1級自動車整備士の資格を取得することで得られるメリットについて、気になっている現役整備士の方やこれから業界を目指す学生の方も多いでしょう。
この資格を取得することにより、キャリアアップが図れるだけでなく、給与の向上も見込まれ、さらには自動車整備に関する専門的なスキルを一層深めることが可能です。
そこで本記事では、1級自動車整備士を取得することの具体的なメリットやデメリットについて触れ、あわせて資格取得に至るまでのステップについても解説します。
1級自動車整備士の資格取得を検討している方は、参考にしてください。
1級自動車整備士のメリット3選
1級自動車整備士のメリットはいくつもあります。
中でも多くの人が感じているメリットは次の通りです。
- 整備可能な車種が増え、専門知識が身につく
- 高収入と安定性が得られる
- 多様なキャリアパスが描ける
1級自動車整備士の資格は、2級と異なり、エンジンの種類によって資格が分けられていません。したがって、1級を取得していれば、幅広い車種を取り扱えます。
加えて、昨今、運転技術の発展が著しい状況です。1級を取得して専門知識を身につけると、市場価値も高くなるでしょう。
さらに、令和4年賃金構造基本統計調査の結果によると自動車整備士の平均年収は469.3万円ですが、1級に限定するともう少し高くなると言われています。
参考:自動車整備士 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
【キャリア・給与編】1級自動車整備士の資格取得のメリット
1級自動車整備士の取得による、キャリア・給与に関するメリットは次の通りです。
- 高収入と安定性が得られる
- 多様なキャリアパスが描ける
- 就職・転職市場で価値が上がる
それぞれについて解説します。
高収入と安定性が得られる
自動車整備士の平均年収は469.3万円です。一方で、令和4年度分の民間給与実態統計調査によると日本の給与所得者の平均年収は458万円です。したがって、1級自動車整備士は平均以上の収入を期待できます。
さらに、自動車は現代社会に必要不可欠です。また、常に一定の需要があります。実際に、一般社団法人日本自動車工業会が実施した調査によると、2021年時点の自動車所有率は77.9%にも上ります。
自動車整備の仕事は比較的安定していて、景気の影響を受けにくいと言えるでしょう。
加えて、自動車整備業界は人材不足です。令和3年の自動車整備業の有効求人倍率は4.55でした。令和4年には5.02に上昇しています。
参考:令和4年分 民間給与実態統計調査|国税庁
参考:2021年度乗用車市場動向調査について|– JAMA – 一般社団法人日本自動車工業会
参考:自動車整備人材に係る課題解決策を取りまとめ、今後実行フェーズに!!|国土交通省
参考:自動車整備士 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
多様なキャリアパスが描ける
1級自動車整備士の資格があれば、エンジンの種類にかかわらず幅広い車種を取り扱うことが可能です。さまざまな車種を取り扱った先には、多彩なキャリアパスがあります。
現場管理職はもちろんのこと、整備士の経験を活かしてディーラーなどの営業所長、さらには経営層への参画など多岐にわたります。他にも、将来的に独立・起業も可能です。
就職・転職市場で価値が上がる
1級自動車整備士の市場価値はますます高くなると予想されています。
日本は2018年時点で2030年の次世代自動車の普及率を50%〜70%に設定しています。
1級を取得していれば、さまざまな車種の取り扱いが可能です。
また、令和3年6月時点で2級自動車整備士は271,962人いますが、一方の1級自動車整備士は13,009人しかいません。したがって、就職・転職市場で有利になるでしょう。
参考:EV/PHV普及の現状について|国土交通省
参考:自動車整備事業場に従事する整備要員数と自動車整備士数|国土交通省
【スキルアップ編】1級自動車整備士の資格取得のメリット
1級自動車整備士の取得による、スキルアップに関するメリットは次の通りです。
- 整備可能な車種が増え、専門知識が身につく
- 電子装置や低公害車など、最新技術を搭載した車両の高度整備技術が取得できる
