技術職を目指す中で、主任技術者へのキャリアステップを検討している方もいるでしょう。
主任技術者は、建設工事で施工の技術的な管理や監督を担当する人です。建設業法に基づき、工事現場では配置が義務付けられています。
主任技術者として働くには、基本的に10年以上の実務経験が必要です。ただし、指定学科を修了した場合、学歴に応じて3年〜5年の実務経験でも条件を満たせます。
この記事では、主任技術者になるためには実務経験が必須条件について説明します。また、登用されるために求められる実務経験の年数や免状、必要要件と証明書の書き方についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
主任技術者になるためには実務経験が必須条件
主任技術者に登用されるには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 許可を受けたい業種で実務経験を積む
- 複数業種に従事して実務経験を積む
- 国家資格を保有する
また、主任技術者に必要な国家資格を保有するために、実務経験が求められるケースが一般的です。したがって、登用されるには、実務経験が必須条件と言えるでしょう。
関連記事:電気主任技術者の認定に実務経験は必須?要件や証明書の作り方も
主任技術者に求められる具体的な要件
主任技術者として働くには、実務経験が不可欠です。加えて、実務経験を積む中で、さまざまなスキルや知識を身につけなければなりません。
登用されるために求められる具体的な要件は次のとおりです。
- 建築現場の管理能力が必要
- 安全対策と品質管理の実績
- 進捗管理の計画立案力が必須
- 緊急対応の経験が求められる
- 法令遵守の知識が必須
それぞれの要件について解説します。
建築現場の管理能力が必要
主任技術者としての最も重要なスキルのひとつは、建築現場全体を効果的に管理できる能力です。現場で働く各チームや職人たちの間に立って、進行中の作業を適切に調整し、予定通りに工事が進むように取り組まなければなりません。
また、建築資材の管理や機材の手配など、細かな調整も不可欠です。各工程がスムーズに連携するように配慮し、全体の効率性を最大限に引き出す管理能力が求められます。
さらに、現場での問題解決力も管理能力の一部です。現場で生じる予期せぬトラブルや課題に迅速に対応し、全体の進行に悪影響が出ないよう努めることが重要です。
安全対策と品質管理の実績
安全対策と品質管理も主任技術者の重要な役割です。特に、建築現場では安全が最優先されるため、職人たちや関係者が安全に作業できる環境を確保しなければなりません。
安全管理は規則に沿った指導と教育を現場で実施するだけでなく、定期的な点検やリスク評価を行い、改善が必要な箇所に適切な対策を施す能力が求められます。
また、品質管理の実績も重視されます。設計図や仕様書に基づき、要求される品質を確実に達成するための管理と検査結果に基づいた改善が必要です。
進捗管理の計画立案力が必須
進捗管理の計画立案力も主任技術者がプロジェクトを円滑に進めるために欠かせないスキルです。登用されるには工事の各工程を見通し、段階ごとに必要な作業を計画する能力が求められます。
資材や人員の手配、天候などの外部要因を考慮しながら、工程が順調に進むよう綿密な計画を立てなければなりません。
また、作業が予定通りに進んでいるかを随時確認し、遅延が生じた場合はすぐに対策を講じる柔軟な対応力も求められます。進捗の確認と調整を繰り返しながら、全体のスケジュールを管理する力が重要です。
緊急対応の経験が求められる
建築現場では、予期しない出来事が頻繁に発生します。そのため、登用されるには緊急時に迅速に対応するための実績が必要です。
たとえば、急な天候の変化、設備の故障、人員不足などが発生した場合に、即座に代替案を考え、問題を最小限に抑えなければなりません。
また、災害時などの緊急事態に備えた計画や、実際に緊急対応を行った実績があると、現場全体の安全を維持するための大きな力となるでしょう。
法令遵守の知識が必須
主任技術者には建築関連の法令や規則を正確に理解し、遵守する責任もあります。安全基準や品質基準を満たすだけでなく、地域の条例や環境保護に関する規制にも配慮しなければなりません。
法令の知識が不足していると、現場でのトラブルや、プロジェクト全体の遅延、最悪の場合には法的問題に発展する可能性が出てくるでしょう。
したがって、継続的に最新の法令に関する知識を習得し、現場での作業が法に適合するように指導する役割を果たす必要があります。
主任技術者に必要な実務経験年数
主任技術者になるために必要な実務経験年数は、学歴によって異なります。担当者の役割は、建設工事の現場で品質・安全管理を行うことです。
そのため、実務経験年数の要件が設けられています。具体的な学歴に応じた必要な実務経験年数は次のとおりです。
- 高等専門学校の指定学科を卒業された方:3年以上
- 大学の指定学科を卒業された方:3年以上
- 高校の指定学科を卒業された方:5年以上
- 指定学科以外を卒業された方:10年以上
また、学歴に応じた実務経験を積む以外にも、複数業種で勤務して登用される方法もあります。複数業種で勤務して必要な実務経験年数を満たす方法は、多岐にわたります。
たとえば、大工工事業では、次の実務経験が必要です。
- 建設工事業および大工工事業で12年以上の実務経験がある場合
- 大工工事業で8年以上の実務経験を積む必要がある
したがって、主任技術者として働くには、最低3年の実務経験を積まなければなりません。
出典:建設産業・不動産業:指定学科一覧|国土交通省(建設工事業および大工工事業の複数業種を経験した際に必要な実務経験|国土交通省)
主任技術者に必要な資格は?
