バス運転手は、多くの人が利用している交通手段であり、人々の生活に欠かせない存在です。
近年は、インバウンド需要が回復してきたこともあり、都市部や観光地を中心に運転手不足が問題となっています。
バス会社では、人材確保のため未経験者を歓迎する動きが強まっている状況です。
しかしながら、バスは車両サイズが大きく、多くの人が乗車するため運転には細心の注意が必要と言えるでしょう。
「本当に未経験からバス運転手になれるのか」と、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
今回は、未経験でもバス運転手になれる理由を中心に、条件などを分かりやすく解説していきます。
【この記事で分かること】 ・未経験でもバス運転手になれる3つの理由 ・未経験でバス運転手に応募する際の条件 ・バス運転手の免許を取得するための条件 ・バス運転手の免許取得にかかる費用 ・未経験者でも応募可能な求人事例 ・未経験からバス運転手に挑戦する際によくある質問 |
バス運転手は未経験でもなれる3つの理由
結論から述べると、未経験者でもバス運転手になることは十分可能です。
その理由は、主に3つあります。
・バス運転手は常に人手不足になっている
・免許の取得費用を補助してくれるバス会社も多くある
・未経験者向けの研修制度が充実しているバス会社も多くある
ここでは、3つの理由について、バス業界の現状も踏まえながら解説していきます。
バス運転手は常に人手不足になっている
運送業界は、人手不足が問題となっており、バス業界も例外ではありません。
新型コロナウイルスの流行により、観光バス業界は大きな打撃をうけ、需要が下がってしまったことから転職を余儀なくされる運転手が多くいました。
路線バスに関しても、人口減少や都市部に人口が集中したことにより、地方を中心に赤字路線が多くある状況です。
また、現役運転手の高齢化も問題となっており、2030年には約3万6,000人の運転手が不足するといった予想もあるほどです。
これを受けて、バス会社では人材確保に力をいれており、未経験者を歓迎する動きが強まっています。
免許の取得費用を補助してくれるバス会社も多くある
運転手不足をうけて、バス業界では人材確保に向けた取り組みの一環として「運転免許取得支援制度」を設ける会社が増えてきています。
バス運転手になるうえで必須となる「大型二種免許」の取得費用を、会社側で負担してくれるという内容です。
これにより、求人に応募する際に二種免許を取得しておく必要がなくなりました。
求人にもよりますが、普通自動車免許を取得して1~3年ほど経っていれば、応募できます。
ちなみに、中部運輸局管内で営業するバス会社への転職者のうち、二種免許を持っていない人の割合は以下の通りでした。
・平成27年:35% ・平成28年:33% ・平成29年:37% |
このように、応募者の約4割ほどは未経験で免許を取得していない状態で入社しています。
参考:バス運転者の人材確保対策に関するアンケート調査結果について|国土交通省
未経験者向けの研修制度が充実しているバス会社も多くある
バス会社では、運転免許の取得支援だけでなく、乗務前の研修にも力を入れています。
具体的な研修内容は、バス会社によりますが一般的なバス運転手の研修内容は以下の通りです。
・交通ルールや労働条件など運転手としての心得を座学で学ぶ(数日間) ・研修センターでの実技研修(2週間前後) ・各営業所へ配属され回送運転にて経路確認や運転操作を学ぶ(1ヶ月ほど) ・指導運転手と一緒にお客様を乗せて営業運転を行う(1~2ヶ月ほど) |
このように、約2~3ヶ月かけてしっかりバス運転手の業務について学べるため、未経験者の人でも問題ありません。
ちなみに、現役の指導員からは「未経験者の方が運転に癖がなく修正しやすい」「経験者というプライドがないので成長スピードが早い」といった声もありました。
バス運転手への未経験転職で気をつけるべき3つの条件
未経験者で大型二種免許を持っていない人でも、バス運転手への転職は可能ですが、企業へ応募する際に注意すべきことが3つあります。
・働きやすい設備が整っているか確認する
・コンプライアンスを重視しているバス会社か確認しておく
・バス会社の経営方針に納得できるか確認しておく
3つの注意点の詳細について、解説していきます。
働きやすい設備が整っているか確認する
バス会社に入社した場合、未経験者向けの研修が用意されていますが、その内容は会社によって異なります。
研修期間が3ヶ月間の会社もあれば、半年以上の時間をかける会社もあります。