それぞれについて解説します。
整備可能な車種が増え、専門知識が身につく
先ほどから触れている通り、1級自動車整備士は2級や3級と異なり、エンジンの種類にかかわらず車両を取り扱えます。幅広い取り扱い経験を積むと、より専門知識が身につくでしょう。
電子装置や低公害車など、最新技術を搭載した車両の高度整備技術が取得できる
近年、電子装置や最新技術を搭載した車両の開発が進んでいます。1級自動車整備士であれば、高度な技術を要する整備も担当でき、ますます技術が身につくでしょう。
1級自動車整備士資格を取得するデメリット
1級自動車整備士を取得するメリットが複数ある一方でデメリットもあります。
1級自動車整備士を取得するデメリットは次の通りです。
- 時間的、金銭的負担がかかる
- 期待通りの待遇が受けられないこともある
それぞれについて解説します。
時間的・金銭的負担がかかる
1級自動車整備士を取得するデメリットは、時間的・金銭的負担がかかります。
専門学校に通う場合は学費と時間が必要です。たとえば、大阪自動車整備振興会の技術講習では、2級ガソリン自動車整備士を取得している場合で、教材費と受講料あわせて181,589円の負担があります。
また、働きながら取得する場合でも、講習を受講したり自主学習したり、実務経験を積んだり時間を費やさなければなりません。
参考:令和6年度第1回自動車整備技術講習|大阪府自動車整備振興会
期待通りの待遇が受けられないこともある
自動車整備業界では、2級を取得している人の割合が大半を占めています。先ほど紹介した通り、令和3年6月時点で2級は271,962人いますが、1級は13,009人しかいません。
したがって、資格以上に実務経験やスキルが評価される傾向があるのも事実です。その結果、1級自動車整備士を取得したにもかかわらず、期待通りの待遇を受けられないケースもあるかもしれません。
1級自動車整備士を受験するにあたっての準備
1級自動車整備士を受験するにあたっての準備は次の通りです。
- あらかじめ資格取得にかかる時間とお金を確保しておく
- 自分に合う勉強方法を見つけておく
- 資格取得へのアドバイスを周りの人からもらっておく
それぞれについて解説します。
あらかじめ資格取得にかかる時間とお金を確保しておく
1級自動車整備士を取得するデメリットでも紹介した通り、合格するには時間的・金銭的負担が必要です。
大阪自動車整備振興会の場合、2級ガソリン自動車整備士が技術講習を受けるには、教材費と受講料あわせて181,589円を準備しなければなりません。
専門学校に複数年かけて通う場合は、さらに費用が必要です。
また、試験を受けるために受験料が必要です。学科が9,300円で、実技は14,000円です。
自分に合う勉強方法を見つけておく
1級自動車整備士は難易度の高い資格です。したがって、自分に合う勉強方法を見つけて効率的に学習しなければなりません。
参考書を徹底的に読み込んだり、過去問などの実践問題を中心に取り組んだりする勉強方法があります。
資格取得へのアドバイスを周りの人からもらっておく
1級自動車整備士の試験を経験した人からのアドバイスは重要です。
たとえば、口述試験は、筆記や実技と異なり過去問を解くことができません。また、受験のシチュエーションもイメージしづらいでしょう。
経験者にアドバイスをもらっておくことで、対策できたり気持ちに余裕を持てたりします。
1級自動車整備士の仕事内容
1級整備士の資格があれば、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車、電気自動車、水素自動車など、エンジンの種類や整備箇所に関わらず、あらゆる自動車の整備ができます。
非常に幅広い範囲の作業を担当できる自動車整備のスペシャリストです。
ただし、1級整備士でも自動車検査員としての業務は法律上おこなうことができません。検査業務は、整備後や車検時に国の定める保安基準を満たしているかどうかを確認するもので、これには自動車検査員の資格が必要です。
1級自動車整備士の資格を取得する流れ
ここでは、1級自動車整備士の資格を取得する流れを解説します。
1. 都道府県の自動車整備振興会で受験申請をおこなう
