施工管理技士補は、施工管理技士を目指すための初めのステップとして、実務経験を積むための重要な資格です。
2021年に施工管理技術検定制度が改正され、技士補という新たな資格が導入されました。
この資格を取得することで、管理・監督業務の補佐が可能になり、現場での経験を早期に積めるようになります。
そこで今回は、施工管理技士補の資格の概要、取得のメリットや試験制度の変更点について解説します。施工管理のキャリアを考えている方に必見の内容です。
施工管理技士補とは
これまで施工管理技士は、1級施工管理技士と2級施工管理技士の2種類のみでしたが、そこから新たに技士補という資格が創設されました。この技士補とはどういった資格なのか紹介します。
2021年に誕生した新しい資格
技士補が誕生したのは2021年の4月と最近のものです。
2019年の6月に国会において「新・担い手三法」という改正法案が可決され、2021年4月1日に施工された、「建設業法および公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」によって技士補が誕生しました。
施工管理技士補にできる業務
技士補は一言でいうと施工管理技士の補佐的な立場となります。施工管理技士の仕事は4大管理と呼ばれる品質管理、安全管理、工程管理、原価管理というものです。
技士補は、この中の工程管理や品質管理と施工計画の作成や工事作業員への指導監督の補佐を行うことができます。
あくまで現場の指揮を取るのは施工管理技士であるため、指導を受けながら仕事を行います。メイン的な業務は行えませんが施工管理技士になるための修業的なことを業務を通じて行うことができます。
技士補誕生によって資格試験の名称も変更された
技士補が誕生するまでは施工管理技士の資格試験は学科試験と実地試験と呼ばれるものでした。
2021年の4月より、学科試験にあたるものを「第一次検定」、実地試験にあたるものが「第二次検定」と呼ばれるようになりました。
試験内容はこれまで変わりませんが、試験名称そのものが変更されました。
施工管理技士補の新設による検定制度の変更内容
2021年の建設業法改正により、施工管理技士補が新たに設立され、施工管理技術検定制度が変更されました。
この制度改正は、2019年に国土交通省が発表した「新・担い手3法」に基づいておこなわれたものです。
「新・担い手3法」は、働き方改革や生産性向上を目的とした法改正で、住宅品質確保促進法(品確法)、建設業法、入契法の3つの法律が対象となりました。
その中で、2021年に建設業法第27条(技術検定)が改正され、施工管理技術検定制度にも影響があったのです。
主な変更点としては、次の2つが挙げられます。
- 学科試験と実地試験が、それぞれ第一次検定と第二次検定に名称変更された。
- 学科試験(第一次検定)に合格した者には「施工管理技士補」という資格が付与されるようになった。
出典元:新・担い手3法|国土交通省
施工管理技士補の新設前の制度
以前の制度では、施工管理技士の資格を取得するために、学科試験と実地試験の両方に合格する必要がありました。
学科試験のみ合格した場合は、2回まで実地試験に挑戦することができましたが、不合格となると再び学科試験から受験し直す必要があり、これがモチベーションの低下や受験率の低下につながる問題とされていました。
施工管理技士補の新設後の制度
法改正後、学科試験と実地試験はそれぞれ第一次検定と第二次検定に名称が変更され、内容も見直されました。
特に第一次検定には、監理技術者を補佐するための知識や応用力が含まれています。第一次検定に合格した者には、新たに「施工管理技士補」の資格が与えられるようになり、これにより段階的なキャリアアップが可能となりました。
さらに、2級施工管理技士を取得した者は、すぐに1級施工管理技士の第一次検定を受験できる点も新しいポイントです。
ただし、1級施工管理技士の第二次検定を受験するためには、所定の実務経験が必要です。
出典元:技術検定の再編|建設業振興基金
施工管理の求人を検索する(無料)施工管理技士補が新設された理由
そもそもなぜ施工管理の中で技士補という資格が作られたのでしょうか。その目的や理由について紹介していきましょう。
新しい法律の可決で生まれた
世間にはあまり知られていませんが、令和元年6月に新・担い手3法という法律が可決されました。
この新・担い手3法は、「公共工事品質確保促進法」「建設業法」「公共工事入札契約適正化法」の3つの法律をまとめたものです。
