宅建士は、公正な不動産取引をサポートする役割を担っています。
不動産取引に関する3つの独占業務があり、不動産業界に欠かせない存在です。
不動産を取り扱う金融業界や建設業界、保険業界でも活躍可能であり将来性の高い資格と言えるでしょう。
経験や学歴に関係なく受験可能であるため、転職前に取得を検討する人も少なくありません。
宅建資格を取得したのちに転職した場合、年収がいくらになるのか気になる人もいるのではないでしょうか。
今回は、宅建士の年収事情について、年代別や役職別で分かりやすく解説していきます。
【この記事で分かること】 ・宅建資格を取得した場合の年収 ・年代別、男女別、地域別、役職別の宅建資格保有者の年収 ・宅建士の給料や年収に関する特徴 ・宅建士が人気である3つの理由 ・宅建資格取得後に年収を上げる方法 ・宅建士として年収1,000万円を超える方法 |
【状況別】宅建資格を取得した場合の年収
宅建士は、一般の人には難しい不動産取引の法律についての説明を行い、公正な取引をサポートするのが仕事です。
冒頭で解説した通り、不動産取引において3つの独占業務があり、宅建士として経験を積めば独立も可能です。
同じ職種でも会社員と独立開業した場合では、年収に違いがあります。
・会社員として働く宅建士
・独立開業した場合の宅建士
上記2つの状況別で、宅建士の年収について解説していきます。
会社員:約550万円
宅建士は、建物や土地といった不動産を扱う業界で活躍可能であり、どの業種に従事するかによって年収が異なります。
宅建士の在籍率の多い不動産業界で、「令和4年度賃金構造基本統計調査」から推測される宅建士の平均年収は約542万です。
宅建士を含む不動産業・物品賃貸業の平均年収であり、他の産業と比べると高収入であると言えます。
宅建士の資格を活かし不動産業営業の仕事に就く場合、「固定給+歩合給」の企業が多いため、平均よりさらに稼いでいる人も中にはいると考えられます。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類|厚生労働省
独立:0〜1,000万円以上
宅建資格保有者の中には、経験を積んだ上で独立開業する人もいます。
独立開業した場合の年収は、経営状況によるため平均となる値は存在しません。
営業をかけて仕事の依頼を受ける必要があり、会社員とは違い事務所の家賃や人件費といった経費もかかります。
開業時は赤字が続くことも珍しくない一方で、継続的に仕事の依頼がくるようになれば、経費を差し引いた利益全てを自分の収入にできます。
決して簡単ではないものの、独立開業後に年収1,000万円以上を目指すことも十分可能です。
【年代別】宅建資格を取得した場合の年収
宅建資格を取得後に会社員として働く場合、経験の積み重ねにより、昇給や出世によって年収が上がっていきます。
当然、若い年代よりも中堅世代となる年代の方が年収は上がります。
令和4年度賃金構造基本統計調査をもとにした、宅建士の推計年収は以下の通りです。
年代 | 決まって支給する現金給与額 | 年間賞与、その他特別給与額 | 推計年収 |
20~24歳 | 25万3,800円 | 34万4,300円 | 338万9,900円 |
25~29歳 | 29万3,400円 | 79万4,100円 | 431万4,900円 |
30~34歳 | 33万5,800円 | 105万7,500円 | 508万7,100円 |
35~39歳 | 38万3,100円 | 121万800円 | 580万8,000円 |
40~44歳 | 40万2,800円 | 124万6,300円 | 607万9,900円 |
45~49歳 | 41万8,600円 | 137万8,800円 | 640万2,000円 |
50~54歳 | 42万3,500円 | 140万1,600円 | 648万3,600円 |
55~59歳 | 43万500円 | 145万3,500円 | 661万9,500円 |
60~64歳 | 32万6,600円 | 66万6,900円 | 458万6,100円 |
65~69歳 | 25万2,000円 | 31万8,100円 | 334万2,100円 |
