近年、日本でも話題になりつつあるライドシェアは、海外ではタクシーよりも安価な交通手段として人気を集めています。
日本でも導入が進められつつあるライドシェアですが、今後の課題となっているのはアルコールチェックです。
現行の法律では、タクシードライバーなどの運行事業者には運転前アルコールチェックが義務付けられています。しかし、ライドシェアでのアルコールチェックはこの限りではありません。
本記事ではアルコールチェックの重要性や導入の課題や見通し、実現に必要な3つのことを解説していきます。
ライドシェアにおけるアルコールチェックの重要性
タクシーに代わる交通手段と言われているライドシェアですが、タクシーなどに比べて個人でも始めやすいことから副業としても注目されています。
続いては、ライドシェアにおけるアルコールチェックの重要性について解説します。
ライドシェアは飲酒運転のリスクが高まる
タクシー運転手やバス運転手などの職業は、運転前のアルコールチェックが義務付けられています。しかし、ライドシェアの場合はアルコールチェックに対しての取り締まりがまだ徹底されていません。
そのため、ドライバーが気のゆるみで飲酒運転をしてしまうリスクが高いです。
「自分は大丈夫」「少しだけなら」という判断で飲酒運転をして事故を起こしてしまった場合、取り返しのつかないことになります。
アルコールチェックは法律で義務化された
2023年12月1日から、アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックは日本国内でも義務化されました。
以前までは緑ナンバーの車両を運転するドライバーのみが対象とされていましたが、この法改正により条件に該当する白ナンバーの車両を運転するドライバーにもアルコールチェックが義務化されています。
ライドシェアにおけるアルコールチェック導入の課題と見通し
次にアルコールチェック導入の課題と見通しについて解説していきます。
それぞれを順番に解説していきます。
法律が追いついていない
ライドシェアにおけるアルコールチェック導入の課題の1つ目は、法律が追いついていないことです。
ライドシェアサービスにおけるアルコールチェックの導入は、ドライバーと乗客の安全を確保する上で非常に重要な取り組みです。
しかし、現行の法律がこの新たな技術と実務の進歩に追いついていないことは大きな課題となっています。
多くの国や地域で、既存の交通安全に関する法律や規制は、従来のタクシーや個人運転の車両を対象に制定されており、ライドシェア特有の運用モデルや技術的な側面を十分に考慮していません。
したがって、ライドシェアのドライバーへのアルコール検査の必須化、実施手順の制定、検査結果に応じた罰則の規定など、詳細な規制がまだ整備されていない状況にあります。
ライドシェアサービスの普及に伴い、これらの技術的な進歩と実務の変化に対応するためには、法律の更新や新しい規制の策定が急務とされているのです。
どのように個人のチェックを徹底させるか
ライドシェアにおけるアルコールチェック導入の課題の2つ目は、どのように個人のチェックを徹底させるかです。
ライドシェアのビジネスモデルでは、ドライバーが独立した契約者として働くため、彼らの日常的な活動に対する直接的な監督が困難です。
そのため、アルコールチェックを義務付けたとしても、全ドライバーが運転前にチェックを実施し、その結果を正確に報告する体制を確立することは容易ではありません。
技術的な解決策としては、アプリを介した自動化されたチェックプロセスの開発が考えられますが、それでも偽の報告を完全に防ぐことは難しく、ドライバーの誠実さに依存する部分が残ります。
さらに、プライバシーの問題や個人の自由への介入という観点から、アルコールチェックの徹底には法的および倫理的な慎重さが求められます。
したがって、個人のアルコールチェックを効果的に徹底させるためには、技術的な工夫だけでなく、法規制の整備、ドライバー教育の充実、そして適切なインセンティブやペナルティの設定など、多角的なアプローチが必要となります。
これらの取り組みを通じて、ライドシェアにおける安全な運転環境の確保と、乗客の信頼の維持を目指す必要があるのです。
安全運転への意識向上を期待できる
上記のような導入の課題があるものの、アルコールチェックを徹底していくことで安全運転への意識向上が期待できます。
ドライバーが運転開始前に自分のアルコール濃度を検査する義務化は、飲酒運転の危険性を自覚させ、その防止に役立ちます。この制度により、ドライバーは自身の体調や運転の安全性を定期的にチェックすることが習慣化され、安全運転への責任感を高めることができます。
