高齢化社会が進行する中で、移動のサポートが求められるケースが増加しています。その中で注目を集めているのが「介護タクシー」です。
しかし、介護タクシー運転手になるためには、一体どのような資格やスキルが求められるのかは、あまり知られていません。
本記事では、介護タクシー運転手になるための必須資格、介護タクシー運転手の仕事内容などについて詳しく解説します。
介護タクシーの仕事に必要な資格
介護タクシーは、通常のタクシーサービスとは異なり、高齢者や障害を持つ人々が安全かつ快適に移動するための特別なサービスを提供するタクシーです。
まずは、介護タクシーの仕事に必要な資格を2つ紹介します。
普通自動車二種免許
介護タクシーの仕事に必要な資格の1つ目は、普通自動車二種免許です。
普通自動車二種免許は、一般的な普通自動車一種免許とは異なり、他者を輸送する目的での運転を許可される資格となります。
具体的には、タクシーやバス、貸切車などの乗客輸送を営むための免許であり、介護タクシーのドライバーとしてはこの二種免許が必須となります。
取得のためには、教習所での研修を受ける必要があり、実技試験や筆記試験に合格することでこの免許を手に入れることが可能です。
関連記事:二種免許の取得条件とは?費用・期間・方法をまとめて解説
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
介護タクシーの仕事に必要な資格の2つ目は、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)です。
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)は、基本的な介護の知識や技術を身につけるための研修を受け、それに関連する試験に合格することで取得できます。
介護タクシーの業務において、車いすの乗降のサポートや乗客の体調変化に対応する際など、この研修で学んだ知識や技術が役立ちます。
介護タクシーとしてのサービス品質を高めるため、多くの企業や自治体がこの資格の取得をドライバーに推奨、あるいは必須としているのです。
介護タクシーの仕事をするには資格と初任者研修が必要
介護タクシーは、高齢者や障害者など、特別な支援を必要とする方々の移動をサポートする役割を担っています。そのため、単なる移動手段を提供するだけでなく、利用者の体調や状態に応じた適切な対応が求められることが多く、介護職員初任者研修が重要になります。
介護職員初任者研修は、基本的な介護の知識や技術を習得するためのものであり、受講することで、乗客の体調の変化に気づいたり、車いすの取り扱い、移乗のサポートなどの知識を習得したりすることが可能です。
また、利用者とのコミュニケーションの際にも、初任者研修で学んだ知識が役立ち、信頼関係の構築や安心感の提供に繋がります。
したがって、介護タクシーにおいて初任者研修は、質の高いサービス提供のための不可欠な要素と言えるのです。
介護タクシーで役立つその他の資格
続いて、介護タクシー運転手の業務で役立つその他の資格を6つ紹介します。
サービス介助士(ケアフィッター)
介護タクシー運転手の業務で役立つ資格の1つ目は、サービス介助士(ケアフィッター)です。
サービス介助士(ケアフィッター)は、高齢者や障害者が日常生活を送る上での移動や、行動をサポートするための技術や知識を持つ者を認定する資格です。この資格を取得することで、車いすの正しい使い方や乗降時のサポートなど、介助に関するさまざまな技術を習得することができます。
介護タクシーの利用者は、多くの場合、移動に際して特別な配慮やサポートが必要となることが多いため、サービス介助士の資格を持つことで、安全かつ快適な移動を提供することが可能となるのです。
普通救命講習
介護タクシー運転手の業務で役立つ資格の2つ目は、普通救命講習です。
普通救命講習は、日常の緊急事態に対応するための基本的な救命技術や知識を学ぶもので、心肺蘇生法やAEDの使用方法などが主な内容となっています。
介護タクシーの利用者は高齢者や障害者が多く、急な体調の変化や事故によるケガなど、予期せぬ状況に出くわすことも考えられます。そのようなときに、ドライバーが普通救命講習を受けていると、迅速かつ適切な応急処置を施すことができ、命の危機を乗り越えるための貴重な時間を稼ぐことが可能となります。
また、この資格を持つことは、利用者やその家族に安心感を与えるだけでなく、ドライバー自身の自信や責任感も向上させることでしょう。
ユニバーサルドライバー研修
介護タクシー運転手の業務で役立つ資格の3つ目は、ユニバーサルドライバー研修です。
ユニバーサルドライバー研修は、高齢者や障害者をはじめとした多様なニーズを持つ人々への配慮を学ぶためのプログラムです。この研修を受けることで、乗客の移動のサポートや車への乗り降りのアシスト、車椅子や歩行器の取り扱いに関する正確な知識や技術を習得できます。
また、心理的側面においても、利用者の気持ちに寄り添ったサービス提供が可能となり、より高品質な運転サービスを実現することができます。
この研修を受けることによって、介護タクシーのドライバーは、利用者に安心感と信頼を提供できるだけでなく、より専門的で質の高いサービスを実現するための基盤を築くことができるのです。
ハートフルアドバイザー研修
介護タクシー運転手の業務で役立つ資格の4つ目は、ハートフルアドバイザー研修です。