主任技術者に登用されるために必要な免状は次のとおりです。
- 施工管理技士(1級・2級)
- 建築士(1級・2級)
- 電気工事士(第1種・第2種)
- 電気主任技術者
- 技能検定
それぞれの免状について解説します。
施工管理技士(1級・2級)
施工管理技士は建設工事の計画、管理、指導を行うための免状です。免状の種類には1級と2級があります。
1級の保有者は主任技術者になれるだけでなく、特定建設業の営業所専任技術者または監理技術者を担当できます。
一方で、2級を保有した上で担当できる範囲は、一般建設業の営業所専任技術者または主任技術者です。
施工管理技士は建設現場の品質、工程、安全、原価の4つの管理が求められるため、登用されるには欠かせないスキルを培える免状です。
建築士(1級・2級)
建築士は建物の設計をするために必要な免状です。免状の種類は1級と2級があります。
1級の保有者は主任技術者になれるだけでなく、特定建設業の営業所専任技術者または監理技術者を担当できます。
一方で、2級を保有した上で担当できる範囲は、一般建設業の営業所専任技術者または主任技術者です。
主任技術者を目指したい場合は、建築士を保有するのも手段のひとつとなり得るでしょう。
電気工事士(第1種・第2種)
電気工事士は、電気設備の工事を行うために必要な免状です。免状の種類は第1種と第2種があります。
第1種電気工事士は高圧電線などの特別高電圧設備の工事に対応できるため、大規模施設や工場などで活躍しています。一方で、第2種電気工事士は一般家庭や事業用の低圧電気設備工事を担当する免状です。
第1種または第2種の電気工事士の免状があれば、主任技術者として活躍できるでしょう。
関連記事:電気工事士資格一種・二種の技能試験|実技試験の内容と難易度
電気主任技術者
電気主任技術者は、高圧電力を利用する施設の保安監督を担当するための免状です。電気主任技術者の免状があれば、発電所や工場、大型ビルといった施設の電気設備の運用保安責任者として勤務できます。
主任技術者が求められる分野では、電気設備の設計、保守、点検における高度な知識が必要と言われています。電気主任技術者は主任技術者の役割を十分に果たせるでしょう。
関連記事:電気主任技術者の資格は3種類|仕事内容や試験の内容
技能検定
技能検定は、特定の工事や作業に関する技術的な能力を証明するための免状です。具体的には、建築大工や左官、とびなどの免状が含まれています。
技能検定は多くの分野で行われており、建設や電気、機械といった各業種に応じた技能レベルを証明できます。
技能検定の保有は、主任技術者が現場で求められる知識と技能を備えていることを示す重要な免状と言えるでしょう。
参考:建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧|国土交通省
主任技術者が必要な実務経験証明書とは?
実務経験証明書は、技術者として担当してきた業務内容や実績を詳細に記載した書類です。主任技術者に登用される際に必要な書類です。
ここでは、主任技術者になるために求められる実務経験証明書について解説します。
証明には10年間の実務経験が求められる
基本的に実務経験を証明するには、10年間にわたるキャリアを築かなければなりません。ただし、指定学科を修了した場合、必要な実務経験を3年〜5年に短縮できます。
具体的には、高等専門学校・大学を卒業された方は3年、高校を卒業された方は5年で実務経験証明書を提出できます。
しかし、実務経験の計算は常勤で働いている場合のみに認められます。また、複数の業種に同じタイミングで勤務していた場合、実務経験に含まれるのは1業種のみです。
実務経験証明書の書き方
実務経験証明書を作成するにあたって、記載しなければならない点は次のとおりです。
- 実務経験を証明する工事の種類
- 証明した日付
- 証明者
- 被証明者との関係
- 技術者の氏名・生年月日
- 使用者の商号又は名称
- 使用された期間
- 職名
- 実務経験の内容
- 実務経験年数
また、実務経験証明書のフォーマットは、国土交通省や各都道府県のWebサイトからダウンロードできます。
関連記事:電気主任技術者の実務経験証明書の書き方|記入例と注意点
主任技術者の実務経験に関するよくある質問
主任技術者に登用されるための実務経験に関するよくある質問は、次のとおりです。
- 主任技術者の実務経験年数の数え方は?
- 電気主任技術者に求められる実務経験年数は?
- 主任技術者になるには何年勤務すればよいですか?
それぞれの質問について解説します。
主任技術者の実務経験年数の数え方は?
登用に向けた実務経験年数の数え方は、通常、技術者としての職務に直接関わる業務に従事した期間を基に計算します。年数は単純に就業した期間で換算されます。
ただし、パートタイムや副業としての勤務は、実務経験年数に含まれないケースが一般的です。
電気主任技術者に求められる実務経験年数は?
電気主任技術者は、一般建設業の営業所専任技術者または主任技術者を担当できる免状のひとつです。
電気主任技術者を保有する方法は試験に合格するか、実務経験を積むかの2択です。試験を経て電気主任技術者を目指す場合、免状の保有は不要です。
一方で、実務経験を積んで電気主任技術者を目指す場合は、学歴・免状の種類に応じて1年〜5年の実務経験が求められています。
主任技術者になるには何年勤務すればよいですか?
登用されるには、基本的に10年以上の実務経験が求められています。ただし、指定学科を修了した場合、学歴に応じて3〜5年の実務経験で主任技術者を担当可能です。
ただし、同時に複数の業種で仕事をしている場合は、ひとつの業種に限定して実務経験の計算を実施します。
主任技術者に必要な実務経験と資格を確認してキャリアを築こう
この記事では、主任技術者になるために求められる実務経験について解説してきました。
具体的に登用されるには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 許可を受けたい業種で実務経験を積む
- 複数業種に従事して実務経験を積む
- 国家資格を保有する
また、主任技術者に必要な国家資格を取得するために、実務経験が求められるケースが一般的です。したがって、登用されるには、実務経験が必須条件と言えるでしょう。
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