建設・工事

建築士の試験合格に必要な勉強時間は?合格率や勉強のコツも

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屋根の上で作業をする様子

建築士は、建設業界の中でも特に人気の職種であり、毎年多くの人が受験しています。

資格取得できれば、設計業務はもちろん、工事監理やコンサルティング業務にも携われるため、さまざまな業種で活躍できます。

これから資格取得に挑戦する上で気になるのが「建築士試験に合格するために必要な勉強時間」です。

今回は、建築士試験に合格するために必要な勉強時間を中心に、取得までのステップを分かりやすく解説していきます。

建築士の合格に必要な勉強時間は700時間

パソコンで情報をまとめている様子

建築士には、携われる建築物の規模や種類によって「一級建築士・二級建築士・木造建築士」の3つに分かれています。

木造建築士は木造の建築物を対象とした資格であり、二級建築士は木造に関係なく、住宅程度の建築物まで携われます。

一方で、一級建築士になると、建築物の規模に制限がなくなるため、大規模な商業施設や競技場、病院といったあらゆる建築物の設計が可能です。

さまざまな建物の設計に携われる、一級建築士は最も難易度が高いとされています。

ここでは、各建築士資格の取得に必要な勉強時間について、詳しく解説していきます。

二級建築士の場合

二級建築士試験に合格するための勉強時間は、初学者で約700時間と言われています。

経験者の場合は、知識量にもよりますが、500~700時間は必要と考えておくようにしましょう。

【学習日数のシミュレーション・700時間の場合】

・1日2時間学習:約350日(12ヶ月ほど)
・1日3時間学習:約233日(8ヶ月ほど)
・1日4時間学習:約175日(6ヶ月ほど)

ちなみに、建築士試験には受験資格があり、知識が身に付いたからといって、誰でも簡単に受験できるわけではありません。

受験資格には、学歴や指定科目の修了、実務経験があります。

建築系の学校で指定科目を学び、受験資格をクリアした上で二級建築士を取得するには、最短でも2年以上かかります。

また、建築系の学校を卒業していない場合、二級建築士試験を受けるには7年の実務経験が必要です。

集中して短期間で知識を身に付けたとしても、数ヵ月程度で資格を取得することはできません。

一級建築士の場合

建築士資格の中で最も難易度の高い、一級建築士の勉強時間は、初学者で1,000〜1,500時間ほど必要です。

実務経験者に関しても700〜1,000時間の勉強をしなければ、合格は難しいと言えます。

【学習日数のシミュレーション・1,500時間の場合】

・1日2時間学習:約750日(25ヶ月ほど)
・1日3時間学習:約500日(17ヶ月ほど)
・1日4時間学習:約375日(13ヶ月ほど)

ちなみに一級建築士も、知識の有無に関係なく誰でも受験できるわけではありません。

学歴や実務経験に指定があり、内容は二級建築士よりも厳しいものとなります。

二級建築士になった場合、一級建築士試験を受験できるようになります。

ただし、免許登録するには、二級建築士として4年の実務経験が必要です。

他にも、建築設備士の資格を取得していれば、1級建築士試験を受験できます。

免許登録するには、同じく建築設備士として4年の実務経験が必要です。

参考:一級建築士試験|公益財団法人 建築技術教育普及センター

関連記事:建築士試験に合格するための勉強時間は?一級建築士・二級建築士に合格するための勉強時間の目安を説明

建築士の合格に必要な勉強時間のスケジュール例

作業スタッフが2人立っている様子

建築士試験は学科と設計製図の2つに分かれています。

学科試験では「環境・整備、法規・構造・施工・計画」の5科目ごとに問題が出題されます。

これらの試験で、バランスよく点数を取るには、勉強のスケジュールを立てておくことも大切です。

また、幅広く知識を身に付けていくのはもちろん、過去に実施された試験の傾向を基にした対策も必要です。

一級建築士試験の合格に向けて1,500時間勉強する場合、以下のようなスケジュールを参考にしてみてください。

勉強時間学習内容
約900時間
(1日4時間学習で約8ヶ月)
一級建築士用のテキストや問題集を中心に知識をインプットしていく
約500時間
(1日4時間学習で約4ヶ月)
問題集や過去の試験問題を繰り返し解きながらアウトプット学習を進めていく
約100時間
(1日4時間で約1ヶ月)
過去の試験問題を試験時間と同じペースで解いて、試験に慣れていく