ハートフルアドバイザー研修は、高齢者や障害者など、さまざまな人々とのコミュニケーションスキルや心のケアに関する知識を深めるためのものです。
この研修を修了することで、ドライバーは利用者との円滑なコミュニケーションを図るための技術やアプローチを身につけることができます。特に、不安や心配を持つ乗客に対して、適切なアドバイスやリスペクトのもとでのサポートを提供できるようになります。
このような資質は、介護タクシーのサービス品質を一段と高めるための鍵となり、利用者からの信頼をさらに深めることが期待されるのです。
ガイドヘルパー(介助士)
介護タクシー運転手の業務で役立つ資格の5つ目は、ガイドヘルパー(介助士)です。
ガイドヘルパー(介助士)は、視覚や聴覚に障害を持つ人々の移動や生活をサポートするための技術や知識を習得するためのものです。
この資格を有することで、ドライバーは障害を持つ乗客に対して、より適切なガイダンスやサポートを提供することが可能となります。特に、視覚や聴覚の障害者とのコミュニケーションや、乗車・降車時のアシスタンス技術を身につけることができるため、サービスの質を向上させることが期待されます。
このような専門的な知識と技術を持つことで、介護タクシーのサービス範囲を拡大し、より多くの需要層に対応することが可能となるのです。
介護福祉士
介護タクシー運転手の業務で役立つ資格の6つ目は、介護福祉士です。
介護福祉士は、高齢者や障害者の生活全般のサポートを行う専門家としての知識と技術を持っています。この資格を有することで、乗客の健康状態や身体の特性を理解し、適切なアシストを提供することが可能です。
また、移動中に発生するさまざまな状況においても、適切な対応やケアが可能となり、乗客の安心感を高めることができます。
介護タクシーは単なる移動手段ではなく、その間のケアやサポートも求められるため、介護福祉士の専門的な知識や技術が大きなアドバンテージとなるでしょう。
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介護タクシーの種類と資格について
続いては、介護タクシーの種類について解説します。
介護保険適用:適用外のものがある
前提として、介護タクシーのサービスには、介護保険が適用されるタイプと、介護保険の適用を受けられないタイプが存在します。
介護保険が適用されるタクシーは、利用者が必要とする介護の範囲内での移動をサポートするもので、一定の条件下で保険の給付を受けることができます。
一方、介護保険適用外のタクシーは、主に私的な移動やレジャーなどの目的で利用されるもので、これには介護保険の給付は受けられません。
利用者としては、どのサービスを利用するかを選択する際に、自身のニーズや経済的な状況を考慮することが大切です。
福祉タクシーとの違い
介護タクシーと福祉タクシーは、高齢者や障害者の方々の移動をサポートするためのものですが、役割や特徴には明確な違いがあります。
介護タクシーは、主に介護が必要な高齢者や障害者の方々を対象にしており、運転手には介護の基本的な知識や技術が求められます。また、介護保険が適用される場合もあり、具体的な介護のニーズに合わせたサービスが提供されるのです。
一方の福祉タクシーは、高齢者や障害者の方々の日常の移動をサポートするためのもので、特別な介護の技術は求められませんが、車両には車いすの乗降が容易な仕様や、乗客の快適性を考慮した設備が整えられています。
両者は似ているようで、提供するサービスの内容や対象者に違いがあるため、利用する際には自身のニーズに合ったサービスを選択することが重要です。
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一般的なタクシーとの違い
介護タクシーと一般的なタクシーは、乗車を目的としたサービスとして共通しているものの、提供する内容や機能、目的に大きな違いがあります。
介護タクシーは、高齢者や障害を持つ方々の特別なニーズに対応するために設計されており、車両は車いすの乗降がしやすいようにカスタマイズされていることが多いです。また、運転手は介護に関する基本的な知識や技術を持つことが求められ、乗客の安全や快適性を第一に考慮したサービスを提供します。
一方、一般的なタクシーは、広い層の乗客を対象にしており、特定の介護技術を持った運転手がいるわけではありません。車両も標準的な仕様が主流です。
それぞれのタクシーは、異なるニーズに応じたサービスを提供するため、利用する際には自身の状況や要求に合わせて選ぶことが大切です。
介護タクシーの仕事内容や給料事情
続いては、介護タクシー運転手の仕事内容や給料事情について解説します。
介護タクシーの仕事内容
介護タクシー運転手の主な仕事は、高齢者や障害を持つ方々を安全に目的地まで運ぶことですが、それだけに留まりません。
乗車や降車の際には、車いすの取り扱いや歩行補助といったサポートが求められることが多く、移動中も乗客の体調を気にかけたり、必要に応じて介助を提供することもあります。
また、乗客の医療的なニーズや日常生活上の困難に対する知識も必要とされるため、専門的な研修を受けることが推奨されます。
介護タクシーの仕事は、ただ運転するだけではなく、乗客とのコミュニケーションや心のケアも大切な役割として位置づけられているのです。
介護タクシー:1日の流れ