また、アルコール検査の実施は、利用者に対してもサービスの安全に配慮していることを伝え、サービスの信頼度を高める効果があります。利用者がドライバーがアルコール検査をクリアしていることを認識することで、サービス利用時の安心感が増します。
従って、アルコール検査の導入はドライバーの意識改革を促し、ライドシェアサービスの安全性を高めることによって、広く交通安全文化の向上に貢献することが期待されるのです。
ライドシェアでのアルコールチェックの実現に必要な3つのこと
義務化の対象外によりアルコールチェック実施のハードルが高いライドシェアですが、これらを実現させるのに必要な3つのことがあります。
それぞれ順番に解説していきます。
各事業者による管理の徹底
各事業者によるアルコールチェックの管理は、ドライバーが運転にあたってアルコールを摂取していないことを証明するための措置として重要な役割を担います。
事業者は、運転前のアルコール検査の義務付け、チェック結果の記録と監視、違反者に対するペナルティの設定と実施など、具体的な管理体制を構築し、それをドライバーに対して徹底させる必要があります。
また、ドライバーに対する教育と啓発も重要で、アルコール摂取のリスクや運転前のチェックの重要性についての理解を深めることが求められます。さらに、事業者は、アルコールチェックのシステムを維持し、その効果を定期的に評価することで、プロセスの改善と安全性の向上を図る必要があります。
このように、各事業者による管理の徹底を通じて、ライドシェアサービスの安全性を高め、乗客とドライバー双方に安心を提供することが、アルコールチェックの実現において必要とされる主要な要素なのです。
高品質なアルコールチェッカーの使用
アルコールチェッカーには、国内外を問わず、さまざまなタイプが市場に出回っており、性能にも幅があります。
特に低価格の製品を選んだ場合、精度が不足していることがあり、正しい測定値を得られないリスクがあります。「どれを選べば良いのか迷っている」という人には、アルコール検知器協議会の認証を受けたアルコールチェッカーの利用を推奨します。
アルコール検知器協議会によって認証された製品は信頼性が高く、選択に迷った際には、これら認定製品から選ぶことが良い選択肢となります。
違反したドライバーへの罰則強化
法律に違反したドライバーへの罰則を強化することは、飲酒運転のリスクを減少させることに繋がります。
具体的には、アルコール検査で基準値を超えた場合や、チェックを意図的に避けたドライバーに対して、罰金の課徴、一定期間のサービス利用停止、最悪の場合は契約の解除など、明確で厳格なペナルティを設けることが考えられます。
このような罰則制度の導入は、ライドシェアプラットフォーム全体の安全性を高めるために効果的です。ドライバーが自身の行動の結果を明確に理解し、責任ある運転行動をとることを促すため、事業者は罰則の詳細を事前にドライバーに対して明確に伝え、適用基準を徹底する必要があります。
また、罰則の適用は公正かつ一貫性を持って行われるべきであり、すべてのドライバーに平等に適用されることが重要です。
このプロセスを経ることで、ライドシェアサービスの信頼性と利用者の安全確保が可能になるのです。
海外におけるライドシェアでのアルコールチェック事情
日本ではまだ普及していないライドシェアですが、海外ではライドシェアが交通手段の一つとして受け入れられています。
海外におけるライドシェアでのアルコールチェック事情についても見ていきましょう。
アメリカ合衆国
アメリカでは2009年を境にライドシェア市場への新規参入企業が増え始めました。
カリフォルニア州では、ライドシェアサービスを提供するためには、カリフォルニア州公益事業委員会の承認が必須であり、ドライバーの資格に関しても具体的な基準が設けられています。
飲酒運転が一度でも検出された場合、該当ドライバーのアカウントは無期限に停止されるなど、危険な運転行為に対する処罰は非常に厳格であり、これによりアルコール検査の徹底が図られています。
ロンドン
ロンドンにおいては、2012年以降にライドシェア市場に新たな企業が参入し始めました。
ライドシェアの導入前には、すでにPHV(Private Hire Vehicles)である「ミニキャブ」サービスやタクシーのアプリによる配車サービスが普及していたため、ライドシェアが市場に登場してから規制が強化されるまでの期間は短めでした。
ロンドンもアメリカと同様に、飲酒運転を行ったドライバーに対しては、アカウントを無期限に停止するなどの厳格な処分が設けられており、これによりアルコール検査が厳密に実施されています。
中国
中国では、2013年以後にライドシェア分野への企業の参入が増えています。
中国でライドシェアサービスを提供するドライバーには、特定の資格であるインターネット予約旅客運送運転手許可書の取得が必須とされるなど、明確な条件が設けられています。