知識をインプットしていく段階においては「法規→構造力学→環境分野→設備分野→計画→施工→構造」の順番がおすすめです。

法規や構造力学は理解型の科目であるため、先に覚えた方が後の学習効率がアップします。

建築士の試験の難易度

上司と工事の打ち合わせをしている様子

建築士試験は、先に学科試験が実施され合格した人だけが製図試験に挑戦できます。

どちらも合格すれば資格取得となります。

この試験の流れに関しては、令和2年3月1日より内容が改正されました。

以前は、学科試験に合格した後に製図試験に落ちた場合、翌年と翌々年の学科試験の免除が可能でした。

令和2年3月からは学科試験に合格した翌年の2~6年目までの4年間のうち、好きなタイミングで2回学科試験を免除できます。

この改正により、これまで以上に受験機会が柔軟化されました。

ここでは、この改正も踏まえて建築士試験の合格率がどう推移しているのか、難易度について解説していきます。

参考:新しい建築士制度の概要について|国土交通省

二級建築士の場合

二級建築士試験の直近の試験結果は、以下の通りです。

 令和5年令和4年令和3年令和2年令和元年
学科試験35%42.8%41.9%41.4%42%
製図試験49.9%52.5%48.6%53.1%46.3%
全体の合格率22.3%25%23.6%26.4%22.2%

学科試験の合格率は4割ほどであり、製図試験は約5割程となります。

全体の合格率は約2割で推移しており、決して簡単な試験ではないと言えるでしょう。

一級建築士の場合

次に一級建築士の試験結果について見ていきましょう。

 令和5年令和4年令和3年令和2年令和元年
学科試験16.2%21%15.2%20.7%22.8%
製図試験33.2%33%35.9%34.4%35.2%
全体の合格率9.9%9.9%9.9%10.6%12%

