備の管理です。
主に食品工場や物流センターなどで使用されている冷凍倉庫の冷凍機の管理は、第一種冷凍機械責任者の重要な業務です。
冷凍機の運転状況に問題がないかを監視し、異常があれば調整を行います。
また、保守活動や毎日の点検も業務に含まれており、品質管理や効率的に業務が行える環境整備にも責任を負います。
冷凍機械の製造に関わる材料・耐圧・気密試験の検査
第一種冷凍機械責任者取得で携われる業務例の2つ目は、冷凍機械の製造に関わる材料・耐圧・気密試験の検査です。
冷凍設備や機械の運用管理だけでなく、冷凍機械を製造する上でも第一種冷凍機械責任者は重要な役割を担っています。
あらゆる場所で利用される冷凍機械の部品の品質に問題がないか、機械を作動したときに圧力がかかっても耐久性に問題がないかを確かめることも重要な業務です。
また、冷凍機や冷凍設備の配管や機器の気密性を確かめるためのテストも、安全性だけでなく品質向上のためには欠かせません。
実際に使用して運行管理を行うイメージが強い冷凍機械責任者ですが、機械を製造するうえでも冷凍機械責任者はなくてはならない存在なのです。
冷凍機械メーカーでの製造や開発
第一種冷凍機械責任者取得で携われる業務例の3つ目は、冷凍機械メーカーでの製造や開発です。
材質や耐久試験だけでなく、実際に冷凍機械の製造や開発を行う上でも第一種冷凍機械責任者の資格が活かされます。
冷凍機械のプロであることで、製造だけでなくより高品質な冷凍機械の設計や開発に必要不可欠な存在としてメーカーでは重宝されます。
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第一種冷凍機械責任者としてのキャリアアップ方法
続いては、第一種冷凍機械責任者としてのキャリアアップ方法を3つ紹介します。
新たな業務での実務経験を積み実績を残す
第一種冷凍機械責任者としてのキャリアアップ方法の1つ目は、新たな業務での実務経験を積み実績を残すことです。
第一種冷凍機械責任者は冷凍機械の管理だけでなく、冷凍機械の材料の検査や製造、開発など多方面での知識と技術が求められます。
冷凍機械に関しても、運行管理と製造・開発の業務内容は大きく異なります。
同じ第一種冷凍機械責任者でも運行管理しか経験がない人と、運行管理だけでなく開発も経験している人では活躍できる場所に差が出るのは明確です。
キャリアアップのために、今行っている業務とは異なる業務に挑戦してみましょう。
関連資格を取得しさらに業務範囲を広げる
第一種冷凍機械責任者としてのキャリアアップ方法の2つ目は、関連資格を取得しさらに業務範囲を広げることです。
第一種冷凍機械責任者は重宝される資格ですが、関連性のある資格を取得することで活躍の場をさらに広げられます。
例えば、冷凍機械の運行管理において高圧ガス製造保安責任者やエネルギー管理士などの資格を取得することで冷凍機械以外にも携わることが可能です。
複数の資格を取得することで、専門性の幅が広がり、冷凍機械メーカー以外の就職にも有利に働きます。
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マネジメントスキルを向上させ管理職に昇進する
第一種冷凍機械責任者としてのキャリアアップ方法の3つ目は、マネジメントスキルを向上させ管理職に昇進することです。
第一種冷凍機械責任者に限らず、昇給・昇進を目指す方法として管理職を目指すことが最大の近道になります。
管理職では、普段の業務だけでなく部下の指導やプロジェクトの運営など、対人スキルやマネジメントスキルが重要です。
管理職の第一歩として、周囲との関わり方やコミュニケーションの取り方を意識しましょう。
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第一種冷凍機械責任者に関するよくある質問
最後に、第一種冷凍機械責任者に関するよくある質問に回答します。
冷凍機械責任者にはどのような受験方法がありますか?
冷凍機械責任者試験の受験方法には、全科目受験と講習受験があります。
全科目試験は、その名の通り国家試験の受験種目を全て受験する方法です。一発試験で合格率はかなり低いものの、講習受験よりも費用が抑えられます。
一方の講習受験は、事前に講習を申し込んで受講した後に国家試験を受験する方法です。講習費用や講習受講日のスケジュールなどを調整する必要がありますが、講習検定に合格することで、冷凍機械責任者試験の一部科目が免除されます。
第一種冷凍機械責任者の講習は何時間実施されますか?
第一種冷凍機械責任者の講習は計21時間実施されます。法令・保安管理技術・学識をそれぞれ7時間ずつ実施されるため、1日1科目計3日間かけて行われます。
講義終了後には検定試験がありますが、この試験に合格しないと国家試験で科目免除がされないため、講習時間内で理解を深める必要があります。
第一種冷凍機械責任者の試験日はいつですか?
第一種冷凍機械責任者の試験日は年1回、通常11月に実施されます。受付期間は8月中旬から9月上旬ごろと短く、試験は年1回しかないため注意が必要です。
なお、講習検定は毎年5月下旬に行われており、申込期間は2月中旬から3月上旬までの期間です。
試験の受験を考えている方は、忘れないように必ず試験日程をチェックしておきましょう。
第一種冷凍機械責任者を取得してキャリアの幅を広げよう
今回は、第一種冷凍機械責任者試験について解説しました。
第一種冷凍機械責任者は幅広い業種で活躍できる資格であり、難易度の高さから非常に重宝されます。
一発勝負で挑むにはハードルが高いかもしれませんが、講習を受けてからの受験で合格率を上げることは可能です。
職場でのキャリアアップや転職にも有利に働くため、第一種冷凍機械責任者を目指している人は今から準備を始めましょう。
なお、「第一種冷凍機械責任者の資格を活かせる仕事をしたい」「自分に合う職場を見つけられるか不安」とお悩みの方は、建設業界に特化した転職エージェント建職キャリアにご相談ください。
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