下記は、介護タクシー運転手の1日の仕事の流れの一例です。
時間 | 業務内容 |
8:00(出勤) | 1日の運行スケジュールを確認する。車両点検を行い、車内環境を整えたら利用者宅へ出発。 |
8:30(通院1本目) | 利用者の自宅にお迎え。利用者を介護タクシーに乗せて、病院まで送る。 |
9:30(通院2本目) | 利用者の自宅にお迎え。利用者を介護タクシーに乗せて、病院まで送る。 |
10:30(転院) | 利用者のいる病院にお迎え。利用者を介護タクシーに乗せて、病院まで送る。 |
12:00(休憩) | 食事を取り、ゆっくり身体を休める。 |
13:00(お迎え1本目) | 利用者のいる病院にお迎え。利用者を介護タクシーに乗せて、自宅まで送る。 |
14:00(お迎え2本目) | 利用者のいる病院にお迎え。利用者を介護タクシーに乗せて、自宅まで送る。 |
15:00(通院3本目) | 利用者のいる病院にお迎え。利用者を介護タクシーに乗せて、自宅まで送る。 |
16:00(お迎え3本目) | 利用者のいる病院にお迎え。利用者を介護タクシーに乗せて、自宅まで送る。 |
17:00(退勤) | 業務終了後、事務所に戻り運行表などの記入漏れがないか確認する。お金やタクシーチケットなどの精算を行う。 |
介護タクシーの給料
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、介護タクシーの運転手を含むタクシー運転手の平均年収は363.6万円です。
収入は働く場所や会社によって異なります。収入を増やしたい方は、条件の良い会社への転職を考えるのも良い選択かもしれません。
また、一部の会社では、「介護職員初任者研修」や「介護福祉士」といった介護関連の資格を持っていると、特別な手当が支給される場合もあります。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査|e-stat政府統計の総合窓口
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関連記事:介護ドライバーの年収は?仕事内容や必要な資格も紹介
介護タクシーの資格を取得したあと運転手になる方法
続いては、介護タクシーの運転手になる方法を2つ紹介します。
事業所への就職
介護タクシーの運転手になる方法の1つ目は、事業所への就職です。
まずは、介護タクシーのサービスを提供している事業所や企業をリサーチし、求人情報をチェックします。多くの事業所では、必要な資格や経験を明記しており、それを満たしている場合、応募手続きを進めることができます。
採用過程を経て、採用が決定すれば、実際の業務を学ぶための研修やOJT(On the Job Training)が提供されることが一般的です。
研修を終えれば、正式に介護タクシーの運転手としての業務を開始することができます。
開業
介護タクシーの運転手になる方法の2つ目は、開業です。
開業するには、いくつかの免許や資格の取得が求められるため、まずはそれらの条件をクリアしておくことが大切です。
次に、ビジネスプランの策定や資金計画を立てることで、具体的な事業の方向性や必要な資金を明確にします。
そして、運転する車両の購入やリース、さらには必要な設備やツールを揃える段階に進みます。車両は、車いすの乗降が容易であったり、高齢者や障害者の移動をサポートするための特別な装備が整っているものを選ぶと良いでしょう。
最後に、法的手続きや各種申請を行い、事業を正式にスタートさせます。開業後も、サービスの質を維持し向上させるための努力や、適切な広告・宣伝活動を継続的に行うことが重要です。
介護タクシー資格を取得したあとの転職状況
介護タクシーの運転手になるためには、普通自動車二種免許の取得が必要となりますが、この普通自動車二種免許の資格は、汎用性が高く、転職の際にも大きなアドバンテージとなります。
加えて、現在、介護タクシーはサービスとしての知名度を段階的に上げてきており、高齢化が進む中での介護ニーズの増加も考慮すると、今後、介護タクシーの需要は益々増加していくことが予測されます。
そのため、他の介護タクシー会社に転職する場合でも、基本的に職に困ることはないと言えるでしょう。
介護タクシーに必要な資格に関連してよくある質問
ここからは、介護タクシーに必要な資格に関連してよくある質問について解説します。
自営の介護タクシー運転手の年収は?
自営の介護タクシー運転手(一日8時間、週6日稼働した場合)の平均年収は約420万円です。
一方、介護施設等で正社員またはパートタイム職員として働いている介護タクシー運転手の平均年収は299万円です。
このように、職員として運転手をするよりも、自営の方が収入が上がる可能性は高いです。
二種免許の取得にはいくらかかる?
前述の通り、介護タクシー事業には普通自動車二種免許が必要となります。取得費用は教習所によってまちまちですが、約20~30万円程度の料金が一般的です。
関連記事:二種免許でできるタクシー以外の仕事5選
介護タクシーの資格についてのまとめ
今回は、介護タクシーの資格について解説しました。
介護タクシーの資格取得を検討している方は、本記事を参考にして、ぜひ介護タクシーの資格試験に挑戦してみてください。
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