指導方法も、全体講習のみであったりマンツーマン指導であったりとそれぞれです。
未経験者から応募する場合は、研修に力を入れているかチェックするようにしましょう。
また、平均残業時間などを調べて仕事を続けられそうか調べておくことも大切です。
コンプライアンスを重視しているバス会社か確認しておく
バス業界は、人手不足により1人あたりの負担が増加傾向にあるため、コンプライアンスに力を入れており、働きやすい環境になっている会社を選ぶようにしましょう。
シフト勤務の詳細や休日などを公表しており、無理のない運行をしていることが大前提となります。
会社のホームページや求人票で確認できない場合には、口コミサイトなどで現役運転手の声を調べるといった方法がおすすめです。
バス会社の経営方針に納得できるか確認しておく
未経験者に限ったことではありませんが、転職先の経営方針に納得したうえで応募するようにしましょう。
経営方針をもとに、会社の働き方や運行内容が決定するため、考え方が合わなければ納得したうえで働けなくなります。
なるべく、自分の考え方と経営方針が似ているバス会社を選ぶようにしましょう。
バス運転手の免許を取得する5つの条件
未経験者でもバス運転手になれると解説してきましたが、大型二種免許を取得できなければ意味がありません。
二種免許とは、バスやタクシーのように、お金をもらって乗客を目的地まで送り届ける場合に必要な免許です。
運転中の事故は、乗客の命にも関わるため、一種免許よりも取得条件が厳しくなっています。
運転技術だけでなく、以下のような身体条件も満たす必要があります。
・年齢
・視力
・色彩識別能力
・深視力
・聴力
・運動能力
各条件の詳細について、解説していきます。
年齢
車両サイズに関係なく、二種免許を取得するには普通免許を取得して3年以上経っている必要があります。
そのため、大型二種免許の取得年齢は21歳以上です。
ただし、令和4年5月13日より条件が改正されており「特別教習」を受講すれば19歳以上でも取得できるようになりました。
条件が改正されて間もないこともあり、どの教習所でも特別教習を受けられるわけではありません。
そのため、求人によって19歳から応募できるものと、21歳以上となっている求人がありますので注意が必要です。
視力
視力は両眼で0.8以上、1眼でそれぞれ0.5以上です。
なお、検査時のコンタクトレンズやメガネの装着は認められています。
色彩識別能力
色彩識別能力は、青色・黄色・赤色の識別ができれば問題ありません。
深視力
深視力とは、立体感や遠近感を判断する目の能力で、三桿法(さんかんほう)の専用検査器により検査します。
2.5メートルの距離で3回検査し、平均誤差が2センチメートル以内であれば問題ありません。
聴力
聴力は、90デシベルの警音器の音が、10メートル離れた場所から聞き取れれば問題ありません。
運動能力
運動能力に関しては、自動車などの運転に支障のある大幹や四肢の障害がなければ問題ありません。
障害があった場合も、補助手段を講じて運転に支障が出ないと認められれば、問題ありません。
バス運転手の免許を未経験で取得する場合の費用相場
大型二種免許の取得費用は、既に取得している免許によって変わります。
・大型一種免許保有:約30万円前後 ・中型一種免許保有:約40万円前後 ・普通一種免許保有:約50万円前後 |
教習所によっても料金が大きく異なります。
運転免許取得支援制度のある会社の場合、転職前に自費で取得していなくても問題ありません。
バス運転手未経験でも応募可能な求人事例3選
ここでは、実際にある未経験でも応募可能なバス運転手の求人を3つ紹介していきます。
労働時間や福利厚生といった内容も紹介していきますので、転職を検討するうえで参考にしてみてください。
求人事例①千葉県の路線・高速・観光バス運転手求人
1つ目の求人は、路線・高速・観光といった複数の運行をしているバス会社の求人です。
雇用形態 | 正社員 |
運行内容 | 路線バス・高速バス・観光バス・送迎バス・コミュニティバス |
応募条件 | 普通免許を取得して1年以上経過 |
免許取得制度の有無 | 制度あり |
給与 | 基本給19万4,000円+各種手当 |
昇給・賞与 | 昇給年1回・賞与年2回 |
勤務体系 | 早番・中番・遅番あり |
年間休日 | 92日 |
福利厚生に力を入れており、社宅制度や引っ越し補助制度、入社祝い金制度が用意されていました。
求人事例②高速・観光バス運転手求人
2つ目の求人は、高速・観光の運行をしているバス会社の求人です。