この法律の内訳は細かいので省略しますが、今後の建設業界のあり方や資格試験の仕組みを変更するもので大きな変化となるものでした。
この中の建設業法で担い手の確保、適正な施工体制の確保というものがあり、この担い手の確保という部分から技士補が誕生しました。
人材不足の解消
技士補が新設された一番大きな理由が人材不足の解消でしょう。長年多くの建設業者は人材不足、それに伴う長時間労働が問題となっていました。
建設現場では、現場ごとに必ず1人以上の監理技術者を配置することが義務付けられていました。
しかし、法律上複数の建設現場に監理技術者を配置することは禁止されており、それによって人材不足の問題がたびたび生じていました。
これに歯止めをかけようという動きから技士補が誕生したのです。技士補ができたことで第一次検定(学科試験)に合格したものを建設現場専任の現場責任者として配置することができます。
若年層の確保
新しく作られた技士補は若者が建設業界で働き、さらにキャリアアップしやすい環境づくりを目的としています。
2級の技士補に関しては試験開催年に満17歳以上であれば誰でも受験できるようになりました。
これを行ったことで高校生からでも受験が可能となりました。これまで施工管理技士は経験を積んでからでなければ受験できなかったのですが、高校生から受験できるようになったことで若者を施工管理の世界に入れるようにしました。
建設業界は人手不足だけでなく、高齢化の問題もあったので、同時に解決できるものとして技士補を誕生させました。
1級技士補がいることで監理技術者の配置義務が緩和される
これまでは4000万円以上の受注金額で受けた工事には1現場ごとに1人の監理技術者(施工管理技士)を配置することが義務付けられていました。
しかし、技士補が誕生したことで現場専任の1級技士補を配置すれば1級施工管理技士は2つの建設現場を管理することができるようになりました。
人材不足の解消に大きな一歩につながる結果となりました。
資格試験の制度を和らげる効果も
これまで施工管理技士の資格を取得するためには学科試験と実地試験の両方を合格しないといけませんでした。
実地試験は学科試験を合格した後に受験することは可能ですが、それでも必ず合格するとは限りません。
なお、学科試験は一度学科試験を合格してから2年間であれば免除されて実地試験のみとなりますが、2年を経過すると再び学科試験と実地試験の両方を受験しないといけない状況でした。
技士補が誕生したことでこの制度がなくなり、第一次検定(学科試験)を合格した後は第二次検定(実施試験)のみを受験すればいいようになりました。
つまり、第二次検定(実地試験)のみ合格すれば施工管理技士の資格を取得できます。
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施工管理技士補を取得するメリット
施工管理技士補を取得する主なメリットは以下の3つです。
資格手当がつく
施工管理技士補の資格を取得すると、多くの企業で資格手当が支給されるようになります。
資格手当は、企業ごとに異なりますが、通常の給与に加えて毎月の収入が増えるため、モチベーションアップや生活費の補助につながります。
現場で実績を積める
施工管理技士補の資格を取得すると、現場での実務経験を積むチャンスが増えます。
資格を持っていることで、現場での作業に積極的に参加でき、技術や知識を実際の業務を通じて磨くことが可能です。
また、施工管理技士補としての経験は、後に施工管理技士の資格を取得する際にも有利に働きます。
キャリアアップしやすい
施工管理技士補の資格は、施工管理技士へのステップアップに直結しています。
施工管理技士補の資格を持つことで、1級や2級施工管理技士の試験に挑戦しやすくなり、資格取得の道が開けます。
また、施工管理技士としてのキャリアを積むことで、管理職への昇進や、さらなる高収入のポジションを目指せるでしょう。
技士補の資格取得の流れ
それでは技士補になるための第一次検定の受験資格について紹介していきましょう。
技士補は1級施工管理技士の補佐となる1級技士補と2級施工管理技士の補佐となる2級技士補の2種類あります。それぞれ受験資格が異なるので注意しましょう。
技士補の取得方法
この技士補という資格はどのように取得するのか、紹介しましょう。
技士補が誕生するまでは、施工管理技士になるには学科試験と実技試験の両方に合格しないといけませんでした。
それが第一次検定(学科試験)を合格するだけで技士補の資格を取得することができるようになりました。
