製造業などから転職を考えている人の中には「ボイラー技士に興味があるけど、資格の難易度は高いのか」と気になっている人もいるのではないでしょうか。
二級ボイラー技士には、特段の受験資格は設けられていないため、未経験でも挑戦しやすいと言えます。また、令和5年度に実施された二級ボイラー技士試験の合格率は54.7%で推移しており、決して難しい合格基準ではないと言えるでしょう。
具体的に、合格に必要な勉強時間は100時間から200時間ほどと言われており、きちんと対策すれば十分資格の取得が可能です。
この記事では、二級ボイラー技士の試験概要や申込方法について説明します。また、二級ボイラー技士に合格するための勉強方法や必要な時間、年収についても詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
実務経験なしでOK?二級ボイラー技士の受験資格
二級ボイラー技士は未経験からでも挑戦しやすい資格と言われています。一方で、ボイラーに関連する専門的な知識を習得しなければならないため、試験対策には一定の学習が必要です。
資格取得後は、実際の現場での経験を積みながら、長期的なキャリア形成を期待できます。
- 未経験者の受験要件
- 受験に必要な事前講習
上記の2つについて解説します。
未経験者の受験要件
二級ボイラー技士の試験を受験するにあたって、特別な学歴や実務経験は要求されていません。そのため、誰でも受験できます。ただし、試験の申込時には、本人確認書類の提出が必要となるので注意しましょう。
一方、他の技術系資格の場合では学歴や実務経験が必要となるケースがあります。
そのため、二級ボイラー技士は未経験からでも挑戦しやすい資格と言えるでしょう。
ただし、ボイラーに関連する基礎的な知識が試験の範囲に含まれるため、試験対策には一定の学習が必要です。資格取得後は、実際の現場での経験を積みながら、長期的なキャリア形成を期待できます。
二級ボイラー技士は実務経験なしで受験できるため、資格を取るハードルが比較的低く、キャリアの第一歩としてふさわしい資格と言えるでしょう。
受験に必要な事前講習
筆記試験に合格しただけでは、二級ボイラー技士の資格を取得できません。二級ボイラー技士はボイラーの安全な操作を担う資格です。そのため、実地研修を受講した上で免許を受けます。
具体的には、筆記試験に合格後、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 大学・高専・高校等でボイラーに関する学科を修め3ヶ月以上の実地研修を経た人
- 6ヶ月以上ボイラーの取扱いの実地研修を経た者
- 都道府県労働局長または登録教習機関が行ったボイラー取扱技能講習を修了し、4ヶ月間以上、小規模ボイラーを取扱った経験がある人
- 登録ボイラー実技講習機関が行うボイラー実技講習(20時間)を修了した人
- 熱管理士免状を有している、かつ1年以上の実地研修を経た人
- 海技士(機関3級以上)免許を受けた人
- 海技士(機関4または5級)の免許を有している、かつ伝熱面積の合計が25㎡以上のボイラーの取扱経験者
- ボイラー・タービン主任技術者(1種・2種)免状を有している、かつ伝熱面積の合計が25㎡以上のボイラーの取扱い経験者
- 保安技術職員国家試験規則による汽かん係員試験に合格し、伝熱面積の合計が25㎡以上のボイラーを取り扱った経験がある人
- 鉱山で伝熱面積の合計が25㎡以上のボイラーを取り扱った経験がある人 ※但しゲージ圧力が0.4MPa以上の蒸気ボイラーまたはゲージ圧力0.4MPa以上の温水ボイラーに限る
したがって、ボイラーに関する業務経験などが無い場合は、ボイラー実技講習を受講して免許を受けるケースが一般的です。
参考:二級ボイラー技士免許の取得について | 一般社団法人 日本ボイラ協会
二級ボイラー技士の試験日と申込方法
二級ボイラー技士の試験について、2つのポイントから解説します。
- 試験日と試験会場
- 申込方法
試験日と試験会場
二級ボイラー技士の試験は、全国各地であらゆる時期に開催されています。各地域の安全衛生技術センターでは試験が毎月1回程度開催されているケースが一般的です。
また、各地域の安全衛生技術センター以外でも試験は開催されています。他にも、出張特別試験として、各地で試験が開催されています。
令和6年度の二級ボイラー技士出張特別試験日程は次のとおりです。
地区名 | 試験日 |
函館 | 令和6年7月7日(日) |
札幌 | 令和6年7月13日(土) |