年代別で最も年収が高かったのは、50代後半で約662万円でした。
60代に関しては、定年退職などにより役職から外れたり、正社員でなくなったりしたことで、収入が下がっていると推測されます。
【男女別】宅建資格を取得した場合の年収
令和4年度賃金構造基本統計調査をもとにした、男女別の宅建士の推計年収は以下の通りです。
性別 | 決まって支給する現金給与額 | 年間賞与、その他特別給与額 | 推計年収 |
男性の宅建士 | 40万4,700円 | 124万7,000円 | 610万3,400円 |
女性の宅建士 | 28万4,300円 | 72万8,800円 | 414万400円 |
男性と女性では、年収の平均に200万円ほどの差があります。
女性の場合、出産や子育てによる途中退社が多く、継続的に給料が上がりにくいことが収入に差がある原因と考えられます。
基本的に、男性と女性の宅建士で仕事内容などに違いはありません。
【地域別】宅建資格を取得した場合の年収
令和4年度賃金構造基本統計調査をもとにした、各主要都市の宅建士の推計年収は以下の通りです。
都道府県 | 決まって支給する現金給与額 | 年間賞与、その他特別給与額 | 推計年収 |
北海道 | 24万1,200円 | 42万9,800円 | 332万4,200円 |
宮城県 | 26万6,400円 | 47万2,000円 | 366万8,800円 |
東京都 | 31万7,900円 | 64万1,700円 | 445万6,500円 |
愛知県 | 31万5,000円 | 67万3,000円 | 445万3,000円 |
大阪府 | 41万4,100円 | 88万4,800円 | 585万4,000円 |
広島県 | 26万1,500円 | 27万4,700円 | 341万2,700円 |
高知県 | 26万7,600円 | 36万6,000円 | 357万7,200円 |
福岡県 | 27万6,600円 | 59万1,000円 | 391万200円 |
沖縄県 | 27万1,200円 | 29万5,600円 | 355万円 |
今回紹介した地域で、最も年収が高かったのは大阪府で、次いで東京都でした。
都市部の方が不動産の価格が高く、人口が多いことから取引数が多く年収が上がっていると推測されます。
【役職別】宅建資格を取得した場合の年収
会社の役職には「主任・係長・課長・部長」などがあります。
令和4年度賃金構造基本統計調査をもとにした、各主要都市の宅建士の推計年収は以下の通りです。
・主任(25~29歳):約431万円 ・係長(35~39歳):約581万円 ・課長(45~50歳):約640万円 ・部長(51~55歳):約648万円 |
昇格スピードは、企業規模や個人の成績によります。
不動産業界の営業職の場合「基本給+歩合給」であることから、管理職よりも営業マンとして働いていた時の方が、高収入のケースもあります。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類|厚生労働省
宅建資格を取得した場合は年収アップ?資格手当の相場
不動産業界では、福利厚生の一環で、資格手当を支給している企業が多くあります。
支給額は企業によって異なり、宅建資格の相場は5,000〜30,000円です。
資格手当は、求人票の福利厚生で確認できます。
宅建士の年収と資格に関する特徴|3選
宅建士として企業に就職した場合、宅建士の独占業務だけを繰り返すわけではなく、営業の仕事などもこなします。
従事する業種にもよりますが、宅建士の収入には以下のような特徴があります。
・完全歩合制の契約も多い
・都心部と地方とでは給与水準が大きく変わる
・景気に左右される場合がある
上記3つの特徴について、詳しく解説していきます。
完全歩合制の契約も多い
宅建士の資格を何の職種で活かすかにもよりますが、営業職の場合は「固定給+歩合給」が基本です。
固定給はそこまで高くないことが多く、宅建士の資格を持っているだけで高収入を目指すのは難しいと言えるでしょう。
委託契約で完全歩合制を用いている企業もあり、宅建士としての知識を活かしながら、契約数を増やしていくことで高収入を目指せます。
都心部と地方では給料水準が大きく変わる