また、飲酒運転に対する法規制が厳格であるため、アルコール検査の実施や勤務時間の管理が厳重に行われており、安全対策が徹底されています。
オーストラリア
オーストラリアでは、2012年以後ライドシェア市場への新規企業の参入が始まりました。
オーストラリアでは、タクシー運転手になるにはタクシーライセンスの取得が必要であり、タクシー運賃の上昇などが問題視されていたため、ライドシェアの活動が活発化しています。
2016年には、ライドシェアに適用される法律の改正が行われ、居眠り運転や飲酒運転に対する罰則が厳格化されています。
デンマーク
デンマークでは2014年以降からライドシェア事業に参入する企業が出てきました。
導入当初はデンマーク運輸局がライドシェア事業所に苦情を提出したことで法律の見直しなどが行われましたが、デンマークではそれ以上に飲酒運転に関して厳しい罰則があり、アルコールチェックに厳しい国と言われています。
アルコールチェックを怠った場合、免許はく奪だけでなく罰金や乗っていた車が競売にかけられるなどの処罰が下されるのです。
ライドシェアにおけるアルコールチェック以外の課題
日本でライドシェア事業を展開していく場合、アルコールチェック以外にも課題があります。
法整備
ライドシェアにおけるアルコールチェック以外の課題1つ目は、法整備です。
新たなビジネスモデルであるライドシェアは、従来の交通サービス産業には存在しなかった独特の問題を引き起こしており、これに対応するための法的枠組みが不足しているのが現状です。
特に、ドライバーと乗客の権利と義務、料金設定、保険の適用範囲など、多岐にわたる側面で明確な規制やガイドラインが求められています。
このように、ライドシェアサービスを取り巻く環境を健全に保ち、利用者と提供者双方の安全と利益を保護するためには、適切な法整備が不可欠であり、それが新しい技術と社会のニーズのバランスをとる上での大きな課題となっているのです。
タクシー業界の利益圧迫
ライドシェアにおけるアルコールチェック以外の課題2つ目は、タクシー業界の利益圧迫です。
ライドシェアが提供する柔軟性や低コストの移動手段は、特に都市部で利用者の間で高い人気を博しており、これが直接的にタクシー業界の既存のビジネスモデルに影響を及ぼしています。
タクシー業界は、固定された料金体系や運転手のライセンス要件など、より厳格な規制の下で運営されており、これがライドシェアとの競争において不利な立場を強いられる一因となっています。
この結果、タクシーの需要が減少し、業界全体の利益が圧迫されることになるのです。この問題に対処するためには、新旧の移動サービスが公平に競争できる環境を整備することが求められており、業界全体での適応や政策立案者による介入が重要な課題となっています。
日本におけるライドシェア導入の現状と将来性
最後に日本におけるライドシェア導入の現状と将来性について解説していきます。
現状はタクシー会社が管理するなら可能
現在の日本の法律を理解せずにライドシェア事業に参入すると、「白タク」と呼ばれて違法行為とみなされます。
2024年4月から条件付きで日本でもライドシェア事業が解禁されましたが、条件などが細かく定められているため個人で行うのは不可能です。そのため、ライドシェアを実施できるのはタクシー会社のみとなっています。
タクシー会社が間に入ることで車の整備や事故などの責任を自身で背負うことがないため、ドライバー側にもメリットはあります。
ライドシェアの導入による飲酒運転の減少
ライドシェアの導入によって、飲酒運転の減少が期待できます。
タクシー・代行が呼べない場合、飲酒運転せざるを得ない状況などが避けられないケースがありましたが、ライドシェアが導入されることによって安価での移動が可能になります。
タクシーや代行に代わる交通手段として普及していくことで、飲酒運転による事故を防止できる見込みもあります。
ライドシェア導入の将来性
ライドシェア導入の将来性として期待できるものとして運転性能の向上や過疎地域による交通手段の普及、飲酒運転の減少などがあります。
ライドシェアという新たなサービスによって運転に関する法改正が整うことで、事故の抑制などにもつながります。
過疎地域で運転できない高齢者などが使える新たな交通手段として確立していくことも期待されています。
ライドシェアにおけるアルコールチェックについてのまとめ
今回はライドシェアにおけるアルコールチェックについて解説しました。
本記事を参考に、今後期待がかかるライドシェア事業を導入してみてはいかがでしょうか?
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