雇用形態 | 契約社員(正社員登用試験を年2回実施) |
運行内容 | 高速バス・観光バス |
応募条件 | 普通免許必須 |
免許取得制度の有無 | 制度あり |
給与 | 月給25~30万円(各種手当含む) |
昇給・賞与 | 昇給年1回・賞与年2回 |
勤務体系 | シフト制・実働7時間35分 |
年間休日 | 113日 |
大手鉄道会社のグループ企業の求人で、労働環境の良さに力を入れており、年間休日が113日あります。
各支店に個室の宿泊施設が用意されており、無理なく働けます。
求人事例③路線・高速・観光バス運転手求人
3つ目の求人は、路線・高速・観光などを運行しているバス会社の求人です。
雇用形態 | 正社員 |
運行内容 | 路線バス・高速バス・観光バス・コミュニティバス |
応募条件 | 普通免許必須※取得して3年以上経過 |
免許取得制度の有無 | 制度あり |
給与 | 基本給21万+各種手当 |
昇給・賞与 | 昇給年1回・賞与年2回 |
勤務体系 | シフト制・5:00~24:00の間 |
年間休日 | 90日 |
未経験者の場合、路線バス運転手として1年間乗務したうえで、高速バスや観光バス運転手へとステップアップしていきます。
収入面に力を入れており、年収450万円以上を目指すことも可能です。
未経験からのバス運転手への転職に関するよくある質問
最後は、未経験からのバス運転手への転職に関する、5つのよくある質問に答えていきます。
・バス運転手に未経験で転職して一番苦労することは何ですか?
・バス運転手の年収は低いですか?
・バスの運転手は1日何時間働いていますか?
・バス運転手になるには何年必要ですか?
・バス運転手が足りない理由は何ですか?
バス運転手の勤務内容や収入事情に関する内容ですので、転職を検討するうえで参考にしてみてください。
バス運転手に未経験で転職して一番苦労することは何ですか?
未経験でバス運転手になった際に、一番苦労することには、以下のような声がありました。
・簡単にUターンできないので道を間違えられないプレッシャーが大きかった ・運転しながら乗客にも気配りをすることがとても大変だった ・お腹の調子が悪くても好きなタイミングでトイレに行けない |
運行内容によって、運転時間や勤務時間が異なるため、つらく感じる内容も変わります。
バス運転手の年収は低いですか?
令和4年度におけるバス運転手の平均年収は398万7,000円です。
全産業の平均年収は458万円であったため、平均よりも低水準といえます。
あくまでも平均であるため、経験を積めば年収450万円以上も十分狙えます。
出典:職業情報提供サイトjobtag・路線バス運転手|厚生労働省
バスの運転手は1日何時間働いていますか?
バス運転手の労働時間は、運行内容によって変わりますが2日間の平均が1日あたり9時間以内でなければなりません。
また、1週間の平均も40時間以内とルールで定められています。
ただし、観光バスや貸切バスといった運行は、2名以上の運転手が乗務することを条件に、このルールが適用外となります。
バス運転手になるには何年必要ですか?
大型二種免許を取得するには、普通免許を取得して最低でも1年経過していなければなりません。
大型二種免許を取得した後は、3~6ヶ月ほどの研修を受けた後に、バス運転手として乗務できるようになります。
バス運転手が足りない理由は何ですか?
バス運転手が不足している主な理由としては「若手人材の参入が少ないこと」や「待遇面の悪さ」があります。
バス運転手は、長時間労働となりやすく運転中は常に集中しておく必要があり、負担の大きい仕事です。
しかしながら、バス運転手の平均年収は398万円ほどと決して高水準とは言えません。
「きつくて収入が低い」といったイメージから、若手人材の参入も少なく、運転手が各地で不足している状況です。
近年は、インバウンド需要の回復でより運転手不足が深刻化しています。
まとめ
近年、バス業界は運転手不足が問題となっており、その解消に向けて未経験者を歓迎するバス会社が増えてきています。
乗務するうえで必須である運転免許に関しては、運転免許取得支援制度を設けている会社も少なくありません。
免許取得後に関しても、徹底した研修が行われているため安心です。
労働環境や待遇面の改善に力を入れているバス会社も多くあります。
バス業界に興味がある方は、過去の経験を気にすることなく、転職を検討してみましょう。
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