帯広 | 令和6年7月27日(土) |
北見 | 令和6年8月24日(土) |
旭川 | 令和6年9月14日(土) |
釧路 | 令和6年10月5日(土) |
函館(2回目) | 令和6年11月24日(日) |
青森 | 令和6年6月22日(土) |
庄内 | 令和6年7月6日(土) |
岩手 | 令和6年8月24日(土) |
秋田 | 令和6年9月14日(土) |
山形 | 令和6年10月5日(土) |
福島 | 令和6年11月9日(土) |
岩手(2回目) | 令和6年12月7日(土) |
山梨 | 令和8月26日(月) |
新潟 | 令和9月10日(火) |
長野 | 令和9月21日(土) |
群馬 | 令和10月27日(日) |
栃木 | 令和6年11月9日(土) |
茨城 | 令和6年12月21日(土) |
福井 | 令和6年8月24日(土) |
岐阜 | 令和6年9月8日(日) |
富山 | 令和6年9月15日(日) |
三重 | 令和6年10月6日(日) |
石川 | 令和6年11月4日(月) |
静岡 | 令和6年11月24日(日) |
京都 | 令和6年7月10日(水) |
滋賀 | 令和6年8月7日(水) |
和歌山 | 令和6年9月7日(土) |
大阪 | 令和6年11月5日(火) |
奈良 | 令和6年11月10日(日) |
島根 | 令和6年7月27日(土) |
香川 | 令和6年8月10日(土) |
高知 | 令和6年8月24日(土) |
愛媛 | 令和6年8月31日(土) |
山口 | 令和6年9月23日(月) |
鳥取 | 令和6年10月5日(土) |
岡山 | 令和6年11月4日(月) |
広島 | 令和6年11月23日(土) |
徳島 | 令和6年12月15日(日) |
宮崎(1回目) | 令和6年8月3日(土) |
鹿児島 | 令和6年8月24日(土) |
北九州 | 令和6年9月1日(日) |
大分 | 令和6年9月28日(土) |
宮古 | 令和6年10月5日(土) |
熊本 | 令和6年10月13日(日) |
沖縄(1回目) | 令和6年10月20日(日) |
長崎 | 令和6年10月26日(土) |
宮崎(2回目) | 令和6年11月17日(日) |
佐賀 | 令和6年11月24日(日) |
沖縄(2回目) | 令和7年2月2日(日) |
二級ボイラー技士出張特別試験は、各地域で年1回開催されるケースが一般的です。ただし、地域によっては、年2回開催されている場合もあります。
申込方法
二級ボイラー技士の試験を受けるには、書面もしくはオンラインによる申込が必要です。
書面を各地域の安全衛生技術センターに郵送、もしくは持参をして申込手続きを行います。
詳細は「受験申請書の請求」で確認可能です。
正しく申込が完了すれば、受験票が手元に届きます。
参考:受験資格(二級ボイラー技士)|公益財団法人安全衛生技術試験協会
参考:ボイラー技士出張特別試験について | 一般社団法人 日本ボイラ協会
参考:安全衛生技術試験受験申請・登録申請システム|公益財団法人安全衛生技術試験協会
二級ボイラー技士の試験内容と合格基準
二級ボイラー技士の試験について2つの視点で解説します。
- 試験科目
- 合格基準
試験科目
二級ボイラー技士の試験科目は次のとおりです。
試験科目 | 出題範囲 | 問題数 |
ボイラーの構造に関する知識 | 熱および蒸気、種類および型式、主要部分の構造、附属設備および附属品の構造、自動制御装置 | 10問 |
ボイラーの取扱いに関する知識 | 点火、使用中の留意事項、埋火、附属装置および附属品の取扱い、ボイラー用水およびその処理、吹出し、清浄作業、点検 | 10問 |
燃料および燃焼に関する知識 | 燃料の種類、燃焼方式、通風および通風装置 | 10問 |
関係法令 | 労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令および労働安全衛生規則中の関係条項、ボイラーおよび圧力容器安全規則、ボイラー構造規格中の附属設備および附属品に関する条項 | 10問 |
また、試験は5肢択一式のマークシート方式で出題されます。
合格基準
二級ボイラー技士の試験では、科目ごとの得点が40%以上、かつ合計が60%以上でなければなりません。
そのため、極端な不得意科目があると、全体で60%以上の正答率があっても合格できない可能性があります。
実際に、令和5年度に実施された二級ボイラー技士試験の合格率は54.7%でした。そのため、決して難しい合格基準ではないと言えるでしょう。