二級建築士と同様に学科試験よりも製図試験の方が、合格率は高い傾向にあります。

全体の合格率は毎年約1割で推移しており、かなり難易度の高い試験と言えるでしょう。

指定科目を修了した人でも、なかなか合格できない理由としては「科目ごとに合格しなければならない」ことが理由としてあります。

学科試験で出題される5つの科目に関しては、全てに合格基準が設けられています。

仮に他の科目が満点であったとしても、1科目合格基準に達していなかった時点で合格にはなりません。

そのため、学科試験に合格するためには、得意な科目だけでなく苦手な科目もバランスよく学習する必要があります。

参考:一級建築士試験 試験結果|公益財団法人 建築技術教育普及センター

関連記事:建築士の難易度は?一級建築士と二級建築士の合格率と難易度をそれぞれ解説

建築士の試験の内容

ビルで工事の話し合いをしている様子

建築士の試験内容は、種類に関係なく学科試験と製図試験の2つに分かれています。

学科試験の合格者でなければ、製図試験には挑戦できません。
ここでは、建築士試験の内容について、詳しく解説していきます。

二級建築士の場合

二級建築士の学科試験では「建築法規・建築計画・建築構造・建築施工」の4科目が出題されます。

各科目25満点であり、合計100点満点です。

学科試験に合格するには、各科目の合格基準と合計点数の合格基準ともに基準を満たさなければなりません。

出題方式は、5肢択一のマークシート方式で「建築計画と法規で3時間、建築施工と構造で3時間」の計6時間となります。

設計製図試験に関しては、事前に課題名や要求図書、注意事項などの発表があります。

試験当日は、課題に基づいた問題が出題されるため、要求図書を時間内で完成させる必要があります。

一級建築士の場合

一級建築士も学科試験と設計製図試験が行われます。

学科試験に関しては二級建築士の試験に一科目追加され5科目の出題となります。

【一級建築士試験・学科試験概要】

試験時間:6時間30分

・環境、設備:20問
・計画:20問
・施工:25問
・構造:30問
・法規:30問  計125問

合格基準に関しては、各科目は5割以上の得点となり、総得点は90点前後と、試験ごとに微調整があります。

設計製図試験に関しては、毎年事前に課題が公表されます。

ちなみに令和5年度の課題は「図書館」であり、令和4年度は「事務所ビル」でした。

建築士に合格するための勉強法

勉強会をしている様子

建築士試験は、非常に出題範囲が広く各科目で覚える内容が全く異なります。
そのため、いかに効率よく勉強できるかによって合格の可能性が大きく変わります。

試験勉強を進めていく上で、4つのポイントを意識するようにしましょう。

・インプットと練習問題のバランスを取る
・反復して記憶に定着させる
・法令集の使い方を覚える
・製図試験は時間との勝負

各ポイントの具体的な勉強方法について、解説していきます。

インプットと練習問題のバランスを取る

建築士試験の出題範囲は非常に幅広く、全てを覚えるにはかなりの時間が掛かります。

そのため、ひたすら記憶する一方で練習問題を解きながら、過去の傾向や考え方を体で覚えていくことも大切です。

どちらの観点からも知識をインプットしていくイメージで、バランスよく学習を進めていくようにしましょう。

反復して記憶に定着させる

建築士試験では、さまざまな法律や用語を覚えなければなりません。

偏った覚え方をすると、時間の経過とともに忘れてしまいやすいと言えます。

すぐに忘れてしまったとしても、広範囲の知識を繰り返し学ぶことを意識してみましょう。

法令集の使い方を覚える

法規の科目では、試験中に法令集から問題内容に該当する箇所を探した上で解答することができます。

「答えを持ち込めるから簡単なのでは」と思う人もいるかもしれませんが、建築基準法は複雑な部分があり、簡単に答えを見つけられません。

法令集の全体的な構成を覚えた上で、素早く答えを導き出せるための練習もしておくようにしましょう。

製図試験は時間との勝負

製図試験では、答えが分かっていたとしても、図面に表現できなければ意味がありません。

要望に沿った解答ができるようになってきた後は、時間内に製図が終るための練習も行うようにしましょう。

はじめのうちは標準の解答例を基に、何度も繰り返し練習することが大切です。

関連記事:建築士に独学で合格するのは無謀?独学で合格するための勉強方法を解説

建築士に合格するためのコツ

腕を組む技術スタッフの様子

建築士に合格するには、学習法以外にも意識すべきコツが4つあります。

・計画的なスケジューリング
・同じ問題集を繰り返し使う
・苦手科目を放置しない
・試験と同じ環境で演習をする

コツごとの詳細について、解説していきます。

計画的なスケジューリング

建築士試験の学習でよくある失敗に「学習計画の乱れ」があります。

苦手な科目にこだわりすぎてしまい、得点を取れる科目と取れない科目が明確になってしまうようなケースです。

学科試験は、科目ごとに合格基準が設けられているため、まんべんなく知識を身に付けていなければ合格できません。

挑戦する試験日に合わせて、各科目の学習時間を最初に決めておくようにしましょう。

途中、十分に覚えられなかったとしても、まずは計画通りに進めるようにします。

同じ問題集を繰り返し使う

建築士の試験は、問題の狙いまで理解することでより深く知識をインプットできます。

そのため問題集を解く際には、同じ問題集を繰り返し使うようにしましょう。

問題の意図や、解答に関する正しい考えを持てるようになってから、次の問題集へと移っていきましょう。

苦手科目を放置しない

建築士の学科試験は、科目ごとに合格基準を上回る必要があります。

そのため、得意な科目で高得点を取れたとしても、他の科目の点数が悪ければ意味がありません。

好き嫌いで勉強時間が偏らないようにしましょう。

試験と同じ環境で演習をする

建築士の試験は約6時間にも及び、試験中は集中して問題を解かなければなりません。

そのため、知識とは別に体力やペース配分にも注意が必要です。

試験前には、本番と同じスケジュールで練習するようにして、最後まで集中力が途切れないようになっておきましょう。

建築士の合格に必要な勉強時間に関してよくある質問

作業員が仁王立ちする様子

全くの未経験で建築士を目指す場合、長い学習時間とは別に、受験条件を満たす必要があります。

二級建築士と一級建築士で、受験条件は異なります。

ここでは、一級建築士になるまでの所要時間に関する質問に答えていきますので、参考にしてみてください。

一級建築士になるには何年かかりますか?

建築士試験は、試験合格後に免許登録してはじめて建築士として仕事ができるようになります。

1級建築士になる方法は複数ありますが、試験に合格した上で免許登録するのにかかる年数は最短で6年となります。

6年の内訳は以下のような内容です。

・専門学校で2年間修学した後に、二級建築士試験に合格。

・一級建築士試験に挑戦し、合格後に4年間の実務経験を積み免許登録を行う

ちなみに、大学で指定科目を60単位取得した場合は、一級建築士試験に合格後、実務経験2年以上で免許登録ができます。

あくまでも最短の場合であり、二級・一級の建築士試験に一回で合格するのはかなり難しいと言えます。

建築士の合格に必要な勉強時間についてのまとめ

現場打合せの様子

建築士試験に合格するために必要な勉強時間は、二級で約700時間、一級で1,500時間程です。

覚える内容が非常に多いため、受験年度を決めた上で学習スケジュールを立ててから勉強を開始しましょう。

また、勉強時間とは別に試験には受験条件が定められています。

学歴や実務経験を満たしておく必要があるため、事前に調べた上で自分にあったプランで資格取得にチャレンジしてみてください。

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