まず、1級自動車整備士になるためには、都道府県の自動車整備振興会で「自動車整備技能登録試験(登録試験)」の受験申請をおこないます。申請には、以下の書類が必要です。
- 登録試験受験申請書
- 受験手数料
- 証明写真(縦6.0cm×横4.5cm)
- 郵便はがき(学科試験のみの場合2枚、学科・実技試験の場合4枚)
- 卒業証書や実務経験証明書など、受験資格を証明する書類
2. 自動車整備技能登録試験を受験する
次に、登録試験を受験します。この試験は1級整備士資格取得のために必須で、筆記試験と口述試験がおこなわれます。また、一部の場合には、実技試験が免除されます。
例えば、一種養成施設の専門学校や自動車整備振興会の技術講習を修了している場合に、実技試験が免除されるなどです。
- 【学科試験】1級は筆記試験および口述試験
- 【実技試験】一部免除される場合あり
参考:自動車整備技能登録試験日|一般社団法人日本自動車整備振興会連合会
3. 都道府県の自動車整備振興会で全免申請を行う
試験に合格した後、2年以内に「全免申請」をおこないます。これにより、「自動車整備士技能検定試験」の一部が免除され、資格取得に必要な手続きを完了できます。申請時には、以下の書類が必要です。
- 検定申請書
- 学科試験合格証書または合格通知はがき
- 整備技能講習修了証書または一種養成施設卒業証書
- 郵便はがき2枚
- 2級整備士合格証書(1級受験の場合)
- 実務経験証明書
- 印鑑
- 申請料
4. 合格証明書の発行
全免申請が受理された後、約2カ月で合格証明書が発行され、1級自動車整備士の資格を正式に取得できます。
1級自動車整備士を取得するための効果的な学習方法
1級自動車整備士を取得するための効果的な学習方法は主に2つです。
- 資格取得支援の参考書やオンラインで学ぶ
- 専門機関や教育プログラムを調べてみる
それぞれについて解説します。
資格取得支援の参考書やオンラインで学ぶ
1級自動車整備士を取得するには、参考書やインターネット上の無料過去問題集・無料アプリの活用が有効です。
たとえば、RESOLUTION Co.,ltd.からは、平成24年から平成28年までの過去問が無料アプリで展開されています。
他にも、インターネット上で、過去問が公開されていたり実践問題に挑戦できたりするので、効率的に学習しましょう。
参考:自動車整備士資格試験/過去問題集 アプリ|RESOLUTION Co.,ltd.
専門機関や教育プログラムを調べてみる
1級自動車整備士の学習に腰を据えて取り組みたい場合は、専門機関や教育プログラムでの受講を検討しましょう。
たとえば、スタディサプリや進路ナビでは、1級自動車整備士の資格を取得できる専門学校を検索できます。
参考:一級小型自動車整備士<国>を目指せる専門学校の一覧|スタディサプリ
参考:一級自動車整備士の資格取得が目指せる大学・短期大学(短大)・専門学校一覧 [全国]|進路ナビ
1級自動車整備士を取得するメリットについてのまとめ
今回は、1級自動車整備士を取得するメリットとデメリット、また合格への道について解説しました。
1級自動車整備士のメリットは次の通りです。
- 高収入と安定性が得られる
- 多様なキャリアパスが描ける
- 就職・転職市場で価値が上がる
- 整備可能な車種が増え、専門知識が身につく
- 電子装置や低公害車など、最新技術を搭載した車両の高度整備技術が取得できる
また、1級自動車整備士の受験を検討する際には、あらかじめ資格取得にかかる時間とお金を確保しておきましょう。加えて、自分に合う勉強方法を見つけるのも重要です。
1級自動車整備士のメリットとデメリットを理解したうえで、次のステップとして「整備士キャリア」の転職支援サービスを活用してみませんか?
こちらのサービスでは、希望に合った求人の紹介や履歴書作成のサポート、企業との条件交渉、面接日程の調整など、幅広く無料でサポートしています。
資格を活かしてキャリアアップを目指す方におすすめです。
整備士の仕事をお探しの方へ
整備士キャリアは、自動車整備業界に特化した転職支援サービスです 。
- 希望条件に合う求人のご紹介
- 履歴書など書類作成のサポート
- 企業との条件交渉/面接日程の調整
無料でご利用いただけますので、ぜひご活用ください。
求人を検索する(無料)