参考:受験資格(二級ボイラー技士)|公益財団法人安全衛生技術試験協会
参考:二級ボイラー技士免許の取得について | 一般社団法人 日本ボイラ協会
参考:試験実施統計|公益財団法人安全衛生技術試験協会
二級ボイラー技士の費用と受験手続き
二級ボイラー技士の受験費用と手続きの流れ、さらには合格発表まで解説します。
受験料
二級ボイラー技士の受験料は、8,800円です。
受験申請書に同封されている専用の払込用紙に必要事項を記入の上、支払い手続きをしましょう。
また、支払い時に受け取った振替払込請求書兼受領証は自身で保管し、振替払込受付証明書(お客さま用)は受験申請書に貼り付ける必要があります。
そのため、誤って破棄しないように注意しましょう。
手続きの流れ
受験申請をするにあたって、まずは受験申請書を請求する必要があります。申請書は、公益財団法人安全衛生技術試験協会本部や各地域のセンターから郵送、もしくは「受験申請・登録申請システム」からオンライン請求も可能です。
受験申請書を取り寄せた後、作成する段階に移ります。
受験申請書に記入すべき事項は次のとおりです。
- 試験の種類
- 氏名
- 生年月日
- 住所
- 電話番号
- 申請年月日
- 提出先の安全衛生技術センター名
- 受験希望日
また、写真票に写真を貼り付ける必要があります。
申請書が完成したら、受験料を払い込みましょう。そして、指定された期日までに申請書を提出します。
最後に、受験票を受け取ります。試験日が近くなっても、受験票が届かない場合は、公益財団法人安全衛生技術試験協会本部もしくは各地域のセンターに連絡しましょう。
参考:受験申請から資格の取得まで|公益財団法人安全衛生技術試験協会
参考:受験申請書の請求|公益財団法人安全衛生技術試験協会
合格発表日
二級ボイラー技士の結果は、試験日から1週間程度で発表されるケースが一般的です。ただし、ボイラー技士出張特別試験日程で受験した場合は、1ヶ月程度の時間を要する場合もあります。
試験結果は、各地域のセンターのホームページで確認可能です。また、受験者本人に合格の場合は免許試験合格通知書、不合格の場合は免許試験結果通知書が送付されます。
参考:受験申請から資格の取得まで|公益財団法人安全衛生技術試験協会
二級ボイラー技士の筆記試験合格後は実技講習が必要
二級ボイラー技士の資格は、一般的に筆記試験に合格するだけでは取得できません。海技士の免許などがある場合は実技講習は不要ですが、実技講習を受ける必要のある人が多い状況です。
具体的には、筆記試験に合格した後、20時間の実技講習を受けなければなりません。他にも、都道府県労働局長または登録教習機関が行ったボイラー取扱技能講習を修了し、4ヶ月間以上の実務経験を積めると、免許が交付されます。
- 実技講習の受講について
- ボイラー取扱技能講習と実務経験4ヶ月
それぞれについて解説します。
実技講習の受講について
2級ボイラー技士の実技講習は、試験に合格した後に受講が求められ、ボイラーの操作や安全対策に関する実務的なスキルを身に付ける機会です。
実技講習は3日間、合計20時間にわたって行われます。受講料は各都道府県の支部によって異なりますが、25,000円前後です。また、実施日程も各都道府県の支部ごとに異なっています。
ボイラー取扱技能講習と実務経験4ヶ月
ボイラー取扱技能講習とは、14時間におよぶ学科講習です。各都道府県の支部で定期的に開催されています。
受講料も各都道府県の支部によって異なり、受講料は20,000円前後です。
ボイラー取扱技能講習を受けた後、小規模ボイラーに関わる実務経験を4ヶ月積めると資格を取得できます。
参考:二級ボイラー技士免許試験受験準備講習会日程 | 一般社団法人 日本ボイラ協会
参考:ボイラー取扱技能講習日程 | 一般社団法人 日本ボイラ協会
二級ボイラー技士に合格するための目安勉強時間
令和5年度に実施された二級ボイラー技士試験の合格率は54.7%でした。また、合格のために必要な勉強時間は100時間から200時間ほどと言われています。
1日に2時間勉強したとしたら、2ヶ月から3ヶ月程度で学習できる見込みです。
したがって、二級ボイラー技士を取得して、技術者としてのキャリアを形成するチャンスは十分にあるでしょう。
参考:受験資格(二級ボイラー技士)|公益財団法人安全衛生技術試験協会
参考:二級ボイラー技士免許の取得について | 一般社団法人 日本ボイラ協会
参考:試験実施統計|公益財団法人安全衛生技術試験協会
二級ボイラー技士は過去問だけで受かる?効率的な勉強方法は?