第一次検定は施工管理技士と働くための基礎となる知識などをはかっています。それに合格すれば施工管理技士の基礎知識は身についているものとして、技士補の資格を与えるようになりました。
1級または2級施工管理技士の資格を取得するためには、そのあとの第二次検定(実地試験)合格しないといけませんが、仮に落ちたとしても技士補の資格がなくなるということはないので安心してください。
1級技士補の受験資格
1級技士補の受験資格を見てみましょう。
最終学歴 | 実務経験年数(指定学科を卒業後) | 実務経験年数(指定学科以外を卒業) |
大学専門学校の高度専門士 | 3年以上 | 4年6ヶ月以上 |
短期大学5年生高等専門学校専門学校の専門士 | 5年以上 | 7年6か月以上 |
高等学校専門学校の専門課程 | 10年以上 | 11年6ヶ月以上 |
その他(学歴を問わず) | 15年以上 | 15年以上 |
2級施工管理技士 | なし | なし |
これだけを見ると1級技士補になるのは大変なのでは?と思う方もいるでしょう。しかし、この受験資格は緩和されました。
これまでは2級施工管理技士の資格を取得してからは5年以上の実務経験がないと学科試験を受験することができませんでした。
しかし、受験資格の緩和から2級施工管理技士の資格を取得すれば翌年から第一次検定(学科試験)の受験が可能となりました。
1級施工管理技士の資格を取得するために第二次検定(実地試験)は5年以上の実務経験が必要となるので、注意してください。
2級技士補の受験資格
2級技士補の資格を取得するための第一次検定の受験資格は、「試験実施年度に満17歳以上なるかたのみです。
これ以外の条件はないので、年齢さえクリアしていれば高校に通いながらでも受験することができます。
なお第二次検定の受験資格は以下の通りです。
最終学歴 | 実務経験年数(指定学科を卒業) | 実務経験年数(指定学科以外を卒業) |
大学専門学校の高度専門士 | 1年以上 | 1年6ヶ月以上 |
短期大学5年生高等専門学校専門学校の専門士 | 2年以上 | 3年 |
高等学校専門学校の専門課程 | 3年以上 | 4年6ヶ月以上 |
その他(学歴を問わず) | 8年以上 | 8年以上 |
どの場合でも実務経験が必要となるので、先に技士補を取得してから現場で仕事を行いながら経験を積み、試験にのぞむということが基本となります。
第一次検定の難易度
第一次検定の難易度について紹介していきましょう。技士補は施工管理技士の資格の数と同じだけ種類があります。
建築施工管理技士や建設機械施工管理技士、電気工事施工管理技士などの技士補と全部で7種類あります。それぞれ試験の難易度は異なるので、昨年の第一次検定の合格率から難易度をはかってみましょう。
資格名 | 一級の合格率 | 二級の合格率 |
建設施工管理技士 | 51.1% | 34.5% |
土木施工管理技士 | 60.1% | 72.6% |
管工事施工管理技士 | 35.0% | 63.6% |
電気工事施工管理技士 | 45.4% | 58.5% |
電気通信施工管理技士 | 49.1% | 63.9% |
造園施工管理技士 | 39.6% | 58.3% |
建設機械施工管理技士 | 20.3% | 39.5% |
全体的に見ると2級よりも1級の方が難易度が高いのがわかります。1級も2級もそれぞれの資格に関する基礎的な知識を問われる問題が出題されたり、共通しているものとしては施工管理法や法規も出題されます。
しかし、1級は同じ基礎的な知識でも出題範囲が2級よりも大きく広がるため、難易度が高くなると言われています。
また、1級は仕事をしながら試験勉強を行わないといけないため、学習時間がなかなか取れず万全の準備で試験にのぞむことが難しいともされています。
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施工管理技士補についてのまとめ
施工管理技士補を取得すると、1級や2級施工管理技士を目指す際に必要な実務経験を積むことができます。
これにより、現場で管理や監督業務の補佐を行えるようになり、実務スキルを早期に習得できるのが大きなメリットです。
また、技士補の資格を取得すれば、第二次検定にも何度でも挑戦できるようになるため、施工管理技士へのステップアップがしやすくなります。施工管理の分野でキャリアアップを考えている方は、まず技士補の取得を検討してみましょう。
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