先ほど【地域別】宅建士の平均年収で解説した通り、給料水準は都市部の方が高い傾向にあります。
都市部の収入が高い理由は、都市部ほど人口が多いため不動産の取引件数が多く、単価が高いことが影響しています。
地方では稼げないというわけではないものの、傾向の1つとして覚えておくようにしましょう。
景気に左右される場合がある
土地や建物といった不動産は、個人による購入の他に企業投資などで多く取り扱われています。
数千万〜数億円規模の不動産が多く、慎重な取引が求められることもあり、景気によって需要が変動します。
景気によっては、他の職種より収入を増やしやすい一方で、景気悪化により収入が落ちてしまいやすいことも不動産業界の特徴です。
宅建資格が人気な3つの理由
宅建資格は毎年2万人近くの人が挑戦する人気の資格です。
他の資格よりも人気である理由には、以下のような内容があります。
・宅建資格取得者でなければできない仕事がある
・転職に有利になる
・不動産業界以外でも活用できる
上記3つの理由について、宅建士の転職事情を踏まえながら解説していきます。
宅建資格取得者でなければできない仕事がある
宅建士は、公平な不動産取引をサポートする役割があり、契約業務の中には有資格者しか行えない独占業務が3つあります。
・重要事項説明書面(35条書面)への記名 ・契約内容を記載している書面(37条書面)への記名 ・契約締結前の重要事項についての説明 |
これらの業務は、どれだけ専門知識がある人でも、宅建士の資格がなければ行えません。
そのため、不動産業界で宅建士の需要がゼロになることはなく、将来性の高さから人気資格となっています。
転職に有利になる
不動産業界では、宅建士の需要が高く資格を取得すれば、業界未経験者でも転職を有利に進められます。
需要が高い理由には、前述した3つの独占業務の他に「宅建士の配置義務」が関係しています。
宅地建物取引業法では、宅建業の事務所において、5人に1人の割合で宅建士の配置が義務付けられています。
モデルルームといった案内所でも、1人以上の宅建士を配置しなければなりません。
宅建業を営む場合、企業規模に応じた一定数の宅建士が必ず必要となるため、有資格者は転職を有利に進められます。
不動産業界以外でも活用できる
宅建士は、不動産取引のスペシャリストとして、以下のような業界でも活躍できます。
・建設業界:土地の取得や不動産取引など ・金融業界:担保として扱う不動産の資産価値調査など ・保険業界:不動産が関係する損害保険や生命保険に関するアドバイスなど |
各業界で役立つ他の資格を取得すれば、より幅広く仕事をこなせるようになり、年収も上がりやすくなります。
宅建資格を取得して年収アップさせる方法|4選
ここまで宅建士の年収について解説してきましたが、資格取得後、さらに年収を上げることも可能です。
年収をアップさせる具体的な方法は4つあります。
・大手企業に転職する
・歩合制がある企業に転職する
・宅建資格を活かせる資格を取得する
・独立する
上記4つの方法について、詳しく解説していきます。
大手企業に転職する
不動産業界に限らず、会社員の年収は規模の大きい企業になるほど高くなる傾向にあります。
大規模な不動産を扱っており、売り上げが安定しやすいことから、賞与の支給額も高いと言えます。
中小企業や零細企業が稼げないというわけではないものの、年収を上げたい場合は、大手企業への転職も検討してみましょう。
不動産業界では、大手ハウスメーカーやディベロッパー、ゼネコンなどがおすすめです。
歩合制がある企業に転職する
短期間で収入を大きくアップさせたい場合は、歩合制のある企業への転職がおすすめです。
高収入が保証されているわけではないものの、結果次第で年収を大きく上げられます。
ただし、成約数が少ないほど収入が落ちるため、未経験で転職する場合は歩合制を避けた方がいいでしょう。
宅建資格を活かせる資格を取得する
不動産業界には「不動産開発・不動産流通・不動産管理」といった業種があり、役立てられる資格が異なります。
宅建士と別の資格を組み合わせることで、より活躍の可能性を高められます。
宅建士と組み合わせやすい資格は、以下の通りです。
・FP(ファイナンシャルプランナー) ・マンション管理士 ・管理業務主任者 ・土地家屋調査士 |