二級ボイラー技士の効率的な勉強方法に関するポイントは主に3つです。
- 二級ボイラー技士は過去問のみはおすすめしない
- 図解入りテキストの併用がおすすめ
- 独学が難しい場合は通信講座を受講する
それぞれのポイントについて解説します。
二級ボイラー技士は過去問のみはおすすめしない
二級ボイラー技士の勉強で、過去問のみに頼るのは不十分です。過去問は試験の傾向を把握したり実践的に学んだりする際に有効です。
しかし、試験範囲全体を網羅するには限界があります。また、試験内容は毎年変わる可能性があり、過去問だけで合格できるとは限りません。そのため、過去問はあくまで実践練習として活用し、他の勉強方法も並行して進めましょう。
図解入りテキストの併用がおすすめ
二級ボイラー技士の勉強では、図解入りのテキストを過去問と併用するのが効果的です。二級ボイラー技士の試験範囲は技術的な内容が多く、文字だけの説明では理解が難しいケースがあります。
図解入りのテキストを使用すると、構造や仕組みが視覚的にわかりやすくなり、理解が深まります。特にボイラーの構造や作業の流れなど、視覚的な情報が大切な箇所で大きな助けとなるでしょう。
独学が難しい場合は通信講座を受講する
二級ボイラー技士の勉強で、独学が難しい場合は通信講座の受講を検討するのもひとつの手段です。独学ではどうしても理解が進まない部分や、時間管理がうまくいかないことがあります。
通信講座を利用すれば、効率的なカリキュラムに沿って学習できるほか、質問があれば講師に相談できるメリットもあります。忙しくしていたり学習に不安があったりする人にはおすすめです。
二級ボイラー技士に関するよくある質問
二級ボイラー技士に関するよくある質問は次のとおりです。
- 二級ボイラー技士は難しい?
- 二級ボイラー技士は何に使える?
- 二級ボイラー技士の取得には実務経験が必要?
- 二級ボイラー技士の年収は?
それぞれの質問について解説します。
二級ボイラー技士は難しい?
二級ボイラー技士の試験は、初心者でも取り組めるように設計されています。ただし、決して難易度が低いわけではありません。
学科試験は「構造に関する知識」「取扱いに関する知識」「燃料及び燃焼に関する知識」「関係法令」の4科目にわたっており、幅広い知識が必要です。
ボイラーの構造や運転方法に関する専門知識はもちろん、安全に操作するための法律や規則の理解も求められます。ただし、独学や専門講座を利用しながら勉強を積み重ねると、十分に合格できる可能性があります。
初心者向けの教材や参考書も豊富に揃っているため、計画的な学習により合格できるでしょう。
関連記事:ボイラー技士の難易度と資格取得方法に関する対策|仕事内容と勉強方法
二級ボイラー技士は何に使える?
二級ボイラー技士の資格は、主にボイラーの操作や管理に従事する職場で役立ちます。工場やビル管理の現場、病院、学校など、ボイラーを使って暖房や蒸気の供給が必要な施設での業務に欠かせません。
特に産業分野では、ボイラーを使用する大規模な設備が多いため、資格保持者の需要が高いです。また、二級ボイラー技士は比較的取得しやすい資格と言われており、設備管理職へのキャリアステップとしても有効です。
二級ボイラー技士の取得には実務経験が必要?
二級ボイラー技士の取得には、特別な実務経験は必要ありません。ボイラーに関わる業務の経験がない人でも受験可能です。ただし、合格後に実際の現場でボイラーの取扱いを担当する際には、実技講習を受講するなどしなければなりません。
二級ボイラー技士の年収は?
二級ボイラー技士の年収は、業界や勤務地、職場の規模によって異なります。令和5年賃金構造基本統計調査の結果を踏まえたデータによると、ボイラー技士の平均年収は442.1万円です。
ただし、工場やビルの管理業務を担当したり、大規模施設での勤務に従事したりする場合、特に経験豊富なボイラー技士は高収入を見込める可能性もあります。
また、他の資格と組み合わせて活躍できると、昇給やキャリアアップのチャンスが広がるでしょう。
参考:ボイラーオペレーター - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
二級ボイラー技士を取得してキャリアアップを目指しましょう
この記事では、二級ボイラー技士の受験資格や試験概要などについて解説してきました。
二級ボイラー技士は特段の受験資格が設けられていないため、未経験でも挑戦可能です。ただし、試験に合格した後、免許を交付してもらうためには一般的に20時間におよぶ実技講習の受講を求められます。
また、二級ボイラー技士の合格基準は、科目ごとの得点が40%以上、かつ合計が60%以上です。一方で、令和5年度に実施された二級ボイラー技士試験の合格率は54.7%で推移しており、決して難しい合格基準ではないと言えるでしょう。
「ボイラー技士に興味がある」「今後の安定と将来を考えて転職したい」などと望んでいる人は製造業界に特化したエージェント「建職キャリア」にご相談ください。
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