ファイナンシャルプランナーを取得すると、住宅ローンなど人生設計に関するアドバイスもしやすくなるため、金融業界への転職におすすめです。
マンション管理士や管理業務主任者は、賃貸マンションの管理に活かせるため、不動産の管理会社への転職で役立ちます。
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記の専門家として、土地の調査や測量業務に役立てられます。
不動産開発の仕入営業に従事したい人におすすめの資格です。
独立する
宅建士として経験を積んだ上での独立開業も、年収を上げる1つの方法です。
主な事業内容には、賃貸物件や不動産売買の斡旋があり、不動産取引による仲介手数料が宅建士の利益となります。
経営者として、営業や事務処理も行う必要があるものの、経費を差し引いた金額は全て自分の収入にできます。
宅建資格を取得:年収1,000万円を目指す2つの方法
宅建士の年収は500~600万円ほどですが、年収1,000万円を超えている人も中にはいます。
宅建資格を活かしながら、年収1,000万円を達成する方法は、以下の通りです。
・歩合制で多くの契約を取る
・独立開業する
上記2つの方法について、解説していきます。
歩合制で多くの契約を取る
業界を代表するような大手企業に勤めない限り、基本給や役職手当のみで年収1,000万円を超えることは難しいと言えます。
会社員として年収1,000万円を超えるには、歩合制のある営業職への転職を検討してみましょう。
不動産取引は、1契約当たりの単価が大きいため、一定数の契約を達成できれば年収1,000万円超えも可能です。
非常にまれな存在ではあるものの、不動産の営業職で年収3,000万円を稼ぐ営業マンもいます。
不動産営業の中でも「土地活用営業・投資用不動産営業」は、特に高収入を狙いやすいと言われています。
独立開業する
2つ目の方法は、宅建資格を活かして独立開業する方法です。
仕事の受注や事務処理など、不動産取引以外のこともこなす必要がある一方で、売り上げた利益を全て自分の収入にできます。
年収1,000万円を超えるには、不動産取引に関する豊富な経験と経営センスが必要です。
業界未経験の場合は、会社員として経験を積むことからスタートしましょう。
宅建資格の年収に関するよくある質問
最後は、宅建資格の年収に関する3つのよくある質問に答えていきます。
・日本で1番稼げる資格は何ですか?
・宅建を持って不動産業界で働いたらいくらになりますか?
・宅建士は儲かりますか?
宅建士の取得に挑戦するかどうかを決める上で、ぜひ参考にしてみてください。
日本で1番稼げる資格は何ですか?
日本で一番稼げると言われている資格には、以下のようなものがあります。
・公認会計士:平均年収700~900万円 ・税理士:平均年収850~890万円 ・中小企業診断士:平均年収700~800万円 |
ただし、宅建士と同様に資格を持っているだけで稼げるわけではありません。
各業界の専門的な知識を身に付けながら、経験を積む必要があります。
宅建を持って不動産業界で働いたらいくらになりますか?
宅建の資格を取得した上で不動産業界で働き始めた場合、働き始めの年収は400~500万円と予想されます。
給与形態や資格手当の有無は、求人によって異なるため、求人票の年収例を参考にしてみましょう。
宅建士は儲かりますか?
宅建士の資格を最も活かせる不動産業界の年収は542万円で、他の業界よりも高水準です。
資格を取得しただけで必ず稼げるとは限らないものの、高収入を目指しやすい資格と言えるでしょう。
宅建資格の年収に関するまとめ
宅建士を含む不動産業界の平均年収は、500万円を超えており、他の業界と比べても高水準と言えます。
就職する企業にもよりますが、都市部になるほど収入が上がる傾向があります。
他の資格を取得するなど、宅建士として成長できれば、大手企業への転職や独立により、さらに収入を上げることも可能です。
今回紹介した年収事情を参考にしながら、資格取得の挑戦を検討してみてください。
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